地方自治、情報通信、消防防災など、いわゆるソフト面から「国民の生活インフラ」を支える総務省。2021年、民間をはじめ、社会人経験者を対象に職員公募を開始する。同省の役割、募集の詳細、求める人物像、仕事の意義について伺った。
※既に応募受付は終了しました。
「総(すべ)て」を「務(つと)める」省
その名が示す通り、総務省が支えるのは、いわゆるソフト面での「国民の生活インフラ」だ。
所管するのは、行政運営の改善、地方行財政、選挙、消防防災、情報通信、郵政行政など。いま注目が集まる、携帯電話の料金引き下げ、マイナンバーカードの普及や利活用、NHK改革なども同省の管轄となる。
同省が掲げるのは「暮らしの中に総務省」という言葉。
「総務省が担うのは、国民生活の基盤に関わる制度です。激しい変化の時代においても、国民の皆さまが安心安全に、より便利に、より快適に、生活できる社会をいかにつくっていくか。そのためのシステムや制度を構築することが、我々に課せられたミッションとなります。国民に非常に近い行政分野を担う省として、生活者目線で国民を支えていく。私自身、常にこうした視点を持ち続けていたいと考えています」
こう語ってくれたのが、総務省 大臣官房秘書課長の武藤 真郷氏。今回経験者採用を実施する上で、総務省というフィールドについてはこう説明する。
「総務省には、どのような専門的な能力や意欲がある方であっても活躍いただける幅広いフィールドがある」
武藤 真郷 |大臣官房秘書課長
1991年、新卒で総理府に入省。国家公務員における人事評価制度の企画立案・導入をはじめ、民主党政権時代には枝野・村田(蓮舫)国務大臣の秘書官なども務める。2019年7月より現職。
今、行政における課題は非常に多様化、複雑化している。
特にいま、新型コロナウィルス感染拡大をはじめ、国家運営としても困難な局面と向き合うケースも多い。
「世の中がかつてない早さで変化する時代、公務に求められるスピードもますます加速している。この変化に対応するために、従来の枠組みに囚われない発想やアイデアを持ち、新しい視点で行政に携わっていただける能力と意欲のある方を迎えたい」
知恵を絞り、実行し、困難な状況を打ち破っていく。
「国家として大変な時ほど、我々が果たすべき役割は非常に大きなものになります。特に今は変化せざるを得ない状況。既存の枠組みに囚われず、社会をより良い方向に前進させる新しい仕組みをつくっていく。未曾有の危機ではなく、未曾有の機会にもできると考えています」
多様な行政分野を担う総務省では、民間出身者に活躍の場が広がっている。武藤氏より、特に注力領域だという、3つを例に解説いただいた。
■情報通信
総務省では、ICT(情報通信技術)活用による行政サービスの高度化をはじめ、官民連携での先端技術の研究開発・実証による国際競争力の強化にも取り組む。加えて、深刻化するサイバーセキュリティ上の脅威に対抗する体制整備も同省でのミッションだ。
「特に情報通信は非常に変化が激しく、専門的な知見が必要となる分野だと捉えています。こうした領域に専門性をお持ちの方は、社会全体のデジタル変革実現へ、その基盤構築に力を発揮していただけるはずです」
■地方自治
福祉、学校教育、消防など、地方公共団体により提供される行政サービス。総務省では、地方税制改正の企画・立案をはじめ、この財源の充実・確保を図り、地方分権改革の推進を手掛けている。
「いま新型コロナウィルス感染拡大への対応など、多くの地方自治体が疲弊してしまっている現状があります。地方が担う住民サービスを維持・改善するため、主な財源である地方税以外の資金調達手段を多様化させたり、ICTを活用した抜本的な効率化を図る必要があります。こうした部分は、民間での知見や経験を大いに活かしていただけるところではないかと思います」
■政府統計
社会・経済情勢を把握するための基礎となる統計の企画・作成・提供も、総務省の担う行政機能の一つだ。代表的なところでいえば、「国勢調査」の実施や、政府全体の統計整備が挙げられる。
「国家としてデータを収集し、取りまとめた数字を公表することに留まらず、データの時代に相応しい政府統計データの利活用を強く進めていきたい。こうしたビッグデータは、ビジネスの種が多く眠っているはずです。民間でも活用いただくためには、どういった統計をつくっていくべきか、どういうデータの公表の仕方をしていくべきか、その仕組みづくりに力を発揮していただきたい」
そして取材終盤に伺えたのが、総務省において求められる人材像について。
「国家公務員の重要な仕事は、「調整」であるといっていい。成し遂げたいこと、改革したいことがあったとしても、その通りになることはまずありませんし、誰もが満足できる答えもありません。その中で国会議員や国民の代表たる国会、様々な業界団体や有識者の方々など、関連する方々と、調整を重ねながら、最適と思われる解を見つけ、最終的に国家を動かしていく。いかにコミュニケーションを取りながら、物事を前進させられるかは非常に重要となってくるところです」
そして「いかに"人"に寄り添えるか」、マインド面も重要な資質であると続けてくれた。
「当然、我々の手掛ける制度の向こうには一人ひとりの国民がいます。どういった方々にどのような影響が及ぶのか、想像しながら物事を考え、進めなければなりません。どんな行政分野を担うにしても、人に興味を持ち、寄り添える心を持てるか、ここは大切な資質となると考えています」
そして武藤氏は最後にこう締めくくってくれた。
「私たちの扱う制度や税制は、変えた瞬間すぐに、目に見えて国民の皆さまの生活が変わるわけではない。変化は徐々にしか進みません。例えば、私が入省した頃、「情報公開制度」がつくられました。当初は、公文書の公開が前提となるのであれば、紙なんか作らなくなる、こんなもの機能するのか、懐疑的な声もありました。ただ制度が変わると、それを使う人の意識がだんだん変わってくるんですよね。そして意識が変わると、行動が変わってくる。そうして徐々に徐々に変わっていき、10年ほど経つと、ものすごく大きく世の中が変わっていることがある。こうした実感を感じられるのも、行政で働く醍醐味のひとつです。ぜひ高い志を持った方々に、次なる時代への大きな変革を担っていただきたい。共に働けることを楽しみにしています」