世界約20億人が利用する『Facebook』で働くというのは、一体どのような気分なのだろう。クライアントソリューションズマネージャーを担う越智 康次郎さん(27)はこう語る。「Facebookで働くことは一つの目標でした」。彼の言葉に飾りはない。最高の舞台で働き、成長したい。より大きなインパクトを社会に残したい。そんな彼の仕事哲学、心に宿る「志」を追った。
越智 康次郎さんのファーストキャリアは日系企業。『楽天』に新卒で入社し、営業職として働いていた。担当をしていたのは、出張管理システムの法人営業だ。
当時をこうふり返る。
「旅行が好きだったということもあり、楽天トラベルに携わることになりました。当然、システムや仕組みのことが何もわからない新人。はじめはすごく不安でしたね。ただ、飛び込んでみたら、何とかなるもので。目の前のことをしっかりやれば、成果はついてくる。学んだことでした」
こうして社会人としてのはじめの一歩を踏み出した。キャリアを重ねていくなかで、会社や組織に対して、大きな不満はなかったという。
「チームにも、上司にも恵まれ、本当にすばらしい職場でした。今も当時の経験が私のベースになっていると思います」
そんな恵まれた職場を、なぜ離れることになったのだろう。
「もっと広がりのある商材を扱ってみたい、そういう思いがありました。また、アドテクへの興味がより大きくなっていた時期でもあって。最後の最後まで悩んだのですが、新しい世界に飛び込んでみようと決めました」
次なるステップとして選んだのが「リターゲティング広告」の領域。グローバルで先端をいくカンパニー『Criteo』へ。当時25歳。『楽天』にて2年勤めた上での決断だった。
『Criteo』に転職し、アドテク領域のスペシャリストとしての道を歩み出した越智さん。媒体側・広告主側、それぞれの営業を経験し、専門性を高めていった。
どのような環境においても、自分に任された仕事に全力で取り組み、まずは成果を残していく。そして、チャンスがきた時、自らの意志で人生を選択する。大胆に挑戦していく。こうしてFacebookへの入社につながったという。
「友だちでも、すごく英語がしゃべれて、優秀なのに挑戦に躊躇している人が多い。そんなとき“やってみたら何とでもなる”と思うんです。挑戦できる機会を逃すのは、もったいないですよね。転職も同じ。自分の視野を広げる、チャンスの一つだと捉えています」
こうしてFacebook社への入社を果たした越智さん。入社後すぐ、そのカルチャーに大きな刺激を受けたという。
「Facebookでは全員が“Focus on Impact”を大切にしています。どのようにインパクトを出すか、全員がそこにコミットして考え抜いています」
何も日本国内に限った話ではない。
「世界規模のプロダクトに対しても同じなんですよ。どこの国、どこのマーケットからでも要望を出せば、プロダクトにちゃんと反映されます。それは私のような営業の一声でも同じ。そのスピード感、大胆さは他には真似ができない部分だと思います」
もちろん、変更はプロダクトマネージャーが精査して決定される。その決定においてもブレない軸がある。
「本当に正しい声であれば、すべてが一気に変わります。逆に、取引額の大きな広告主だからといって、その声だけがプロダクトに反映されることはまずあり得ません。全世界の人々にとって、どう役に立つか。ここがすべての基点です」
もうひとつ、Facebook社の大きな特徴として挙げられるのが人材の多様性だ。
全世界でダイバーシティを推進し、多様な人材が集う。当然、国籍や性別、セクシャリティが仕事に影響を及ぼすことはなく、昇格・評価にも関係がない。
また、興味深いのはキャリアや職種に対する考え方。越智さんが担うクライアントソリューションズマネージャー(広告分析を通じた営業支援)にしても、メンバーたちのバックグラウンドはさまざま。
「同期メンバーたちのバックグラウンドが全く違っておもしろいんですよ。私はアドテクの出身ですが、クリエイティブ系の代理店、調査会社出身、コンサル出身、事業会社のマーケター出身…同じポジションで強みも全く違う」
こういった「強み」の掛け合わせによって、さらにチームが強くなっていく。
「離れていても彼らにすぐ相談ができるし、いい刺激をもらっています。それぞれの強みを理解し、多様な人を採用していく。これもFacebookならではかもしれません」
こうしてテック業界において最高峰ともいえる成長のステージで勝負をしている越智さん。自身が最も成長できた機会、エピソードについても伺うことができた。
「とにかく個人にプロジェクトを任せてくれる。入社すぐに“このプロジェクト、自由にやっていいよ”という感じでした」
この時、上司にもらった言葉が今でも忘れられないそうだ。
「自由にやっていいよ。ただ、インパクトにこだわると約束してほしい。そのためだったら、いくらでもサポートする。何かあったら言ってくれ」
この言葉こそ、Facebookの考え方、その本質を表しているといっていいだろう。
つまりプロとして仕事をしていくということ。プロジェクトの「責任」を自身が負っていく。その共通したマインドを垣間見ることができた。
「いつまでに、どういった成果を出すか、自ら目標を決めていきます。それは自分の責任でもある。だからこそ、自分に厳しくなるという部分はありますね」
インタビューの終盤、あえてこういった質問をぶつけてみた。
ー Facebookで働くというのは、テック業界で頂点といってもいい。ここから先、なにを目指すのか?
越智さんは少し間を置き、まっすぐな眼差しで語ってくれた。
「私はとにかくインターネットとテクノロジーが大好きなんです。こういった“好き”を軸に人生を選択していきたい。最後まで自分が好きなことができたら幸せだと思っています」
この考え方には、「目の前の仕事で成果を出す」ことで可能性を切り開いてきた、彼の仕事哲学がある。
「やることをちゃんとやっていたら、いい方向に進む。数字がついてくる。キャリアの可能性って、そうやって広がるんだと思うんです。将来を見るより、今、手元にあるものをどんどん積み重ねて進んでいく。そのほうが私に合っているのだと思います」
Facebook社には「強いところを伸ばしていく」という考え方があるのだそうだ。強みは「パッション」と「ケイパビリティ」の掛け合わせと定義される。
越智さんでいえば、「インターネットへの情熱」と「アドテクのスペシャリスト」の高次元での掛け合わせがある。それこそが彼の強みであり、Facebookにフィットする部分なのだろう。
「好きなことを仕事にする」
そのための並々ならぬ情熱、そして一流を目指すスタンス、プロとしての考え方を伺い知ることができた。
最後に、彼の「仕事」に対する言葉で締めくくりたい。
「私は、仕事って自分を成長させてくれるものだと思っています。知らなかった自分の一面を知ることができたりとか、知識が身についたり、上司や仲間が能力を引き出してくれたりする。仕事で成長していける、こんなにも楽しいことって他にはあまりないですよね」