掲載日:2025/03/11更新日:2025/03/11
求人掲載中
農林水産省(以下、農水省)による「総合職」募集にあたり、大臣官房広報評価課にて働く高野 馨太さん(31)を取材した。もともと新聞・雑誌の記者として働いていた高野さん。なぜ彼は農水省への入省を決めたのか。そこには「農林水産業に携わり、日本経済の発展に貢献していきたい」という思いがあった――。
記者としてのめり込んだ「農業」の世界
もともと新聞・雑誌の記者として働いていた高野さん。そもそもなぜ「農業」に興味を持ったのか。まずはそのきっかけから話を聞くことができた。
最初のきっかけは、新卒入社した新聞社にて、主にコモディティ全般の価格動向などを取材する部署に配属され、野菜や果物、花、米など農林水産物を担当したことでした。当時は農水省内にある記者クラブにも所属していましたね。その後、キャベツやこんにゃくなどの生産が盛んな群馬県内の支局への転勤を経験し、農業に関する取材経験を積み重ねていくなかで、どんどんその世界にのめり込んでいきました。ただ、記者としてキャリアを築く上で、新聞社にいる限り農林水産業中心に担当し続けることは難しい。そこで、興味のあるテーマに手を挙げやすいと考え雑誌への転職を決めました。
高野さんは「農業」のどういった点に惹きつけられたのだろう。
「農業」と一括りにされがちですが、米、トマト、いちご、りんご、ネギ、キャベツ…品目ごとに個性があり、それぞれの「世界」が広がっていますよね。川上から川下に至るまで、需給や技術の動向など、あらゆる要因が複雑に絡み合っており、課題もさまざまです。その「多様性」と「奥深さ」に惹かれるものがありました。
同時に、さまざまな取材を通じ、農林水産業全体が抱える課題についても考える機会が多くなっていきました。例えば、農地の集約化などを促す「地域計画」の策定を通じ、いかに生産性の高い農業につなげられるか。農地利用に関する課題を解決することで、新たなビジネスが生まれていく可能性を感じました。市場のニーズに合わせて生産体制を変えていくことができれば、地方創生と日本経済の発展につなげることができる。
農林水産業にそういったポテンシャルを感じるなか、タイミングよく「AMBI(アンビ)」で目にしたのが農水省の総合職募集でした。必ずしも記者という職種にこだわる必要はないのかもしれない。これまでの経験を活かしつつ、日本経済の発展に少しでも貢献していきたい。そう考え、農水省を志望しました。
日本経済新聞社、東洋経済新報社での記者経験を経て、2024年6月に農水省に入省した高野さん。「農水省の選考説明会にて中途入省の大先輩から“これからの農水省の職員として求められるタイプ”の話があり、とても印象に残っています。」と振り返る。「それは、活躍できる職員像として、ビジョンや広い視野、柔軟性を持つ『国士型』、ステークホルダーとの調整に長けた『調整型』、高い事務処理能力を持つ『吏員型』の3つのタイプがいるという話でした。特に、これからどんどん農業のあり方が変わっていくなかで『国士型』の存在意義が高まっていくであろうと。その話を聞きながら、私自身、調整や事務処理能力では勝ち目はないかもしれませんが、これまで得てきた知見や発想、経験を活かし、『国士型』として価値を発揮していきたいと考えました。」
日本全国の「農業現場」への取材も。農水省での働きがい
こうして2024年6月に入省した高野さん。どのような業務を担当しているのだろう。
現在、大臣官房広報評価課企画班にて係長として働いています。課としては広報や食料・農業・農村白書(*1)、政策評価、文書管理などの領域を所掌しており、企画班はその取りまとめ役のようなポジションとなります。具体的には、国会や他の省庁、省内の他の課からの問い合わせや作業依頼、法令改正などへの対応、事務作業を担うことが多いです。
(*1)農水省では「食料・農業・農村白書」「食育白書」「森林・林業白書」「水産白書」を毎年作成している。農林水産業を取り巻く最近の動きを踏まえ、主要施策の取組状況や課題について、国民的な関心と理解を一層深めることを目的とする。
もう一つ、現場に行く機会を少しでも増やしたいと考え、自ら志願し、食料・農業・農村白書の取材・執筆も兼務しています。過去に兼務の前例はなかったそうですが、記者経験を活かせるだろうと担当させてもらえることになりました。例年、秋頃には白書の事例調査に関する出張が多くなるのですが、私も昨年(2024年)10月は毎週のように全国の都道府県に出張をしていましたね。
実際、どういった取材を行ったのか。具体例について、やりがいと併せて聞いた。
全国津々浦々、さまざまな事例の調査にいきました。例えば、自治体主導で、人手不足に悩む農家など、困りごとを抱えた市民と地域の手伝いをしたい人をマッチングし、地域の関係人口を増やす取り組み。「六次産業化」で成功した農業法人により、農村で起業を志す人にノウハウを教える有料スクールの取り組み。官民共同出資の第三セクターが旗振り役となり、農家の家に泊まる「農泊」を地域全体で活発化させ、地域振興につなげる取り組みなど、どの事例もとてもユニークで、今後の農林水産業や農山漁村の振興を考えるうえでの貴重なヒントが詰まっていると感じました。全国の他の地域でも参考になるはず、との思いを込めて、現在、令和6年度の食料・農業・農村白書を執筆しているところです。
こういった出張や現地取材、会議などを通じ、生産者や事業者の方々のお話を聞くことができる機会は、農水省での仕事でこそ得られているものです。また、日々の仕事においても農政に関する政策形成の過程を目の当たりにできますし、農林水産業をめぐる情勢についての知見を積み増し、専門性を高めていくことができます。ここは大きなやりがいになっていますね。
加えて、私自身は参加していないのですが、日本の農林水産物の良さや農林水産業、農山漁村の魅力を発信する「BUZZ MAFF」という農水省の公式YouTubeチャンネルがあり、兼務を希望する職員は、業務時間の2割を撮影や編集に使ってもよいとされています。こういった「やりたいこと」に挑戦しやすい制度や雰囲気はとてもありがたいです。
私自身、現在は大臣官房という個別の予算事業や施策をほとんど所管していないポジションにいますが、今後、事業や施策を所管するポジションに異動した際は、さまざまなことに挑戦していければと思っています。
やりがいの一方で知っておくべき「厳しさ」について「他の課や他の省庁との調整業務も多く、いわゆる“板挟み”になることもあります。」と高野さん。「パワーバランスを見つつ、どう筋を通すか、さまざまな配慮が求められる場面は少なくありません。置かれている状況を踏まえ、調整しながら推進していく力は求められる部分かもしれません。ただ、こうしたことは民間企業でも大なり小なり起こり得るものだと思います。」
農林水産業で、日本経済の発展に貢献を
最後に、高野さんが「仕事を通じて実現していきたいこと」とは――。
国際競争力のある農林水産業の創出を支援していきたいです。そして地域に雇用を生み、地方創生と日本経済の発展に貢献していく。それがこの仕事で実現していきたいことですね。この「日本経済の発展への貢献」は、もともと新卒で新聞記者になった頃からずっと変わっていない思いでもあります。私自身、大学には貸与型の奨学金で進学し、その返済に苦労をした経験もありましたし、幼い頃から周りには経済的な理由で私以上に大変な思いをしている友人もいて、日本が経済的に豊かになっているという実感がないままに育ってきました。「このままだと日本は貧しくなるばかりで世界に置いていかれてしまう」という問題意識がありましたし、自然とそこに向き合っていきたいと思うようになりました。
同時に、私の中では民間で働くか、公務員として働くか、あまり大きな違いは無いようにも感じています。「仕事」とは、誰かの課題や悩みを解決していくもの。公務員も、民間企業も基本的には同じであるはず。その中でも国家公務員は、大きな視点で日本社会全体の課題解決に取り組むことができる立場にあります。いわば「国民に雇われている」という自負を持ち、社会全体に貢献していけるよう、これからも日々の仕事に向き合っていければと思います。