INTERVIEW
生駒市

「自治体DX」のファーストペンギンに。外資系IT企業勤務と兼業、生駒市CDO補佐官の志

掲載日:2022/10/06更新日:2022/11/02

2021年11月に市制50周年を迎えた生駒市。注力テーマの一つに生駒らしいスマートシティ実現、DX戦略の推進を掲げる。2022年4月より同ミッションを担うのが、生駒市CDO(Chief Digital Officer)補佐官である森本健志さん。市長直下、生駒市役所全体でデジタル化を推進していく――そのミッションと新たなデジタル組織立ち上げを念頭に置く今回の公募について伺った。

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生駒市の未来を「デジタル」で創っていく。

産官学民が対等に意見を出し合い、住民や地域が中心となるスマートシティを目指す奈良県生駒市。奈良先端科学技術大学院大学やCODE for IKOMAなど、地域のデジタル人材と連携した共同研究なども推し進める。

そして市役所内でもデジタル活用による職員の業務改善・生産性向上、より利便性の高い市民サービス提供に今まさに力を入れているところだ。2022年4月より同ミッションを牽引しているのが、生駒市CDO(Chief Digital Officer)補佐官である森本健志さん。

「現在、長期的には生駒市のデジタル戦略の検討と策定を進め、短期的なところでは庁内業務の課題を解決するためのデジタル技術の検討や提案を行なっています。いかにデジタルを活用し、市民生活の向上を目指した課題解決ができるか。スマートシティ実現に近付けるか。そのための仕組み・体制づくりを行なっているところです」

デジタルを活用し、生駒市の未来を創っていく――そのための新たなデジタル組織立ち上げを見据えた今回の公募。より詳細な募集の背景、そこで得られるやりがい・経験について森本さんご自身のお考えと共に伺った。

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森本 健志|生駒市 CDO補佐官
奈良県生駒市出身。奈良先端大を修了後、通信キャリア研究所にてFTTHのコア研究に従事。その後、ゲーム機メーカーにてゲーム機およびサーバ開発に従事。外資系IT企業など様々な企業でキャリアを積み、現在、民間企業にて技術コンサルティング/サポートに従事。DX/スマートシティ等の変革を推進する地元生駒市に対して、自身の知見や経験を活かしたいと考えて入職。職場は東京であったが、デジタル技術による新しい働き方として地元生駒市でのリモート勤務が可能となり、生駒市のデジタル技術によるスマートシティ実現に対し、現役の当事者として関わる選択をした。

全体最適のためのプロジェクトを、未来に向かって進めたい

これまでもデジタル人材の採用を行ない、担当職員も在籍している生駒市。「人数として足りていない」という前提はありつつ、なぜ改めて今回公募を実施するのか。その背景から伺うことができた。

「未来を見据えて、新しいことにアプローチしていきたい。これまで「部」や「課」など各組織のがんばりでデジタル化に取り組み、実現できた部分も大きくありました。同時に、市役所全体で見た時には、近しいシステムが複数あったり、部署間での情報共有・データ連携が不十分であったり、次なる課題も見えてきました。ある意味、すごくもったいない状態とも言えます。蓄積してきたデータやノウハウを「横」にも展開できれば、「1+1」が「2」ではなく「3」にも「4」にもできるはず。そういった全体最適のためのプロジェクトを未来に向かって進めたいと考えています。生駒市として統一的なデジタルの戦略・方針を描いた上で、課題に対して最適なソリューションを取り入れていく。そのための仕組みづくり・体制づくりのために今回の公募に至りました」

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森本さん(左)と生駒市の小紫雅史市長(右)。現在、CDO(Chief Digital Officer)を市長が兼務し、その直下で森本さんが補佐官としてデジタル戦略推進を担う。市長直下の利点を活かし、よりスピーディーで柔軟な組織づくりを目指していく。

自分たちの手で「市」をつくっていける醍醐味

これまで大手通信キャリアの研究所、ゲーム機メーカー、外資系IT企業など様々な企業でキャリアを積んできた森本さん。市役所ならではの仕事のやりがい、おもしろさとは。

「人々の暮らしのなかで、今までできなかったことができるようになる。それを喜んでいただける。規模の違いはあれ、そこが本質的ですし、何にも代えがたい価値ですよね。それがダイレクトに感じられることが、ものをつくる人間にとってモチベーションにつながると思います。生駒市での仕事でいえば、長期的な未来に向けたプロジェクトも動かしますが、当然、目の前のところでは庁内業務におけるデジタル技術の検討・支援、お困りごとへのアドバイスなども行ないます。職員みんな「やりたいこと」はあっても、どうやればいいか、そもそもできるのか、わからずにモヤモヤしている状態。そういったなかで「こういったやり方がある」というアドバイスや提案がすごく重宝されると感じられています」

そして、これらを現在自身が所属する民間企業の視点ではなく、1人のエンジニアとしての公平な視点で行っているので、より幅広く自由に活動できるのもポイントです。

さらにその影響範囲は「市民」全体にも及んでいく。

「たとえば、民間企業でいえば、多かれ少なかれ商圏やターゲット層を絞ってサービス提供し、割り切った上でプロダクトのサイクルを回すわけですよね。ただ、自治体サービスだとそういうわけにもいきません。市役所の仕事はまさに「市」をつくることに直結するもの。赤ちゃんからお年寄りまで、あらゆる市民のみなさんにとって良いサービスやシステムを志向し続けていく。ここは難しさでもあり楽しさでもあります。地域の学校教育が変わったり、公共的なインフラが変わったり。個人的な話をすると、新しい技術や仕組みによって「できることが増える」というのが純粋におもしろい。それらを提供する側になり、多くの人たちから「すごい」と言ってもらえるのはすごく嬉しいこと。むしろこういったところを「当事者意識」を持って楽しめるかどうか、求められる素養と言ってもいいかもしれません」

なぜ、より当事者意識が重要になるのか。行政ならではの仕事の進め方も無関係ではない。入職後、活躍していくために求められる部分にも共通する。

「当然、民間企業のように「やりたい」ということがすぐに実行できなかったり、プロセスが重視されたり、思うように進まないこともあります。問題・課題をクリアしようと思うと「技術」だけではなく、ステークホルダーや部署間での調整、人間関係などウエットな部分もあります。ただ、立場が違ったとしても関わる全員に共通しているのは「市を少しでも良くしていきたい」という思い。強い当事者意識を持って、妥協点を探りながら、折れないでやっていけるか、諦めずにやり抜けるか。ここはすごく求められる部分だと思います」

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生駒市ならではの特徴/強みとして「新しいものを抵抗なく取り込んでいける風土」を挙げてくれた森本さん。「昔から生駒に住む地元住民の方も多いですが、多くの方も転入してきてくださり、まちが発展してきた歴史があります。どんどん融合し、新しい価値を生み出せるのが生駒市の強み。市役所職員のみなさんもデジタル活用に対し、「今のままじゃいけない」という良い意味で危機感を持っており、すごく柔軟に協力してもらえる風土があると思います」

自治体DXの「一期生」になるチャンス

現在、外資系IT企業で技術系のシニアマネージャーとしても働く森本さん。そもそもなぜ生駒市での公募に応募したのか。そこへの思いについても伺えた。

「幼稚園から大学院まで生駒市で育ったため、やはり愛着がありますし、子どもの頃から地域への貢献にも興味を持っていました。そしてデジタルはまさに自分の生業であり、得意なところ。これまでの経験を活かしてやれることがあればと思いい、応募をしました」

もう一つ、決め手となったのが自治体のDXという「他では得られない経験」。自治体DXはいわば未開の地。そこに飛び込むファーストペンギンになれることも魅力だったという。

「民間企業における通常の副業であれば、おそらくやっていなかったと思います。また、もし生駒市に既にCDO補佐官がいて「続投」の募集でも応募していませんでした。自治体・行政にアプローチする「一期生」になることができる。ここでしか得られない経験がある。行政のデジタル化は今が節目ですし、このタイミングでイチから自分たちの手でつくっていける。そこからまた広がる人生もあるのではないかと考えました」

そして最後に伺えたのが、森本さんご自身の仕事観について。

「私にとって仕事は、生きることそのものと言えるかもしれません。よくある例え話ですが、もし宝くじが当たり、一生働かずに暮らせたとしても、きっと何かしらの仕事は続けるはずです。仕事は「やらされること」ではなく、砂場で遊んだり、工作をしたり、好きだからやっていることの延長。その結果、能力が高まったり、見識が深まったりすること自体が楽しい。だからこそ、いろいろな分野の仕事に携わっていきたいですし、知らなかった領域を見てみたい。多面的に社会を見ていきたいという価値観は、学生時代から3社を経て、今も変わっていないところ。まさに自治体のDXは私にとって未開の地であり、毎日が新しいことの連続でもあります。人はどのように思うかわかりませんが、もし私と同じように感じる方であれば、自治体のDX、生駒市でのチャレンジはすごく楽しいものになるはずです」

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