INTERVIEW
警察庁|2024年度 「総合職」募集(係長級・課長補佐級)
警察庁が「総合職」募集を開始。求めるのは、複雑・多様化する治安課題に挑む、幹部候補人材
掲載日:2024/09/19更新日:2024/09/19
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急激に変化する社会情勢に対応し、日本の治安、国民の安全・安心を守っていく――警察庁が、民間企業をはじめ、様々なバックグラウンドを有する多様な人材の中途採用を実施する。2023年度より開始した取組であるが、なぜ、今回も公募することに至ったのか。どういった人材を求めているのか。長官官房人事課で採用業務も担当されている若林裕吾警視正にお話を伺った。
警察庁について
全国警察組織の中枢である国の機関。警察制度の企画・立案のほか、国の公安に係る事案についての警察運営、警察活動の基盤である教育訓練、通信、鑑識等に関する事務、警察行政に関する調整等の役割を担う。
公募ポジションについて
幹部候補となる「総合職」の募集となる。政策の企画・立案を牽引し、業務のマネジメント等を担う「課長補佐級」、民間企業等で培ってきた柔軟な発想力、実行力を活かして政策を企画・立案する「係長級」の2ポジションの募集。ジェネラリストとして警察庁における多様な分野で業務経験を積み、警察組織を率いていくことが期待される。
選考について
幅広い人材からのエントリーを募り、「これからの警察庁に必要な人材」の確保を図るため、一般的な国家公務員試験で課される教養試験や専門試験といった筆記試験はなく、警察庁独自の選考採用試験を実施。面接・小論文を用いて一般企業に近い形での選考を行なう。面接では、民間企業等でどのような業務に携わっていたのか、そこで成し遂げたことは何か、それを警察庁でどのように活かしたいのか、警察庁でどのようなことを実現したいのか等の質問が想定される。
入庁後について
本配属までの準備期間として、まずは1ヶ月半ほど警察大学校にて警察での勤務に必要な基礎的教養を実施予定。その後、都道府県警察(警察官の場合)または情報通信部(技官の場合)で勤務し、本配属へ。現場業務、内容の理解を深め、最前線の経験を積むことを重視していく。
警察庁が求める、多様な人材
2023年度から実施し、2度目となる警察庁における「総合職」の募集。はじめに今回の公募に至った背景、そして求める人物像から若林警視正に伺うことができた。
実空間と融合するサイバー空間の拡大、少子高齢化等の進展による社会構造の変容、道路交通における新たなモビリティの出現、匿名・流動型犯罪グループの台頭、国際情勢・テロ情勢の変化など、治安課題は複雑・多様化しています。
社会が大きく変化していく中で、警察としてもそれらの治安課題に対して的確に対応することが求められています。そのためには警察も変わり続けることが不可欠であり、多様な人材の確保・育成が必要になっています。組織に新たな変革をもたらす取組として、総合職(課長補佐級、係長級)の中途採用を2023年度から開始しました。民間企業等での多様な知見・能力を有する方々を広く募るため、今年度も公募を実施することになりました。
求める人物像としては、総合職ですので、警察業務に広く携わっていきたい方、ジェネラリストとして業務経験を積み、将来幹部として警察組織を引っ張っていく意欲を持った方を想定しています。より具体的には、「係長級」では柔軟な発想力、実行力を活かした企画・立案業務等に期待しています。また、「課長補佐級」では先の業務に加え、業務のマネジメント力、部下の指導・育成能力にも期待しています。そして、いずれのポジションにおいても、総合職として、多様な業種・業界での経験を活かして、発想・企画・実行能力等を発揮するとともに、警察庁や都道府県警察での経験を積んでいただきたいです。
急激に変化する社会情勢にいかにして対応することができるか。そして日本の治安、国民の安全・安心をいかにして守っていくことができるか。治安課題がますます複雑・多様化していく中、様々な問題を紐解き、解決していく。そのためにも、課題に向き合い、政策の企画・立案等にぜひ経験を活かしていただければと思います。
「さまざまな分野を経験していただくため、何事にも興味を持てる方、チャレンジ精神がある方を求めています。」と若林警視正。「また、危機管理官庁でもあるため、突発的な事件、事故、災害等が発生した場合は、その対応にあたることもあります。正義感、使命感を持ってそういった任務にあたれる方が活躍できると思います。」
国民の安全・安心を守るために
続いて伺えたのが、警察庁で働くやりがいについて。
警察庁では、どの部署で何を担当していても「国民の安全・安心を守る」という大きな使命を持って仕事をすることができます。実際、職員たちの志望動機として多いのも「人の役に立つ仕事がしたい」「被害者の痛みや思いに寄り添いたい」といった思いや志です。私自身も事件や事故に巻き込まれ、悲しい思いする方を一人でも減らしたいといった素朴な思いで入庁した一人でもあります。改めてですが、どのような分野に携わったとしても「国民の安全・安心を守る」という目的が明確にあり、現場業務はもちろん、政策等を通じて治安への貢献が実感できるという点は大きなやりがいになるはずです。
また、他の省庁との大きな違いでいえば、都道府県警察等の現場での勤務を自らできる点が挙げられます。実際、世の中ではどういったことが起きているのか。どういった課題があるのか。交番や警察署などで事件・事故に対応する中で、これらを肌身で実感し、その後の霞が関勤務における地に足のついた政策立案に活かすことができます。
もちろん、時には厳しい現場に立ち向かうこともありますが、経験を通じた成長がそこにはあるはずです。そして得たものを、さらに次のステップに還元していく。その方の希望・適性に応じて、全国の都道府県警察等での勤務はもちろん、海外勤務のチャンスもあり、経験の幅を広げる機会が豊富にあります。ぜひ「人の役に立つ」多様な勤務に刺激を受けながら、ご自身の成長やキャリアにつなげていただければと思います。
「皆さんが生活をされていく上では、事件や事故に巻き込まれず、警察を意識しないで過ごしていただけることが理想です。ただ、万が一問題が起こった際には、警察が迅速に対応し、解決していきます。普段は意識をしなくても、実は身近な存在として安全・安心を守っているという警察の重要な役割に共感していただける方をお待ちしています。」
警察庁の「これから」を担っていく存在として
そして最後に伺えたのが、若林警視正自身の過去の仕事でのエピソードについて。そこには「国民の安全・安心を守る」という使命感、そして大切にしている仕事との向き合い方があった――。
私自身、警察庁における職務には非常に重要な意義、そして使命があると考えています。それを強く感じた経験の一つが、東日本大震災時の対応でした。当時、岩手県警察の捜査第二課長として勤務していたのですが、県警本部で情報収集をし、応援部隊を沿岸部に派遣するといった調整にあたりました。そこで目の当たりにしたのが、岩手県警の職員たちが昼夜問わず、懸命に対応する姿です。そして、全国の都道府県警察も発災と同時に準備を始め、すぐに被災地に応援に駆けつけました。また、警察活動に必要な的確な情報の入手、意思疎通のために、技術系職員が通信を確保していく姿もそこにはありました。未曽有の大災害に対し、全国警察が一丸となって対応していく。それぞれが最大限の力を発揮し、迅速に行動にあたっていく。世の中には「自分の力」だけではどうにもならないことがあります。その時、安全のための最後の砦となるのが警察なのだと強く認識し、警察が担う職務の重要性、責任、そして意義を改めて実感する経験となりました。その後、警視庁サイバー犯罪対策課長在任時には、不正プログラムによるサイバー事案や仮想通貨などの新たな技術を悪用した犯罪に対応しました。この時は、新たな手口の犯罪を工夫を凝らしながら検挙したり、仮想通貨取引所と情報交換のための協定を結ぶなど、現場の捜査員の意見を聴き、議論をし、捜査員と共に世の中の変化に敏感に・臨機応変に対応することができました。警察というと古くさい、個人の意見が通りづらいといったイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は職員が意見やアイデアを出し合って新しいことに取り組んでいます。
このように、複雑・多様化する治安課題に挑み、これからの警察組織を率いていきたいという気概を持つ方々をお待ちしています。ぜひ業種・業界を問わず、様々なバックグラウンドをお持ちの方々にご応募いただければと思います。
若林警視正に聞く、民間出身職員の「声」
昨年度開始した総合職の中途採用により実際にこの春入庁した職員2名は、民間企業での勤務経験者であり、警察や公務員としての勤務経験はありませんでした。前職にもやりがいを感じていたそうですが、「より直接的に人の役に立ちたい」「社会に貢献したい」といった動機で警察庁に応募したといいます。採用面接、内定後の職員面談・懇親の場等については「想像していたよりも和やかであり、イメージが変わった」という声もありました。ですので、先入観なく、ぜひご応募いただけることを期待しています。
また、入庁後になりますが、スムーズに職場や仕事に馴染んでいただけるよう、社会人経験年数・年齢をベースに、新卒採用で入庁した同年代の職員とも「同期職員」としてつながり、コミュニケーション、意見交換ができる場を設けています。
もともと警察に興味を持っていた方はもちろん、今回の公募情報で初めて興味を持った方もぜひご応募ください。これまでの経験を活かしつつ、警察庁での幅広い経験を通じ、今後のキャリアを積んでいただければと思います。(警視正 若林裕吾)