INTERVIEW
日本銀行|総合職

金融システムの安定に貢献を――金融市場のプロが選んだ「日本銀行」という舞台

掲載日:2022/02/21更新日:2022/03/14

前職の証券会社ではトレーダーとしてキャリアを歩んできた岡部恒多さん 。金融市場のプロである彼はなぜ、次なるキャリアの舞台として「日本銀行」を選んだのか。そこには「日本経済の中枢で金融市場を深く理解し、貢献していきたい」という思いがあった。

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セントラルバンカーという選択肢

前職では証券会社のトレーダーとして働かれていたと伺いました。そこから転職を考えたきっかけから伺ってもよろしいでしょうか。

私は、理学部物理学科を卒業した後、新卒では証券会社に入社し、金利マーケットのトレーダーとしてキャリアをスタートさせました。入社してからの約2年間は、いわゆる「債券レポ」と呼ばれる短期金融取引を担当し、さらにその後の5年間は「金利スワップ」と呼ばれるデリバティブ取引を担当しました。グローバル金融危機――いわゆる「リーマン・ショック」――や欧州債務危機に端を発したマーケットの混乱、さらには日本銀行による量的・質的金融緩和の導入など、金融市場の環境が大きく変わっていくなかで、多くの経験を積むことができたと思います。

その頃から描いていたキャリアビジョンは、「金融市場のスペシャリストになる」というものでした。当然、当時から金融政策の動向は常にチェックしていました。また、私自身、オペ先*の懇談会にも参加していました。このように、日本銀行とは継続的な関わりがありました。そうしたなか、「日本銀行で働くことで、金融市場についてより深く理解し、専門性を高めていけるのではないか」との思いが大きくなり、門を叩くことにしました。

*金融市場調節として日本銀行が行なうオペレーション(公開市場操作)の対象先。

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民間では得られなかった、金融の中枢を担う経験

入行後に担当されてきた業務について教えて下さい。

日本銀行に転職後、初めに配属されたのが金融市場局です。そこでは、JGB(日本国債)市場のリサーチや、金利指標改革に関する勉強会の事務局員などを担当しました。また、金融機構局では、金融機関の考査やモニタリングなども担うことができました。

そうした仕事の中でも特に、ヘッジファンドの幹部と経済・金融市場に関する意見交換をしたり、大手金融機関の海外拠点で現地調査をしたりといった経験は、前職では考えられないものでした。こうしたエキサイティングな仕事を担当出来ることは、日本銀行という公的な機関の一員になった醍醐味の一つだと思います。

証券会社から転職された後セントラルバンカーとして求められる知識やスキルは、どのように勉強をされたのでしょうか。

経験の豊富な上司や同僚に仕事を教えてもらいながら、一緒に業務を遂行するなかで、金融市場や金融機関のリスク管理に関する知見が広がり、スペシャリストとして一段と成長することができたと思います。また、日々時間をつくり、自己研鑽にも励みました。金融工学に関する学術的な知見を得るため、上司や同僚の温かいサポートの下、夜間の社会人大学院に通うことができました。

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次なる金融危機を未然に防ぐために

入行後に変化したマインド(仕事に対する意識など)があれば伺わせてください。

特に強く持つようになったのが、いかに金融システムが抱えるリスクを特定し、その顕現化を防ぐことができるか、といった問題意識です。

日本銀行は、金融システムの安定を確保するために「最後の貸し手」となることがあります。一時的な資金不足に陥った金融機関に対し、一時的な資金の貸付け等を行なう機能です。ただし、これはあくまでセーフティネットに過ぎず、日本銀行が資金を供給しなくても金融システムの安定性が維持されることが極めて重要です。いかに「システミック・リスク」の顕現化を未然に防ぐことができるか――いわゆる「プルーデンス政策」の成否――は、私を含む一人ひとりの職員の仕事に懸かっており、その責任と使命を強く感じながら職務を遂行しています。

最近の仕事において感じるやりがいがあれば教えて下さい。

私は現在、金融機構局国際課で国際的な金融規制の策定を担っています。

日本銀行は、金融規制の国際基準を定める国際機関*のメンバーとなっており、金融庁や海外の当局者と協力し、国際金融システムの頑健性の向上に取り組んでいます。私自身も、実務者レベルの会合に参加し、金融機関が破綻した場合の適切な処理方法、金融リスク管理の在り方などについて、海外当局と議論を交わしています。こうした会合には日本の当局を代表する立場で参加するため、プレッシャーは大きいですが、その分、仕事にも大きなやりがいを感じています。

*「バーゼル銀行監督委員会」や「金融安定理事会」など。

最後に今後の目標について伺わせてください。

前職でのトレーダー経験は、現職でも大いに役立っています。しかしながら、時代の変化に応じて、金融システムには様々なリスクが現れてきており、それらに機敏に対応していく必要があります。例えば、気候変動リスクの高まり、暗号資産の取引拡大などはその一例です。常に貪欲に学ぶ姿勢を持ち続けることで、専門性をさらに高めていければと思います。スペシャリストとしての経験を活かしつつ、ゼネラリストとしても、多岐にわたるリスクに毅然と立ち向かっていく、そのようなセントラルバンカーを目指しています。

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