「28歳の頃、ドバイでビジネスに挑戦したのですが、半年で撤退を余儀なくされました」こういった挫折を経験した鴇﨑魚彦さん。そんな彼が今挑戦するのがデジタルマーケティング『Speee』での新規事業。なぜ、彼は強烈な向上心を持ち、挑戦し続けるのか?
鴇﨑魚彦(トキザキナヒコ)さん(30)が新卒で入社したのは総合商社。諸外国の政府・公的機関を相手に、日本製の特殊印刷機・ソフトウェアの輸出業務を担当していた。
海外を飛びまわり、グローバルに活躍していく。英語も堪能。そして安定した将来も約束された環境。一見すると、輝かしいキャリアに映る。ただ、鴇﨑さんは少しずつその環境に満足ができなくなっていったと振り返る。
「先の見える人生ってつまらないな。そう思ってしまったんです」
彼は総合商社で働くことに息苦しさを感じるようになっていった。そこにあったのは年功序列が色濃く残る風土。そして、終身雇用を前提としたキャリアステップ。
「上司や先輩を見ていると5年後、10年後、どんな仕事をしているか、どんなポジションに就けるのか、だいたいわかってしまうんですよね。駐在を経て管理職になって、あとは守りのスタンスで働いていく。それはおもしろくないよなって」
予定調和な生き方をしたくない。そして湧き上がってきたのが「心からわくわくできる仕事がしたい」という思いだ。
「先々どうなるかわからなかったとしても、30歳になる前に冒険したい。そして世界で勝負できる人材になりたい。そっちのほうが人生っておもしろそうじゃないですか」
総合商社を退職後、次なるフィールドとして選んだのが、立ち上げ間もないベンチャーだった。従業員はわずか10名。6000名以上をこえる総合商社グループとは真逆の環境だ。
「すべて自分の責任で仕事をしていく。とにかく成長できる環境に身を置きたいと考えたんです」
また担うことになったミッションもユニークだった。
ドバイで飲食店のフランチャイズ事業を仕掛けていくというもの。その海外事業立ち上げ責任者というポジションでのジョインだった。
「自由度が高い。そして何よりもまわりで誰もやっている人がいない。ここが入社の決め手でした」
こうして単身ドバイへと渡った鴇﨑さん。会社登記から仕入先の選定、内装工事発注まで、事業のために必要なことをすべて自分ひとりでこなしていった。
ただ、約半年後。準備を進めていた矢先のこと。資金面において事業が頓挫。帰国を余儀なくされてしまったという。
「5年は帰って来ないつもりだったのですが、圧倒的な力不足でした」
こう語る鴇﨑さんだが、その表情は悔しさのなかにも、どこか晴れ晴れしさが滲む。
「もちろん、撤退が決まった時はめちゃくちゃ悔しかったです。ただ、とても多くのことを学び、ものすごく成長できたんですよね。この実感のほうが強かった気がします。どう事業戦略を立てていくべきか。リサーチや調査をどのタイミングでどうやるべきか。実践から学べる貴重な機会になりました。何より“一人でやれるという奢り”を捨てることができた。撤退が決まったあと、タダでは起き上がりたくなかったので、しばらく海外のさまざまな企業を訪問し、事業を学びました。それも大きな糧になっていますね」
こうしてドバイから帰国した鴇﨑さん。彼が新天地に選んだのは、デジタルマーケティングの領域で急成長する『Speee』だ。
「ずっとSpeeeの存在は心に引っかかっていたんです。自分なりに調べて、新しい事業を作り出すのが物凄くうまいと感じていて。新しい事業に携わるチャンスもあるかもしれない。多くのことを学べるのではないかと選考を受けさせてもらいました」
その時に行われた採用面接も少し変わっていた。
スキルや業務内容についてではなく、仕事を通じて実現したいこと、チャレンジしたいと考えていること、パーソナルな話などが中心だったそうだ。
「新しい事にチャレンジしていく。何よりもそのマインドが重要だったのかもしれません」
こうして入社し、2か月後には新規事業立上げメンバーに。それがSpeeeが現在注力している『UZOU』だ。『UZOU』はさまざまなニュースサイトに、ネイティブアドと呼ばれる記事広告をレコメンドするプラットフォーム。ネット広告における革新的なプロダクトとして注目される。
ただ、はじめから順調だったわけではない。当初は生まれたばかりの事業、まっさらな状態。どのような攻め方をしていけば成功の糸口が見えるのか。ここの営業戦略を担ったのが鴇﨑さんだった。
「プロダクトとしてすばらしいものだったのですが、はじめは新規開拓がうまくいっていませんでした。ですので、配属されてすぐにシミュレーションし直し、チームでの戦略を改めて組み立てた。それを実行していくことで、数字も跳ね上がっていきました」
そこからは見事に右肩上がりの成長を維持。自身がプロジェクトに介在することで、成果につながっていく。そして事業も成長させていく。ここに鴇﨑さんは大きなやりがい、奮い立つような熱い気持ちを感じたという。
「ずっと求めていたのは、こういう“自ら事業を成長させて、マーケットにインパクトを与える”という感覚だったんだと思います。これまでの経験とは違う、自己成長の場がSpeeeにはあると感じました」
取材の最後に伺うことができたのは、鴇﨑さんの仕事観。彼にとって仕事とは一体どんな存在なのか。
「僕にとって仕事は『楽しむことがすべて』です。せっかく働くなら自分はもちろん、周囲の人たちも楽しめるようにしたい。そう考えたとき、どうすれば楽しめるのか。やっぱり、みんなで真剣に取り組んで、成果を残すことだと思うんです。だからこそ、成果は徹底的に追い求めていきたいです」
そう語る彼の真剣な眼差しは、強烈な向上心にあふれていた。失敗を受けとめ、常に成長を志していくこと。ポジティブに思考し、挑戦し続けていくこと。そして貪欲に成果と向き合っていくこと。ー このスタンスこそが彼らしさであり、活躍の原動力なのかもしれない。