INTERVIEW
国土交通省

国交省職員として、海外留学も経験。日本の鉄道インフラを世界へ――元システムエンジニア職員が抱く志

掲載日:2024/08/08更新日:2024/08/08

国土交通省(以下、国交省)における「総合職事務系」中途採用にあたり、特別インタビューをお届けする。今回取材したのは、鉄道局 国際課 国際協力政策調整官として働く加賀谷洋輔さん(34)。もともと大手システム開発会社で勤務していた彼は、なぜ、国交省でのキャリアを選択したのか。そこには「制度面からも人々の生活の利便向上に貢献したい」という思いがあった――。

制度面から、新たな技術・サービスの社会実装支援を。

前職、大手システム開発会社にてシステムエンジニアとして働いていた加賀谷さん。なぜ、次のキャリアとして国交省を選択したのか。そこには制度・法令など「ルールをつくる側」から新たな技術・サービスの社会実装を支援していきたい思いがあった――。

もともと前職は大手システム開発会社で勤務しており、自動車保険関連のシステム開発・企画に携わっていました。たとえば、「自動車による交通事故が起きた時、どうすぐにレッカー車を手配できるようにするか」「いかにコールセンターとスムーズに連携するか」など、事故対応などで困っている方の役に立つ仕組みを考えて実装していく、非常にやりがいのある仕事でした。また、会社全体の事業としては金融、流通、小売、医療、不動産、官公庁など、あらゆる業界に対して業務改善の提案をしていける部分にも面白みがあると感じていました。

ただ、同時に感じるようになったのが、人々の生活に役立つシステムやサービスがあったとしても、社会全体の制度や法令が整備されないままだと、社会実装が進まないということです。たとえば、自動車の「自動運転」がわかりやすいですよね。さまざまな検討、検証が必要ですし、安全面なども考えるとより「ルール」が重要になります。技術的に可能でも、制度や法律が変わらなければ社会は変わらない。そういった未来を左右するような政策に携わっていきたいと考えるようになりました。

特に国交省は、身近な社会インフラを安全・安心に維持管理していく「守り」から、インフラ輸出分野など「攻め」まで管掌する分野・領域が非常に多岐にわたりますよね。そういった多面性に惹かれ、入省を決めました。

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前職から感じたギャップはあまりないという加賀谷さん。「人々の生活を便利にし、豊かにしていくのはシステムの仕事も、行政の仕事も同じ。もちろん民間企業は利益を追求するのでアプローチは大きく違いますが、どちらの仕事も私が働く上での軸に沿っていると思います。」と語ってくれた。

海外留学を経て、鉄道局 国際課へ

こうして2018年、国交省に入省した加賀谷さん。入省後は地域の公共交通の法改正や補助金事業のほか、自転車レーン整備など自転車活用によるまちづくりの推進などを担当した。そして2022年には海外留学制度を活用し、米国・シカゴへの留学も経験している。

もともとインフラ輸出など国際的な業務にも興味があり、機会があれば海外で学びたいと考えていました。また、日々業務に向き合う中で、「政策の目的は達成されたか」という評価にもっと向き合うべきではないかという問題意識が芽生えました。そこで、計量経済学をはじめとする政策分析手法を体系的に習得したいと考え、2022年よりシカゴ大学公共政策大学院に留学をしました。

この留学では本当に多くのことが学べましたね。語学はもちろん、計量経済学もそうですが、途中から興味が湧いて学んだインフラ開発の国際関係学に関する知識は今の業務でも活きています。また、アメリカ人のほか、各国の政府機関などから派遣されてきた留学生も多く、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと友人になり、活発に議論できたことも貴重な経験でした。まだ帰国して2ヶ月と経っていないので、そこで築いた人脈が業務に活きているわけではないですが、ゆくゆくは国際的な交渉や調整の場などで彼らと再び会えたらうれしいですね。

2024年6月に留学を終え、帰国した加賀谷さん。現在は鉄道局 国際課にて、日本の鉄道システムの海外展開の推進、輸出支援を担っているという。

日本の鉄道インフラは、安全性・信頼性、そして大量輸送、定時運行などが海外からも高く評価されています。そういった鉄道インフラやシステムを、どのように海外展開していくか。輸出していくか。相手国政府との対話や国内企業との連携を通じ、鉄道事業の受注に向けた協力を行なっています。その他にも、日本企業が参画可能な新たな案件の発掘・形成、鉄道技術の国際標準化、人材育成に向けた取り組みなども担っています。

日本の鉄道会社は民間の場合が多いですが、海外だと政府が運営しているケースが多く、輸出交渉などは、政府間でのやり取り・調整が必要となります。もし、日本の民間鉄道会社が直接、相手国とやり取りしてしまうとフェアな交渉ができないケースも。そこで政府として間に入り、対話を通じ、プロジェクトを推進させていく。これは国益にも繋がる重要な取り組みとなっています。

現在、中国などもインフラ輸出を強化しているなかで、いかに日本として存在感を示していけるか。たとえば、世界の鉄道市場においてオペレーション&メンテナンスの市場が大きくなっていますが、まさに日本の強みが活かせるところ。そういった強みを活かしつつ、スピード感を持って取り組んでいければと考えています。

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立案に関わった政策が社会に実装されていくやりがい

これまでさまざまな部署での業務や留学を経験している加賀谷さん。国交省での仕事のやりがいについて「立案に関わった政策が社会に実装されていくこと」と語ってくれた。

国交省に限らずかもしれませんが、やはり立案に携わった政策が、日本社会における重要な意思決定、未来に関わってくる部分は非常に大きなやりがいにつながっていると思います。

わかりやすいところでいえば、以前、自分が作成に関わった原稿が、総理の口からも発せられ、実際の政策に落とし込まれていくことも。私だけが政策を決めているわけではありませんが、世の中の動きに影響する意思決定の大きな流れに関与できる部分は醍醐味だと言えます。

また、国交省では不動産 、道路、河川、港湾、鉄道、空港など、非常に身近なものを扱っていくことができます。私自身、街並みや風景など世の中を「見る目」が大きく変わったようにも思います。私は自転車が趣味なのですが、走るときに道路の整備状況など以前よりも気にして見るようになりました。また、以前、地方のコミュニティバスの運行を視察したことがあったのですが、人口が減少し、限られた予算の中、どう効率的に公共交通をマネジメントしていくか、という課題があり。地方に旅行したときに、ここで車を持たない住民の方はどう移動しているんだろう、という視点でも見るようになりました。

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「官公庁での仕事は、さまざまなことが経験できるため、視野を広げたい、多岐にわたる経験を積みたいといった方にはとても魅力的な環境だと思います。2年、早ければ1年で部署が変わることもあり、出向や留学などの機会もあります。キャッチアップするのは大変ですが、非常に刺激的だと思います。」と話をしてくれた加賀谷さん。一方で、事前に知っておくべき厳しさについて「行政による意思決定は、多く国民の生活に直接影響を与えるもの。ですので、決定までのプロセスも非常に重視される。ここは民間企業との大きな違いだと感じます。」と加賀谷さん。「また、決して時間が掛けられるものばかりではありません。タイトなスケジュールの中で、物事をどう着実に進めていくか。どうクリティカルパスを特定し、計画を立てていけるか。このあたりは前職のプロジェクトマネジメント経験も活きているように思います。」

生きた証として、人の役に立つことを

そして最後に伺えたのが、加賀谷さん自身にとっての「仕事」とは――。

私にとって仕事は、自らの人生を形づくる大きな要素だと思っています。あらためて考えてみると、仕事とそれ以外をあまり切り離していないのかもしれませんね。

そのなかでもやるからには生きた証として、少しでも人の役に立つことができたらいいなという思いがあります。それはシステムをつくる仕事も、政策をつくる仕事も、共通している部分です。「人の役に立つ」は、何も日本に限った話ではないはず。さまざまな国の方々がより「便利になった」と感じてもらえるよう、日本から鉄道インフラやシステムを届け、活用いただければ非常にうれしいです。そういった、人々の身近にある社会インフラを支え、生活の利便や豊かさにつなげていけるような仕事を志していければと思います。

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