INTERVIEW
TXP Medical|導入コンサル(年収600万円~)他

1分1秒を争う「命の危機」を、ITで救え。現役医師 起業家が起こす、救急医療のイノベーション

日本の医療の根幹を支える「400床以上の大病院」の1割以上(*)が彼らのシステムを導入へ。スタートアップではまずありえない実績を生み出している「TXP Medical」が躍進を続ける。「私たちは救急医療で、いわば“全国制覇”が狙えるスタートアップです。」そう語ってくれたのが、同社代表の園生智弘さん。救急集中治療医でもあり、現場で感じ続けてきた「医療データの分断」の課題解決、救急医療スタートアップに挑む。そこには“救えたはずの命を救いたい”という熱き志があった――。

(*)自社調べ ※参考 https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003400111

医療データで救える「命」がある

「医療データで命を救う」をミッションに掲げるTXP Medical。彼らがユニークなのが、救急医療の領域に特化している点だ。医療でもさまざまな領域があるなか、なぜ救急医療なのか。その理由について園生さんは語ってくれた。

まず大きくあるのはコロナ禍ですよね。いかに患者の病床を確保し、医療崩壊を起こさせないか。1分1秒を争う命を救っていけるか。代替できない重要な医療ドメインですし、救急医療の重要性について、より活発に議論され、課題視されるようになりました。

一方で、急病人が救急車を呼び、搬送されるまでを「救急医療」とするなら、そこだけの取り組みでは足りないと私たちは考えています。そこで取り組んでいるのが「急性期医療」の領域です。

「急性期医療」とは、「救急医療」を含むより広い概念だと園生さんは言う。

医学的にいえば、より厳密な定義はあるのですが、シンプルにお伝えすると「救急医療」は患者さんから救急要請があり、病院に救急車で運ぶまで。「急性期医療」はさらに病院内での治療・リハビリまでを含むと捉えるといいでしょう。つまり、症状が出てから回復に至るまでトータルで見ていこうと。そういったソリューションを提供しているのが、私たち「TXP Medical」です。

具体的に「心筋梗塞」を例に解説をしてくれた。

たとえば、急に「胸が痛い」となった患者さんが救急車を呼んだとします。まずは救急車の中で搬送をしながら救急隊が心電図を取り、「心筋梗塞の疑いあり」と判断する。病院内に搬送され、心臓カテーテル室で施術し、集中治療室で治療。その後、一般病棟に移ってリハビリを行い、回復していく。ざっくりとですが、このような流れになります。

ただ、ここで大きな問題になるのが、

「胸が痛み出した時刻はいつか」
「救急要請までの時間はどのくらいか」
「救急車内での心電図の値はどうだったか」
「救急隊はどのような処置をしたか」

など、正確なデータがない、もしくはデータがあっても病院側へとスムーズに連携されていない。手書き、口頭のやり取りが中心なので、集中治療室辺りからようやくデータが整い、精密に取れるわけです。つまりこの「医療データの分断によって、救えたはずの命が救えなかった」ということを未然に防ぐ、そのためのソリューションを提供しています。

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この「医療データの分断」だが、たとえば、救急隊がタブレット端末・スマホなどで病院に情報を送ればいいのでは?とも考えられる。ただ、話はそう簡単ではない。

まず、1分1秒を争う救急医療の現場で手間を増やすわけにはいきません。最優先は人命。紙や口頭のほうが早いですし、合理的なんですよね。中途半端に電子化するとむしろ面倒くさくなります。さらに救急隊を派遣する自治体ごと、病院側ごとにシステムや業務フローは異なるので、連携は難しい。ただ、だからこそやる意味がある。いかに現場で業務をしながら「自然にデータが集まる気の利いた仕組み」を作ることができるか。ここが鍵を握ります。先ほどの心筋梗塞を例に考えると、これまでわからなかった、

「胸痛を訴えてから救急搬送まで30分かかった」
「救急隊員が心筋梗塞であると判断ができなかった」
「心筋梗塞とわかったが、多くの病院が受け入れなかった」
「患者が心臓カテーテル室に行くまで1時間以上かかった」

などが明確になれば、市民への啓蒙が不足しているのか、救急隊の医学レベルが低いのか、病院側の受け入れに問題があるのか、院内での受け渡しに問題があるのか、タイムログと処置のデータが集まれば、「医療の質」を可視化され、どこに介入すればいいかわかるようになる。ボトルネックが明らかになる。ここに大きな価値があります。それが私たちが目指すデータプラットフォームのあり方です。

※プロダクト詳細は記事末をご確認ください。

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TXP Medical 代表取締役 園生 智弘
1985年東京生まれ 2010年東京大学医学部卒業。東京逓信病院、東京大学病院・日立総合病院で主に救急集中治療の臨床業務に従事。日本救急医学会救急科専門医、集中治療医学会集中治療専門医、米国臨床研究許可証(ECFMG certificate)、東京医科歯科大学客員准教授。臨床業務の傍ら、急性期向け医療データシステムの研究開発や、救急外来、医療データベースの構築をテーマとした英語論文の執筆・指導を行う。急性期データシステムの提供と医療データ関連事業の実施を目標として、2017年8月に自身で開発したNEXT Stage ERを中心に事業化、TXP Medicalを創業。

スタートアップではあり得ない「400床以上の大病院」でのシステム導入の裏側

たった一度の商談機会を得ることさえ困難とされる大病院。なぜ、彼らは入り込むことができているのか。そのうち約1割以上の病院が既に同社開発のシステムが導入できているのか。その裏側を園生さんは明らかにしてくれた。

まず一番のポイントは、一般的な営業活動は行っていないこと。救急専門医たちが集まる学会での研究発表、広報活動、人脈を通じ、導入提案を行ってきました。アカデミックな場での営業活動により、導入実績をつくり、その件数も増やすことができました。もちろん当初は非常に厳しかったですが、今では「あの病院がやっているならウチでも」と良いループが生まれ、まさに導入に向けた相談が増えているところです。他社が入り込めない領域ですし、非常に優位性のあるポジションで活動できています。

また、私自身、臨床業務を十分経験した専門医であることも大きいですね。特に救急医療、急性期医療で政策を決めていくのは、地域で力を持つ医師たちです。私自身の言葉で「ペイン」が発信できますし、そこに対してもの凄く共感いただけるし、大きなリアクションがもらえます。「まさに求めていたシステムです」と非常に高い熱量、勢いで自分たちの病院への導入を推進してくださる先生方にも巡り会えた。はじめの10病院ほどはそういった方々の後押しがあってこそ導入が実現しました。

何よりも救急医療、急性期医療の充実は強く求められており、とくに収益があがっている病院では力を入れているところ。たった一つの病院でもITシステム関連の年間予算は数億円規模で動いており、救急医療、急性期医療の部門だけでも予算を増やし、対応を強化している病院も少なくありません。その急性期医療領域のデータプラットフォーマー、リーディングカンパニーを私たちは目指しています。

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病院・自治体向けのデータプラットフォーム事業に加え、もう一つの収益の柱となっているのが、製薬会社向けの医療データコンサルティングだ。「救急医療の現場データは唯一無二の価値があり、新たなデータビジネスの基盤になっています。特に製薬会社からすると疾患情報、実態を正しく知れる、これまでにないもの。急性期医療におけるリアルワールドデータ利活用の文脈でも、市場ニーズの高まりを肌で感じています。」と園生さん。

日本の救急医療を、世界に輸出していく

これまでにない「救急医療・急性期医療」に特化したデータプラットフォームを構築し、リーディングカンパニーを目指す。こういったTXP Medicalで働くやりがいとは。

スタートアップで働く上で重要なのは、本当に価値を生む製品やサービスが提供できるか。ここは非常に重要ですよね。スポーツでいえば、その競技において「全国制覇」が狙える強豪校か。その点、TXP Medicalは、急性期医療領域のデータプラットフォームで全国制覇が充分に狙えます。救命救急センターや自治体といった区切りでみても、その過半数以上でプロダクトが導入が目前に見えている状態。さらにこれだけ社会的意義のあるサービス、このフェーズのスタートアップで携われる機会は、手前味噌ですが、かなり希少だと思っています。医療業界での経験は問いませんので、ぜひチャレンジいただきたいですね。

そして伺えたのが、さらに先のビジョン。彼らが見据えるのは、日本の救急医療の輸出だ。

日本の救急医療を海外へと輸出していく。ここはかなり強く意識しています。日本の救急医療はまだまだデジタル化が進んでいないとはいえ、質はすごく高い。病院と自治体連携の仕組みにせよ、医療制度にせよ、世界的に見ても優れているところが多いです。さらにデジタル化、データ活用を通じた可視化ができれば「人」と「システム」の標準化が進み、グローバルに発信しやすくなりますし、求められると考えています。たとえば、東南アジア諸国など、多くの島を抱える国ではドクターヘリが足りていないし、購入できたとしてもオペレーションが整っておらず、機能していない現状があると聞きます。それは世界の急性期医療において福音になるはずです。「助かる人」が当たり前に「助かる世界」を作りたい。そのために日本の人、技術、システム、場合によっては教育も含めて輸出していく。

もちろんビジネス観点でも、今後、国内市場が飽和していくなかで世界で勝負していくのは必然ですよね。そもそも日本には多くの病院がありますし、成熟しているからこそ、効率化が主な焦点となります。一方で、東南アジア諸国をはじめ、急性期医療における多くの問題を抱えた地域では、まだまだ改善の余地が多くあり、これから市場が拡大していくでしょう。救急医療が整うことで、平均寿命が5年ほど伸びる地域もあると言われています。そういった「人類の課題」への挑戦にこそ燃えますし、ぜひ今回加わっていただく方とも一緒に挑んでいければと思います。

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求める人物像・選考のポイントについて園生さんは「医療関連の知識や経験は不問です。ぜひ安心して応募してきてください。」と語る。「医者が多く関わっているのもTXP Medicalの特徴です。常勤医師が6名、非常勤を含めると約30名が在籍しています。臨床医でありながらデータ解析や機械学習のエキスパートもいますし、研究分野で世界的に活躍しているメンバーなどもいます。医療関連の知識はそういったメンバーと連携していければ問題ありません。ただ、「ここが強み」といった部分はぜひアピールしてほしいですね。私たちが成し遂げようとしている挑戦のレベルは非常に高い。だからこそ「エッジ」が効いた能力や個性を持つエース集団を志向していければと思います。」

TXP Medicalの事業概要/プロダクトについて

TXP Medicalでは大きく、

【病院・自治体向け】データプラットフォーム事業
【製薬企業向け】医療データ利活用・コンサルティング事業

を展開する。

▼【病院・自治体向け】データプラットフォーム事業
「NEXT Stage」シリーズを展開。病院向けには「急性期病院向け救急外来システム」「ICU患者ダッシュボード」などを導入支援。自治体向けには「救急隊連携システム」「転院搬送支援システム」を展開する。この「患者を受け入れる病院」と「搬送する救急隊」でのデータ連携を支援することで、「医療データの分断課題」の解決に取り組む。その他、病院DX、臨床研究システム、オンコロジーDBシステムなども展開している。

▼【製薬企業向け】医療データ利活用・コンサルティング事業
医療データサービス、治験支援サービスを展開。前者では医療実態調査やデータベース研究支援に対応。後者では急性期疾患の治験に対する症例登録の加速、タイムリーな同意説明・治験エントリーにつなげていく。また、急性期以外の医療データサービスにも対応しており、ハイクラス医療機関(国公立含む)の全診療科を対象にした医療実態調査、データベース研究支援、マーケティング支援も、現在進行系で新たな収益の柱として急拡大を続けている。

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