掲載日:2023/03/08更新日:2023/03/08
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これまでブラックボックス化されてきたESG / SDGsなど「非財務情報」を可視化し、世界有数のデータベースを構築するーー。途方もない挑戦にも思えるが、各領域のプロフェッショナルが集い事業化、金融機関、コンサルティングファーム、事業会社の経営企画などを中心に利用企業数を伸ばしているのが「サステナブル・ラボ」だ。そのCSチームを牽引するのが相川久弥さん(32)。Sansanで営業のマネージャーだった人物でもある。なぜ彼は次なる挑戦の舞台に「サステナブル・ラボ」を選んだのか。そこにあったのは「SaaSで資本主義をアップデートする」という志だった。
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ESG / SDGs × データサイエンス
2020年、世界のESG投資額*規模は「35兆3,000億円」を突破し、2016年から55%増加。全運用資産の35%超を占めるまでとなった。
その規模は現在も拡大しており、あらゆる企業においてESG / SDGsへの取り組みが経営上の重要テーマとなっている。一方で課題となっているのが、ESG / SDGsなど、いわゆる「非財務情報」の多くがブラックボックス化されていたこと。
これまで網羅性の高いデータベースが存在せず、定量的な指標はほとんどない状況だった。そこに革新をもたらすのがサステナブル・ラボだ。
「非財務情報は専門家でも複雑な情報収集・分析が必要となる領域。私たちサステナブル・ラボではデータサイエンスを駆使し、企業の非財務データの自動取得、AI分析、データベース化などを行っています。手軽に客観的なデータ取得・分析が可能とあり、金融機関・コンサルティングファーム、事業会社の経営企画などを中心に活用が広がっています」
こう語ってくれたのが、サステナブル・ラボのカスタマーサクセス(以下、CS)マネージャーとして働く相川久弥さん(32)だ。もともとSansanにて営業のシニアマネージャーを経験。2022年7月にサステナブル・ラボに入社をした。
なぜ、次なる挑戦の舞台に「サステナブル・ラボ」を選んだのか。そこにあったのは「SaaSで資本主義をアップデートする」という志だった。
*日本総研「2020年版世界のESG投資残高統計が公表 量と質の変化に注目」
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=39388
非財務データプラットフォーム『TERRAST β』(https://www.terrast.biz/)
事業におけるCO2排出量、水の消費量、再生可能エネルギー使用量、女性管理職の割合、残業時間、取締役会の出席率など、企業の非財務情報を収集し、環境・社会貢献度を可視化。ワンストップに、非財務情報のリサーチ・評価・資料作成ができる。非財務価値の評価における包括的なデータセット、データサイエンスを活用した多面的な分析・予測機能を提供し、ユーザーにとっての「納得解」作りをサポートする。また、定量的なサステナビリティ経営判断を支援する『TERRAST for Enterprise β』(https://www.t4e.biz/)も展開。アンケートに回答すれば、自社がどれだけサステナブルな経営ができているかを診断することができる。「現在、未上場企業であっても、どれだけ非財務の取り組みができているか、取引先として問われるケースもあります。逆にそういった先進的なESGへの取り組み実績が強みになり、新たな受注や関係性につながるケースもある。このような場面でも『TERRAST for Enterprise β』が活用されています」と相川さん。
CSを通じ、社会構造をサステナブルに作り変えていく。
前職はSansanにて営業としてキャリアを築いてきたと伺いました。そもそもなぜ、転職を考えられるようになったのでしょうか?
営業として働きつつ、前職でもCS業務も一部担っていたのですが、やればやるほど「CS領域に特化し、もっと極めていきたい」という思いが強くなり、転職を考えるようになりました。
あらゆるサービスがサブスクに移行し、BtoBビジネスもSaaSが主流になってきていますよね。価値を提供し続けないと、お客様が離れてしまう。SaaSはビジネスの形態として、非常にフェアなモデル。そのなかでも特にCSは価値提供の最前線となる仕事。自分でも理想のCSのあり方を模索し、モデルを作っていきたい。その思いが強くなり、転職を決めました。
前職に残ったままCSにキャリアチェンジする選択肢はなかったのでしょうか?
それはありませんでした。ちょうど30代になったタイミングもあり、せっかくチャレンジするなら100名以下くらいの規模、プロダクトやモデルが確立されていない会社で立ち上げから挑戦したいと考えていて。その時に出会ったのがサステナブル・ラボだったんです。まさに規模感や事業フェーズは求めていた環境でしたし、面接でのやりとりが決め手になりました。
面接してくれた方に「CSを追求したい」といった話をしたところ、「CSを追求する、それは大きく捉えると、私たちが挑戦している“ 社会構造をサステナブル(持続可能)に作り変える ”ということと共通しませんか?」と言ってもらって。要するに「カスタマーサクセス」は、顧客の成功にコミットし続け、ビジネスの「持続可能性」を高めていくということ。そしてすべての人とのライフタイムバリューを向上させていく。私はビジネスや仕事内容という視野でしか物事を捉えられていなかったのですが、大きなスケールのチャレンジに「CSの追求」がつながっている。そう感じられ、入社を決めました。
経済や企業の新しい在り方「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」の実現を目指しているサステナブル・ラボ。「社員の半分は外国籍の方。原則リモートワークなので、エジプトやインドから勤務している人もいます。オフィスもあるので、ハイブリッドな働き方もできます。コアタイムもないので、非常に柔軟な働き方が選択できます」と相川さん。
目指すは、誰もが利用する非財務データプラットフォーム
利用企業数も増えていると伺いました。提供するプラットフォームの強みと、その優位性はどこにあるのでしょうか。
一番の特徴としては、ESG / SDGsにおける「全領域」をターゲットにしている点です。まずESGだけで見ても「Environment」「Society」「Governance」の頭文字から来ており、それぞれカバーすべき領域は相当広いわけです。さらに各項目が企業ごとに掛け算されるため、膨大なデータが必要になります。当然、集積するためには時間と労力がかかるもの。その点、私たちは2019年からデータベース構築を進め、国内外の上場企業あわせて4000社以上のデータを網羅しています。さらには非上場企業の非財務情報の取得・整備も進めているところです。
正直、既にマーケットとしても注目されている脱炭素などの領域、例えば、温室効果ガス排出量の分析などに特化したほうが短期的な収益は見込みやすいとも言えます。(E・S・Gで言うところのE領域に該当)ですが、私たちは「日本全体の資本主義をアップデートする」を掲げており、長期志向で網羅型のESGプラットフォームを展開していく。この数年で市場としても確実に立ち上がっていくはずですし、他が追いつけないほどの進化を遂げられると考えています。
一つ確かなことでいえば、このような非財務データを包括的かつ効率的に一元管理できるプラットフォームは金融機関、コンサルファーム、事業会社…多くの企業と担当者から求められている、ということ。まさに日々の業務のなかでも肌で感じている部分です。
どれか一つの項目のスコア・数字を見て一喜一憂するのではなく、自社の事業特性、ミッションに沿った経済合理性を踏まえ、いかに「非財務領域」に取り組むことができるか。総合的に価値を高めていけるか。私たちが提供するプラットフォームは、企業が自社で新たな経営のあり方、取り組みを考える上で不可欠な武器になっていて。こういった立ち位置でいえば、競合といえる企業はほとんど存在していないと言えます。
「顧客が顧客を連れてくる」最高のサービスを
今後の目標について教えてください。
CSチームの立ち上げから担っているのですが、理想として掲げているのは「顧客が顧客を連れてくる」ということ。素晴らしいユーザー体験があり、口コミで広がっていく。そうすれば自ずと経営資源をプロダクトやユーザー体験に投入できるようになり、いい循環が生まれていくはず。ただ、まだまだアーリーフェーズ。まだまだ経済的な強さは足りないですし、理想を語れる状態には遠い。まずは目の前の顧客に向き合い、ペインを解決していく。泥臭いですが、一つひとつ成功を積み上げ、市場を広げていく。会社として経済的な強さを培ってからが、僕自身にとっても本当の勝負だと思っています。
サステナブル・ラボとして見据えているのは、経済的な「強さ」と環境・社会貢献に寄与する「優しさ」の両方が価値を持った世界です。そして私たちの根幹にあるのは、資本主義への疑問。人類を豊かにしてくれたのと同時に、様々な歪が生じている。もちろん資本主義を否定するわけではありません。ただ、これからも人々が豊かな生活を送るために、新しい社会の在り方にアップデートする必要がある。非常に難しいチャレンジだし、ビジネスとして本当に当たるかどうかまだわからない。ただ私はこの大きなミッションに、すごくロマンを感じるんですよね。ある意味、気づいてしまった者の使命として、全力で賭けてみたいと思っています。
最後に、相川さんにとっての仕事とはどういったものか。その価値観について伺わせてください。
何のために働くのか、もっといえば、何のために生きるのか、社会や人間そのものの進化にどう貢献できたか?私はここに意味を見出しているように思います。個人的な趣向でいえば、ありのままの大自然より、チームラボさんが展示などでやっているような「デジタルで花を咲かせる」といったアプローチにすごく感動するんですよね。テクノロジーによって新しい美が生まれ、人や社会の進化を感じられるというか。領域は違いますが、私もそういった「進化」につながるような仕事をしていきたいと考えています。昨日より今日、そして明日、今までになかったポジションやビジネスモデルを作り、進化していきたい。そして会社、社会の進化に貢献していく。当然、全てが成功するわけではないと思います。もしかしたら「灯りの付かない電球」を作ってしまうかもしれない。ただ、それさえも進化の過程として、いずれ誰かが灯りの灯る電球をつくってくれる、そのヒントになるかもしれない。今までになかったものを作り、歴史を紡ぎ、新しい世界へと前進していく。その貢献ができればと思っています。