INTERVIEW
総務省|総合職(課長補佐級・係長級)中途採用

総務省で、地域社会の課題解決を。スタートアップ、総合コンサルティングファームを経て彼女が選んだ道

掲載日:2024/11/18NEW更新日:2024/11/18
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情報通信、行政制度、地方自治、消防など「国民の生活インフラ」を支える総務省。同省にて行われる総合職公募(課長補佐級・係長級)にあたり、ITベンチャー、スタートアップ、総合コンサルティングファーム(公共部門)を経て、2024年に入省した鈴木 綾奈さん(地域通信振興課デジタル経済推進室課長補佐)を取材した。なぜ、彼女は総務省を次なるキャリアに選択したのか。そして総務省でこそ得られる「働きがい」とは――。

地方創生 × デジタルの経験を活かす「総務省」という選択

新卒にてITベンチャーに入社後、スタートアップ 、そしてコンサルティングファーム(公共部門)にてキャリアを築いてきた鈴木さん。そもそも、なぜ霞が関を志すようになったのか。そのきっかけから聞くことができた。

前職では、総合コンサルティングファームの公共部門に所属していたのですが、ご縁があり、内閣官房のデジタル田園都市国家構想実現会議事務局(現 内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局)に出向する機会をいただきました。

当時担当していたのは、デジタル田園都市構想の実現に向けた交付金に関連する業務全般だったのですが、出向したタイミングが、経済産業省が「スタートアップ育成5か年計画」の策定に向け準備を進めている時期で、地方創生やデジタル推進の文脈でもスタートアップのサービスを活用していこうという動きがありました。たまたまその制度設計を担当することになり、スタートアップで働いていた経験を政策づくりに活かせたことが、自分にとってひとつの成功体験につながったように思います。出向先の上司は総務省の方だったのですが、ありがたいことに一から手取り足取り指導してくださって、何度も素案を作り直しながら制度を設計し、施策に反映した後、その効果を検証するまでの一連の経験を積むことができました。

そして、特に幸運だったのが、内閣官房は各省庁からの出向者で構成されているため、さまざまな省庁の職員の方々と仕事をする機会に恵まれたということです。心から頼りにできる同年代の補佐たちや、当時の上司・幹部、他省庁とのコミュニケーションに大いに刺激を受け、彼らと同じ環境で働きたいと考えるようになりました。この約2年間の積み重ねのなかで、霞が関での仕事の楽しさに触れ、改めて「居場所を霞が関に移そう」と決意しました。

その中でも、なぜ「総務省」だったのだろうか。

これまで自分が携わってきた、地方創生 × デジタルの経験・スキルセットが活かせる場として、総務省を志望しました。というのも、現在は一部デジタル庁との役割分担もありますが、特に情報通信については、総務省が長きにわたって取組みを進めてきた領域。脈々と築き上げられてきた歴史や施策の背景、ICTの技術を知る先輩方が多くいらっしゃいます。また、同時に若手の意見が尊重され、活発にディスカッションを行う文化もある。総務省であれば、多くの「縦」と「横」のつながりのなかで、関係省庁と連携しながら、さまざまな施策に関与できるチャンスがあるのではないか。そう考え、入省を決めました。

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鈴木 綾奈(地域通信振興課デジタル経済推進室課長補佐)
在学中からNPO法人での長期インターンにて自治体の移住・定住支援事業に携わり、2015年、WEBメディアを運営するITベンチャーに新卒入社。WEBライティング、広告営業を経て、公共部門に異動。主に観光、子育て、ふるさと納税、地域通貨など、自治体の情報発信を中心とした事業の企画運営、サービス設計等に関わる。2018年よりフリーランスとして、大学発AIスタートアップ等にてサービス開発、営業などを経験後、2019年に総合コンサルティングファームの公共部門に転職。主に官公庁、自治体向け案件にてアドバイザリー業務に従事。在職中には内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局に出向し、地方創生×デジタルの領域にてスマートシティ推進等の業務に従事。 2024年より現職。

「医療DX」と「パーソナルデータの利活用」の推進を

続いて聞けたのが、現在担当している業務について。大きく2つのテーマを担当していると鈴木さんは話す。

まず医療DXの領域では「遠隔医療における通信環境の整備」などを担当しています。全国的にも地域医療における医師の不足や偏在が課題となっていますが、その解決手段として、遠隔医療の普及のための環境整備に携わっています。まさに先日、長崎県の五島列島の取組を視察したのですが、バスが減便するなど、高齢者の定期通院にあたる移動負担という課題に対し、医療MaaSを活用したオンライン診療が進められています。特に現場で見て驚いたのが、「遠隔聴診器」という機器です。その聴診器を患者さんの胸に当てると、離れた場所からでも医師が心音を聞くことができます。また総務省の研究開発では、ロボットを使用した遠隔手術などの実証実験も支援しています。このようなテクノロジーを医療現場で活用していくためには、安定した通信環境の整備が必要です。技術面の検証のみならず、DtoDの遠隔医療やオンライン診療の導入にあたる検討事項や手順等に関する情報支援も役割として担っています。

もう一つ、私が担当しているのは、PHRデータ(*)をはじめとしたパーソナルデータの利活用です。身近なところでいえば、近年、ウェアラブルデバイスの普及や、マイナポータルの利便性向上などもあり、さまざまなパーソナルデータがスマートフォン上のサービスに記録・連携できる仕組みが広がっています。たとえば、毎日の血圧や心拍の測定データ、症状の経過などのいわゆる「ライフログデータ」が、医療の現場で活用されることにより、診療の高度化につながる可能性もあります。一方で、いかに安全にデータを流通させ、利活用していくか。特に健康・医療分野のデータは機微な個人情報を含むため、その取扱いは慎重に行う必要があります。「利便性」と「倫理観」のバランスに加え、プライバシー等の「安全性」をどう確保するか。そのための環境整備・指針の策定などにも携わっています。

(*)PHRとは、PersonalHealthRecordの頭文字をとった略語で、個人の健康・医療・介護に関する情報を指す。

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遠隔医療について「離島の病院と、本土の大学病院の専門医師を遠隔でつなぎ、診察を行う取組みもあります。たとえば、脳神経内科では、4Kカメラの高精細映像で瞳孔の動きを判断するようです。」と話をしてくれた鈴木さん。「社会実装段階となると、サービスを継続するための財政面での仕組みづくりも重要なテーマとなります。現場のニーズを踏まえつつ、さまざまな視点からの検討や議論が必要だと個人的には考えています。」

ユーザーにも、事業者にも、寄与できるルールづくりを

総務省での仕事について「過去のキャリアを含め、それらの経験を活かしつつ、抱いてきた思いを形にしていくやりがいがある」と鈴木さんは言う。

まだ「生成AI」もない時代でしたが、AIスタートアップで働いていた経験があり、当時は「将来、AIが社会実装され、さまざまな分野のデータが利活用される世の中が来る」と信じていました。小さなオフィスでその夢を思い描き、「どうビジネスとして成功させるか」を仲間と考える日々を過ごしていました。その事業自体を大きくすることは、残念ながら叶いませんでしたが、巡り巡って国の担当者として「データを安心安全に流通させ、利活用できる仕組みづくり」に関われていることはとても感慨深いです。

日本の企業の9割以上が中小企業ですし、当然、その中にベンチャーやスタートアップも含まれています。そこで得た現場の解像度があるからこそ、ユーザー側の安全性を担保しつつも、事業者側のビジネス拡大の双方に寄与し、誰もがデータ活用の恩恵を受けられるような、サステナブルな仕組み・ルールの在り方を考えていきたい、という思いがあります。

霞が関の仕事だけでいうと、もちろん、基本的には脈々と続く歴史を知るプロパーの職員の方が得意な分野もあると個人的には思っています。他方で、情報通信は技術進化が激しく、新しい課題やその対応策が次々と発生し得る領域でもあるので、民間出身職員ならではの経験や新たな視点があると、より円滑に進められたり、早期に解決ができたり場面もあるかもしれません。そのような、ある意味「隙間産業的な立ち位置」で(笑)自分が貢献できる場を今後も見つけていきたいと思います。

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やりがいの一方、ミスマッチを避けるために事前に知っておくべき厳しさについて「レクチャー文化」と「テキスト文化」を挙げてくれた鈴木さん。「たとえば、過去の経緯や施策の概要、取組の進捗状況などを簡潔に説明する、いわゆる「レク」と呼ばれる業務があります。これは民間にはない文化かもしれません。あらゆる角度からの質問を想定し、効率よく情報をインプットして、いざという時に取り出せるように準備をしておきます。また、行政なので当たり前かもしれませんが、何事も速やかに「テキスト」に落とし込めるスキルが必要であり、みなさん言葉に対する非常に感度が高いです。簡潔で、筋が通っていて、人が納得できる“文章の書きぶり”に対する意識やこだわりが求められる環境だと思います。」

仕事で「地域課題の解決」に向き合っていく

そして聞けたのが「仕事を通じて実現していきたいこと」について。

振り返ってみると、学生時代から10年以上「公共分野」に携わるキャリアを歩んできました。NPO法人、ITベンチャー、スタートアップ、総合コンサルティングファーム、行政機関…いろんなレイヤーを経験しましたが、アプローチが違うだけで、地域や社会の課題解決といった本質的にやりたいことはずっと変わっていません。公共が大好きですし、それぞれの立場と環境で求められていること、やるべきことを理解し、自分のベストを尽くして、これからもこの領域に関わっていければと思います。

最後に鈴木さんが考える「仕事」とは――。

私が考える仕事とは「自分のやりたいこと」と「できること」と「実現できる可能性の高い環境に身を置くこと」の掛け算だと思っています。学生時代は公共政策大学院で文化人類学を勉強していたのですが、いろいろな組織や地域の風土に溶け込み、調査研究することがとても好きでした。そういった意味でも「コンフォートゾーンにいるよりも、未知なる環境に飛び込み、越境し、何となく波に乗っていける」という部分が、私の強みなのかもしれません。その組織の作法、文化、価値観をよく理解し、適応していく。そしてまた新しい環境で影響を受けながら、関心のある領域を掘り下げていく。こういった部分を大切にしながら、これからも総務省で力を発揮していきたいと思います。

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