INTERVIEW
京都大学|CFOオフィス長 特別インタビュー

京都大学が「財務戦略担当」公募へ――創立130年を見据えて挑む「世界トップレベルの大学」への飛躍

掲載日:2025/09/04更新日:2025/09/04

創立約130年――今まさに「大学変革」を推し進めている京都大学。その一環として取り組むのが、世界最高水準の研究大学実現に向けた「国際卓越研究大学」制度認定(申請中)、そして「CFOオフィス」の組織強化だ。今回公募するのが同オフィスで働く「財務戦略担当」だ。公募の背景、求める人物像、そして京都大学 CFOオフィスとして目指す姿とは―。CFOオフィス長である野田 稔貴さんに話を聞いた。

「国際卓越研究大学」制度申請を機に、大学変革を実行へ

今回「CFOオフィス」にて財務戦略担当ポジションを公募する京都大学。そもそもなぜ大学に「CFOオフィス」を設けたのか。その背景から話を聞くことができた。

まず、前提として、世界最高水準の研究大学を実現していく「国際卓越研究大学」という制度(※)があります。本学では同制度への申請を行なっており、その認定における要件の一つが「CFOの設置」です。

本学は、創立130年という節目を見据え、この制度申請を機会として今まさに大規模な「大学改革」を推進しています。まず、卓越した大学経営の実行に向けた喫緊の課題は、戦略的に意思決定するシステムの整備、体制づくりです。総長及びプロボストによるトップマネジメント体制に、新たにCFOのポジションを加え、それぞれに専属オフィスを設置しました。その中の「CFOオフィス」財務戦略担当を、民間企業はじめ外部から広く募るべく、今回の募集に至りました。

(※)国際卓越研究大学は、世界最高水準の研究大学を実現するために、公募により数大学を認定し、認定大学の研究等体制強化計画を認可する制度。認定、認可された大学は、政府が創設した基金10兆円ファンド(正式には大学ファンド)の運用益から助成を受けて計画の実現を目指す。この認定には「国際的に卓越した研究成果の創出できる研究力」「実効性高く意欲的な事業・財務戦略」「自律と責任あるガバナンス体制」という要件があり、この「自律と責任あるガバナンス体制」の中で事業財務担当役員(CFO)を設置することが求められている。

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CFOオフィス長 野田 稔貴
京都大学へ入職後、医学部附属病院・工学部・経理部で経理業務を中心に従事、日本学術振興会の係長として出向、京都大学復帰後、研究推進部・財務部・企画部で掛長、総務部で課長補佐、経済学研究科事務長、総務部渉外課長、研究推進部・企画部で次長、国際教育推進部長を経て、CFOオフィス長に就任、現在に至る。

京都大学 CFOオフィス概要について
▼ 目指す姿
CFOオフィスとして目指すのは、認定要件にもある「実効性高く意欲的な事業・財務戦略」の実現。そして、大学の学術成果を社会的・経済的価値につなげ、学術研究への再投資、大学独自基金の拡大による財政的な自律へ。その推進において取り組むべき課題の解決、これまでの成果を更に加速させていくため、様々な企画や戦略を実行していく。

▼ 組織の特徴について
人事・財務・施設といった「ヒト・カネ・スペース」各領域からメンバーが構成され、プロジェクト的に推進されている。そうすることで経営資源の管理、配分実行のための具体的施策の検討と実行が「領域横断」で進められる体制となっている。今後さらに研究規模を拡大させ、多様な人材を集め、より自律的な経営体へと進化を目指す。

自律的な経営体となるための「仕組づくり」を

続いて、今回募集する「財務戦略担当」に期待する役割とは。

まず、CFOオフィスとして、CFOが「エビデンスに裏付けられた財務経営戦略」を立案し、実行できる体制構築を加速させていきたいと考えています。そのためにも、ぜひ民間の事業会社等で培ってきた中長期の経営計画立案、予算策定・管理、財務戦略立案・実行などのスキル、知見を発揮いただきたいです。

特に重要なのは、どのような財務経営戦略を立案・実行していくか。まずは戦略的な資源配分に資する基盤の構築、中長期の財政シミュレーション策定、財務情報分析等の実行を進めていく考えです。

率直にお伝えすると、本学は、基盤的な経費を国からの交付金に依存していることもあり、自律的な経営ができる構造にまで至っていない現状があります。国際卓越研究大学を目指すにあたり、その構造からの脱却、そして「実効性の高い意欲的な事業・財務戦略」の実現と財政的な自律を共に目指していただけることを期待しています。

また、CFOオフィスは新設されたばかりの部署です。これから本学の経営を高度化させていくための仕組みづくりを行なう段階にあります。ですので、自部署・他部署を含めた多様なメンバーと積極的に協働しながらプロジェクトを一つひとつ前に進めてほしいと思います。

特に人事系、財務系、施設系や公認会計士のメンバー、その他関連部署等と協働して事業を進めていくことが多いのも特徴です。それぞれの違った経験や知見を活かし、また融合していく。そうすることで、さらにレベルの高い成果へとつなげていく等、ぜひ「新たな風」を吹き込んでいただきたいです。

新設部署として「自律的な経営体となるための仕組み作り」を担う京都大学 CFOオフィス。そこで得られる「やりがい」も非常に大きなものになると野田さんは話す。

CFOオフィスは、まさに京都大学の中枢組織の一つです。これまでの国立大学の仕組みを大きく変えていく新設部署とも言えます。ですので、様々な取り組みの成果が「新たに変革する京都大学」を作り上げていくことにつながり、他大学のモデルケースとなる可能性もあります。それらを推し進める中核人材として携わるやりがいは非常に大きなものになるはずです。

例えば、この1年と数か月で今後の改革に大きく寄与する億円単位の資金獲得、新たな人事制度構築、これまで実現しなかった地方公共団体との連携協定の締結を実現するとともに、総長オフィス・プロボストオフィスとの密接な連携のもとに国際卓越研究大学への申請を行なってきました。さらに進行中のものでいえば、エビデンスに基づく戦略的資源配分を実現するための新たな経営資源情報ダッシュボード構築、戦略的なキャンパスマネジメントに向けた施設整備関係プロジェクト、今後の変革に必要となる新部署の設置等も手掛けています。このように、どの事業も重要ですし、成し遂げる価値が大きく、他では得難い経験を得られる環境があります。

また、財務関係業務を主体としながらも、人事や施設等の経営資源にかかる戦略的な取り組みへの関与もあります。多様なバックボーンを持つメンバーそれぞれが得意なところを活かしつつ、時に融合させ、新たな事業を実現させていく。そのため、幅広い知識が吸収できますし、人的ネットワークが広がり、調整力の向上等、キャリアにとっても必ずやプラスにつながるでしょう。

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やりがいの 一方で「仕事上の厳しさ」について「いかに迅速かつ慎重に対応ができるか。緊張感もあります。」と野田さん。「京都大学組織の中枢を支える重要部署でもあり、ボトムアップ型の提案だけでなく、役員(特にCFO)からトップダウンでのオーダーもあります。当然、あらゆる開拓、あるいは改革の実行にあたり、困難に向き合う姿勢、慎重さが求められる場面も少なくありません。そういった場面でこそコミュニケーションを重視し、多様なメンバーと協働を重視いただければと思います。もう一点。前例のない仕事が多く、答えを模索しながら進めることも多いです。従来の大学の管理的な業務を引き継ぐというより、これまでになかった中長期的スパンによる財務経営戦略を行なっていくためのスキーム作り、役員層への提案を行う必要があります。経験したことがない業務であっても、関係部署と調整して逐一インプットを行ないつつ、業務を遂行していく。そういった姿勢を重視いただければと思います。」

「日本トップレベル」から「世界トップレベル」の大学へ

そして聞けたのが野田さん自身の思い、今後の目標について。

私自身、これまで財務や企画業務の経験と、職員の中では割と幅広く多様な業務の経験をしてきました。CFOオフィス長就任時は、国際卓越研究大学の認定・認可を受けるための支援に重点を置き、課題の洗い出し、解決に向けた対処、それを実行できる組織の整備等を併行して進めてきました。そして新たな基盤等の構築を経て、更なる大きな変革を目指していきます。

そのためにも重要なのは、全ての教職員が、大学がどうあるべきか、そこに自分がどうコミットできるかを考えられるマインドで、仕事に取り組んでいくこと。そうすることで組織力は向上し、元来、京都大学が持っているポテンシャルが最大限発揮され、世界トップレベルの研究大学になっていく。そう信じていますし、少しでもそこに近づいていけるよう、仕組みや環境を作っていければと思います。

最後に応募者に向けたメッセージとは――。

私自身、仕事は「人」でするものだと考えています。どのようなメンバーで行なうか、それによって、例え、同じ仕事であっても楽しさ、困難さは変わるものです。自分なりにこれまでの仕事人生を振り返ってみても、常に最高の状態ばかりではありませんでしたが、良いメンバーに恵まれ、業務にあたることができました。今となっては当時の「仕事の困難さ」よりも、良い結果と楽しさが思い出されます。そして現在もまさに高い志を持つ、素晴らしいメンバーと共に新しいミッションに挑むことができています。ぜひその一員に加わっていただき、共に「新たな京都大学」を作っていけることを楽しみにしています。そして「日本トップレベル」から「世界トップレベル」の大学になっていく、その歩みを共に進めていきましょう。

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期待される役割・これまでの業務内容

CFOオフィス着任後は、中長期的な財務戦略の策定、管理方法についての検討が大きなテーマとなります。いかに財務データや経営資源データを分析し、分析結果を資源配分につなげていくか。その手法検討・スキーム構築など、中長期財務戦略に反映させるための仕組みづくりを共に行なっていきましょう。またオフィス全体では、人事担当部署と協働し、高度な経営人材が活躍できるための人事制度の検討、施設担当部署・情報担当部署と協働した、全学的な建物や資産管理の高度化に向けた検討と検証にも取り組んでいます。CFOオフィス内には、これまで財務データを扱ってきたスタッフや、国立大学法人会計基準を熟知した公認会計士等のスタッフがいます。それぞれの知見を融合させながら検討を進めていくことを期待しています。また、ご経験やスキルは重要ですが、そういった培ってきたもの、自身の業務を通じ、社会に貢献し、社会をより良くしていくことに興味や情熱を持っている人物を求めています。大学自体も体制変更をはじめ、大きな過渡期にあります。試行錯誤を楽しめる方を歓迎いたします。

【これまでの業務の例】
・国立大学経営改革補助金の獲得と事業推進
・経営資源情報に関するBIツールの構築
・成長戦略本部の専門職人材の人事制度構築(イノベーションプロデューサー、ファンドレイザー)
・京都府、市との自治体連携
・キャパシティマネジメント高度化に向けた施設DXプロジェクトの体制化/推進
・コミュニケーション促進施策の実施(CFOオフィス執務室のフリーアドレス化 等)

※特に連携が多くなる部署は「プロボストオフィス(本学プロボストを支援する部署)」「会計管理部(決算や経理に関する業務をつかさどる部門)」「人事部」「施設部」「成長戦略本部(研究成果活用やファンドレイジングに関する業務をつかさどる部門)」などです。部署を越えた協働にも期待しています。

▼入職後の流れ・教育関連制度について
入職後はオフィスオリエンテーションにて、CFOオフィスの役割や現在進行しているプロジェクト等について説明を受けていただきます。その後、中長期的な財務戦略の策定に向けた仕組みづくりに関わるプロジェクトに入っていただく予定です。現在、CFOオフィスでは、エビデンスベースの財務戦略立案に活用するためのBIツール(ダッシュボード)を構築しており、入職後にはダッシュボードを活用した財務分析の検討、戦略立案に向けたツール活用プロセスの検討等にかかるプロジェクトに参画しながら、CFOオフィスの参画業務や大学特有の知識について習得いただければと思います。また各種e-learningの受講が可能ですので、学内制度の理解度を向上させるなど、自己研鑽を積んでいただければと思います。

▼選考について
今回の公募では説明会は予定していません。選考に必要な提出書類はサイト上に登録いただいている「履歴書」と「職務経歴書」のみです。面接回数は2回を予定しており、一次面接はオンライン面接、二次面接は京都大学吉田キャンパスでの対面面接を予定しています。

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