掲載日:2024/11/07NEW更新日:2024/11/07
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国土交通省(以下、国交省)が、2024年の中途採用を実施へ。同募集にあたり、国交省 観光庁国際観光部参事官付 課長補佐として働く片岡卓也さん(34)を取材した。もともと東京都庁の職員として勤務してきた片岡さんだが、なぜ、国交省でのキャリアを選択したのか。そこには「国家規模の防災・社会インフラ施策に携わっていきたい」という思いがあった――。
国家規模の防災・社会インフラ施策に携わる選択
8年間、東京都庁の職員として勤務後、国交省へと入省した片岡さん。そのキャリア選択の裏側にはどういった思いがあったのか。
より広域にわたる防災や社会インフラ施策に携わっていきたい。そう考え、国土交通省を志望しました。そのきっかけになったのが、令和元年の秋に襲来した台風19号(令和元年東日本台風)です。当時、記録的な雨が降り、都内など下流部の河川は今まで見たことがないほど水位が高くなったのですが、同時に、群馬県にある八ッ場ダムが一気にほぼ満水になるほどに水を貯め込んだことも大きな話題になりました。私は草津温泉が好きでよく行くのですが、その道中にある八ッ場ダムのことは建設中から見ていたので、なおさら印象的な出来事でした。そして、こうした上流部を含めた広域なインフラのネットワークと治水設備が機能しなければ、都心部の水位はもっと高くなり、悪ければ氾濫してしまったのではないかと、一自治体に留まらない広域的な視点での治水がいかに重要であるか痛感するとともに、国家規模で防災や社会インフラを考えていく、そういった仕事に従事したいという思いが次第に強くなっていきました。当時、私は都庁の職員でした。もちろん、自治体には自治体の役割がありますし、自治体だからこそできる仕事もあります。特に東京都は財政余力があり、新たな事業を立ち上げるなど、積極的なチャレンジがしやすい自治体だと感じていました。一方で国での仕事は、法律・法令、制度など「仕組み」を通じ、世の中全体の意識、行動、ルールにアプローチをしていくことができる。言い換えると、それらは国でしかできないこと。こうした国だからこそできないことに従事してみたいと思い、国土交通省への転職を決意しました。
国交省 観光庁国際観光部参事官付 課長補佐として働く片岡卓也さん(34)。「まちづくりに携わりたい」という思いから東京都庁に入庁。2年間、区画整理を担当し、その後は秘書業務や経理業務を担当。「不動産 、道路、河川、港湾、空港…など、いずれも生活に密着しており、国土交通省の仕事を目にしない日はありません。いずれの分野にも強い興味関心があり、自分自身も楽しみつつ、より成長し続けられると考え、入省を決めました。」
トップダウンとボトムアップ、両面から社会の課題にアプローチを
こうして2021年4月、国交省に入省した片岡さん。国交省でこそ得られる「仕事のやりがい」について聞くことができた。
法律・法令・ガイドラインの施行、規制などと同時に、民間事業者が主体となる取組も支援していくことができます。つまりトップダウン、ボトムアップ、両面から社会の課題にアプローチができる。ここは国交省で働くことで得られるやりがいの一つだと思います。
たとえば、2021年4月に入省し、不動産・建設経済局へと配属となったのですが、いわゆる「サブリース新法(*)」施行から間もない頃でした。これはまさに悪質なサブリース会社や管理会社を規制する「トップダウン」の施策と言えます。
サブリース新法(*)…家主が正確な情報に基づいてサブリース契約を進められるよう制定された法律。サブリース業者や勧誘者による不当な勧誘や誇大広告の禁止、契約における重要な事項を伝えない、または事実とは異なることを禁止することなどにより、トラブルを防止している。(サブリース契約とは、家主が所有する物件をサブリース業者に貸し出し、サブリース業者が入居者に貸し出すもの。家主は家賃収入を得、サブリース業者は家賃収入を得ることができる。家主は管理作業を業者に委託でき、手間やコストをかけずに不動産賃貸業を営むことができる。一方で家主に十分な説明がないままサブリース契約が行われる、返済計画が途中で破綻するなどのトラブルが起こり、同法が施行に至った。)
一方で、規制の次に重要になるのが、より良い取組をしている管理会社を「ボトムアップ」で増やしていくこと。その一つとして『「ひと」と「くらし」の未来研究会』という検討会の立ち上げに携わりました。これは地域の新たな価値や可能性の創造に向け、不動産事業者やコミュニティづくりに貢献している地域の方々、有識者に集まっていただき、全国の先進的な好事例を調査してそれらの共通項を見出し、いかに各地に広げていくかを研究するというもの。そこでは多くの方々の熱意に触れることができ、この分野の奥深さ、おもしろさに触れられたように思います。
こうした先進的な取組を取り上げ、日本全国に広げていく「仕組みづくり」は国だからこそできること。しかも、研究会は入省後2ヶ月目に立ち上げ、初回から司会も任されたため、「入省後すぐにここまでやらせてもらえるのか」と驚きもありましたが、大きなやりがいがあり、その経験は今でも大きな財産になっています。
「地域価値を共創する不動産業アワード」という表彰制度の構想にもつながりました。私が異動した後も後任の職員が表彰を形にし、毎年アップデートも重ね、2024年にはアワードは第3回を迎えるまでになりました。加えて、知見やノウハウを共有する場として「地域価値共創プラットフォーム」の立ち上げも行われたところです。このように構想が形になり、継承され、多くの人の役に立っていく。共感の輪が国全体に広がり、新たな工夫や取組につながっていく。そういった瞬間に触れられるのは、国交省でこそ得られる働きがいですね。
一方で、国交省は1~2年ほどで異動があり、そのたびに専門的な新たな領域について深く、広く、短期間で学ぶ姿勢が求められる環境です。あたるべき資料やインプットすべき内容も膨大なものとなります。ですので、そういったことに苦手意識がある方は大変だと思いますが、知識や知見を広げていく、その過程を楽しめる方にとっては知的好奇心が刺激され、これ以上ない魅力的な職場だと思います。
2024年10月現在、観光庁国際観光部参事官付 課長補佐として「統合型リゾート(IR)」関連業務を担当しているという片岡さん。「よく新聞記事等では“カジノを含む統合型リゾート(IR)”と説明されることが多いですが、ホテル、レストラン、ショッピングモール、エンターテイメント施設、カジノなどで構成される、民間事業者が一体的に設置し、運営する施設群について、国として計画の実施状況の評価等を行っています。日本における新たな取組でもあり、それらがどのようにして進み、受け入れられるか。長期的な視点での仕組みづくりに関われることは非常に有意義だと感じています。」
日本の将来のため、後世に残る仕事を
そして聞けたのが「今後の目標」について。仕事を通じて、片岡さんは「日本の将来のため、後世に残る仕事をしていきたい」と話す。
改めて国交省での仕事は日常生活と密接に関わるものですよね。たとえば、道路一つ取っても人々の生活に欠かせないものです。そんな風に「このインフラや仕組みがあって良かった」と後世の人たちに言ってもらえるような仕事をしていきたいと思います。考えてみれば、私たちが普段歩いている道路も、過去に「道を作ろう」と考え、実行した人がいたからこそあるものですよね。道路、河川、港湾、空港…あらゆる建造物・インフラは、先人たちによる積み重ねがあるからこそ存在し、今の豊かな暮らしにつながっています。未来を生きる人たちも、同じように豊かさを享受できるようにしていきたい。100年後、200年後も、この道を誰かが歩いていく。日本の将来のために、そういった積み重ねに貢献をしていけるよう、より多くの経験を積み、知識を身につけ、成長していきたいと思います。
最後に、国交省への応募を検討する方へのメッセージとは。
私自身、転職に至るまで、とても悩みました。ただ、最後は「自分の気持ちに嘘をつかないこと」が大切だと思います。回り道もしましたが、考え抜き、葛藤した先に今があり、とても充実した日々を過ごすことができています。また、どういった経験も必ず活かすことができるはずです。実際、東京都庁で働いた8年間は全く無駄にはなっていません。たとえば、都庁でははじめの2年間で、区画整理に伴って住民の方々に移転をお願いしていく仕事を経験したのですが、その時に学んだのは、安全なまちづくりや未来のために誠心誠意思いを伝えていくことです。ルールや計画で決まっている、ということを伝えるだけでなく、共感を得ることの大切さを、身をもって知ることができました。その後、区画整理が進み、まちの風景が大きく変わっていく様子を眺めながら、公務員の仕事の責任と、自分一人ではなしえないことも多くの人と協力することで前に進められることを痛感しました。これらの経験は現在の仕事にも活きています。これまでの経験を活かしつつ、国家規模のインフラ施策に携わっていきたい。そんな思いを心のどこかに抱いている方は、ぜひ国土交通省の中途採用に応募いただければと思います。