INTERVIEW
経済産業省|特殊関税等調査室 キャリア採用(経験者採用)

公正な貿易環境を守り、経済と産業の発展に貢献を――経産省「特殊関税等調査室」が専門人材を募集へ

掲載日:2026/01/05NEW更新日:2026/01/05
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海外企業による日本国への不当な安値輸出(ダンピング)の是正をミッションとする経済産業省(以下、経産省)の「特殊関税等調査室」。同組織にて専門人材のキャリア採用(経験者採用)が実施される。同募集にあたり、特殊関税等調査室長である森井一成さんの特別インタビューをお届けする――。

激変する世界貿易に、適時適切な「貿易救済措置」で対処を

貿易救済措置(*1)を担う専門家集団とも言える「特殊関税等調査室」。同組織での外部からの専門人材の採用を実施していく経緯・背景から聞くことができた。

まずは日本における貿易救済のあり方、その考え方も大きく変化していることが挙げられます。例えば、コロナ禍後、中国の過剰供給能力の問題が表面化しましたし、また米国トランプ政権の関税引き上げ等、世界貿易の流れが急変する中、日本の産業は困難な国際環境に直面していると言えます。

いわゆるトランプ関税でいえば、従来米国に輸出されていた中国等の製品が日本を含む他国市場に集中する、といった貿易環境の変化が顕在化しています。さらに、それに対処するための第三国の貿易措置が拡散する兆候があり、日本が関税措置を講じなければ国際市場であふれた製品が一気に流れこんでくる、そういった恐れが生じているなど、貿易環境は複合的な危機に直面していると言えます。

実際、産業界からの相談はこの1~2年で急増しています。世界各国は貿易救済措置、とりわけアンチダンピング(AD)措置(*2)の活用を急増させ、2024年の世界的な調査開始件数は過去最高の368件にのぼりました。各国が貿易救済措置により安価輸出に対応している中、日本だけが対処に遅れれば、輸入急増により本来残るべき国内生産基盤が失われ、経済安全保障上必要なサプライチェーンを維持できない、そういった喫緊のおそれがあるのです。

日本においても例年1件程度であったアンチダンピング調査を、2025年度は既に開始しています。加えて産業界からは多くの潜在案件の相談を受けている状況です。それらの案件規模、重要性も増していますし、国際貿易を巡るこの流れは今後も続くという見方が強いです。引き続き産業界の調査ニーズも高い状況が続くと考えられます。

つまり、これまで日本は「貿易救済」を抑制的に使ってきましたが、そうした国際環境の急変に対し、適時適切に対処しなければ、国内産業の基盤が揺らぐことにもなりかねません。貿易救済は、そうした対応において重要なツールになりつつあります。同時に、これまで日本は、他の主要国に比して貿易救済の活用が少ない国でもありました。それ故に、高度に専門的な貿易救済調査を担う人材と経験の蓄積が足りていないとも言えます。高い専門性を身につけ、貿易救済調査で日本の経済と産業を守っていく。このような背景を踏まえ、日本としても貿易救済措置の執行体制の強化に向け、キャリア採用(経験者採用)を実施しています。

(*1)貿易救済措置について
アンチダンピング(AD)、補助金相殺関税(CVD)、セーフガード(SG)の3つを指す。今回募集を行う「調査官」は貿易救済措置に関わる調査の中でも財務会計分析を専門とする。貿易救済措置のうち、特に世界的に最も活用が多い「アンチダンピング措置」の発動に際し、財務会計分析の観点から正当性を示すための調査を担う。

(*2)アンチダンピング措置について
海外企業による不当な安値輸出から国内企業の利益を守る手段であり、国内産業を保護するための関税を課すことができるもの。海外企業が自国内の商品よりも安い価格で日本に輸出を行っている場合、その価格差を相殺する関税をかける措置となる。この措置を執るに当たり、必要な調査を行うのが経産省の特殊関税等調査室である。国際ルール違反の不公正な輸出が本当に行われているのか、国内産業にどのくらいの損害が生じているのか、企業の財務データや商品販売データを分析する等して実態を調べることが特殊関税等調査室のミッション。 2025年12月現在、中国・台湾産ニッケル系冷延ステンレス鋼板、中国・韓国産溶融亜鉛めっき鋼板、韓国・台湾産ビスフェノールA、韓国産炭酸カリウム、韓国・中国産水酸化カリウムに対するアンチダンピング調査が実施されている。

(参考)▽METI/経産省HPより
中華人民共和国産並びに台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域産ニッケル系ステンレス冷延鋼帯及び冷延鋼板
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/investigation/stainless/index.html

大韓民国産及び中華人民共和国産溶融亜鉛めっき鋼帯及び鋼板
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/investigation/GI/index.html

大韓民国産並びに台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域産ビスフェノールA
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/investigation/BPA/index.html

大韓民国産炭酸二カリウム
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/investigation/tansankari/index.html

大韓民国及び中華人民共和国産水酸化カリウム
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/investigation/suisankari/index.html

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森井一成|経済産業省 貿易経済安全保障局 特殊関税等調査室長2003年、経済産業省入省。在ジュネーブ国際機関日本政府代表部参事官、通商政策局企画調査室長などを歴任。2025年7月より現職。

会計の知見・経験を「貿易救済措置調査」に活かすキャリア選択

続いて、どういった人材が調査官に適しているのか。また、働くことで得られる経験、やりがいについて併せて聞くことができた。

特に適しているのは、経理・財務・会計分野での実務経験をお持ちの方、会計知識を活かしたコンサルティング業務など、会計監査以外の分野を含め、幅広い業務経験がある方です。お持ちの知見・経験を活かし、海外企業や日本企業から提出される調査票や証拠資料の分析・検証を実施いただけることを期待しています。

得られる経験、やりがいは、いわば「国家権力の行為」としての関税賦課の根拠になる調査を担える点にあると思います。相応の責任が伴うと同時に、目に見える形として「結果」につながります。また、大局的な視点が必要な一方、具体的な調査対象品目に係る商取引や企業活動についての情報にも触れることができ、そこで得られる知見は糧となりますし、キャリアにとってもプラスになるはずです。そして、貿易救済は原則として事業者からの申請に基づいて実施するものであり、それを必要とする方々に貢献していく実感も、大きなやりがいにつながります。当然、アンチダンピング措置の発動後、ダンピングが行われていた貨物の輸入量が抑制されること等により、実際に自分たちの業務が国内産業の保護に貢献していることが実感できます。

やりがいの一方で事前に知っておくべき厳しさとは――。

貿易救済調査は、一般的な経済調査と異なり、非常に戦略性の高い調査となります。具体的な企業の会計や取引について質問票等への回答を求め、その不備や取引実態との齟齬がないか等を確認しながら、最終的な認定に結びつけていきます。海外の事業者は、少しでも課税を逃れるため、意図的に数字をごまかそうとするインセンティブがあり、それを見抜けるか。そのために多くの企業から提出される大量の証拠を検証する忍耐強さ、時には1年以上にわたる調査をチームとして遂行する協調性・チームワーク、その中で会計・財務分析を中心とする専門性で貢献する意思、行政官として様々な調整を行う柔軟性、それら高いレベルで求められることは事前に知っておいていただければと思います。

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貿易救済調査を通じ、経済と産業の発展に貢献を

最後に、応募を検討している方へのメッセージをもらうことができた。

今まさに、戦後の国際貿易秩序が大きく揺らいでいる中で、いかにして日本としてルールに基づく自由で公正な貿易体制を守りつつ、経済と産業の発展を目指していけるか。その大きな岐路に立っています。そういった中、産業の正当な利益を保護するために、WTO協定で認められた貿易救済措置を適切な形で積極的に活用していくことこそ、私たち「特殊関税等調査室」のミッションです。そして、その貿易救済調査を効果的に実施していくための専門人材の採用・育成も非常に重要な「国」としてのテーマです。共に公正な貿易体制を守り、経済と産業の発展に貢献していく。そうした志ある方を心からお待ちしています。

「調査官」の業務内容について

(1)ダンピングマージン率に関する分析・検証
対象国における対象製品の国内販売価格と、日本に対する輸出価格の差額率(ダンピングマージン率)に関する分析・検証作業を行う。具体的には、例えば、A国企業が調査対象となった場合、A国企業から日本への輸出価格を確認するために、A国企業に質問票を送付します。この質問票には、各取引の輸出価格を記入するフォームが含まれており、A国企業は取引ごとの輸出価格を記入し、インボイス等の根拠資料とともに日本の調査当局(経産省・財務省)に提出する。正常価格(原則、輸出国での国内販売価格)も同様に、根拠資料とともに提出される。主な業務としては、回答された輸出価格および正常価格の妥当性を検証すること。同作業は、監査手続に近いものであり、企業から提出された数値情報に対して証票突合を行い、正確性、実在性、網羅性などに関する証拠を入手することを含む。必要に応じ、より詳細な情報を得るために追加質問や調査対象企業への現地調査を実施していく。最終的に、これらの検証・分析を踏まえ、アンチダンピング関税の税率の基礎となる、ダンピングマージン率を算出し、調査報告書を作成する。

(2)国内産業の損害及びダンピングとの因果関係に関する分析・検証
ダンピング輸入による国内産業の損害及び、同損害とダンピング輸入の間の因果関係に関する分析・検証を行う。具体的には、対象製品の国内生産者等から提出される質問状回答に基づき、ダンピング輸入による量的な影響(輸入量の推移、市場占拠率の推移等)、価格的な影響(国産品と輸入品の価格差、輸入品が国産品の価格に及ぼす押し下げ効果等の影響)、その他の指標について、分析・検証する。さらに、これらの損害とダンピング輸入の間の因果関係についても、提出される証拠資料等に基づき分析・検証を行う。必要に応じ、より詳細な情報を得るために追加質問や調査対象企業への現地調査を実施していく。最終的には、これらの検証・分析を踏まえ、国内産業の損害及び因果関係に関する調査報告書を作成する。

※また(1)(2)に加え、アンチダンピング調査の実施に必要な手続き事務が含まれる。

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