創業からおよそ10年ーー2019年8月に東証一部上場を果たした「ラクスル株式会社」。市場から高い評価を獲得する背景にあるのが、そのユニークなビジネスモデルだ。印刷をはじめ、広告、物流などレガシー産業に新たなプラットフォームビジネスを創出する。業界構造の変革に挑むその事業とともに、若手が得られる成長機会に迫っていこう。
ラクスル株式会社について
2009年創業。レガシー産業において、テクノロジーの力を用いた構造変革をビジネステーマとし、印刷、広告、物流などの領域でサービスを展開。2019年7月期の売上高は、170億円超と前年同期より53%以上の伸びを記録した。
「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」これがラクスル社のビジョンだ。
ここで彼らの言う「仕組み」とは、特定の機能やフローにとどまらない。目指すのは、テクノロジー、マーケティング、オペレーションなどを組み合わせて、産業構造そのものを変革すること。さらに言えば、ビジネスモデルを再発明し、社会に新たな価値をもたらすことだと言えるだろう。
とくにターゲットとするのが、巨大な市場規模を持つレガシー産業だ。こうした業界には、何十年に渡り、産業構造が変わらず、アナログで非効率なワークフローや商習慣が残るところも少なくない。つまり、それだけ彼らのビジネスの可能性も広がっていると言えるだろう。
では、具体的に彼らはどういったビジネスを手掛けているのか。
その代表例として、主力事業である印刷・広告のシェアリングプラットフォーム『ラクスル』を見てみよう。
そもそも印刷業界は、一握りの大手企業が市場の半分以上のシェアを占める寡占状態にあった。大多数を占める中小企業は2次受け、3次受けで仕事を請け負うなど、多重な下請け構造が常態化。スピードが遅く、コストがかかる業態となっていた。
『ラクスル』が同業界に持ち込んだのが、「シェアリング」の仕組みだ。具体的には、全国の提携印刷会社をネットワーク化し、仮想的に巨大なキャパシティを創出。印刷機の非稼働時間を活用して、印刷を委託する仕組みをつくり上げた。発注者と印刷会社は、ネットで簡単に受発注ができるプラットフォームによりマッチングが行なわれる。
『ラクスル』
名刺、チラシ、封筒などの印刷や集客支援サービスをオンライン上で発注できるプラットフォーム。印刷会社における印刷機の空き時間を活用し、高品質・低価格を実現する。現在、日本における印刷物のEC化は3%程度(ヨーロッパのEC化率:20~30%)。今後、さらなる成長が期待される。
さらにプラットフォームのアップデートにより、新たな価値創出も進む。
たとえば2017年8月には、専門家の目視により行なわれていた「入稿データのチェック・修正フロー」を自動化。従来、15時間ほどかかっていた時間を15秒程度に削減した。ユーザーはデーターチェックで待たされることなく、印刷の依頼が可能となった。
さらに、ボールペンやクリアファイルなど、ビジネスノベルティを扱うECサービスの立ち上げ、初心者でも手軽に印刷デザインができるツールの開発など、その領域を広げている。
彼らが手掛ける産業は印刷にとどまらない。続けて2015年に参入したのが、物流だ。
物流はEC市場の成長などで、慢性的なドライバー不足など需給ギャップが深刻化の一途をたどっている。同社は『ラクスル』で培ったビジネスモデルを横展開し、こうした非効率の解消を手掛ける。
具体的には、提供する『ハコベル』において、荷主と運送会社をマッチング。全国の運送会社がネットワーク化され、非稼働時間に荷物を委託できるプラットフォームを構築する。
ラクスル社は『ラクスル』『ハコベル』において、生産や物流、オペレーションなどのサプライチェーン各分野に入り込みサービスを展開する。こうしたオンラインにとどまらない「リアルビジネス×テクノロジー」という事業で培ったノウハウが、彼らならではの強みだと言えるだろう。
まだまだテクノロジーが浸透していないレガシーな業界は少なくない。これは日本に限らず、世界でも同様だ。つまり、同社で新たな領域、新たな事業を立ち上げるチャンスは無限に広がっていると言えそうだ。
2018年、テレビCMにおける企画・制作・放映サービスをスタートした。制作会社をネットワーク化し、非稼働時間に制作を委託する仕組みを構築。加えて、CM枠の見積もり提案、受発注などをオンラインで完結することで、安価なCM放映を可能とした。自社のマーケティング施策で特に注力してきたテレビCMをノウハウ化し、効果の出るサービスとして新たな価値を提供している。
こうしたラクスルでは、多様な業界出身者が活躍している。さらにトヨタ、電通グループ、NTTなど、大企業を経て同社でのキャリアを選んだメンバーもいるという。
その背景には、あらゆる業界の経験が活かせる同社ならではの環境があると言えそうだ。大手メーカーにおける効率化のナレッジを持ち込み、「印刷・物流などのパートナー企業における生産性向上の仕組みづくりをする」などはその一例。多様な産業における仕組みづくりを手掛ける中で、さまざまなバックグラウンドを持った人材が求められていると言えるだろう。
そして最後に触れたいのは、若手の豊富な成長機会について。同社の人材育成におけるユニークな制度・風土の一例を紹介しよう。
・ビジネスユニット制度
各事業のビジネスユニットでは、トップが事業のすべてにおける責任と意思決定権を持つ。社内には既存、新規など、さまざまなフェーズの事業があり、それぞれで事業を作り上げる経験を積むことが可能だ。
・RaksuL Project
新たな事業に挑戦できる制度。プロジェクトの実行リーダーは、事業プランを立て、経営陣と議論してブラッシュアップを手掛けていく。人材採用、予算、社内のリソースの配分など、自身の裁量でプロジェクトを進行する。中長期的に顧客に提供する価値を抜本的に変え、向上させることが目的だ。
2019年12月現在、9ポジションで募集が行なわれていた。ぜひ実際の求人をチェックし、気になった求人には「興味あり」を押してみてほしい。そうすれば、自らの合格可能性を受け取ることができる。