INTERVIEW
Ridilover(リディラバ)

なぜ、外資PR会社から「リディラバ」に? 事業開発 × 構造化で挑む「社会課題」の解決アプローチ

掲載日:2025/05/20更新日:2025/06/10
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「社会の無関心の打破」を理念に、これまで約400種の社会課題を扱ってきた「リディラバ」。政府、自治体、企業、非営利団体など、さまざまなプレイヤーを巻き込み、社会課題解決にアプローチしていく。今回取材したのは、同社の事業開発チームで活躍する廣島由希さん。もともと外資PR会社でキャリアを積んできた彼女は、なぜ「リディラバ」に入社したのか。そこには「社会は変えられる、本気でそう思いアクションをする人を一人でも増やしたい」という思いがあった――。

「リディラバ」について

「社会の無関心の打破」を理念として2009年に設立し、後に法人化した「リディラバ」。現在、教育旅行事業(SDGs/社会問題スタディツアー)、企業研修事業、メディア・コミュニティ事業の他、社会課題解決に向けた資源投入を行なう事業開発・政策立案事業を手掛ける。設立以来、400種類以上の社会課題を各事業において扱ってきた。

その最大の特徴は、当事者と、政府・自治体・企業・非営利団体など、さまざまなプレイヤー・解決に取り組む各ソーシャルセクターのネットワークを持つこと。経済産業省主催の社会起業家アクセラレーションプログラム「ゼロイチ」や、2023年より「子どもの体験格差解消プロジェクト」を発足し、事務局を担うなど注目を集めている。

社会課題解決のプロセスを「問題の発見」、「社会化」と「課題解決に向けての資源投入」という流れで整理し、“構造化”することで多様な課題に解決に向けてアプローチしていく。特に事業開発チームでは「課題解決に向けての資源投入」を担い、大企業、官公庁、自治体、ソーシャルセクターと連携しながら、社会課題を解決するための「事業創出」を展開している。

目指すのは、誰かの困りごとから問題を「発見」し、みんなで解決すべき課題として「社会化」していくこと。解決に向けた活動が持続できる仕組みづくり・エコシステム構築を進めている。

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PRでは解決できない社会課題に向き合っていきたい

前職、外資PR会社で働いていた廣島さん。なぜ、彼女は転職を考えるようになったのか。まずはそのきっかけから話を聞くことができた。

じつは、もともと大学院生の頃から、子どもの貧困問題など「社会課題解決」に関心がありました。ただ、その頃はまだ「ソーシャルビジネス」という言葉さえ知らない学生でした。どうすれば社会課題を解決していくことができるか、当時は、経験も、武器もないまま、がむしゃらに活動していたですが、その中で気がついたのが「一人でも多くの人が課題解決に関心を持つことの大切さ」でもありました。そこで、まずはその手法=PR領域を自分の武器にしようと、大学院卒業後はPR業界で働くことに決めました。

そして、前職の外資PR会社では、名だたる外資企業、日系企業のCSR活動・コーポレート案件にも関わることができました。特に外資企業ではコーポレート全体としてもCSR活動やSDGs施策への取組を大事にしており、それらがPR活動でも重視される傾向にありました。いかに日本に価値還元できるか、貢献を示せるか、PR戦略の企画立案から携わることができ、貴重な経験をさせてもらえたと思います。

一方で、私自身の中にある「本質的な社会課題に取り組みたい」という思いと「どのような施策であってもクライアント企業のPRに留まってしまう」といった部分に、ある種のもどかしさがありました。どうしてもPRだけでは解決できない社会課題がある。そういった社会課題に向き合い、PR領域だけでは解決できなかった課題の本質的な解決をしていきたい、そう考え、転職を決めました。

社会課題の解決に取り組む、企業、機関、団体は多い。そのなかでも「リディラバ」を選んだ理由とは。

まずは扱う社会課題のテーマが網羅的であること、そして、どんな課題をどのように解決するのかという課題の発見から事業をつくるまで関わり、社会課題解決に全力で取り組んでいける。ここが、リディラバへの入社の決め手でした。また、複雑に絡まり合った社会課題に対し、リディラバ独自の「構造化(※)」という考え方でアプローチしている点も、とてもおもしろかったんですよね。問題を多角的な視点で、重層的に理解していく。課題ファーストでヒト・モノ・カネの資源投入の仕方を考え抜く。その考え方、アプローチに共感したと同時に、実践で使えるようになっていきたい、そのための経験を積みたいと考え、入社を決めました。

(※)リディラバが行う行政案件での「構造化」アプローチについて

リディラバにおける「構造化」は「社会問題が個人の問題・悪意ではなく、社会の仕組み・システムに根本的な原因がある」という視点に基づくもの。つまり多くの社会問題が、その環境に置かれた人が自力で解決できない、個人ではどうにもならない構造の中に存在する、という認識から生まれている。その視点・認識を行政連携の場に持ち込み、関係者と共有し、仕組みや制度の組み替え、インセンティブ設計などを提案していく。単なる対処対症療法ではなく、社会システムの根本的な変革を目指すアプローチと言える。

社会問題を行政機関や関係者に説明する際も、表層的な問題点のみに目を向けるのではなく、その根底にある構造的な要因を明らかにしていく。例えば、「獣害」という社会課題を例に考えてみると「イノシシが山からおりて畑を荒らしている」というニュース報道に対し、「大変だ、イノシシを駆除しなければ」と考えがちになる。ただ、実際には、山林のエサ不足/山林の管理不足/林業家不足/過去の林業政策の失敗、さらにハンター不足/都市の人口流出/少子高齢化/地域コミュニティの衰退/ボランティア不足など複雑な課題・要因が絡み合って生じており、単に「イノシシを駆除する」だけでは獣害の問題は解決できないなどが挙げられる。

また、行政が作った制度や仕組みにおいても、現場で必ずしも機能していない状況、意図しない結果を生んでいる構造的な課題を分析し、可視化していく。同時に、単なる問題提起に留まらず、社会システムそのものの組み替え、行政との連携によって税制度、規制、予算などの「インセンティブ設計」「社会課題解決に向けた望ましい行動が促進される仕組みづくりの提案」「実態調査や実証事業を通し、得られたデータに基づいて行政への政策提言」を実施。解決が難しい社会課題も、民間プレイヤーが挑戦できる金融エコシステムの構築など多様な切り口で解決を目指す。

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リディラバによる「若者の孤独孤立」という社会課題における構造化図例。問題を多角的な視点で、重層的に理解することで、別テーマの社会課題解決にも役立てていく。※「【若者の孤独孤立】つながり無き自立の壁」より
(参照)https://journal.ridilover.jp/topics/1f8377a8d5e1

社会課題に取り組む「マクロ」と「ミクロ」の架け橋に

こうして2023年にリディラバに入社した廣島さん。リディラバが築く独自のポジション・立ち位置について解説をしてくれた。

まずリディラバ全体としては、SDGs/社会問題スタディツアーなどの教育旅行事業、企業研修事業、メディア・コミュニティ事業、さらに社会課題解決に向けた資源投入を行なう事業開発・政策立案事業など、多岐にわたり手掛けています。

私はその中でも、企業と事業を創ったり行政に政策立案をしたりする事業開発チームに所属しています。私自身、この1-2年は行政案件をいくつか担当しているため、その事例をもとにお伝えすると、さまざまな社会課題に対し、いわゆるマクロな視点で取り組む「行政」側と、ミクロな視点で取り組む「現場」側、その両方を理解し、中間支援を行っています。ここがリディラバ最大の特徴であり、双方の「架け橋」となれる存在だと言えます。

「行政」側としては、社会課題をどうにかしたい。そのための予算をつけるものの、どのような解決手段を投じれば本質的な課題解決につながるのかを見出しづらかったり、また実際の社会課題が起こっている現場の隅々を見ることはむずかしい。そういった時、いわゆる中間支援団体として「リディラバ」はあらゆるソーシャルセクターや有識者などとのネットワークを持っているので、頼っていただいています。より具体的な話で言えば「有識者会議を立ち上げよう」となった時、「現場を知る有識者として誰を呼んだらいいか?」というご相談も。適任者を紹介し、バランスの良い有識者会議を企画していく。これも私たちの介在価値の一つとなっています。

一方でミクロな「現場」側も、支援を必要とする場面は多くあります。例えば、「行政」側と同じ「解決すべき課題」に向き合っていたとしても、それぞれのフィルターで見ているもの。ですので、認識ややり方をすり合わせするコストが高く、共に取り組む難易度が高い場合もあります。丁寧にコミュニケーションを取り、取組や施策を「現場」側に合うカタチに落とし込んでいく。そういった役割も「リディラバ」だからこそ果たせるものだと感じています。

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実際、どのようなプロジェクトに携わることが多いのだろう。その概要と具体例について聞くことができた。

まず、私が担当している案件では行政のパートナーとなることが多いのですが、特徴的なのが行政、そして一緒に課題解決をする協力者としての事業者、機関・団体などと「協働していく」という点です。なぜそれをするのか、しなきゃいけないのか、本質的な問いと向き合い、課題ファーストで取り組んでいきます。そのため、当事者はもちろん、多様なソーシャルセクターや民間事業者、時には大学などの機関などとも連携し、課題解決に直接的にアプローチができます。それこそリディラバならではの立ち位置、期待される役割となっています。例えば、私自身が携わってきたものでいうと、社会起業家アクセラレーションプログラム「ゼロイチ」(※1)、国土強靱化のための防災・減災関連プロジェクト(※2)、青森県発スタートアップ創出「支援機関のスキルアップ」プログラム(※3)などが挙げられます。

(※1)2023年4月に発足した次世代を担う社会起業家の育成に向けた官民連携のプログラム。対象者は「社会課題の解決のために行動し、より大きく社会を変えたい」「ゼロの中から社会を変えるイチを生み出したい」といった社会課題解決に志を持つ日本居住の学生(18歳以上)。

(※2)内閣官房国土強靱化推進室と連携し、行政、地域住民、民間企業などが一体となり、オールジャパンで防災・減災の推進を目指す取組。能登半島地震を教訓に、防災・減災の事例紹介セミナー等を開催。有用な事例を調査、事例づくりを担う。

(※3)人口減少や過疎化が進む地方において、その地域に根ざした社会課題解決、持続可能な経済成長を両立させる事業モデル構築を目指し、行政が中心となりスタートアップ創出支援が行なわれている。スタートアップ創出のための「支援機関」の構造的視点で課題を捉えるスキルアップ向上のプログラムをリディラバがデザイン。銀行や行政をはじめ「スタートアップを目指す事業者の相談窓口」となる担当者向け講座等を実施した。

それらの仕事を通じて得られる「やりがい」について、廣島さんはこう話をしてくれた。

ここまでお話してきた「構造化」の考え方を現場で理解いただき、納得度高く受け入れてもらえた時に、大きなやりがいを感じます。実際に「事業を創るために社会課題をミクロとマクロ、両方の視点から構造的に捉える必要性を感じた」「課題の捉え方は今までになかった視点で目から鱗が落ちた。この考え方を学べたおかげで、より本質的な課題解決につながる事業創出ができそう」といった声をいただくこともあります。そして、アクションや課題解決の第一歩に立ち会っていく。そういった時が「やっていてよかった」と思える瞬間です。

例えば、私自身が担当したケースでお伝えすると『ゼロイチ』という経産省主催の学生向けの社会起業家アクセラレーションプログラムでは、「ペットの殺処分問題」に取り組む学生がいました。その学生は200件以上ものヒアリングをし、一次情報を集め、さらに自分でペットショップで働くなど、とてもアクティブに動いていました。ただ、「明らかに問題があるのに、問題が至るところに点在していて何から解けばいいのかわからない」と袋小路に入り込んでしまいました。学生自身「ペットを飼う消費者側の問題」に取り組み続けていたのですが、「構造化」の考え方を伝え、解決までのプロセスを共に組み立てていきました。さまざまなステークホルダーごとに何が起こっているのか、なぜそれが起きているのか、紐解きながら、その構造の中において、自分がアプローチして変えられる事象を定めていく。社会課題が生じるステップを理解し、どのアプローチでどの課題を解決したらドミノ倒しのように課題解決が進んでいくのかを見極める。このプロセスを通じ、学生自身「5年後、10年後に向け、「今取り組むべきことを見定めて動いていきたい」と再び前を向くことができました。

一見すると、一つずつ課題を紐解いていく構造化のアプローチは、遠回りに感じるかもしれません。ただ、全体像が描けているからこそ、どこに着地するのか、イメージが持てる良い面があります。「今はこの部分をやっている」「ここは時間がかかるが、種まきだ」と。私自身、そういった戦略を立てていくおもしろさも感じることができています。

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リディラバジャーナル「【犬猫の殺処分】行き場を失う命」より
(参照)https://journal.ridilover.jp/topics/c85e8c3ab056/issues

「社会は変えられる、そう信じ行動できる人を増やしたい」

そして取材後半に聞けたのは、今後、廣島さん自身が「仕事で実現したいこと」について。

あらためて、一人でも多くの人が社会課題に関心を持ってもらいたいですし、「社会を変えたい」「社会は本当に変えられるんだ」と思い、どんなことでもいいので行動に移せる人が増えてほしいですし、増やしていきたいと思っています。

もう一つ。これまでの経験を活かし、社会課題のための事業創出、そしてPRの架け橋をつくっていきたいという思いがあります。もともと「PR」を武器としたキャリアを築くなかで、その物足りなさ、ジレンマを感じ、リディラバに入社しました。そして事業創出や政策立案に携わる中で改めて感じたのが、どれほど社会にとって意味のある事業を創れたとしても、それが世の中に伝わっていかなければ、なかなか大きくはならないということです。事業を創る過程で「どのような言葉で、どのようなコミュニケーションを、誰と、どのように取れば、社会に広まっていくのか」から考え抜いていく。その必要性を強く感じますし、そこには希望もあるはずです。世の中の関心を集め、より資源を集め、循環しやすい構造につなげていく。そして、それにより良い事業がどんどん拡大し、本当に必要としている人たちに届いていく。こういった理想像を描き続け、カタチにしていければと思います。

そして最後に聞けたのが、廣島さんにとっての「仕事」とは――。

私にとっての「仕事」は、好奇心をより大きくしていくもの、そして、関わる人たち含めて「わくわく」を叶えていくものだと思っています。やはり仕事は誰かと一緒にやっていくものでもありますよね。リディラバはもちろん、熱い思いを持つ行政担当者、尊い実践を積み重ねている支援団体の皆さん、思いの大小はあれど、さまざまなステークホルダーとのチームワークで成り立つもの。そういったチームで取り組む仕事が好きですし、一緒に働く人たち含めて「わくわくできるか」を大切にしていきたいなと思っています。

仕事に「わくわく」を求める、そういった価値観は育った環境が影響しているのかもしれません。シングルマザー家庭で育ったのですが、母は姉2人、そして私という3人の子どもを育てながら、経営者としても働いていました。とても忙しく、家にいる時間は決して多くはありませんでした。ただ、家族を大切にしながら、とても楽しそうに仕事をしていたし、その姿勢を見せ続けてくれて。私が思春期の頃に「学校に行きたくない」となった時も「学校に行かないんだったら、お母さんの仕事に付き合いなさい」と一緒に外まわりの営業に同行したこともありましたね(笑)そういった母を見て育ったので、私にとって仕事は「やらされるもの」ではな「わくわくできるもの」。尊敬する母に負けないくらい、これからもたくさんのわくわくと出会い、広げていけるよう、仕事に向き合っていければと思います。

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