国会、裁判所、内閣のいずれにも属さず、独立した立場で国の財政を監督する「会計検査院」。145年以上の歴史を誇る同機関にて「デジタル人材(データ戦略担当)」外部人材の採用が実施される。いかにデータの利活用を進め、会計検査院をアップデートさせていけるか。機関概要と求人詳細について見ていこう。
国会、裁判所、内閣のいずれにも属することなく、独立した立場から国の財政を監督する「会計検査院」。その歴史は古く、1880年(明治13年)、大隈重信の提言により太政官(当時の中央政府機関)直属の独立国家機関として誕生。初代院長には、欧米の進んだ制度を視察した岩倉使節団の一員でもあった山口尚芳が就任し、以来145年以上にわたり、財政執行の適正化の確保という重責を担い続けてきた。
日本国憲法第90条にて「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない」と定められ、いわば憲法によって保障された唯一無二の機関。国民の納めた税金が正しく、効率的かつ有効に使われているかをチェックするまさに「財政執行の番人」だ。
会計検査院が目指すのは、検査活動を通じ、日本の行財政活動の透明性と健全性を向上させること。そのために、国の予算が適切に執行されたかを厳正に監督・チェックし、不適切な会計経理や非効率な行政運営があれば、その原因を究明していく。各省庁や関連機関に改善を促し、より良い行政の実現に貢献していく。この一貫した使命こそが、会計検査院の存在意義であり、145年以上にわたり揺らぐことのないビジョンだ。
会計検査院の主な役割について
会計検査院の主な役割は、国の予算執行を監督・チェックすることにある。その手法は大きく二つに分類される。一つは「在庁検査」。これは、検査対象機関から提出された膨大な書類やデータを、会計検査院内にて検査するものである。もう一つは「実地検査」であり、調査官が事業の実施現場や検査対象機関の事務所などに直接出張し、現物、状況、関係書類などを確かめていく。検査対象は、国のすべての収入支出の決算にとどまらず、政府関係機関や独立行政法人、さらには国が補助金などを交付している地方公共団体や民間企業にまで及ぶ。約1250人の職員の多くが調査官として、この広範なフィールドで日々活動していく。検査の結果は、毎年度「検査報告」として取りまとめられ、内閣を通じて国会に提出される。この報告書は、国会が決算を審査する際の極めて重要な参考資料となるだけでなく、メディアでも大きく報じられることが多い。つまり、会計検査院の指摘は、単なる行政内部の改善勧告にとどまらず、世論を喚起し、法律や制度の改正、ひいては政策そのものを動かす大きな力を持つ。不適切な会計処理を是正するだけでなく、より効果的な事業運営のあり方を提言することで、国民生活の向上に直接的・間接的に寄与していく。これが会計検査院の事業の核心である。
社会全体のデジタル化が急速に進む現代において、行政もまたその変革の潮流と無縁ではない。政策運営や行政サービスをいかに効率化し、国民にとってより良いものにしていくか。その鍵を握るのが、データの戦略的な利活用だ。その対応は、財政監督を担う「会計検査院」でも喫緊の課題となっている。紙からデータへの移行が進む一方、会計検査院の業務、特に検査における資料は、依然として「紙」の資料が多く残る。このままでは、増え続ける行政情報を的確に分析し、深度のある検査が困難になりかねない。まさに、145年の歴史を持つ組織が、その根幹である検査手法のアップデートを迫られている。
その担い手となるのが、今回募集にて採用される「デジタル人材(データ戦略担当)」だ。配属先となる「検査支援室」は、いわばイノベーションに挑戦していくチーム。ミッションは、庁内のペーパーレス化を強力に促進し、データ駆動型の新しい検査体制を構築していくこと。
新しい会計検査の仕組み、効果的な検査のためのインフラを構築、そして、国の財政監督の強化に寄与していく。国の財政監督機関の一端を担い、検査を通じて国が動く。国全体を俯瞰し、社会全体に貢献していく醍醐味がある。まさに大きな変革期の担い手として共に「新しい会計検査」を切り拓く。この国の政策を支える重要なプロジェクトに携わる経験は必ずや、そのキャリアにおいても貴重な財産になるはずだ。
募集ポジション: デジタル人材(データ戦略担当)
各省庁から集まる膨大な行政データを活用し、効率的かつ効果的な検査体制を確立するための戦略立案から実践までを担う。ミッションは、データ分析やデータの見える化を駆使した新たな検査体制を構築していくこと。あくまでも「データの利活用はきっかけ」として捉え、専門知識を有する各検査課の職員と連携し、会計検査院全体のデジタルやデータに対する「考え方」をアップデートしていくことが期待される。
選考について
いわゆる国家公務員試験を介さず、面接や小論文を用いた一般企業に近い形で実施される。これは、多様なバックグラウンドを持つ優れた人材を広く募り、これからの会計検査院を共に創っていく意志の表れでもある。面接では「これまでの経験をどのように活かして行政改革に貢献できるか」「チームで協力してプロジェクトを成功させた経験」などが問われるという。専門知識に加え、コミュニケーション能力や課題解決力、そして多様な意見をまとめ上げる調整力が重視される。