「日本のビジネスを強く、世界へ。」をスローガンに掲げる、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー。“監査・保証業務” “コンサルティング” “税務・法務” “ファイナンシャルアドバイザリー” といった4つの分野の専門サービスを提供する「デロイト トーマツ グループ」のファイナンシャルアドバイザリー(FA)領域を担うプロフェッショナルファームだ。在籍コンサルタントは約700名(*1)、150を超える国と地域に展開するデロイト トウシュ トーマツ リミテッドのメンバーファームと連携し、日本企業の海外展開を支援する。今回お話を伺ったのはM&Aトランザクションやアドバイザリーを担うS.T.さん。「日本へ憧れがあった」と語る彼、そこには「日本企業の海外戦略にインパクトを与えたい」という想いがあった―。
[プロフィール]S.T.
アメリカの大学を卒業し、デロイト トーマツ グループの現地監査法人へ就職。4年半勤め、26歳の時にDTFAへ。日本企業がグローバル市場で勝者になるため貢献する、シニアヴァイスプレジデント(*2)。
(*1)699名(2018年5月末日現在)
(*2)キャリアのロールにおいて自組織運営の中心的役割を担うポジション。30代前半での抜擢は異例だといえる。
日本企業によるM&Aの話題はもう珍しい話ではなくなった。
国内外にまたがるM&Aの成功を支えるのが、ファイナンシャルアドバイザリーサービスを提供するプロフェッショナルファームの存在だ。特に今回注目したいのが、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー(以下、DTFA)。DTFAはプロフェッショナルファームとして、M&Aの成功のため必要とされる幅広い知識を、多様な専門家達が臨機応変にチームを編成しアドバイザリーサービスを提供している。
今回はDTFAで活躍するS.T.さん(32)にお話を伺うことができた。クロスボーダーM&AにおけるM&Aトランザクションサービスをメインで担当する彼。アメリカで生まれ育ち、その後はカリフォルニアにある同メンバーファームの監査法人に新卒入社した。そして米国公認会計士の資格を取得後、渡日。26歳でDTFAの門を叩いたという経歴を持つ。
なぜ、独立や事業会社ではなくDTFAという選択だったのか――。
「日本企業の海外戦略にインパクトを与えたい。日系アメリカ人として過ごすなか、ルーツである日本に憧れがあったのかもしれません」
そこにあったのは「日本」への想い。そして日本のビジネスを世界で戦えるものする、という志だった――。
現在、彼が担当するのは、クロスボーダーM&A。特にデューデリジェンスの領域だ。M&Aを行う際、対象会社の事業、経営状態、環境などをあらゆる側面から詳細に調査する。いわばM&Aにおける経営参謀といっていいだろう。
もともとは会計の道を歩んできた彼だが、なぜ、次に選んだのが「M&A」だったのか。
「会計監査は非常に重要な役割であり、やりがいもありました。ただ、監査業務は公正を保つために、業務フローやレポートのフォーマットなどが決められている業務が多い。それよりも、経営にポジティブなインパクトを自ら及ぼすことができる仕事がしたい。よりクリエイティビティが求められる仕事に携わってみたいと考えるようになったのです」
特にM&A領域に感じた魅力とは。
「企業によって考え方や戦略は全く異なりますし、対象となる海外企業も千差万別。商慣習や文化、もちろんマーケットも違う。つまり、毎回新たな課題と向き合えるということ。そこに興味を持ったのだと思います」
もう一つ大きかったのは、“アメリカを飛び出してみたい”という想いだ。
「カリフォルニアにある同メンバーファームの監査法人で働いていたのですが、日本企業の海外現地法人を担当することが多くありました。ただ、当時は現地法人の一部しか触れることができなかった。正直、もどかしさはありましたね。だからこそ、日本現地で日本企業と一緒に働いてみたい。そんな気持ちが強くなっていきました」
こうして彼は活躍の舞台をアメリカから日本へと移すことになった――。
日本企業がグローバル展開を進める上で、M&Aは不可欠な事業戦略。会社の未来を大きく変える事業戦略であるだけに、M&Aのスペシャリストであることが求められるのは必然だ。
「当時ちょうど26歳。もし日本で働くなら、体力もあり大きな変化にも対応できる今しかないと思いました」
渡日するにあたり、必ずしも「デロイト トーマツ グループ」で働くことにこだわってはいなかった。ただ、結果としてDTFAを選ぶことに。その理由とは一体。
「あくまで私個人の意見なのですが…アメリカにいた頃からDTFAは、業界の中でも日本のファームとして自立しているというイメージがあり、グローバルに仕事を進める上で働きやすい環境なのではないかと感じていました」
さらにカルチャーも惹かれたポイントだったという。
「一緒に働く同僚達も、“相手を蹴落としてでも登りつめよう” といったような人は少ないかもしれないですね(笑)。クライアント企業をいかにサポートするかということに対して真摯に向き合っている人が多い。また、グループには幅広い専門家がいるので多角的な視点からベストプラクティスを提供できる環境もあります。その考え方やスタンス、カルチャーが自身にフィットしていると感じました」
転職活動をするなかで、プロフェッショナルファームだけでなく、じつは事業会社も視野に入れていた。その中で軸となったのが、「20代こそ、多岐にわたるビジネスについて学び、ハードワークであっても最も成長できる環境で働きたい」というものだった。
「あくまでも印象ですが、事業会社だとどうしても、事業計画の推進や意思決定を含め、スピードに欠ける部分がありそうだと感じていました。もちろん、腰を据えて長期で取り組むプロジェクトにもやりがいはあるはず。ただ、20代のうちは、年功序列などにある程度縛られず、能力で勝負できるところで挑戦したかったのです」
その言葉から感じられたのは、プロフェッショナルとしてまずは多くバッターボックスに立ちたい、という想い。
「ある程度負荷のかかる環境で働くことで人間としての幅は確実に広がる。たとえいま独立したとしても、数人規模の企業では出来ることも限られてしまうでしょう。それなら、ある意味プラットフォームとも言える場所に身を置いた方がいい。その方が、やりたいことの道筋も立てやすいですから」
スピード感のある中でプロジェクトを回していく。時間が迫ってくる中、クライアントの「今後」も左右する重要なミッションに挑んでいく。そのプレッシャーは決して小さくないはずだ。ただ、その分やりがいは大きいと彼は語る。
「大波をチームで乗り越えた時、一回りも二回りも大きくなった自分達に気づくことができます」
対応能力や、課題解決のスキルが向上していく手応えを実感できると教えてくれた彼。さらに、DTFAで働く意味について伺えた。それは、新しいビジネスに接する機会だ。
「M&Aは企業にとって投資です。その投資を日々、目まぐるしく変化する経済環境の中で成功させるためには、最先端の技術やトレンドを踏まえた戦略が必要不可欠になる。この様なスピーディな環境は、自身の成長を求める方には最適な環境ではないでしょうか」。
“現状維持は後退、特に若い時こそ苦労した方がいい” と語ってくれた彼。
「どうしても30代、40代になると無意識に受け身になってしまいがち。だからこそ、20代の頃は環境をがらっと変えて新たな領域に賭けてみるのもいいと思っています。DTFAには、自分が想像もしていなかったスピードで、成長していけるような環境が広がっている。ある程度ストレスフルな環境かもしれませんが、それを乗り越えた経験は自分の自信になります」
この言葉に説得力を感じるのは、彼が「シニアヴァイスプレジデント」という役職で働いているからかもしれない。同社のキャリアパスにおいて30代前半で任されているのは全社で数名、異例の抜擢だ。
こうして取材は終盤へ。最後に伺うことができたのが、仕事観について。
「すごくシンプルに、自分が知っていること・出来ることをサービスとして提供することに喜びを感じているのだと思います。少しくらい仕事がハードでも、関わる相手が “助かった” と思ってくれることが原動力になる。さまざまな壁があったとしても、終わってみてクライアントから “良かったよ” と言ってもらうと次も頑張ろうと思えるんですよね。もちろんやっている最中はすごく大変なんですけどね(笑)」
時に数百億円規模でのM&Aにも携わるS.T.さん。そこに日々挑んでいる彼の表情は充実感に満ちていた。「日本のビジネスを強く、世界へ。」DTFAが掲げるスローガンを体現する存在として、彼の挑戦は今日も続く ――。