INTERVIEW
奈良県|総務部長 湯山壮一郎

奈良県が「CIO」等、デジタル人材を公募へ。DX推進で、奈良県をアップデートせよ。

掲載日:2022/04/28更新日:2022/04/28
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奈良県 デジタル人材の公募プロジェクトが開始へ。2022年3月に策定された「デジタル戦略」推進の中核メンバーを募集する。デジタル活用による県庁業務の効率化・生産性向上のみならず、ユーザーエクスペリエンス向上もそのミッションの一部となる。「単なるシステム開発にとどまらず、事業やサービス開発を担うなど、行政サービスの根幹となる政策運営そのものにも深く参画していただける」そう語ってくれたのが、奈良県 総務部長を務める湯山壮一郎さん(44)だ。奈良県におけるデジタル戦略、そのビジョンとは――。

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県民生活をアップデートしていく、奈良県のデジタル戦略

2022年度、奈良県 デジタル人材の公募プロジェクトがスタートした。

「今回は、2022年3月に奈良県で策定されたデジタル戦略の推進に取り組んでくださる方々の募集となります。単なるシステム導入に留まらず、事業そのものの開発、行政サービスの根幹となる政策運営に深く参画していただける。ここは、応募される方にとっても、一般的な外部人材の活用よりも非常に大きな仕事、そして貴重な機会となるのではないかと思っています」

こう語ってくれたのが、奈良県 総務部長を務める湯山壮一郎さん(44)だ。前職では財務省大臣官房企画官を務め、過去には政府でFinTech関連政策、仮想通貨関連法制の整備を主導してきた人物だ。

奈良県におけるデジタル戦略策定、その狙いは大きく2つある。

・地方行政における業務生産性の向上
・行政サービスにおける住民のユーザーエクスペリエンスの飛躍的な改善

「世の中のテクノロジー、社会経済情勢の変化を的確に捉え、奈良県庁を含め、行政全体をアップデートしていく必要がある」

こう力強く語ってくれた湯山さん。県民生活における問題の根本解決に向けた奈良県独自のデジタル戦略の概要、そしてその先に見据える未来とは――。

奈良01

奈良県 総務部長 湯山壮一郎(44)
平成14年財務省入省、主計局に配属となり予算編成業務に従事。その後、国際金融政策を担当した後、同21年総務省自治行政局行政課課長補佐として地方自治法改正等を担当。同23年、インド大使館一等書記官としてインドとの経済交渉や鉄道・電力等のプロジェクトファイナンス案件に参画。同26年金融庁に出向し、FinTech関連政策や世界初となる仮想通貨関連法の整備を主導。同29年財務省に戻り、理財局にて事業再編ファンドやスタートアップ支援政策の企画に従事。令和元年主計局の公共事業総括主査に着任し、国の公共事業予算全体のとりまとめを担当。同2年財務省理財局総務課政策調整室長、同3年財務省大臣官房企画官の後、同年7月より現職。

行政サービスでも「Amazon」並のユーザー体験を

奈良県で2022年3月に取りまとめられた「デジタル戦略」。その策定の背景には、大きな危機感と問題意識があると湯山さんは言う。

「世界的にもデジタル活用が加速するなか、未だに行政サービスでは電話や紙、FAX等の対応も多く、非常に遅れていると認識しています。まずは、DXの前にその業務のあり方そのものの見直し、GX(ガバメントトランスフォーメーション)を進めることが前提。そして具体的な実効策としてデジタルツールを活用していく。とくに民間企業ではデジタル活用により、飛躍的に業務効率や生産性を向上させています。労働力減少が喫緊の課題としてあるなか、奈良県でも強力にデジタル活用を推進していく考えです」

もう一つ、「ユーザーエクスペリエンスの飛躍的な改善」も、デジタル戦略によって実現していきたい部分だという。

「たとえば、Amazonで買い物をする時、【今すぐ買う】を1スライドするだけで決済ができ、配送状況までトラッキングができますよね。一般の生活者のみなさんはこれらの体験を当たり前に行っています。ですが、地方自治体のサービスはどうでしょう。未だに来庁しなければならない手続きも多く、あまりに面倒です。民間では顧客情報を総合的に把握して、手続き面での「摩擦係数」ゼロ化を目指している。他方、行政はというと、住民の課題は複合的なのに、対応は縦割りで、そもそも担当者自身も相対している住民の方の状況を全体としてはわかっていない。こういった部分を改革していく必要があると考えています」

こういった課題にどう取り組むのか。大きな方向性として掲げているのが「サービスの統合化」だ。

「たとえば、民間サービスに行政事務を組み込む「組み込み型」のプロセスを構築していこうとしています。日々活用しているオンラインショッピング、銀行取引などの民間サービスのプロセスの中に、行政サービス自体を組み込んでいく。当然、行政の部署間でも統合化していける。一例ですが、公共事業の入札に参加する時に納税証明書が必要となるのですが、建設会社の経営者は仕事の時間を削り、納税証明書発行のために来庁してくださっています。ですが、これは納税額などのデータが入札を管理する部署のシステムに飛ばせば済む話です。そうすれば発行にかかる職員の事務業務も軽減できます」

※より詳細なプロジェクト事例は記事下に記載。ぜひご応募時には併せてご確認ください。

シングルペアレント支援に見る「縦割り」の問題点

民間サービスや異なる部署間において「サービスの統合化」を進めていく。そのなかで大きな課題となるのが「縦割り」だ。

「たとえば、幼いお子さんがいるシングルペアレントのお母さんがいて、保育園の入園申請を市役所に行くと窓口で「就業証明書が必要」と言われてしまう。離職中であれば、慌てて仕事を探すことになります。しかし、ハローワークを通じて面接した企業からは「勤務できる時間を把握したいので、お子さんの保育園が決まってから来てほしい」と言われてしまうケースもあります。また、生活資金、仕事に困っている方、疾患を抱えている方も多くいる。そういった状況のなか住宅、生活保護、医療、保育など各手当を申請し、さらに仕事も探しながら、子育ても行う。非常に困難な状況に陥ってしまうケースは少なくありません。なぜ、こういったことが起こるのか。それは、それぞれの部署が「縦割り」で対応しているため、支援を必要としている人の状況について、誰も総合的に把握できていないからです。こういった問題は何としても解決したい。そのためにもデジタル戦略が非常に重要だと捉えています」

強い組織となるための「多様性」と「オープネス」を

続いて伺えたのが、行政組織に対する問題意識について。湯山さんは「多様性」と「オープネス」をキーワードに挙げる。

「私自身、国の行政機関でも働いてきましたが、行政全体の課題は、状況認識がなかなかアップデートされないこと。世の中がこれだけ進捗している、その状況認識を的確に行うことがスタート地点だと思います。そのためにはまず人や組織面でオープンになる。今回の公募、外部人材登用もまさにその一環です。加えて、民間の方々、コミュニティとも連携していく。デジタルに限らず、あらゆる行政分野において社会的な責任感、使命感を持ち、チャレンジしている民間の方々と深くつながっていくべきですし、それらを推し進めていく考えです」

そういった「オープネス」と同時に重要になるのが「ダイバーシティ=多様性」だ。

「労働力人口の減少、担い手不足が深刻となるなか、多様な人材を登用していく必要性を強く感じています。同時に、子育てをしたり、親の介護をしたり、ご自身が疾患を持つ方でも、その能力を最大限発揮していただけるよう職場環境の整備を行っていく。社会経済情勢がこれだけ目まぐるしく変化する中、似たような人間が集まる組織は非常に脆弱です。様々なバックグラウンド、考え方、知識、知恵、アプローチを持つ方々が組織内に混在している状況こそ、組織の競争力、生産性を高めていけるはずです。そのためにも、役所の仕事の環境を民間での常識に寄せていく、業務環境の面で官民の段差を最小化していくことも課題だと思っています」

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金融庁にも3年ほど在籍し、FinTech関連政策、仮想通貨関連法案の立案などに携わってきた湯山さん(写真右)「金融機関の法律改正等に携わるなか、FinTechに関連する500社以上のベンチャー企業と関わりを持ってきました。スタートアップの経営者の方々はたいてい多忙なので、「朝食一緒に食べませんか」とお声がけして、毎朝のようにビュッフェにお誘いしたりしていました。また、インド駐在時も金融機関や商社の方など民間の企業経営者と接する機会も。そういった経験を通じ、デジタルに限らず、民間の活力が極めて重要、尊いと肌で感じることができました。だからこそ、奈良県の財政運営の基本方針の中でも「民間活力を充分に活用する方向性」はかなり強く打ち出しています」

事業開発・政策運営の根幹にまで踏み込んでいく経験を

国の行政機関でも働いてきた湯山さん。自身の経験も踏まえ、奈良県のデジタル戦略に携わることで感じられるやりがい、そして得られる経験について伺えた。

「奈良県で取り組むデジタル戦略は、行政サービスのトランスフォーメーションそのものに踏み込む業務内容となります。単なるシステム開発・導入に留まりません。たとえば、事業そのものの開発、行政の政策運営の根幹に深く参画していただけます。先程の民間サービスと連携する「組み込み型のアプローチ」は自治体でも先駆けとなるはず。プライベートセクターとパブリックセクターの新たな交わり方、あるいは行政の新しい在り方にチャレンジしていける。ここは奈良県のデジタル戦略に携わるからこそ得られるもの。また、今回募集する職種は、それぞれプロジェクトのリーダーとなっていただく方です。上には県庁の幹部が数人いるのみ。ご自身の提案が奈良県の政策に直結していく。規模が大きな自治体や国の場合だとプロセスも煩雑化し、ステークホルダーも多い。ですが、奈良県の場合、ほどよい規模感がありつつ、打ち手に対するインパクトも大きい。そして比較的シンプルに意思決定がされるので、リーダーシップを存分に発揮していただける環境です。一方で、デジタル戦略を推進する上で求められている目標水準は非常に高く、チャレンジングな仕事と言えます。このあたりはぜひ熱意と粘り強さを発揮いただき、活躍いただきたいと思います」

一人でも多くの人が、いきいきと楽しく暮らせる社会へ

そして取材の最後に伺えたのが、湯山さん自身のアンビション=志について。

「子どもの頃からなのですが、地元の町で通勤帰りのサラリーマンを見て、日本人みんながもう少しだけ、その目をいきいきと輝かせて生きていけないか。そういったことを漠然と感じていたように思います。もちろん当時は「社会」や「国家」といった認識はありませんでした。ただ、少なくとも同じ土地で暮らしている人たちが、楽しく笑って生活できる、そんな状況を持続的に作ることが大切だろうと考えていました。裏を返せば、どこかに活力や将来への希望を充分に持つことができない社会になっているのではないかという問題意識があったのだと思います。そこをどうにかしていきたい。そして経済分野に関心があり、財務省への就職を選びました。働くなかでも感じたことですが、旧来からのやり方、ルール、仕組みを変革していかないと社会全体の変革にはつながっていかない。国レベル、地域レベル、それぞれで意味のないルールや、非効率を見直し、オープンで多様な社会を作っていく。ここはまさに奈良県庁のビジョンにも投影されている部分だと思います。そして、あらゆる人たちが、その人なりのアンビションを持ち、何か自分の目標にチャレンジしていってほしい。奈良県での取り組みはまだ始まったばかりですが、その積み重ねは、私が子どもの頃に夢見た社会、国の発展にも貢献していける。そういった未来につながっていくと信じています」

【詳細なプロジェクト事例はこちら】

■感染者管理・濃厚接触者管理のクラウドデータベース構築
コロナ禍における保健所の業務問題を解決した事例。従来の電話・紙・FAXによる管理では「字が潰れて読めない」「情報が正確ではない」などトラブルが多発しており、感染者状況の確認・照合に数時間かかることも。ExcelやAccessは一部使われていたものの、数人しか同時作業ができないなどネックも多かった。結果として、「保健所に電話がつながらない」との批判が殺到する事態に。そこでセールスフォース、デロイトと連携してクラウドサービスを導入。感染者管理・濃厚接触者管理のデータベースを刷新し、数十万人分の感染データをクラウドで一元管理できる体制を2ヶ月というスピードで構築した。

さらに現在は、医療機関どうしや、福祉施設との間における情報連携プロジェクトも推進。電子カルテ、診断内容、検査情報など各施設のデータをクラウドで連携させていく計画。まずは奈良県立系の病院で統一システムを導入することで、それまで数十億円かかっていた更新費用の大幅削減を図る。さらには周辺地域の民間診療所にもクラウドサービスを導入し、相互連携を促すプロジェクトも進行している。今後は病院の状況、医師の勤務状態といった情報を救急搬送時の救急車に受け渡す、といった連携の構想もある。

■奈良スーパーアプリ構想
デジタル戦略のビジョンを実現していくためのプロジェクト。現在、さまざまな行政サービスが県庁だけでも百数十個のシステムで課室ごとに独立して運用されている状況とのこと。このデータを連携し、縦割り体制を解消。住民情報の統合、サービスの統合を図り、総合的で一体的な住民サービスを提供するための情報基盤を作成する。

さらにその情報基盤は行政側だけではなく、民間企業、特に金融機関等と連携して作っていく。金融機関のデジタルサービスの中に行政サービスを組み込んでいく形で設計。システムのグランドデザインは令和4年度中に民間の有識者、関係者とも連携しながら構築する。

■民間企業のDX推進
金融機関や民間企業と連携してシステムを作るだけでなく、民間企業そのもののDXも推進していく。たとえば、県内事業者に対して、オンライン販売の推進支援などを実施。単に楽天やAmazonに商品をアップロードしてもらうだけでなく、オンライン市場に即した商品のブラッシュアップや、流通・決済なども含めた経営戦略全体の再考についてもコンサルタントが支援する。こうした総合的な意味での事業者のDXを、経営コンサルティングや販売・決済などに知見を有する金融機関と一体となって推進していく考え。

※湯山さんによると、銀行のDX推進における最大のボトルネックの一つは「取引先企業のDX」だという。銀行がDXを志向しても、取引先が変わらないままだと変化は起こらない。インターネットバンキングの推進など、一般企業のDXを進めることは行政や金融機関のDXにおいても非常に意義があるとのこと。

■日本随一の「雇用予定型リカレント教育」の実現
従来の職業訓練はいわば「打率の低い職業訓練」だと語ってくれた湯山さん。雇用先でどういう能力が求められるかを具体的に見極めることなく「一般的にこういう能力が、人気があるのではないか」という発想で会計やビジネスマナー、Word・Excelの使い方などを教える。その職業訓練が終わった後に、ハローワークで仕事を探す。このフローが非効率だと考えている。

理想としているのは、従来のフローを逆転させた職業訓練。各企業からあらかじめ「こういう能力のある人が欲しい」といった人材要件を出してもらい、それに必要な能力開発を行っていくフロー。スキル開発がムダになる可能性を最小化できる。こうした「オーダーメイド型の人材開発」「雇用予定型のリカレント教育」を、オンラインのデジタル教育プラットフォームを使って展開していく。

■奈良の土地のものBtoCプラットフォーム
食と農の収益力向上とにぎわいづくりを目的とした、生産者と消費者をつなぐオンラインプラットフォーム。たとえば「古墳のすぐ横で育ったいちじく」「日本酒の発祥の地となった神社」「古代からあるチーズ」など、食品や農産物に関わる文化的・歴史的なストーリーを発信していく。従来の「市場から複数の卸売事業者を経て消費者に届く」という流通フローがディスラプトされつつある中で、奈良のコアコンピタンスである「文化的/歴史的story」を活かしながら生産者と消費者を直接つなげ、リレーションを強化していく狙い。

将来的にはサブスクリプション型のサービスとして、商品が各家庭やレストランに定期的に届くようなものも構想している。さらには生産現場を見に行ったり、自分で農作業を体験できたり、その地元の農産品を作ったレストランに訪問する、といった体験機会も提供。生産者と消費者の距離を近づけ、交流機会を増やすことで、移住の促進などにもつなげていこうと考えている。

■民間企業と同レベル以上の職場環境整備
民間出身者が存分に能力を発揮できるよう、できるだけ民間企業と対等な競争条件での執務環境・文化を導入していく取り組みを今年度から始める考え。パソコンの端末仕様などのハード面から、コミュニケーションのとり方などのカルチャーまで含めた職場環境を改善していく。

たとえば、実は全国のほとんどの自治体では一般的なインターネットが使えず、LGWAN(Local Government Wide Area Network/総合行政ネットワーク)と呼ばれる独自の行政専用ネットワークの中で仕事をしている。これは民間出身者にとっては大きなネック。しかし奈良県のデジタル戦略においては、今後数年以内に完全にインターネットに移行することが明確に決定されている。庁内の閉じた環境ではなく、グローバルのインターネットと接続しながら勤務できるため、より効率よくDXを推進していくことが可能。

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