INTERVIEW
京都市|公募プロジェクト

京都市が「8つの分野」で大規模公募を開始。より世界から尊敬される新たな「京都モデル」創出へ

掲載日:2022/06/06更新日:2023/04/07

「文化都市」として新たな変革に挑む――京都市が「8つの分野」において大胆な外部人材登用を行う。若い世代の移住・定住、企業誘致、海外寄付等…重要施策の中核人材を求める。この公募プロジェクト開始に伴い、門川大作 京都市長にお話を伺うことができた。京都市の現状、課題、ビジョン、そして外部人材に期待することとは――。

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「移住・定住」「企業誘致」等、8分野で外部人材登用へ

今回、8つ分野で外部人材を登用していく京都市――。

同市としてもこれだけ大規模な公募は初の試みだ。

京都市「8分野」公募プロジェクト
■ 若い世代の移住・定住促進担当(1名)
■ ファンドレイジング推進担当(1名)
■ 海外からの寄付受入れ推進担当(1名)
■ DX推進担当(2名)
■ アート市場活性化担当(1名)
■ 企業誘致の推進担当(2名)
■ 公園利活用の推進担当(1名)
■ 循環経済への更なる移行促進担当(1名)

喫緊の課題である京都経済の活性化,税収増加に直結する分野から、新機軸のテーマまで、いずれも外部人材の知見が欠かせない重要施策、取組となる。

「テクノロジーの発達、コロナによる様々な社会変容、時代の転換期を迎えています。この大きく変化する社会経済動向を多角的に捉え、京都の強みを生かして新しい価値を創造したい」

こう語ってくれたのが、京都市、門川大作市長だ。

「京都は1200年を超える歴史のなかで、疫病や自然災害、そして戦乱、様々な困難から立ち上がり、魅力あふれる都市を築いてきた、努力の積み重ねのまちだと思います。いま日本、そして世界ではコロナ禍、自然災害、紛争、様々な課題を抱えています。この困難な時代に、改革の先頭を走り,新たな未来を切り拓いていく、そうした新しい「京都モデル」を作っていきたい。そのためにも、ぜひ外部の方の知恵や力をお借りし、改革を推し進めていきたい。そのような思いから大胆な公募を行うこととなりました」

京都市の現状、課題、ビジョン、そして外部人材に期待することとは――。

京都の「強み」を活かし、市民の豊かさにつなげていく

はじめに伺えたのが、京都市の現状と課題について。その魅力は広く知られたところだが、さまざまな都市ランキングでも常に上位に位置している。

「京都市は、福祉、医療、教育、子育て支援等、国や他都市を上回る水準で施策を実施してきました。その結果、森記念財団の「都市特性評価」、日経新聞の「SDGs先進度調査」、ブランド総合研究所の「市町村 魅力度ランキング」、いずれも1位や2位という高い評価をいただきました。全国一厳しい景観政策、先進的な環境政策等に加え、文化を基軸とした都市経営で、都市特性を磨いており、クリエイティブなまちとして世界にも知られています」

さらに京都市内は37の大学、短期大学があり、人口の1割、約15万人の大学生が暮らす。さらに日本における国宝の2割が京都市内にあり、文化遺産も強みだ。

「一方で、京都市における強みは、税収面では弱みでもあります。学生さんは京都の財産ですが、税金を払っていただく対象ではありません(笑)。また、文化財は保護するのに大変な費用がかかる。京都の強みを税収増、そして市民の豊かさにつなげていく。そういった仕組みを整え、持続可能な都市経営の基盤を作っていく。今回参画くださる方々と共に果敢に挑戦していければと考えています」

2021年「5つの都市デザイン」を目指す、都市の成長戦略を策定。厳しい財政状況から脱却するために、「京都の強み」と「時代の潮流」を掛け合わせて、新たな価値の創造を目指す。今回公募する8つの分野も、その価値創造につながっていくものだ。

「課題はたくさんあります。しかし裏返せば、課題は可能性でもある。京都には他の都市にはない強みや潜在力がたくさんありますが、正直に申し上げて、まだまだそれらを活かしきれていません。優れた理念と情念、そして実績を持っておられる方が来られたら、これほどおもしろい都市はないと思います」

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「大きな反省でもあるのですが、発信不足も弱みのひとつ」と語ってくれた門川市長。「京都は、日本人が大事にしてきた、暮らしの美学や生き方の哲学がまちの隅々に息づいている。そういった部分をより世界にアピールしていかなければならないと考えています」

2022年度、文化庁が京都へ。

2022年度には、政府が推進する地方創生の一環として機能強化した「文化庁」が京都市へとやってくることも決まっている。

「文化庁が京都に来ることで、京都は文字通り「文化の都」になります。文化の力で日本、そして世界を元気にしていきたい。「文化」によって人と人とのつながり、多様性を認め合い、包摂性のある社会へとつなげる。文化で世界からより尊敬される。世界に日本があってよかった。日本に来てよかったと思ってもらう。京都がそんな役割を果たしていければと考えています」

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「ヒト・モノ・カネが東京に一極集中していると言われますが、私は“情報”が東京に一極集中していることも問題だと捉えています。そのためぜひ外部からの視点を活かし、先頭に立って京都市の変革に挑んでいただきたい。もしかしたら、京都に対して閉鎖的なイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、それは誤解。1200年を超える悠久の歴史を誇るなかで、日本中、ともすれば世界の人が京都に来て、京都の街をつくっていかれた。京都は徹底して、開かれた都市です。外部の方の参画を得て、大いなるご意見を伺い、そして新たな飛躍をして行きたい。こんな想いを持っています」

人を育て、文化芸術を大事にし、ものづくりに活かす

門川市長は、新たな京都モデルにおいて「文化」を基軸としたまちづくりを掲げる。なぜ、いま「文化」が重要なのだろう。

「ウィズコロナ、ポストコロナの時代には、人々の暮らし方、働き方、自然との関わり、そうした「文化」がキーワードになると考えています。京都は、明治初期に人口が激減し、都市衰退の危機にあった。その最も困難な時に、みんなで人を育て、文化芸術を大事にし、それをものづくりに反映させ、苦難を乗り越えてきた歴史があります。世界全体が大きな転換期を迎える今は、まさに京都の時代だと思っています」

経済的な成長、そして文化は共存していくものだと門川市長は語る。

「さまざまな意見があると思いますが、文化と経済は共存しているもの。もっと言ったら、文化が先だとも言えます。例えば、遥か昔から土像が作られ、洞窟に絵が描かれていますが、人間が文化を大切にしてきた証。音楽があり、踊りがあり、そしてコミュニケーションをとり、教訓を得てきました。特に日本は、文化をものすごく大事にしてきた国です。例えば、京都で育った文化として、清潔なトイレ、そこに竹筒に野の花一陣が刺してある。どんな狭い家でも、小さな床の間に吊床があった。生活の中に文化がありました。これこそ日本人のあり方であり、原点。人間の暮らしにおいて文化が土壌になってきたと言えるのではないでしょうか。現代においても、憲法で「健康で文化的な生活」を保障しています。「食べるものがあって、安全だったらいい」とは言ってない。これはすごいことです。世界に目を向けてみるとSDGsの取組の輪が広がっています。素晴らしいことです。しかし、残念ながら17の開発目標の中に「文化」はありません。そこで、京都では「SDGs+1(プラスワン)」などと表現し、「文化」に対する取組を加えています」

近年でもイノベーションを起こす上で、文化と経済の融合が語られる。ビジネスの面での文化の重要性に注目が集まっている。

「現在の日本においても、例えば、漫画、アニメ、ゲーム、そして食文化等、世界から高く評価されています。それらは、日本では民間の力によって成長してきたもの。ただ、中国や韓国は今、国家戦略として力を入れています。いわゆる文化予算はGDP比で見てみると日本と一桁違うわけです。このままでは世界から日本は取り残されてしまう。国としても、私たち京都市としても、伝統文化や生活文化だけでなく現代アート、ポップカルチャーと言われるものまで、あらゆる文化の力を再認識し、経済活動と連携して取り組んでいかなければならないと考えています」

現在、京都では、活躍するプレイヤーや、高い志で京都に集う人、時代を動かすキーマンが集うような仕掛け、取組も活発だ。

「例えば、京都駅の東側に京都市立芸術大学、そして市立美術工芸高校を移転する総額三百数十億円の工事が進んでいます。さらに、その南側の「東九条」という地域にはチームラボさんの施設もやってきますし、米国発の体験型アートセンター「Superblue Kyoto」といった素晴らしい展示場も来る予定です。また、北側の菊浜学区も任天堂発祥の地としての取組が脚光を浴びており、西側の梅小路地域もクリエイティブタウンとしての取組がスタートしています。文化を基軸にあらゆるものがつながり、新たな息吹が起こっておりますので、楽しみにしていただきたいです」

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「43年前、京都市では都市の最高の理念として「世界文化自由都市宣言」を行いました。以来、宣言をあらゆる政策の最上位の都市理念と位置付け「文化」を基軸とした都市経営を行っています。全世界のひとびとが、人種、宗教、社会体制の相違を超えて、平和のうちに、ここに自由につどい、自由な文化交流を行う交流の中から、新たな文化を創造する永遠に新しい都市。そういった理想を掲げています」

世界の社会課題解決を先導する存在として

そして最後に伺えたのが、門川市長ご自身の「志」について

「多様化、複雑化する様々な社会課題は、行政の力だけで到底解決できるものではありません。情報、課題、ビジョン、志を共有し、行動を共にする。さらに、その成果を共有し、また新たな活動につなげていく。少子化、人口減少など、今、地方には、さまざまな社会課題がありますが、これらを解決していくために、行政の仕事の進め方は、変わっていかなければなりません。より一層公民連携を進め、日本はもとより、世界とつながっていかなければなりません。そして、その先導的な役割を京都が果たしていきたいと考えています。

社会課題を解決し日本を良くしたい。世界に貢献したい。新たな価値を創造し、未来を切り拓きたい。京都は、そうした高い志と共に成長してきたまちです。私たちと一緒に、未来を切り拓く、SDGsの達成へ、そんな情熱に溢れた、志の高い方のご応募をお待ちしています」

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