INTERVIEW
PowerX|執行役 BESS事業(蓄電池販売事業)管掌 特別インタビュー

再エネを爆発的に普及させる。累計232億円調達、次世代エネルギーカンパニー「パワーエックス」の挑戦

掲載日:2024/05/30更新日:2024/05/31
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再生可能エネルギー(以下、再エネ)を爆発的に普及させる――この壮大なミッションを、今まさに驚くべきスピードで現実のものとしている「パワーエックス」。次世代エネルギーカンパニーとして、再エネ普及の鍵となる「ためる」「はこぶ」「つかう」横断的な事業を展開。累計約232.6億円の資金調達を行い、採用を本格強化へ。同社の強み、そして得られるキャリアとは。キーエンス(シンガポール現地法人Director)を経て「パワーエックス」に執行役として加わり、 BESS事業(蓄電池販売事業)管掌を担う中屋英美さんに伺った。

パワーエックスについて

前ZOZO取締役COOである伊藤正裕氏により、2021年3月に創業をしたパワーエックス。鍵本忠尚氏(ヘリオス代表)が取締役会長を務め、社外取締役には元テスラ幹部、元Google幹部、元ゴールドマン・サックス証券パートナーを迎えるなど世界展開を見据えたボードメンバーが結集。これまで再生可能エネルギーが抱えていた「ためられない」課題を、独自の蓄電池技術・システムで解決し、その爆発的普及を目指す。特に再エネにおける「ためる」「はこぶ」「つかう」の統合的なデザイン、一体型ソリューションを強みとする。

▼産業用大型・中型蓄電池の開発・製造・販売/ソリューション提供
用途に合わせた蓄電池製品の開発、自社工場での製造から販売まで一気通貫で実施。最大年間生産量3.9GWhの日本最大級の蓄電池モジュール工場「Power Base」を岡山県玉野市に建設へ。また、バッテリーを最適に充放電制御する独自の制御システムやパワーコンディショナーと組み合わせ、顧客の施設や系統に接続するエネルギーストレージシステム(ESS)を提供。蓄電池設計から制御システム開発まで一貫して行い、コストパフォーマンスに優れた自社開発製品&ソリューションを提供する。

▼ EVチャージステーションのサービス展開
国内最速級150kW対応の蓄電池型超急速EV充電器を使った「PowerXチャージステーション」を展開しています。再生可能エネルギーを活用し、非常用電源やエネルギーマネジメントにも対応。充電器設置や社用車のEV化による急速充電も提供する。

▼ 電気運搬船事業
海上パワーグリッド(完全子会社)では電気運搬船の開発・製造、その活用による海上送電事業が進められている。洋上風力や遠隔地で発電した電気を「船」で運ぶインフラ構築を掲げ、風力発電や太陽光発電などの自然エネルギーを蓄電池に貯め、船舶で運ぶというもの。現在、船の詳細仕様書の作成を進めており、2026年に出航予定となっている。

「再エネは、ためられない」という常識を壊す

産業用蓄電池の開発やEVステーション展開などで注目される「パワーエックス」。ただ、「それらはパワーエックスの事業の一部」と中屋さんは語る。その真意とは――。

よく「蓄電池メーカー」や「EVステーションの会社」のように捉えられることもあるのですが、それらはパワーエックスの事業の一部でしかありません。私たちは「次世代のエネルギーカンパニー」と表現しているのですが、蓄電池の開発・製造から蓄電池システムの販売・アフターサポート、さらには再エネの調達・供給まで一気通貫でサービスを提供していく。ここが最大の特徴であり、強みです。再エネにおいて「ためる」「はこぶ」「つかう」という3つを総合的にデザインし、横断的に手掛ける日本発のプレイヤーは私たちを除き、ほとんどいないといっていいと思います。

なぜ、他社は参入していないのか。中屋さんは「私なりの考えですが」と前置きをし、こう解説してくれた。

もちろん、参入できないことはないと思います。ただ、蓄電池開発一つとっても、大規模な設備投資が必要となり、時間もかかります。ましてパワーエックスが創業した2021年頃でいえば、兆しはあるものの、どこまで再エネが普及するか未知数。そういった新たな領域に対し、パワーエックスはスタートアップだからこそ既存の事業に縛られることなくリスクをとって挑戦をしています。その結果、蓄電池領域だけで見ても、独自技術と制御システム、高い価格競争力で優位性を築くことができています。また、日本最大級の蓄電池生産工場である「Power Base」も稼働しており、今まさに急激に高まる需要への対応を進めているところです。

今後、より普及が進んでいく再エネにおいて「蓄電池」がキーデバイスになることは間違いありません。というのも、これまで「再エネはためられない」という大きな課題がありました。例えば、日中に発電するソーラーエネルギーは、電力需要の高い夜間には供給できない一方、昼間は供給が需要を上回り、使われずに捨てられているのが実情です。この「再エネはためられない、安定供給できない」という状態が解消されれば、再エネの普及におけるインパクトは相当大きなものになります。

さらに私たちは、24時間の遠隔監視、メンテナンス、エネルギー使用量・再エネ利用率の可視化など「総合的なサービス事業者」としてエネルギーストレージシステム(ESS*)を提供しています。ここもビジネスモデル上、大きなアドバンテージです。

いわずもがな世界中でカーボンニュートラルへの取り組みは進んでおり、日本も例外でありません。パワーエックスの売上の大部分を占めるのも、じつはこの蓄電池事業です。一つひとつのプロジェクトが非常に大規模であり、その可能性は計り知れません。

(*)エネルギーストレージシステム(ESS)…バッテリーとパワーコンディショナーを組み合わせ、最適に充放電制御する蓄電池システムの総称。蓄電池設計から制御システム開発まで一貫して行い、コストパフォーマンスに優れた自社開発製品を提供。顧客に対して「オール PowerX」として価値提供を行う。さらに他のパワーコンディショナーメーカーとも連携し、柔軟にシステムを組み合わせた納品も可能。ソフトウェアもクラウド上でリアルタイムに制御と可視化を行い、顧客をサポートすることでビジネスインパクトの最大化に寄与する。

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2024年2月に発表された新たな産業用中型蓄電池「PowerX Cube 360」。店舗や施設でのピークカットによる電気代削減やBCP電源としての活用、さらには太陽光発電所に併設する用途でも使用可能な汎用性の高い製品。2024年9月から出荷開始を予定。安全で高性能な大型定置用蓄電池「Mega Power」に次ぐ中型蓄電池として全国普及を進めている。蓄電池工場「Power Base」で作られ、グローバルに実績のあるセルを採用し、低コストでかつ、ストレージパリティを実現。国際的な安全規格を遵守。高い安全性を確保している。

外資メーカーに、国内市場を奪われるわけにはいかない

国内では先駆けとなるパワーエックスだが、グローバルで見ればテスラや中国メーカーなど先行プレイヤーは多い。いかに彼らと戦っていくかが重要な視点になる。

定置用蓄電池の場合、多くの企業は依然としてパワーコンディショナーや蓄電池の開発・販売、制御システムやエネルギー管理などのソフトウェアなど分業されているケースがほとんどですし、一体型ソリューションは大きな差別化要因(付加価値)と言えます。まして再エネの供給、販売まで提供できるのは弊社しかおりません。ただ、グローバルで見れば、テスラのような企業は近しいビジネスモデルを採用しており、ソフトウェアを含めた一貫したシステム提供が特徴ですし、競合していく存在です。

そういったなか、まずは国内市場だと日本特有の事情に対応できるかが非常に重要です。例えば、非常に重量のある蓄電池をどう運搬・設置していくか。重量制限のある道路、地理的な制約をクリアしていく上で、省庁との連携が欠かせません。国内市場の道路事情や法規制に沿った製品展開が非常に重要となります。

その点、私たちは国産の蓄電池を担う存在としてもその価値を示し、外資メーカーにも勝っていくことができるはず。日本発の会社としてこれだけのチャレンジができる舞台はそう多くないですし、私自身もワクワクしています。日本の基幹産業に携わるものとして、今後、外資メーカーに国内市場を奪われるわけにはいかない。十分に戦える感触を得ていますし、受注を積み上げつつ、並行してグローバルを狙っていければと考えています。

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BESS事業(蓄電池販売事業)を管掌する中屋さん。同事業における提案先顧客について「事業会社様、そして電力会社様、再エネ事業者様がメインのお客様となります」と解説してくれた。「まず事業会社様でいえば電気代高騰を背景に、工場・物流センターなどで大型蓄電池に対するニーズが非常に高まっています。太陽光発電でつくった電気を蓄電池にため、自家消費することで電気代削減を図り再エネ率を向上させるというものです。もう一方の電力会社様・再エネ事業者様も重要な取引先です。再エネのための新たな発電所、蓄電所の建設プロジェクトで協業し、数十台単位で大型蓄電池を納品する計画も数多くあります。国の補助金もあり、今がまさに追い風となっているところ。この急激に高まる需要に迅速に対応していくための採用強化でもあります。」

なぜ、「パワーエックス」へ参画?

続いて伺えたのが、中屋さんご自身のキャリアについて。もともとキーエンスで働き、ドイツとシンガポールの現地法人で責任者を歴任してきた中屋さん。なぜ「パワーエックス」への参画を決めたのか。

これは今も揺るがない思いですが、やはり前職のB2B営業はその独自のノウハウ、仕組みで他社を圧倒していますし、その知見を活かし、現地法人の事業成長を担うのは、非常にやりがいがあり、満足感もありました。一方で「このまま同じ事業ドメインでの挑戦でいいのだろうか」という思いも。せっかくやるなら、次世代の飛躍的な成長が見込める業界に飛び込んでみたい。環境や社会に対してポジティブなインパクトが与えられる事業に挑戦したいと考えるようになりました。そういった中、転職サイトのスカウト経由で出会ったのがパワーエックスでした。ビジネスモデル、先見性、そして何よりもミッションに惹かれ、参画を決めました。

こうして「パワーエックス」へと参画した中屋さん。じつは前職の海外現地法人での仕事と、現在の事業立ち上げは共通する部分も多いという。

海外現地法人の仕事でいえば、組織運営ですので、営業、マーケティングはもちろん、人事、経理などの管理部門、物流…全てを経験してきました。特にキーエンスが強みとするのは、営業利益を最大化する仕組み・高度なKPI戦略です。それらを踏襲、最適化することで例え異なる商材でも、特にBtoB営業においては、確実に成果を上げていける。こういった点は活かせていますし、共通すると感じます。一方でパワーエックスが行っているのは、新規事業です。組織や事業全体をゼロから作っていく。ここは私自身、やりがいを感じていますし、これから入社いただく方にとっても非常に価値ある経験になるでしょう。また、私たちの場合、製品を納品して終わりではない。その稼働状況を見ながら、お客様の持続可能なカーボンニュートラルへの取り組みを直接支援します。製品が長年にわたって使用され、事業と社会に貢献していく。そういった手応えと働きがいを感じていただけるはずです。

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蓄電池がコモディティ化する近未来、パワーエックス製品をスタンダードに

そして取材終盤に伺えたのは、中屋さん個人のビジョンについて。

まずは国内の再エネ・蓄電池市場において、どれだけスピーディーにシェアを押さえられるか。まさにこの数年が勝負です。限られた期間で業績を最大化し、成果を残す。ここにはこだわってきましたし、幸いにも外部機関の調査データでいえば、後発スタートアップでありながら定置用蓄電池を売上計上する初年度から非常に高いシェアを獲得できる見込みです。それを実現するための商品戦略、営業戦略は既に確立ができていますので、あとはどう具体化していけるか、新たな仲間とそこを目指していければと思います。

さらにその少し先の未来でいえば、おそらく蓄電池は、商業ビル、工場・物流センター、学校、みなさんが住む住居など、当たり前に設置される「エアコン」のような存在になっていくはず。いわばコモディティ化していく。そういったなか、垂直統合モデルで付加価値を追求し、「パワーエックス」のロゴが入った蓄電池を国内外至るところで目にするようにしていく。ぜひそういった景色を実現していければと思います。

そして最後に伺ったのが、中屋さんにとっての「仕事」とは何か。「あまり深くは考えたことはない」としながらも、その価値観について伺えた――。

シンプルにいえば仕事は「挑戦する場所」だと思っています。チャレンジングなフィールドであればあるほど、自分が成長できますし、やりがいがあるもの。チームにもいい影響が与えられるよう、私自身、挑戦し続ける姿勢は大切にしています。余談ではありますが、マラソンが趣味なのですが、似たところがあるのかもしれません。いかに長く、速く走れるか。どうタイムを縮められるか、1人ではしんどくても皆で走れば完走できる。ある意味、楽しみつつ成長、前進していく。それが私にとっての仕事なのかもしれません。ただ、マラソンと大きく違うのは、社会により良い影響を与えるために成長や挑戦を志していくこと。将来リタイアする時、社会や未来に何を残すことができるか。その日まで全力で走り続けられればと思います。

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中屋さんに聞く「求める人物像」について

まず求める経験からお伝えすると、コンサルティングセールスは、大型電気製品又は関連商材の新規の法人営業のご経験がある方が望ましいと考えています。プロジェクトマネジメントでいえば、蓄電池はもちろん大型設備の開発や施工等、何らかのプロジェクトに関わっていた方など幅広く求めています。

経験以外の志向性・マインドでいえば、今がまさに0→1、そして1→5となる創業フェーズであり、創業3年で200億円以上を調達している急拡大中のスタートアップですので、ある意味、泥臭いことも含めてどれだけやり抜く力があるか。このあたりを重視しています。当然、仕事量も決して少ないとは言えません。そんな中で、現在できていないことも「自分が作っていける」と捉え、気づいた人が主体的に発信、掘り下げ、改善していくことを期待しています。「与えられる」仕事ではなく、オーナーシップを持って「自分が仕事をつくる/すすめていく」という部分に面白さを感じる方はフィットするはずです。

最後に大事にしていることは、チームワーク力です。同じ船に乗る仲間として、同じ目標に向かって最後まで献身的に向き合えるか。チームへの貢献、サポート意欲がある方を求めています。属人的な組織にならないよう、チームビルディングを行い、仕組み化を推進しています。

ぜひこちらを参考に、ご応募いただければと思います。

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