FC今治 | 代表取締役会長

岡田武史が挑む、今治創生プロジェクト
「勝てるかわからない試合のほうが、ワクワクするじゃないですか」

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「長い間チームの監督をやってきて “こうすれば勝てる” というやり方は見えてきた。ただ、分かっちゃうと もう面白くないんですよ」そう語ってくれたのが、元サッカー日本代表監督・岡田武史さん。愛媛県今治市に移住し、『FC今治』のオーナーとしてクラブ経営、そして今治全体の活性化に情熱を注ぐ。そこにあったのは、使命感にも似た高い志だったーー。

「1億円で監督をやってくれと言われても、もういいかな」61歳で経営者への転身

“元サッカー日本代表監督・岡田武史氏、監督業から引退か ―― ”

こういったニュースがかけめぐったのは、2018年4月のことだ。

岡田さんは S級コーチライセンス(※1)を返上。これは事実上 “もうサッカーの監督はやらない” という意思表明と言っていいだろう。

「1億円で監督をやってくださいって言われてもね、もういいかなって。長い間チームの監督をやってきて“こうすれば勝てる” というやり方は見えてきた。そうなるともう面白くないんですよ。面白くなかったら上手くいかないんだよな、大体」

ひと呼吸おいて、こう続けてくれた。

「どうなるか分かんない、勝てるかわからない試合のほうが、ワクワクするじゃないですか」

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そんな岡田さんが選んだ新天地が愛媛県今治市。サッカーチーム『FC今治』(※2)のオーナーへ。61歳で経営者への転身だった。

「『FC今治』ってスタートアップ企業みたいなもので。だいたいスタートアップは5年以内に9割がつぶれると言われている。『FC今治』はこの11月で5年目に突入した。生き残れるかはこの1年にかかってる」

そう真剣に語ってくれた。

次の瞬間、少しいたずらに笑って続けてくれた岡田さん。

「もしかしたら破産するかもしれない。そのときは助けてくれよ(笑)もちろん負ける試合はしないけど」

その表情に滲むのは “勝てるかわからない試合” を楽しむ岡田さんの姿。瞳の奥に宿る闘志、そして経営者として、今治という地で仕掛ける地域創生の “策” に迫った。

(※1)日本サッカー協会が認定する、サッカー指導者の資格制度。S級コーチは最上位であり、保持者のみがJリーグトップチーム、日本代表チームの監督を務めることができる。
(※2)FC今治は現在、JFL(日本サッカーのノンプロリーグ)に属する。

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この土地を、黙って沈ませるわけにはいかない

「はじめは今治にこだわっていたわけではなかったんですよ。正直、場所はどこでもよかった。地域全体を巻き込んで、サッカーで何かできないか?くらいにしか考えていませんでした」

ただ、オーナー就任後に見えた課題が、彼を変えた。

「今治に住んでみたら、どんどんどんどん、この土地が沈んでいく現状が見えてきた。更地が出来てるし、昼間なのに商店街には誰も歩いてない。そういうのを見て、危機感を感じたんです」

そこに芽生えたのは、使命感にも似た感覚だったという。

「どれだけ頑張ってサッカーチームを成功させても、このままじゃ立っている場所がなくなるかもしれない。だから一緒になって元気になるようにしなきゃいけない。チームはもちろん地域全体をどうにかしたい、強くしたい。そう思うようになりました。この土地を、黙って沈ませるわけにはいかない、と」

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FC今治の事務所。今治市郊外にある築62年の民家を改装して使っている。庭には桜や紅葉も。

地元の人たちに認めてもらえず、苦労した船出

岡田さんがこのように今治に強く思い入れを持つようになったのは、そこに暮らす人々との深いつながりがあるからかもしれない。

ただ、着任後すぐに上手くいったわけではなかった。そもそも今治は野球の町。当初は「有名人が冷やかしにきて、どうせすぐ帰るんだろう」という声すら聞こえることもあったという。

「なかなか地域のみなさんに受け入れてもらえませんでしたね。ちょうど今治に乗り込んで2年目を迎えていた頃で、焦りもありました。サポーターが増えていないという課題もあった。夜遅くまで残って皆で話してて。どうすれば地域の皆さんに認めてもらえるのか考えたけど、まったく答えは分かりませんでした」

そんな時、冷静に自分たちを見てふと気づく。

「俺たち、ここへ来て『FC今治』の仲間と働いて、『FC今治』の仲間と飯食って、『FC今治』の仲間だけで会議して、自分たちのことしか見てなかったんですよ。俺たちが町に出ていって、皆さんに馴染んでいかなければいけないんじゃないかって」

全員が、地元の友だちを5人つくる

こうして『FC今治』の2期目、ユニークな目標が立てられた。

「市内で友達を5人作ること」

社員・選手全員がこの目標を掲げ、行動に打って出たという。

「うちにはジュニアの選手やコーチ、若い奴らが大勢いる。だから、地域のお年寄りに “困ったことがあったら何でも教えてください” って言っていて。電話が来れば、すぐに出て行って手伝いをする。軒に掛かってる木を切ったり、地元の子ども達を集めて冒険教育の授業をやったり、もう本当に何でもやりました。皆さんには “孫の手活動” と呼ばれるようになりました(笑)」

ホーム戦での初勝利、号泣するサポーターの姿があった

こうして徐々にファンを獲得していった『FC今治』。

スタジアムの初建設も、地域を巻き込んだ一大プロジェクトとなった。スポンサー企業の協力を得て、瀬戸内海を見下ろす丘の上にスタジアムが完成したのだ。

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2017年8月に完成した『ありがとうサービス. 夢スタジアム(R)』。FC今治の本拠地だ。J3、J2、J1…とJリーグで昇格していく上で、チームには様々なライセンスが求められる。たとえば、JFL(ノンプロリーグ)からJ3に昇格するには、5000人収容できるスタジアムが必要だ。


岡田さんは、忘れられない一戦について語ってくれた。

2017年9月、スタジアム完成の翌月。初めてのホーム戦は「FC今治 対 ヴェルスパ大分」戦だった。その日の観客数は定員の5000人を超え、5241人を記録。出来たばかりのスタジアムに、市内外から多くの人が集まった。

結果は、3 − 1。『FC今治』は見事に勝利を飾った。

「試合が終わってお客様を見送る時、ボロボロ泣いている年配の方がいて。思わず話しかけたやつがいたんです。そしたら “あなた達が来た時、始めは一体何しに来たんだろうって思ってた。でも本当にこういうものを作ってくれた、ありがとう” って。その言葉が忘れられないんですよ」

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『FC今治』はJ3昇格に向けて、5期目を走り抜ける。その先に目指すのは「川崎フロンターレ」「鹿島アントラーズ」などが名を連ねるJ1リーグだ。


「今治」で起こす逆転劇、必ずや息を吹き返す

『FC今治』の存在は確かに地域を盛り上げるかもしれない。新たな雇用を生み出し、事業税を納めることもできるだろう。

ただ、これから長いスパンでクラブ経営を持続し、さらに地域そのものの課題を解決していくことは果たしてできるのだろうか。

「キャッシュという意味で、経済効果ももちろん大事です。ただ、“目に見えない”成果を作ることが僕たちの夢なんです。町の人達が一つの場所に集まり、同じ想いで応援する。クラブが勝ったらみんなハッピーになる。サッカーのことがよくわからない人にも、“来てよかった、楽しかった” と感じていただきたい」

スタジアムを、地域のコミュニティハブにしていく。これが岡田さんの構想だ。

「何かあった時にみんなが集まる場、世代間がつながったコミュニティにする。それってものすごく大事なものだと思っています。ヨーロッパならば、ドゥオモ広場や市庁舎前広場といったものが必ずある。サッカークラブが中心となり、まちづくりができた例もあります。この今治に、そういう場所を作るのが目標なんです」

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夢を叶える “妄想力”、“データ分析” も武器に

監督時代からある種の名物だった岡田さんの “妄想力” は、今治でも発揮される。理想を高く掲げ、ギャップを埋めるために策を練り、実行へと落とし込んでいく。

「今、掲げているのが “複合型スマートスタジアム構想” です。スタジアムに 国内トップクラスのトレーニング設備や医療機関、ホテルを併設する。いろんなスポーツのトップアスリートがトレーニングや治療、リハビリできるようになる。スタジアムではコンサートやコンベンション、イベントもやる。日本全国、海外からも来たお客さんを、お年寄りの家にホームステイさせたり。そうしたら、そこでおじいちゃんおばあちゃんの料理教室がはじまったりするかもしれない」

また、テクノロジーやITの活用。データを元にした戦略も岡田さんが得意とするところだ。

「『FC今治』の取り組みを見たスポンサーさんやITの会社が、”自分達には一緒に何ができますかね”という話をくれる。今は、映像解析技術なんてものもすごく進化してて。スタジアムに来たお客さんの顔をAIが分析して、いつお客さんが嬉しい顔をしたか、“何だつまんない” って顔をしてたか、そこまで分かるようになってるんですよね。そういったデータを、最終的にひとつのデータベースにしたいとも思っているんです 」

そして、彼らがその先に目指す目標は『FC今治』のJ1リーグ昇格だ。今から1万5000人を収容できる新スタジアムの構想を練り始めている。

夢物語で終わらせるつもりは毛頭ない。

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「自分の町を誇りに思える、そんな場所にしたいんだ」

最後に伺えたのが、これからの展望について。

「社員も選手も、みんな頑張ってくれています。でも正直な所、僕の信用で成り立っているような部分がまだある。組織として、チームとして、全員の信用がトータルで成り立つような会社にならないといけない」

これは岡田さんの「経営者としての顔」といっていいだろう。では、岡田さん個人の想いとは、どこにあるのだろう。

「僕自身、面白そうだと思ってここへ来てみたら、どんどんやりたいことが出てきたんですよ。それに今は、一緒に前を向いてくれる仲間がいる。だからもう進むしかないんです。僕はね、自分の町を誇りに思えるような場所を作りたい。だから、そこにみなさんがお金を回してくれるような社会を作る。なぜなら、自分の子供や孫たちに良い社会を残して行くことが使命だと思ってるから。僕らは、目に見えないモノを売ってるんですよ、感動とか夢とかね」

そう語る岡田さんの目は、少年のように輝いていた。5期目を迎える『FC今治』。岡田さんをはじめとするチーム今治の「夢」は始まったばかりだーー。

編集後記
岡田さんがオーナーとなり、5年目。会社としての体制も徐々に整いつつある状態だ。そして今、岡田さんの夢に惹かれた人が日本全国から少しずつ集まってきている。

『FC今治』(株式会社今治.夢スポーツ)社長の矢野さんは、ゴールドマン・サックス出身。また2016年には、デロイト トーマツ コンサルティングで経営コンサルタントとして活躍した中島さんが仲間入り。そして2018年7月には、もともとIT企業で法務を担当していた弁護士の吉田さんも加入している。

経験も様々な皆さんに共通しているもの ―― それは『今の社会を、より良いものにしたい』という想いだ。

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