GMOペパボ新卒エンジニアは手厚い研修で「開発の理想形」を学ぶ! エンジニアが成長する仕組みづくりとは
「いるだけで成長できる環境」を標榜するGMOペパボで、若手Webエンジニアはどんな活躍をしているのか。育成の取り組みと合わせてお送りします。
若手エンジニアのための情報メディア「エンジニアHub」。連載「若手エンジニア、どんな活躍してますか?」前回のメルカリ編に続き、第2回はGMOペパボ編です。「いるだけで成長できる環境」を標榜するGMOペパボで、若手エンジニアはどんなふうに働いているのか、そして本当に「いるだけで成長できる」のかに迫ります。
── 第2回は2003年創業、「ロリポップ!レンタルサーバー」「カラーミーショップ」「minne」「SUZURI」などを運営するGMOペパボさんにやってきました。Web企業の中でも息の長い企業で、若手エンジニアはどんなふうに活躍しているのでしょうか。まずは自己紹介をお願いします。
すだっち 初めまして、須田健太郎 (@ku00_ / id:ku00) です。2015年に新卒5期生として入社して、現在はEC事業部カラーミーショップグループでWebアプリケーションエンジニアとして働いています。社内では「すだっち」と呼ばれています。
── 社内ではあだ名で呼び合うんですか?
すだっち はい、みんなにあだ名がつけられて、それで呼び合っています。僕の場合、社内に「健太郎」が3人いるので、苗字の方のあだ名で……。
── なるほど、社長の佐藤健太郎さん (@kentarow) 、CTOの栗林健太郎さん (@kentaro / id:antipop) に次ぐ、3人目の健太郎ですね!
すだっち はい……(笑)
すだっちさん。趣味は「近所の猫探し」と「ライブ鑑賞」。特に南條愛乃さんがお好き。「ライブではカッコいいけど、ニコ生などではスエット姿で登場されることもあり、ギャップがあって本当に尊いお方です……」
おいちゃん Webアプリケーションエンジニアの、いのうえたくや (@inouetakuya / id:inouetakuya) です。「彼女からは、おいちゃんと呼ばれています」というブログをやっているのですが、その流れで社内でも「おいちゃん」と呼ばれています。すだっちと……あっ、ここからもう「すだっち」って呼びますけど。
── はい、いつも通りでお願いします!
おいちゃん すだっちと同じチームで、彼のメンターをしています。僕の担当はRailsとフロントエンドのAngularJS、全体のアーキテクチャ周りなどです。
── ありがとうございます、おいちゃんさん。
おいちゃん 「さん」はナシで!
おいちゃん。大学を卒業後、刑務所、ヘッジファンド、大学などの勤務を経て、2011年paperboy&co.時代に入社。刑務所では「普通に看守をしていました」とのこと。看守は「先生」や「おやっさん」と呼ばれることが多いらしい。「新卒で入ったのに『おやっさん』って呼ばれてました。それが今では『おいちゃん』に」
── すだっちさんは2015年新卒とのことですが、まずはGMOペパボに入ろうと思ったきっかけを教えてください。
すだっち 新卒サイトをいろいろ見ていた結果、GMOペパボが目に入りまして。
── 普通だ!
すだっち 最初に、GMOペパボ社長のケンタロさんがコスプレしている写真を見て、ここは一味違うなと。
── 普通ではなかった。
すだっち Webエンジニアとして働きたかったのですが、ちゃんと「Webエンジニア」として採用枠を設けている企業はどこもレベルが高いイメージがあって、自分なんかは到底、入れないんじゃないかと思っていたんです。それでも行くだけ行ってみようと説明会に参加して、お話を聞いているうちに、よりGMOペパボに入ってみたいなという気持ちが高まりました。巡り合わせですね。
── コスプレ、効果あったんですね……。Webエンジニアとして働きたかったということですが、学生時代からプログラミングはされていたんですか?
すだっち 初めてプログラミングをしたのは大学1年生のときです。大学の科目で、10人くらいで1年かけて、共同でWebサービスを開発して運営する、というものがあって、そこで経験を積みました。エンジニアとしてアルバイトしたことも、個人で開発をしたこともなかったのですが、大学で開発しているときに「ものができたときの楽しさ」を感じて、こういうことを仕事にできたらなと思っていました。
入社したら、年末まで手厚く新卒研修
── すだっちさんは現在、業務でどんなことに取り組まれていますか?
すだっち 現在はネットショップ運営サービス「カラーミーショップ」で、ショップオーナーさんが運営するショップページを常時SSL化するプロジェクトに携わっています。GMOグローバルサインのAPIを使って、ドメインのチェックからSSL証明書の取得まで、一連の流れを一通り実装しています。
── 配属されるまでの研修などは。
すだっち 入社した最初の年は新卒研修でした。最初は「Ruby on Rails チュートリアル」を元に一通りRailsの基礎を学んだあと、各サービスチームを1週間ずつ順番に回るOJTを経て、今年の1月頭にカラーミーショップグループに配属されました。
── 入社した年は、年末まで新卒研修なんですね! いわゆるWebサービス企業としては、かなり手厚い印象です。
おいちゃん 本当に手厚いと思います。GMOペパボでは新卒2期生からエンジニアの採用を始めたんですが、この2期生のときから研修はこのくらいやっていました。もう少し正確に言うと、秋くらいにOJTが始まって、年内に配属先が決まって、年明けから正式配属、というスケジュールですね。
すだっち なので実は、もうすぐ1つ下のエンジニアがOJTでやってくるんですよ(編注:取材は9月末に行われた)。
── ドキドキですね。
すだっち ドキドキですよ!
── 最初にRails研修とのことでしたが、会社全体としてRails必須というイメージでしょうか。
おいちゃん 会社設立当初からあるサービスは今でもPHPメインのものが多いのですが、ここ数年は徐々にRuby on Railsで開発するサービスが多くなっています。そのため、研修では最初にRailsに触れてもらうことにしています。
── すだっちさんはRailsを入社前にやったことは?
すだっち 僕は大学で触ったことがありました。同期の中にはJavaScriptしか使ったことがないという人もいたりしましたね。
── すだっちさんのブログを拝見していると、Haskellも勉強されていますよね。
すだっち 会社で半期ごとに目標設定をするのですが、ひとつだけ普段の業務と関係無いものが設定できるんです。Haskellを勉強する、というのをそこに入れて。大学時代からHaskellに興味があったので、この機会にやろうと。
── その他、入社後に重点的に勉強したものなどは。
すだっち Railsは大学時代にやっていたので大丈夫、という気持ちはあったんですけど、いざ仕事で使うと結構うまくいかないことが多くて。コードレビューを受ける際に、ここはこのデザインパターンで書けるよね、とか言われても、全然知らない!となってしまった。後々のコード品質まで考えてどう設計するかなどの知識が足りないことに気付いて、デザインパターンの本を読んだり、Rubyの基礎的な本を読み直したりしました。
「大学時代にコードレビューの文化があれば……」
── 大学時代も複数人で開発された経験はおありとのことでしたが、会社に入ってから、開発するにあたっての大学時代との違いはありましたか?
すだっち かなり違いましたね! コードレビューの文化が大学時代にはなかったんです。それぞれ個人で開発するけど、レビューはせずに、よしできた、マージします、リリースします、という。リリースしたら不具合がたくさんあって、ここのコード誰が書いたんだ!なんてことが頻繁にありました(笑)。会社ではちゃんとコードレビューが業務フローに入っていて、スムーズに行われていて、ああ、これが仕事なんだな、と感動しました。大学時代にちゃんとコードレビューの文化があれば、もっとギスギスせずに開発できたのに……! でも大学での経験があったからこそ、コードレビューの大事さ、チームで開発する上で大切なことを学べた気がします。
── 開発フローは会社全体で決まっていますか? チームごとに任されていますか?
おいちゃん 基本となる開発フローは全社的に決まっていて、ドキュメント化されています。基本的にはGitHub Flowに準じた開発フローです。そこにさらに肉付けしていく部分は、各チームで工夫しています。
── アジャイルは導入されていますか?
おいちゃん 2013年ごろに、永和システムマネジメントさんにご協力いただいて導入しました。エンジニアだけでなくデザイナーや管理部門も含めて、みっちり研修やワークショップを受けて導入しました。
── 現在おふたりが関わられているプロジェクトの体制や使っているツールなども教えてください。
すだっち 自分とおいちゃんが関わっている常時SSLプロジェクトは、プロダクトオーナーが1人、エンジニアが7人、デザイナーが2人です。
おいちゃん 現在の常時SSLは、デザイナー出身のプロダクトオーナーがやっています。このプロジェクトには前半戦と後半戦があって、前半戦はエンジニア出身のプロダクトオーナーでした。後半戦はUIが色濃く出てくる部分が多かったので、デザイナーがやっているんです。
── エンジニアやデザイナーがプロジェクトに応じてプロダクトオーナーの役割を担当するんですね。すだっちさんは、プロダクトオーナーには興味ありますか?
すだっち いやー、今はただ見ててすごいな、自分はエンジニアとして働きたいな、と思っています(笑)
おいちゃん ディレクター出身のプロダクトオーナーもいます。なりたいものになれる、というところはペパボの良いところだと思います。自分がプロダクトオーナーになります!と宣言すれば、その役割を担えるんです。もちろんある程度、周囲のコンセンサスは必要ですが。エンジニアやデザイナー、ディレクターの肩書きのままプロダクトオーナーの仕事ができる。
すだっち ツールとしてはGitHubとSlack。あと自分のチームでは、タスク管理にPivotal Trackerを使っています。
おいちゃん CIにはDroneを使っています。あと、ペパボではGitHubについては特徴的なところがあって、エンジニアだけでなくデザイナー、ディレクター、管理部門も使っているのが特徴です。クリティカルな情報以外は基本的に社内ではオープンになっていて、エンジニアとデザイナーの人事評価はプルリクエストで行われています。
新卒には「理想の形」を学んでほしい
── おいちゃんに質問します。これまでメンターはどれくらいやられてきましたか?
おいちゃん すだっちで3人目ですね。やっと慣れてきた感じです。
── 普段のメンタリングで心がけていることを教えてください。
おいちゃん ひとつは独善的にならないことです。社内共通のメンタリングの方針があるので、そちらを参照しながらメンタリングするようにしています。すだっちに対しては、きちっとレールを敷くのではなく、セーフティネットの役割を担い、心理的に安全な場を作るよう意識しています。
── なるほど、その点、もう少し具体的に教えていただけますか?
おいちゃん 最初はどうしても、慣れないチームの人に相談しにくい、ということがあると思うんですよ。なので、相談しやすくする雰囲気を作るのはもちろんですが、それだけでは足りなくて、すだっちからメンバーに困っていることを相談できる仕組みを作ったんです。毎日朝会をやったり、エンジニア4人が集まってプルリクエストを見ながら会話をするコードレビュー会を作ったり。さらに、もっと気軽に相談できる場が必要だなと感じたので、15時くらいに「おやつ会」というのをやるようにしたんです。そうやって、コミュニケーションをとりやすい環境づくりを工夫しています。
── おお……すごい!
おいちゃん もうひとつは、全社的な方針でもあるのですが、新卒エンジニアには、現時点でのベストプラクティスによる理想の形を学んでもらおうというのがある。世の中のスタンダードはこうなんだよ、を学んでもらう。しかし、思い描く理想がある一方で、実際にはエンジニアは、現実世界と戦っているわけじゃないですか(笑)
── 厳しい!
おいちゃん 業務に従事するエンジニアは現実と戦っているので、新卒にはそこに理想を持ってきて、理想と現実の差分を埋める役割を期待しています。それをきちんと教える狙いが手厚い研修期間に込められています。ですので、日々のレビューでも、理想形ってどういうものなんだっけ、を問いかけるようにしています。正解をポンと提示するんじゃなくて、自分でアウトプットしてもらう。理想形と現実との差分を埋めるために、今回はこうしよう、という思考のプロセスを導くよう心がけています。
── 全社的にメンタリングの方針があるのは良いですね。実際にチーム配属後、困ったりハマったりすると思いますが、すだっちさんはいかがですか。
すだっち ここが分からない、というときにちょっと聞くと、おいちゃんがすぐ答えてくれる、という聞きやすさがありますね。隣に座っていますし。おやつ会などコミュニケーションをとる場も多いので、慣れていきやすいです。
── ハマったとき、どのタイミングで聞くか、どこまで自分で考えるかって、難しいと思うんですよね。メンター側もどこで声をかけるかは難しいと思っています。いかがですか?
すだっち 僕はパッと聞けない方でした。研修期間中は、ハマることがあると半日くらい悩んでしまうことも。どうしようどうしよう、聞いた方が早いだろうか、でももう少し考えたらできるかも……って。配属後においちゃんに、こういうふうに相談するといいよ、というのを教わって。現在は、分からないことがあったら、どういうことが分からないかを整理して、自分はここが聞きたいんだ、とまとめてから、おいちゃんに相談するようにしています。
おいちゃん 今はすだっちのことを前よりは分かってるつもりですが、配属直後は、どこまでが理解できていて、どこが理解できていないのかが分かりませんでした。プルリクエストのコードを見ても読み解けないことがある。そういうときに、口頭のコミュニケーションが助けになるとことがあります。そこで「SRT」というのを作ったんです。「スーパーレビュータイム」の略なんですけど。
── 良い名前……!
おいちゃん SRTでは、コードレビューをしつつ、分からないことの調べ方や、困ったときにどのあたりで聞いたら良いかなど、仕事の進め方の共有も合わせてしていました。
「相談いいですか」と聞かれたら、すぐ答えられるエンジニアになりたい
── すだっちさんは同期と情報交換などはされていますか?
すだっち 同期はエンジニアが自分を含めて6人います。カラーミーショップグループにも同期エンジニアが1人いて、たまにランチにも行きます。他の部署にいる同期とは、普段なかなか会えないです。
── 会社の規模も大きくなってきましたからね。でも同じグループに同期がいるのは良いですね。
すだっち そうですね。研修中も、6人みんなで開発するという形だったのですが、得意分野が人によって違うので、心強かったです。
── 社外でのエンジニアとのつながりはありますか?
すだっち 全然ないんです……。大きなカンファレンスなどには行ったりするのですが、つながりが欲しいですね。いま勉強しているHaskellでも分からないことが多いのですが、社内でもやっている人があまりいなくて……。
── 社内での技術勉強会などは。
すだっち GMOペパボは社内勉強会も多いですね。最近だとGo言語の勉強会とか、「今の時代はIoTだー!」と言って、業務とは関係ないけどIoT勉強会を開いたりとか。自分もそのうちHaskell勉強会を開催して周りを巻き込めたらなと思います。
おいちゃん GMOペパボのエンジニアの間では「クラブ活動」と呼んでいます。GitHubにClubっていうリポジトリがあって、「月曜のお昼にこういう勉強会をやります」とか告知されて、自由参加できる。
すだっち Slackでも社内勉強会の情報が流れてきたり。活発ですね。
── エンジニアとして成長するための環境として、GMOペパボの良いと思う面を教えてください。会社としては「いるだけで成長できる環境」を謳われていますが、実際のところは!?
すだっち 話しかけやすい環境づくりがやはり大きいですね。メンターだけでなく、おいちゃん以外にも、チームの中で分からないことがあれば、分かる人に気軽に聞けるという環境があります。Slackなどでも、ここ誰か分かりませんかと聞くとすぐ反応してくれる人が多くて、すごく助かっています。
おふたりのお仕事風景。席は隣同士。
── 手厚い育成や研修にはコストもかかりますし、会社全体で意識を持つ必要があると思います。
おいちゃん 僕も新卒2期生が入ってきたときに研修プランを見て、個人的な意見ですが、最初は懐疑的というか、「ここまでやる必要があるの!?」という空気は多少あったかなと思います。でも、それから数年経って、今では新卒エンジニアたちが事業部の「戦力になっている」どころか「中心になっている」んですね。なので、我々が今ここでコストをかけて育成に手をかけているのは大切なことなんだ、と現在では満場一致の意見になっていると思います。
── 最初はここまで手厚くするには、トップダウンでやらないと成立しなそうですが。
おいちゃん 「ひろやん」というエンジニアがいまして(編注:伊藤洋也さん @hiboma)、エンジニアの新卒研修については彼が内容の大枠を策定して、関係者との調整を担っていました。彼の活躍で、これだけの時間をエンジニア育成にかけるという決断が勝ち取れた部分はあるのかなと思っています。
── 最後におひとりずつ質問します。まずはおいちゃん、これからメンターになるような「先輩エンジニア」に向けてアドバイスがあれば教えてください。
おいちゃん 仕組みを作ることにフォーカスすると良いのかなと思います。今日は先輩エンジニアとして心がけていることをお話ししましたが、そういう仕組みが整っているので、ぶっちゃけて言うと誰でもできるんです。そういう、誰でもできるような仕組みが重要。新卒研修やOJTといった大きな仕組みもあれば、おやつ会やレビュー会、メンター同士の集まりといった小さな仕組みもあって、小さなものはメンターになりたての人も工夫できるところだと思います。
── ありがとうございます! 続いてすだっちさん、将来こんなエンジニアになりたい、というイメージがあれば教えてください。
すだっち 僕は他の人から影響を受けやすいタイプで、同じチームの人を見ていると、iOS開発がすごい人や、フロントエンドをバリバリという人などがいて、「ああなりたい、こうなりたい」とコロコロ心変わりしてしまうんです。でも、それだけたくさん道が用意されているんだなと捉えています。あとは、今はおいちゃんにアドバイスをたくさん受けているのですが、自分もいずれ技術を通じて、これから入ってくるエンジニアたちに教えていけるようになれたらいいなと思います。まずは「相談いいですか」と聞かれたら、すぐ答えられる、コミュニケーションがとれるようなエンジニアになりたいです。
── 最後に同年代のエンジニアに向けてメッセージを。
すだっち Haskell仲間、募集中です!
── ありがとうございました!
おまけ
面白いお話がたくさん聞けたなー。さて帰ろう。
あっ。
あの人は……。
「あれ~、今日は取材ですか?」
CTOの栗林健太郎さんこと「PEPABO HEADZ」のMCあんちぽちゃんだ!
「取材か~、なんでも聞いてくださいよ~」
いえ、今日はすだっちさんとおいちゃんの取材だったので。
「あっ、そうですか……」
それでは次回もお楽しみに。
取材:エンジニアHub編集部/写真:赤司聡