INTERVIEW
青楓館高等学院

「右にならえ」の教育に終止符を。28歳の代表が「青楓館高等学院」を創った理由

日本の教育の新たな王道をつくりたいーーこう語ってくれたのが、通信制高校サポート校(*)「青楓館高等学院」を2023年4月に設立した岡内大晟さん。教育業界の若きイノベーターとして注目される28歳だ。なぜ彼は青楓館を立ち上げたのか。そこで実践されているユニークな教育とは。彼らが掲げる個性尊重型の考え方、そして志に迫ったーー。

(*)通信制サポート校とは
通信制高校に通う生徒の学習支援を行う学校。青楓館は通信制高校と提携をしているため、高卒資格の取得が可能。

生徒が自分で制服をデザイン、校舎づくりも。

青楓館高等学院では、ユニークな授業や方針があると伺いました。まずはその具体例から伺ってもよろしいでしょうか?

よく取り上げていただけるのは、プロジェクト型の学習ですね。たとえば、プロのデザイナーに教わりながら自ら制服をデザインしたり、設計図や家具選定など一から校舎づくりを行ったり、行政の方々と連携しながら地域の夏祭りを企画したり。生徒がなんでもやってしまう。ここは一つ大きな特徴です。

企業や行政の方々とのコミュニケーションも不可欠ですし、主体的に動かなければ前に進まない。答えのない課題に挑んでいくうえで必要なスキルを育むことができます。そして生徒一人ひとりが自分らしく生きていくために、社会を巻き込みながら進めていく術を学ぶことができます。

キャリア教育に力を入れており、毎週社会人と1on1の時間を設けていて。早くから自分が知っている世界の外にある、人や情報に触れることで、自分の「ワクワク」に気づける環境を用意していく。特に個性を尊重し可能性を伸ばすことを重視しています。

せいふうかん01

具体的にはどのような生徒が在籍しているのでしょうか?

在籍するのは、さまざまな理由で全日制の学校を選ばない子たちです。不登校の子はもちろん、最近では偏差値60~70を超えるような進学校に通っていた子たちが転校してくるケースも増えています。

彼ら・彼女らに転校の理由をきくと、「学校はテストの点、スポーツの実績だけで評価される。つまらない」といった声があがるんです。その点、青楓館では先ほど言ったように、科目の勉強以外にも自分らしく生きていくための課外活動に力を入れているため、「右にならえ」の教育には馴染めなかった子たちも「ここなら居心地がよさそう」と選んでくれています。実際、みんな入学してからは、生き生きとしていて、信じられないスピードで強みを伸ばしています。

たとえば、高校1年生の女子生徒がいるのですが、観察眼がものすごく優れていて感動するほど絵がうまい。あまりに上手なので、学校案内のポスターを描いてもらい、山陽電鉄(梅田駅~姫路駅)の全車両に掲載しました。

ほかにも、投資部に入り元金10万円を290万円にした子、記憶力に長けておりルービックキューブを1分で揃えてしまう子などさまざま。入学前には自分でも気付いていなかった強みに気付けたり、国数英理社だけで評価する環境では誰からも気付かれもせず評価されずに埋もれていた才能が花開いている。自慢したい生徒が、たくさんいます。

せいふうかん(ポスター)

山陽電鉄に掲載されたポスター。

「このままだと日本がやばい」

まずご自身で学校をつくろうという発想が突飛ですよね。また、実際に形にまでされている。ここに至るまでの経緯、想いについて伺わせてください。

ずっと抱き続けてきた「このままでは日本はやばい」という強烈な危機感が、青楓館立ち上げのきっかけにつながっていると思います。

実はものごころついた時から教員を志していたのですが、社会を知らない人間が生徒に何を教えられるのだろう?と考え、新卒では東京のPR企業に入社しました。当時、営業として約400人の社長と商談を行ったのですが、社会では学校教育とは真逆の人材が活躍していた。答えを教える教育ではなく、個性を伸ばし考える力を養う教育が必要だ、と確信しました。

その後、改めて教育に関わるために、AO入試専門塾へ転職し、日本トップレベルの合格実績をあげることができました。ただ、「塾では教育を根本から変えるには限界がある、変えるなら高校生がほとんどの時間を過ごす学校から変えなければならない」と感じ、自ら青楓館を設立しました。

日本の経済成長率はワースト1位。言ってしまえば若者の未来は真っ暗です。一方で23年12月に発表された国際学力調査(*)の結果を見ても、日本の子は世界でもトップクラスに頭がいいわけですよね。これが意味するのは、学歴至上主義がとうに限界を迎えているということ。経済と必要な教育が乖離している状態。ずっと日本の教育は変わっていない。この状況を変えたいと考えました。

もう一つ、僕らが重点的に取り組んでいくのが「教員の質のアップ」です。教員がもっと憧れられるような職業にしていかなければならないと考えています。

まず青楓館では、一定の給与水準を担保していく。校長レベルになれば、年収1000万円に到達するような給与テーブルを現在構築しています。そうすれば、教育に興味がある人、あるいは教員免許を持っていながら教員にならず社会で働いている人たちにも、「教員」になることをキャリアの選択肢に入れてもらいやすくなるはずです。年収1000万円の教員を、今後3年で1人、10年で25人輩出していくことを目標にしています。

日本では教員の給与水準の低さもあり、教員志願者の減少が続いています。国は教員免許の取得を簡易化する動きを取っていますが、それで本当に課題は解決されるのか。最も重要な教育の質は向上するのか。こうした課題にも挑みます。

(*)世界81ヵ国のなかで、科学的応用力:世界第2位 、読解力:世界第3位 、数学的応用力:世界第5位。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE221MU0S3A121C2000000/

せいふうかん(代表)

岡内さんは、学校を明石に設立した背景についてこう語る。「通信制の学校がほとんどなかったから。高校の先生方にお話しを伺うと、どの学校も不登校の子が約10%はいるので、明石近辺には大体3000人はいる計算なんですが、明石近辺、 神戸西区、加古川、淡路島の子たちは、姫路か三宮まで1時間ぐらいかけて通わなければならなかった。明石の地で開校する意義があると考えました。また、学校をつくるうえでは教育大国として知られるフィンランドの事例を参考にしています。フィンランドでは当時29歳の教育大臣が「教育の無償化」と「教員の質アップ」に取り組んだ結果、赤字大国から、世界一幸福度が高い国に激変した。こうしたことを日本でも起こしていきます」

日本を世界一の教育大国に

中長期的なビジョンについても伺わせてください。

大きなビジョンとしては、今後10年で新しい教育の王道をつくり、そして20年後には 日本を世界一の教育大国にしていく。そのためにも規模が重要ですので、まずは生徒数を増やしていきたいと考えています。僕らの教育を、一部の限られた子たちだけではなく、一定の規模で届けていかなければ意味がない。そう言った意味でも、少なくとも5年で1000人、10年で数万人規模に増やしていきたいと考えています。

さらに生徒数を増やす上でカギになるのが「教育の無償化」をどうクリアしていくか。青楓館では、企業とのインターンシップ提携を増やし、生徒たちに就労機会を提供する。これにより、月額5万円の学費を実質的に無償化していく狙いです。

このビジネスモデルであれば、生徒は早くから実践的に社会やビジネスについて学べるだけでなく、会社としても安定的に収益をあげられる。いつか、生徒数が1000人、1万人に拡大したとしても、持続可能な経営を実現できると考えています。

また、海外から留学生を招いたり、指定校で海外の名門大学との提携を増やし日本の子を世界に送り出したりもしていきたい。2024年からは国際コースを走らせていきます。

当然、世間的に見れば、僕らは認知度もないですし、変わったことばかりやっている「クレイジーな奴ら」という印象だと思います。でも、10年続けたら、きっと何かが変わる。コツコツと続けて日本の教育は青楓館のやり方がいいよね、というムードを醸成していきたいと考えています。

なかには無謀だと言う人もいますが、僕の中では「できる」としか思っていません。影響力、資本力、ブランド力をつけていくためにも、いろんな人の力を借りながら芯はブラさずに進めていければと思います。

生徒が立ち上げた課外活動コミュニティ「アオラボ」。2023年12月に開催されたイベントでは、関西の中高生が集まり、理想の教育について意見を交わし合った。SNSを通してアオラボの活動を広め、同時に青楓館としても認知をとっていく狙いだ。

埋もれた才能を、より多く花開かせていくために

最後に、岡内さん自身が教育に情熱を注ぐ理由、原動力について教えてください。

目の前に困っている生徒がいるからなんとかしたい。そこに尽きますね。青楓館に興味を持ってくれる子たちは、みんなそれぞれに学校と自分のミスマッチを感じている。国数英理社だけで評価する学校教育のなかでは、彼ら彼女らの個性が見落とされてしまっているケースも多い。実際、先にお伝えした絵が上手な高校1年生の女子生徒に関しても、中学時代は彼女の才能を認識している学校関係者はほとんどいなかったようでした。でも、青楓館には、生徒1人ひとりの個性を認め、全力で応援する大人がいる。ゆえに、入学して数ヶ月でも生徒がガラッと変わる。埋もれていた才能が花開く。開校から1年足らずですが、自分たちがやっていることは間違っていない、そうはっきりとわかりました。

自信を持って「青楓館は良い学校です」とおすすめできますし、生徒もそういう風に言ってくれている。だから今とても幸せです。正直、働いているという感覚ではなく、単純に、やりたいからやっていることなんです。ただ、自己満足で終わらせるつもりはまったくありません。まだ100人ぐらいにしか影響を与えられていない。何千人、何万人と子どもを救わなければならない。そんな使命感で、これからも走り続けるだけだと思います。

「教員 兼 プロジェクトマネージャー」に求める役割と、今入社する魅力
今回ご入社いただく方には、生徒との週1回の1on1はもちろん、行政や企業を巻き込んだプロジェクト型学習の座組を組み、統括していく役割を担っていただきます。創業期なので、経営陣と共にコアメンバーとして事業をつくっていくことが可能。ベンチャー・スタートアップで挑戦してみたい方には面白い環境だと思います。
今後、生徒数を5年で1000人、10年で数万人にしていくことを目標にしています。そうなれば、その分、優秀な教員も増え、社内での競争率は増していく。そういった意味では、ポストに就くチャンスが豊富にあるのは今だけではないかと思います。

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