多様な人、そしてモノを惹きつける「躍動する兵庫」へ。2021年、兵庫県の新県知事となった齋藤元彦知事(当時43歳)のもと、新たな施策・プロジェクトに取り組む兵庫県。さらなる県政推進に向け、副業ポジション8職種を含む10職種「民間人材」公募プロジェクトを開始した。これだけ大規模な公募は同県初となる。なぜ公募を行うのか。どういった人材を求め、どのような活躍を期待しているのか。総務部長、小橋浩一さんに伺った。
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・情報セキュリティ専門官
・デジタル推進専門官
・執務環境アドバイザー
・デジタル化推進員
・ユニバーサルツーリズム推進アドバイザー
・アニメツーリズム推進アドバイザー
・オープンイノベーションアドバイザー
・空港利用促進アドバイザー
・県営住宅団地再生アドバイザー
・空き家改修アドバイザー
いかに「HYOGO」のブランド力を高め、国内外から人・モノ・投資・情報を惹きつけていくか――2021年8月、新県知事となった齋藤元彦知事(当時43歳)のもと、新たな挑戦が湧き上がる土壌づくり、「躍動する兵庫」を目指す兵庫県。
今まさに新しい事業、施策に対する取り組みを加速させているなか、同県初となる大規模な「民間人材」公募プロジェクトを開始。副業ポジション8職種を含む10職種で専門人材を募る。
なぜ、今回の公募に至ったのか。どういった取り組み・施策に参画する人材を求めているのか。そして期待することとは。総務部長、小橋浩一さんに伺った。
人口規模は国内7位、年間8500万人以上の観光客が訪れる兵庫県。2021年8月、齋藤元彦知事(当時43歳)が新県知事となり、20年ぶりの知事の交代となった。若き新知事のもと、現場の声を迅速かつ的確に政策へとつなげるボトムアップ型の県政を推進している。
まず小橋さんに伺えたのが、今回の公募プロジェクト実施の背景について。そこには、行政に多様な「考え」と「行動」を取り入れていきたい意図があるという。
「2021年8月、齋藤元彦知事が新たな知事となり、多様性を受け入れ、県政を進めていく大きな方針が掲げられています。まさに県政の変わり目でもあり、今回の公募もその一環となります。いかに県が抱える多岐にわたる課題に対応していくか。行政としてどのように仕事を進めていくか。こういった部分が問われるなか、これまでの行政、いわゆる公務員的な発想だけではなく、民間の考えや行動を積極的に取り入れていきたい考えです。例えば、行政として不得手なのは業務の効率化やテクノロジーの活用、広報、プロモーションなど。ぜひこういった領域で民間出身の方々の意見、発想を取り入れたいですし、既存の県職員も多くを学ぶ機会になっていくと考えています。世の中的にも副業や兼業で活躍されている専門人材の方々が多くいるなか、その知見やノウハウを兵庫県でも活かしていければと今回の公募に至りました」
総務部長 小橋浩一さん
今回の公募を行うポジションは、兵庫県として現在取り組みを強化している施策と重なるものだと小橋さんは語る。
「たとえば、情報セキュリティやデジタル化は県庁内の重要テーマの一つです。クラウド導入、デジタル化によって職員の働き方改革や業務効率向上、さらに申請業務など県民サービスの向上にもつなげたい考えです。ぜひ専門的なアドバイスをくださる方を求めています。デジタル化でいえば、広域自治体として県が主導しながら市町村と連携を進める役割を担うケースもあり、やりがいになるはずです」
さらに強化している施策の一つが、観光・ツーリズム関連だという。
「もう一つ、観光・ツーリズム関連でいえば県独自のいわゆる“尖った観光”を強化しています。2022年・2023年もJRとタイアップした「兵庫デスティネーションキャンペーン*」を実施しているところでもあります。その他、今回の募集にも「アニメツーリズム」は人気アニメの聖地巡礼をはじめ、コンテンツとして磨き上げているところです」
*兵庫県内の自治体と観光事業者、JRグループ6社や旅行会社が一体となって行う大型観光キャンペーン。2022年のプレキャンペーンを経て、2023年7月1日~9月30日にて開催を予定している。
そして、2024年には『神戸2024 世界パラ陸上競技選手権大会』、2025年には『大阪・関西万博』開催も控えている。
「世界パラ陸上や万博があるからというわけではありませんが、ユニバーサルツーリズム*推進における条例に関しては、全国的にも先駆けとなりました。これも齋藤知事が視察などを通じ、障害者の方、高齢者の方々が自由に旅行できない課題を目の当たりにし、検討会を立ち上げたことがきっかけとなりました。世界パラ陸上でいえば、当然、多くの選手たちやスタッフ、観客が各国からやってきます。この条例がうまく機能し、快適に過ごすことにもつながるかもしれません」
*「ユニバーサルツーリズム(UT)」…年齢や障害の有無等にかかわらず、様々な方が気兼ねなく参加できる旅行を指す。兵庫県では全国で先駆けて推進に向けた条例を制定。積極的に取り組む宿泊施設を後押しするため、2023年度に登録制度を設け、一定の要件を満たせば、バリアフリー化の改修工事に最大1800万円を補助するなど支援するとしている。
さらに、若者の活躍を広げるためのスタートアップ支援を行う「オープンイノベーションアドバイザー」や、高いポテンシャルをもつ大阪湾ベイエリアの活性化・コウノトリ但馬空港における「空港利用促進アドバイザー」、空き家の有効活用を担う「空き家改修アドバイザー」や「県営住宅団地再生アドバイザー」など、いずれも新たな成長の原動力となるポジションで募集が行われるという。
空港利用促進(左上)、アニメツーリズム(右上)、ユニバーサルツーリズム(左下)、オープンイノベーション推進※起業プラザひょうご神戸エントランス(右下)など、いずれも兵庫県における新たな成長の原動力となるポジションで募集となる。
多くの行政による民間人材の公募が活発に行われるなか、「兵庫県」で働く魅力、やりがいはどういったところになるのか。まず小橋さんが挙げてくれたのが独自の「地域特性」だ。
「兵庫県が非常にユニークなのは、摂津・播磨・但馬・丹波・淡路という、歴史も風土も異なる個性豊かな「五国」からなる県であるということです。それぞれの特性もありますし、多様性が感じられるフィールドと言えます。一つの県でありながら、5つのエリアにまたがる経験を積むことができます。関西、瀬戸内海との結びつきによって得られる情報、人脈、経験もあるでしょう。さらに大阪・関西万博に向けたダイナミックな動きも今後増えていきます。これだけ多様な知見や経験が得られる場所はそう多くないはずです。どういった職種、プロジェクトに携わっていただくとしても、全国的に見て非常に働きがいがある広域自治体の一つだと自負しています」
そして何よりのやりがいとなるのが、新知事のもと変革を担う民間人材「一期生」になれるという部分だ。
「知事が変わり、発想はもちろん、仕事のやり方も大きく変わっているところです。その中核の一員になっていただければと考えています。実際、県庁内でも組織風土含めて大きく変化していると感じています。例えば、知事と直接面談できる機会が非常に多くなったことや、若手職員の意見がより反映されるようになったこともその一例です。こういった変化の時期ですので、新たな発想が取り入れられやすいと言えます。今回加わっていただく方ご自身が一つひとつの施策を作り上げ、そして県のイノベーション、進化に貢献していくことができる。きっとご自身のキャリアにとってもかけがえのない経験が得られるはずです」
続いて伺えたのが、今回入庁する方に対する期待について。
「おそらく多くの方は、公務員や行政の仕事は「固い」「厳格である」といった印象をお持ちだと思います。実際、入庁いただき、もしそう感じる場面があれば、ぜひ柔軟な発想で私たちに教えていただきたい。民間での発想や方法を県庁に移植していただきたいと考えています。私たちとしても、そういった役割を期待していますので、あまり「厳格でなければならない」と考えず、「今の職場でやっていることを兵庫県庁でもやるだけ」といった意識で来ていただければと思います。そして県職員たちともいい形で融合し、刺激を与えていただけることを期待しています。私自身、県庁内で職員の人事や働き方に一貫して携わってきましたので、ぜひ意見をいただきながら、取り入れていきたい。快適に仕事をしていける環境をどう整えていけるか。ここは私の役割だと考えています」
最後に伺えたのが、求められる資質について。小橋さんからのメッセージと共に紹介していこう。
「どういったご経験を活かしていただけるか。多岐にわたるステークホルダーと調整いただけるコミュニケーション能力をお持ちか。こういったところは選考における重要なポイントだと考えています。ただ、それ以上に重要だと考えているのが、どれだけの熱量を持ってこの職に臨もうとされているか。県の課題に対し、どこまで真剣に取り組めるか。私たちは行政課題に対し、しっかり答えを出していかなければならない立場にありますので、何よりもそういった部分を重視したいと考えています。ただ、裏を返せば、重要な課題に対し、正面から向き合っていただける環境でもあります。今回の公募、そして今後の取り組みを通じ、兵庫県が大きく変わっていく姿としても、県民の皆さまに示せると考えています。現在、県庁の中でも職員向けに「失敗を恐れず挑戦をしていこう」と発信がなされていますので、ぜひ今回入庁される方も兵庫県庁というフィールドで失敗を恐れず、活躍していただければと思います」