INTERVIEW
国連ボランティア計画(UNV)|事務局次長 特別インタビュー

気候・飢餓・女性問題…世界が抱える課題の最前線へ。5つの国連機関で「有償ボランティア」を合同公募

掲載日:2023/04/18更新日:2023/05/17

5つの国連機関にて「国連ボランティア(有償)」合同公募へ。民間サービスを活用した「国連ボランティア募集」は初の試みだ。なぜ公募に至ったのか。そして国連ボランティアに求められる要件、そこでこそ得られる経験とは。同プログラムの支援を行う中枢機関「国連ボランティア計画(UNV)」事務局次長 横須賀恭子さんにお話を伺った。

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公募ポジション一覧(5つの機関・計7ヶ国・8ポジション)

■UNDP(国連開発計画)/ジブチ共和国
調達アシスタント

■UNWomen(国連女性機関)/タンザニア
女性の経済的エンパワーメントエキスパート

■FAO(国連食糧農業機関)/ベナン・ウガンダ・ザンビア・ガーナの4ヶ国
気候変動とレジリエンス専門官
現金・バウチャープログラム専門官
森林・農場ファシリティ専門官
栄養・フードシステム専門官

■RCO(国連常駐調整官事務所)/スーダン
開発調整専門官

■ザンビアWFP(世界食糧計画)/ザンビア
気候レジリエンス・零細農家市場担当官

持続可能な開発目標として掲げられたSDGsの達成期限は2030年──その達成に向け、志と専門性を有する人材を求めています。世界で喫緊の課題となっている燃料・食料価格の高騰による危機に対し、食料安全保障の強化、生活支援を通じた影響の緩和を図ります。また、SDGsのゴール2「飢餓をゼロに」、ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」、ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」に関連する取り組みを支援すべく、各分野で高い専門性を有する人材を広く募ります。

(2023/05/08更新)
RCOスーダンの開発調整専門官は、スーダンの情勢変化を鑑み、急遽募集をキャンセルすることになりました。代替のアサインメントとして、WFPタンザニアで食糧と栄養の安全保障のための気候レジリエンスに関するミッションを担うプログラム・ポリシー・オフィサーを募集しております。

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世界の平和と開発に貢献をしていく

まずは国連ボランティア計画(UNV)がどういった機関なのか、概要から伺ってもよろしいでしょうか。

国連ボランティア計画(UNV)は、多くの関連機関を持つ国際連合(UN)と、世界中から募った「国連ボランティア」を結びつけてきた国連機関です。1971年の創設以来、各国連機関にボランティアを派遣することで、世界の平和と開発に貢献してきました。

ボランティア動員、ボランティアリズムの推進を通じ、「持続可能な人間開発(Sustainable Human Development)」を支援しており、人種や国籍に関係なく全ての人々に対してその参加の機会を広げています。年間約1万人以上のボランティアが各国に派遣され、日本からも年間100人前後の人材が現地に赴いています。

支援を行う領域は多岐にわたるのですが、開発途上国における貧困対策、民主的ガバナンス等、中長期的な社会・経済開発の分野等。さらに近年だと、紛争地域における食料・燃料価格の高騰の影響を受けた人々への支援、人道援助、復興活動、平和構築、人権に関する市民教育等の分野にも積極的に人材を派遣しています。

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メキシコUNVにて国連ボランティアたちとの記念撮影をする横須賀さん(左上)。国連ボランティア計画(UNV)は貧困や格差、気候変動などの不公正に終止符を打つために闘う国連の主要機関、国連開発計画(UNDP)下部組織として1971年に創設。2001年の「ボランティア国際年」以降、ボランティアリズムの地球規模での推進という任務も国連総会から与えられ、ボランティアリズムを通じて世界の平和と開発に貢献する国連機関として活動。本部のドイツ・ボン、アンマン(アラブ諸国管轄)、バンコク(アジア太平洋管轄)、ダカール(西・中部アフリカ管轄)、イスタンブール(欧州・独立国家共同体管轄)、ナイロビ(東・南部アフリカ管轄)、パナマシティ(ラテンアメリカ・カリブ管轄)の 6か所の地域事務所、そして60か国以上に置かれたフィールドユニットから構成される。2022年は12,400人、ここ数年は年間1万人を超える国連ボランティアが、世界中で任務を遂行した。

多様化する「世界の社会課題」に向き合うために

近年でいえば、特に取り組むべき課題、国連ボランティアのニーズが高い領域があれば伺わせてください。

この数年でいえば、コロナ禍からの復興、ウクライナ危機に関連する支援ニーズ、またそれらに端を発する世界的な物価高騰、食糧危機といった不安定な文脈への対応などが挙げられます。いずれにせよ、課題の多様化と共に、要請の多様化も進んでいるのが現状です。結果、国連システムにおいても多様で優秀なボランティアに活動いただく必要性が高まっています。こういった背景もあり、優秀で専門性の高い多様な人材にリーチしていくため、今回の公募に至りました。

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国連ボランティア計画(UNV) 事務局次長 横須賀恭子さん。「1971年の創立以来、日本政府支援のもと、数多くの日本人国連ボランティアが開発途上国を中心に活動してきました。毎年100人前後の日本人が国連ボランティアとして世界各地で活動し、人々の生活の向上に貢献しています。世界的にも非常に高い評価を得ています」

100以上のポジションで活動する国連ボランティアたち

どういったポジションで国連ボランティアの方々が活動しているのでしょうか。今回の公募に限らず、伺わせてください。

世界各国から、多様な経験や能力を持つプロフェッショナルな方々に活動いただいています。例えば、保健・医療分野、農村開発などの開発分野、紛争・自然災害等に対応するための緊急人道支援、効果的な開発協力の基盤となる平和構築、選挙支援・民主主義の推進、人権擁護などの活動、自動車整備、航空管制、通信など後方支援分野など100以上の職種を設けています。

ユニークなところでは「UNVオンライン・ボランティア・サービス」というインターネット上のプラットフォームがあり、オンラインの活動も活発です。これまでは翻訳、デザイン、システム開発分野のボランティアが多かったのですが、ここ最近ではデータアナリティクス、データビジュアライゼーションなど「データ関連」の貢献も多くなっています。

こういったオンラインの貢献を含め、UNVでは専門家、学生、主婦、退職者、障害者など多様な方々が、平和と持続的開発のためのボランティア活動に参加することを推進しています。例えば、実際、国連ボランティアの半数以上は女性でもあります。この割合の高さは国連機関の中でも上位と言えます。

様々なバックグラウンドを持った方が暮らす世界の状況を踏まえると、課題を解決していくためには、国連で働く人材の多様化も必要です。そのために国レベルでのボランティア人材に対するリーチへの投資と並行し、インクルーシブなアプローチを取っていく。より多様な方に国連のワークフォースに加わっていただける環境をつくっていく。これもUNVの貢献の一つです。

特にコロナ禍からの復興、ウクライナ危機に対する支援、物価高騰、食料危機、気候変動…いま国連には多様なチャレンジを行っています。ぜひ様々な経験・スキルを持った方に、国連での仕事に目を向けていただければと考えています。

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開発途上国の出身者、自国のプログラムのために活動する「ナショナルボランティア」も非常に増えてきたと語ってくれた横須賀さん。「以前アンマン(ヨルダン)に出張に行った時にシリア出身の難民であるお医者様方にお会いしました。彼らはUNV難民ボランティアとして、UNHCRシリアで新型コロナウィルス後の対応において貢献されていました」と自身が出会った国連ボランティアとの出会いも語ってくれた。

求められるのは、困難な状況を力強く乗り越えていく力

続いて、国連ボランティアとして働く上で求められる要件、適性があれば教えてください。

前提として、何らかの専門性と実務経験があることが求められます。ただ、これらよりも重要になるのは、グローバルな環境で仕事を進めていく上での「コミュニケーション能力」だと考えています。英語やフランス語を使って仕事をできるというだけでなく、どのような環境であっても、自身の意思を相手に伝え、交渉できるか。バックグラウンドの大きく異なる方々とコンセンサスを取りながら物事を前に進められるか。このあたりはどのようなポジションでも活躍していく上では不可欠になるはずです。

もう一つ、国連ボランティアとして働く上で非常に重要になるのが、仕事に臨むアティテュード(姿勢)だと私自身は考えています。あくまでも「ボランティア」ですので、生活費は支給されるものの、報酬やサラリーはありません。さらに遠くの国、主に開発途上国で活動していくことになります。当然、非常に大変な環境下での活動もあるでしょう。そうしたなかでもポジティブ思考で臨めるか。困難な状況を力強く乗り越えられるか、どういった態度で臨むか。これらは日々問われていく部分になると思います。

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ギニアにて現地ボランティアと交流をする横須賀さん(中央)

国連システムの「草の根」から広がるキャリア

そういった環境下で働くことで、得られるものも大きいといえそうですね。

そうですね。国連ボランティアでの経験を糧に、次のキャリアに繋げていきたい、そういった思いを持つ方も多くいます。現地だからこそ得られる経験、人脈もあり、任務終了後も国連システムの中でキャリアを続ける方が多くいます。国連機関で働きたい方にとっても大きなチャンスになるでしょう。

オフィシャルな話ではなく、あくまでも私が出会った優秀な国連の方々で言えば、国連ボランティア出身であるケースも非常に多いです。先日もニューヨークに出張の際、じつにミーティング参加者の5人中3人が国連ボランティア出身でした。

国連ボランティアの場合、国連システムに「草の根」から入っていくことができます。そこで様々なプログラムやプロジェクトを通して学んでいく。現場をその目で見て知っている。こういった土台がある方は、将来的に重要ポジションに就いた時にも強い。もし、国連システムにおけるキャリアを選択しなかったとしても、個人の能力、マインド含め、国連ボランティアでの経験は必ず大きな力になるはずです。

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私にとって仕事は「情熱」そのもの

最後に、ご自身の仕事に対する価値観についても伺わせてください。横須賀さんにとって「仕事」とはどういったものでしょうか。

私にとって仕事とは「情熱」そのものだと言えます。やはり「国連機関で働く」ということは、自分の人生や価値観、ライフスタイル、全てを考えた上での選択です。一般的な仕事のように「9時から17時まで」といった定時があるわけではありません。日々世界各地を飛び回っていきますし、ずっと1つの場所で働くこともできません。そうした大変さや困難がありながらも、やり続けていきたい。

私にとって「国連機関で働く」というのは、夢のようなこと。高校生の時から途上国の開発に人生を捧げたいと考えてきました。なぜ、自分はこれほど恵まれた立場にいて、向こう側にいる人たちはそうではないのか。この不条理な格差は何だろう。そういった疑問を抱き続け、国連機関で働くと決め、夢を叶えることができました。ここで仕事をすればするほど、自分にもできることがある、貢献できていくことの実感が大きなやりがいになっています。

また、国連で働く方々のコミュニティ、その価値観にも強く共感し、惹かれている部分も私の仕事観に大きく影響を与えています。自分の価値観にぴったりと合う場所で働くことができている。居場所だと思うことができています。これも仕事をする上で大きな充実感につながっています。当然、近年、国連に対して必ずしも肯定的な見方だけがあるわけではありません。それでもやはり国連のような機関でしかできないことがある。その一員として私自身、世界の方々が今より少しでも幸せに暮らせるためのチャレンジを続けていきたいです。

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