INTERVIEW
PoliPoli

政治・行政に「新しい仕組み」を。政策共創プラットフォーム運営「PoliPoli」の挑戦

国会議員や行政機関に意見を届けられる政策共創プラットフォームを運営する株式会社PoliPoli。複数事業を仕掛けるコンパウンド(複合)スタートアップとして、2022年5月、2023年2月に資金調達を実施し、採用含め、事業成長へのアクセルを踏む。彼らの描く政治・行政の「新しい仕組み」とは。PoliPoli社の代表取締役・伊藤和真さんにお話を伺った。

政治・行政に「声」を届けよう。政策を「共創」しよう。

まずはPoliPoliが手掛ける事業について伺わせてください。

国会議員、行政機関に意見を届けられる政策共創プラットフォームの運営を主軸に、「政策共創」につながる事業を総合的に推進しています。

政策共創プラットフォームとしては、政治家に声を届けるウェブサイト『PoliPoli』と行政に声を届けるウェブサイト『PoliPoli Gov』を展開しています。この二つは政策づくりのプロセスの中でざっくばらんに意見を募り、政治や行政と「政策共創」することをコンセプトにしたウェブサイトです。

サービスを作った背景は、既存の仕組みでは不十分な点があると考えているからです。例えば、行政機関においてはこれまでパブリックコメントなど国民から意見募集を行い、政策に反映させようとする試みは行われてきました。ただ課題として政策が出来上がってから「意見を募って終わり」になっていたケースも多くあった点が挙げられます。そうではなく、より早い前段階から「声」を届けられるのが特徴です。

『PoliPoli Gov』の強みは、信頼性を担保し、「政策として取り組みやすいデータ」として提供できること。年齢層・属性別に意見が可視化されますし、どういった政策提言・カテゴリーが賛同を集めているのか、政策に落とし込みやすい形で行政機関にレポートをお渡しします。行政機関としては「賛同が得られている」など政策を推進するエビデンスが得られ、「意見を取り入れた取り組み・政策」として打ち出すこともできます。

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「新しい政治・行政の仕組みをつくり続けることで世界中の人々の幸せな暮らしに貢献する。」を掲げるPoliPoli。2022年5月、2023年2月に資金調達を実施。現在、4事業を複合的に展開、プラットフォームとしてのシナジーによってビジネス・収益性でも成長を続ける。

1)PoliPoli/政治家が分かりやすく書いた政策から共感するものを見つけ、様々な手段で政策を実現するための応援ができるプラットフォーム。
2)PoliPoli Gov/行政からの相談や意見募集テーマに意見を届け、行政の政策をサポートできるプラットフォーム。
3)PoliPoli Enterprise/主に企業や団体に向け、政策立案・政策推進の文脈から、事業展開に障壁となる社会ルール変更・構築をサポートするサービス。
4)PolicyFund/社会課題の解決を加速させる寄付基金。

政治・行政にアプローチする「ルールメイキング」を支援

新サービス『PoliPoli Enterprise』についても伺わせてください。どういったサービスなのでしょうか?

企業やNPOなど団体向けのサービスなのですが、正しいロジック、正しい方法を用いて政治や行政にアプローチし「ルールメイキング*」をサポートしていくものです。例えば、クリエイターエコノミー協会の方々と、特定商取引法における政策提言を行ない、法解釈の変更につながった実績があります。

*「ルールメイキング」…規制や法律などのルール決めに関わり、社会全体の中長期的な利益を追求しながら、自社がビジネスなどの活動をしやすい事業環境を作りだすこと(PoliPoli社における定義)

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企業や団体が自分たちだけで提言書を出すなどの対応は、やはり難しいのでしょうか。

そうですね。多くのステークホルダーの意見を集めてまとめたり、検討会、勉強会を開いたり。場合によっては協会や団体の立ち上げも必要になります。さらに大切なのが、適切な議員、政策担当者とのマッチングです。もちろん、世論も大事になるので、ある種のPR活動も必要に…となると、本分となる事業活動があるなか、自分たちだけで行政に対して働きかけるのは非常に難易度が高い。上場企業でさえ、しっかりと政府に要望を伝えることは難しい。

ですので、『PoliPoli』や『PoliPoli Gov』を通じ、政策提言におけるノウハウや政治・行政とのネットワークを培ってきた強みを活かし、私たちが果たせる役割があると考えています。

社会が激しい変化を遂げるなか、様々なルールはどんどん古くなっていく。公益のために、NPOや企業、業界団体、財団法人などから、ルールメイキングに取り組みたいニーズも高まっています。

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「私たちがプラットフォームとして意識しているのが、政治的に中立的なサービスであること。黒子として、私たちが政策の優先順位を決めることはありません」と伊藤さん

コンパウンド(複合)スタートアップとしての成長戦略

「スタートアップは一つのプロダクトに集中したほうがいい」とも言われますが、あえて複数事業を展開しているのでしょうか。

そうですね。第一にそれぞれにシナジーがあること。また、『PoliPoli』や『PoliPoli Gov』などのプラットフォーム事業でいえば、やはり大きく収益を見込めるようになるまでに時間がかかる。マーケット自体もそこまで大きくない。なので、相乗的にビジネスを伸ばし、収益化を図っていく考えです。もちろんスタートアップとして多方面で事業を展開するのは想像以上に大変です。ただ、5年後、10年後に活きてくる、複利として返ってくる。ここは実感値として持っています。

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創業6年目を迎え、「公共政策コンサルタント」などのポジションにおいて、新たなメンバー募集を行うPoliPoli。代表である伊藤和真さんは、Forbesが選ぶ日本のルールメイカー30人の一人にも選出。株主にNTTドコモ・ベンチャーズ、KDDI Open Innovation Fund、ZVCなども名を連ねる。

民間発の取り組みからも、社会を変えていく

現在、4つの事業を展開していますが、それらのシナジーを含め、今後の構想について伺わせてください。

これまで政治・行政と国民をなめらかにつなげるプラットフォームをつくってきたのですが、さらにNPOをはじめ、民間の支援も行い、政策提言やルールのアップデートにつなげたいと考えています。近年、民間発の取り組みが、自治体や国などの行政機関を動かし、世の中の仕組みとして取り入れられるケースも増えています。小さな単位で実証し、新しいルールをつくる。それが日本全体の政策、ルールメイキング活動のレベルを上げていく。個人的にはこうした循環が作れると考えています。

例えば、「こども食堂」もNPOを通じて広まり、現在では「子供の居場所づくり」の施策として国や地方公共団体によって支援されるようになっていきました。こういった事例をもっと増やしたいです。というのも、どうしても政府主導の政策となると、予算規模も大きいですし、年単位でしか動けないのも事実。ただ、激しく変化する時代のなか、社会課題はさらに複雑化し、多様化していく。スピーディーな課題解決、セーフティーネットが社会には必要です。それを政府がすべて担うのは、限界がある。多くの企業、資本家の方による「公益のための活動」も広がりを見せており、資金を提供いただけるケースも増やし、先のような循環につなげていければと思います。

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「行政や政治家をはじめ、NPOや企業、業界団体、財団法人など、公益のための政策を進めたい方々から、お金をいただくモデル。政策づくりにおいて、両方の立場から意見を聞き、交通整理までを担う唯一無二のプラットフォームを展開していると考えています」と伊藤さん。働く上でも会社として非常におもしろいフェーズだと語る。「シリーズAでの調達を実施し、カオスでありながら、クライアントの獲得やサービスが上手くいきだしたタイミング。一人の影響範囲が大きく、自分の力で会社を大きくできるフェーズとも言えます。公共領域に興味のある方はもちろん、スタートアップとしてもおもしろい仕事がしたい方にも自信を持っておすすめできます」

いかに良い方向に「文化」をつくれたか。

最後に伊藤さん自身の「志」について伺わせてください。

今は「自分の意見が政策に反映されている」と思っている人が、本当に少ない状況です。内閣府の調査でおよそ7割が「反映されていない」と感じているとされています。ここは取り組むべき社会課題ですので、まず声を上げられるようにしていく。ただそれだけでは、なかなかルールを変えることは難しいので、社会背景からロジックを立てて説明し、一つひとつ変えていく。さまざまな方々と連携し、グローバルな政策課題に取り組む人、新たなルールづくりを担う人材を増やしたいと考えています。私たちはNPOや民間の方々から様々な提言をいただいており、ネットワークを持っている私たちだからこそ、できることだと思っています。

結局、私個人というよりも、会社として、社会をどう良い方向に動かしたか。ここに尽きる気がします。そのなかでも「新しい文化」を作っていきたい。

個人的にですが、「セゾングループ」を一代でつくりあげた経営者の堤清二さんを尊敬しており、「経営者の器は、売り上げをいかにつくったかではなく、その文化をいかに良い方向につくったかである」といった話があり、共感していて。「経済は文化のしもべ」という言葉がありますが、人々の価値観や文化により、消費活動などが生まれる。そこを良い方向にアップデートするために貢献する。それがやりたいことなのだと思います。

ただ、日々の仕事でいえば、そこまで難しく考えているわけではなく、「やりたいからやっている」というのが素直な気持ちでもあります。原体験としてあるのは、創業当初、徹夜でコードを書きながら「いつかこのサービスを市役所で使ってもらいたい」と仲間と話をしていた日々だと思います。それが2022年に実際に叶って、本当にうれしかったんですよね。大変だったけど、夢は叶うんだと。なので、自分が好きだと思える人たちと一緒に夢を達成していきたい。個人としての人生を生きる意味は、そこにあるのかもしれない。私はミッションを達成するために全て賭ける覚悟ですし、これから入られる方とも同じ夢を一緒に叶えていければと思います。

PoliPoliが求める人物像・CEOからのメッセージ

政策をメインのテーマに扱う上で「変数」は無限にありますし、一見すると地道な作業の繰り返しも多いかと思います。例えば、政策をキャッチアップし、どういうステークホルダーが動いているのか。どういう政策提言の動きがあり、どうアプローチしにいくのか。日々勉強し、ブラッシュアップし続けることが求められます。それを地道に実行していく上でも「新しい政治・行政の仕組みをつくり続けることで世界中の人々の幸せな暮らしに貢献する。」というミッションに強く共感いただけける方を求めています。私たちも事業で様々なピボットをしてきましたが、このミッションは変えずに向き合い、強い思い入れを持っています。また、事業を拡大していくなかで、いまマネジメント層が不足している状態です。私自身、この2023年は4つの事業を見ながら、より成長させていく、そうした組織づくりに取り組む1年にしたい考えです。一緒に事業、そして組織づくりを担っていきたい方にもぜひチャレンジしていただきたいです。

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