世界45ヵ国・298都市・660拠点ーー強固な国際物流網を強みに輸送事業を展開するフォワーダー(※)大手「近鉄エクスプレス」。世界トップ10となるべく組織変革を推進している。今回は、その、中核メンバーとして活躍するグローバル営業の太安 真洋さん(32)にお話を伺った。もともと中規模のフォワーダーで働いていた太安さんは、なぜ次のステージに近鉄エクスプレスを選んだのか。そこには「よりグローバルかつ大規模プロジェクトに関わり幅を広げたい」という思いがあった。
※フォワーダーとは
国際物流を行なうにあたって必要となる複雑な手続きや海外輸送の手配を代行する事業者。自社では船舶、航空機などの輸送機材をもたず、複数の運送業者と提携することで、荷主の商品を最適な手段で運ぶ。ハードに縛られずクライアントのニーズに柔軟に対応できることが特徴。たとえば、コスト度外視でスピードを優先したい、コストを最低限におさえたいなど、状況に応じ最適なプランを提案する。
近鉄エクスプレスについて
日本発着の国際物流における主要プレイヤー。国際物流業界の大手(日本第2位・世界第13位)に位置する。世界45ヵ国・298都市・660拠点(2024年9月末現在)のグローバルネットワークを持ち、海路・空路の輸送はもちろん現地の配送・ロジスティクスまで幅広くカバーする。経営計画2027において、フォワーダーとしてグローバルトップ10入りを目指しており、航空物量100万トン・海上物量100万TEU達成を掲げる。それに伴い、組織変革にも着手。特にエンタープライズ企業に対し輸出入、三国間取引などあらゆる方面から手厚くサポートができる組織体制への強化を進めている。
【選べる3つのコース】
◆グローバルコース:全職種、国内・海外で就業するコース。転居を伴う異動あり
◆リージョナルコース:全職種、東日本リージョンと西日本リージョンと定められた地域内で就業するコース。リージョン内で転居を伴う異動あり
◆プロフェッショナルコース:営業職を除く職種、定められた範囲の地域内で転居を伴わず通勤可能な箇所で就業するコース。
※今回のインタビューは、グローバルコース所属社員の事例となる。
社会人4年目、異業種から国際物流の世界に飛び込み、その後「近鉄エクスプレス」に入社した太安さん。その入社の決め手とは。
国際物流にあたり複雑な手続きや海外輸送の手配を行なう事業者を「フォワーダー」というのですが、その世界のトップクラスの企業で働きたい。海外法人が多く、協力会社のコネクションを有する近鉄エクスプレスで働きたい。そう考え、入社を決めました。
じつは、もともとテレビ業界、広告業界で働いていたのですが、26歳のときに、この国際物流の世界に飛び込みました。中規模の物流会社で3年ほど働くなかでは、「もっと大きな規模の案件を担当してみたい」、「より多様な手配できる環境に身を置いてみたい」と思うようになって。勝負するなら、世界を見据える会社で経験を積みたい。そういった思いもありました。
そして、もう1つ大きなポイントとなったのは、一次面接で冒頭から「入社した暁には、当社のクライアントのなかでもエンタープライズ企業を担当して欲しい」とお伝えいただいたこと。正直、他社の選考では、そこまで具体的なミッションを言及されることがなかったので驚きましたが、企業としての決意・気迫のようなものを感じ、ピリッと身が引き締まったことを覚えています。
同時に、具体的に求められることを知ったことで、入社後を解像度高く想像できた感覚もありました。話を聞くほど、「ここなら自分としてより成長できそう」という納得感があり、「この会社で働きたい」という思いが強くなっていったように思います。
26歳のとき、「海外と関わる仕事がしたい」という気持ちに向き合い、国際物流の世界に飛び込んだ太安さん。「それまで海外と関わると言えば商社しかイメージできなかったのですが、フォワーダーで働く友人から国際物流の話を聞き、「物流でも海外と関われる」と初めて認識したんですよね。営業として働く中で、クライアントのサプライチェーンをワンストップでサポートする仕事に面白みを感じました」と語る。
実際、入社してみて感じる、仕事のやりがいとは?
グローバルを舞台に、よりスケールの大きな輸送案件を担当することができる。そこが大きなやりがいになっています。
現在私が管轄しているのは、日系大手メーカーの日本から各海外拠点に向けた輸送に関わる全般なのですが、最初はその案件の規模感には圧倒されました。
というのも、クライアントはアメリカ、ヨーロッパ、中国、東南アジアなど世界中に拠点を持っているため、サプライチェーンをひも解くだけでもかなりの時間を要します。荷量で言えば、1社単体で、前職時代に担当をしていた全案件の数倍に上ります。私が担当しているのは1社とはいえ、この物流がもしストップしてしまえば、日本そして世界の経済にも少なからず影響を及ぼしてしまう、そういった緊張感があります。
そして、これまでのキャリアではそのような規模感の案件を担当したことはないので、昨年初めて入札するときは、まさに手に汗を握る体験でした。関係各所と相談し、〆切ギリギリまで入念に確認を重ねました。結果的に拡販こそならなかったものの、何とか上司からも合格点をもらえる形で入札を終え、無事、2024年の安定的な取引基盤をつくることに貢献できました。プレッシャーはかなり大きかったため、終わったときは一気に肩の荷がおりてすぐに2日間の有休をとりましたね(笑)。
また、案件が走り始めてからは、クライアントのあらゆるニーズにお応えしていきます。具体的な要望としては、「積載効率をもっと上げたい」「輸送ルート・コストの新たな提案をして欲しい」「サプライチェーンを可視化したい」など多岐にわたります。
そこに対し、「A国であれば保税制度が受けられる。B国向けであれば、出荷日を前倒しすることで、輸送のトータルリードタイムを短縮できます」といった提案をしていく。世界中に拠点を構え各国のノウハウを蓄積している近鉄エクスプレスだからこそ、頼りにしていただけているのかなと感じています。前職と比べると任される範囲が広がり、視野も広がりましたね。
同時に、以前よりも中長期先を見据えた「戦略的思考」も身についてきたように思います。たとえば、クライアントとの対話のなかで「このエリアでサプライチェーンを構築しておけば将来的にはクライアントのビジネス拡大につながるのでは」と嗅覚を働かせていく。顧客に提案を行なうなかでは、社内戦略として短絡的に星取をするのではなく、”今は物量が少なくても、将来的に伸びる地域だからターゲットにしよう”など単年ではなく2年、3年後など先を見据えて物事を考えるようになりました。様々な新規提案から新たな成功事例をつくることができれば、クライアントはもちろん、近鉄エクスプレスとしても知見を蓄積でき、他案件にも横展開していけるかもしれない。まだ未熟ではありますが、以前よりも解像度高くビジョンを描くことができるようになってきたことで、また別の面白さが生まれてきました。
そして年内には、入社後初となる海外出張を控えているという。今の心境を話してくれた。
現在、顧客の東南アジアにある拠点を回る計画が進んでいます。拠点は東南アジア以外にも存在しているので、今後は北米、中国、ヨーロッパ等世界各国に飛び回る予定です。実は、前職時代はコロナ禍も重なり、海外出張に行く機会には恵まれなかったため、国際物流の仕事を始めてから実質初の海外出張となります。
「海外に関わる仕事をしたい」とこの世界に飛び込んだとはいえ、正直なところ、楽しみと不安が入り混じったような心境です。1度の出張で、クライアントの日本本社の意向を現地法人・協力会社に伝え、濃度の高い情報提供・提案をしていく。加えて、最新情報を仕入れ、日本に持ち帰らなければならない。クライアントのビジネスの星取表が大きく変わる可能性もある大事な局面。プレッシャーはあります。ただ、案件をリーディングしていく立場として、より自分の存在感を発揮していけるチャンスでもある。そう自分を奮い立たせ、気を引き締めて頑張っていきたいです。
仕事の厳しさについては「外部要因に左右されやすい点」を挙げてくれた。「物流業界の市況は、コロナ禍の収束とともに一時落ち着いたかに見えましたが、その後もあらゆる問題が発生し、大きくサプライチェーンを動かさなければいけない状況に見舞われています。たとえば、ヨーロッパ地域では、イスラエルのガザ区の紛争によって物理的に船が通れなくなっていたり、アメリカでは2023年の記録的な干ばつでパナマ運河が水不足になり通航隻数の制限を余儀なくされていたりする。そうしたなかでも、クライアントとしては物流を止めるわけにはいかないため、スピーディーな代替策の提案が求められます。どこまでクライアントの期待に応えられるか。正直ヒヤリとしたシーンは一度や二度ではありません。直近で言えば、2025年にトランプ大統領就任に伴い、追加関税が発表されました。顧客から見れば、製品価格への影響が避けられない。となれば、他の調達拠点へ切り替える必要なども出てくる可能性が想定されます。我々としても要望に合わせて、適切な物流プランの提案を続けていきたいと思っています」
太安さんの転職前後での働きがいの変化を示すグラフ。
最後に伺ったのは、今後の目標について。
目先で言えば、入社当初にご期待いただいたミッションを確実に果たしていきたいです。
まずは、向き合っているクライアントのビジネスの維持・拡大に貢献すること。現在、我々が任せていただいているのは部品輸送ですが、まだまだ拡販の余地があります。たとえば、日本で作った部品を海外の工場に届け、海外で販売用に完成品を組み上げ、 海外現地で販売するなら海外現地輸送、他の国に展開される時は完成品の海外輸送が発生します。1つでも多くの輸送に近鉄エクスプレスが介入し、存在感を示していければと思います。そして、そこで得た知見を同僚・後輩にも展開していけるような仕組みづくりなどを通じ、会社組織全体の発展に貢献していきたいと考えています。
また、中長期で言えば、多様な部署で経験を積み、あらゆる視点から物流に携わり幅を広げていきたいです。私自身は、もともと好奇心旺盛なタイプ。まだ何か1つにテーマを絞るのではなく、幅広くインプットしていきたい。たとえば、現在メインで携わっている海外への輸送だけでなく国内輸送にも興味がありますし、物流業界全体として注目される「環境に配慮したサステナブルな輸送方法」の模索にも興味があります。有難いことに近鉄エクスプレスにはさまざまな部門があり、選択肢が豊富な環境。この環境を最大限に活用し、一通り経験したうえで将来的に専門領域を決められたらな、と。これからも1つでも多くの成功体験をつくり、クライアントの満足度を高めていける存在になっていきたいです。