「新時代のしながわ」をキーワードに、まちづくりを推進する品川区。区民福祉の向上、伝統と文化、区民との協働…それぞれのテーマ・施策に取り組むなか、全領域で重要課題となっているのが、情報戦略・システム標準化だ。2027年度内の竣工を目指す新庁舎建設プロジェクトと並行し、DX推進も急務に。そこで品川区として初となる民間サービスを活用した「デジタル人材」公募を実施する。同公募の背景、そして入庁者に期待することとは。品川区・森澤恭子区長の特別インタビューをお届けする。
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まずは今回の公募に至った背景から伺わせてください。
品川区では、2023年を「新時代のしながわ」元年と位置付け、子育て、教育、福祉、まちづくり、そして政治や行政の仕組みのアップデートを推進しています。そのなかでも全領域において非常に重要になるのが、区役所内での業務、そして窓口をはじめとする区民サービスのデジタル化です。
新たな時代に差し掛かるなか、区民の皆様のライフスタイル、価値観はますます多様化しています。さらにコロナ禍、ウクライナ危機に端を発するエネルギー供給不足、円安による物価高騰など、人々の生活にも大きな変化がもたらされています。こういった時代の転換期において、子どもから高齢者、そして障害のある方、外国籍の方、誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていける「新時代のしながわ」を目指し、さまざまな取り組みをスタートさせています。「区民の幸福(しあわせ)」に向け、それぞれの取り組みをどう加速させていけるか。新たな行政サービスのあり方とは何か。行政のあり方そのものを再定義すべく、デジタルの活用をまさに進めているところとなります。
特に喫緊の課題となっているのが、行政手続きのオンライン化、全庁業務のデジタル化、職員の育成です。今回の公募を通じ、この3つをぜひ推し進めたいと考えています。例えばより身近なところでは行政サービスをオンライン化し、手続きがスマホで完了するような仕組み・体制づくりを、その構築から加わっていただけるかと思います。
また、品川区では2027年度を目処とした新庁舎の建設を進めており、そこに向けた業務最適化、生産性向上、区民の皆様の利便性向上にも取り組んでいます。デジタルを活用した生産性向上により、さらに多くの時間をより良い区民サービスを創造するために職員が使えるようになるはずです。デジタルの知見を職員にも共有いただき、品川区役所全体の「デジタル力」の底上げにも力をお貸しください。
品川区長 森澤 恭子(もりさわ きょうこ)/慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2002年、日本テレビ入社、報道局記者として社会部・外報部・政治部にて勤務。PRコンサルタントとしての勤務を経て、2007年、森ビル株式会社・広報室にて都内再開発プロジェクト等のコーポレート広報に従事。長女出産後、夫の留学・仕事の都合でシンガポールへ。帰国後、ベンチャー企業2社で勤務し、2017年、東京都議会議員選挙(品川区)初当選(2期)。2022年、品川区長選挙に立候補し、再選挙で当選、品川区長に就任した。趣味はヨガ。好きな言葉は「龍になれ、雲自ずから集まる(武者小路実篤)」
続いて、品川区で働くことで得られるやりがいについて伺わせてください。
区は基礎自治体と呼ばれ、生活に最も近い行政単位に当たります。そのため普段の生活で感じるような身近な課題の解決に取り組んでいただけるはずです。また、区民の生活に一番近い場所ですので、ご自身の仕事が実際に「区民の皆様に役に立った」と実感しやすい環境にあると思います。
民間企業と最も大きく異なるのが、生活を営む“全区民の皆様がユーザーになる”ということ。多様な方々の生きづらさ、不安、不満…様々な課題に耳を傾け、解決できる選択肢を提示していく。こういった行政ならではの役割に挑戦することができ、ここは大きなやりがいになるはずです。
もう一つ、品川区ならではの特徴ですと、現在「区民とともに進める新時代のしながわ」をキーワードに掲げているのですが、特に行政と区民との距離を縮めること、区民参画の取り組みも活発に行っていきたいと思っています。例えば、昨年、「大井坂下公園」というインクルーシブな公園ができたのですが、その際、ワークショップを開き、子どもたち自身が意見を出し合い、アイデアを反映させる取り組みも行っています。これはあくまで一例ですが、同様に、デジタルプラットフォームなどを通じて、区民の皆様の声、ニーズを汲み取った上で区政に反映していけたらと思っています。
より行政に「声」を届けてもらいやすくするために、どのようにデジタルテクノロジーを活用できるか。「こんなことを言ってもいいのか」という、たったお一人の声であっても、より多くの方の不便、生きづらさを解消するきっかけになることもあるはず。行政側から情報を伝えていくことはもちろん、デジタルの力を活用し、区民の皆様の「声」を行政サービスに反映する仕組みもぜひ共につくっていければと考えています。
「品川区は新旧が融合した魅力的な街です。昔ながらの100近い商店街があり、お祭りも盛ん。旧東海道があり、歴史や伝統もあり、区民の皆さんが大事にされてきました。そして新しい街づくりのなかで移住してきた子育て・現役世帯の方も大勢いらっしゃいます。デジタルの力も活用し、こうしたまちのポテンシャルを共に引き上げていければと考えています」と森澤区長。
続いて森澤区長ご自身についても伺わせてください。そもそも政治家を志されたきっかけは何だったのでしょうか。
私自身の体験に拠るところが大きいですね。もともと民間企業でキャリアを築いてきたのですが、結婚して子どもが生まれた時「子育てをしながら働くことがこれほど難しいのか」と社会に対して大きな課題を感じ、政治家を志すきっかけとなりました。当時、子育てをしながら柔軟に働ける仕事も、保育園もなかなか見つけられず、非常に苦労しました。なぜこういった問題が放置されているのか。そもそも政策決定の場に子育て世代や女性があまりにも少なく、大きな課題だと考え、自ら政治家になる決心をしました。
さらに都議会議員になってからも、子育てはもちろん、生活の身近なお困りごとなどのご相談をいただくなか、どうすれば、生活に寄り添った身近な社会課題を、解決できるかと考えるようになりました。「これは一番住民の皆様との距離が近い基礎自治体で課題を解決しなければならない」と考え、品川区長に挑戦をしました。
素晴らしい行動力だと感じました。多くの方は社会に不満、課題を感じても、どこかある種の諦めがあるような気もします。
特に日本は投票率が低く、政治に関心が薄いと言われていますよね。自分が声を上げても何も変わらないだろうと。だからこそ、区民参画を促すことで、少しでもその意識を変えていきたいといった強い思いがあります。自分たちで社会を変えていける、暮らしやすいまち・地域にしていける。こういった実感こそが「生きがい」にもつながるもの。そういった中で、区民の皆様と共に、「誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていけるしながわ」を目指していければと考えています。
最後に、森澤区長の仕事観についても伺わせてください。区長にとっての「仕事」とはどのようなものでしょうか。
私にとって仕事は、まさに「生きがい」であり、仕事を通じて少しでもより良い社会にしていくことに貢献できたらと考えています。
最近では「ウェルビーイング」という言葉も聞かれるようになりましたが、経済的な価値だけではなく、身体的、精神的、社会的な繋がりも含め、満たされた状態にある、一人一人が幸せを感じられる社会をつくっていきたい。多くの人が自然体で個性や能力を発揮でき、活かし合う社会を実現していきたいですね。これは仕事においても同じだと思います。人には得手不得手があり、お互いの不得手を補いながら得意なことを活かし合うことで楽しく仕事ができる。今回入庁くださる方もぜひ、ご自身の得手を活かし、共に「新時代のしながわ」をつくっていければと思います。
森澤区長が語る選考のポイント・入庁者への期待
AIを含むテクノロジー、先端技術を、どのように行政として取り入れ、区民の皆様の生活向上に役立てられるか、幸せにつなげていけるのか、新たな視点でどんどん提案いただければと考えています。また、それらを実行していく上でプロジェクトマネジメントの能力を重視しています。
近年でいえば、コロナ禍やウクライナ情勢など、予想がつかなかったことが突然起きる時代となりました。こうしたなか、政治・行政の分野においても1つの答えを簡単に導き出すことは難しいもの。だからこそ、こういった時代に即した形で、スクラップ&ビルドの視点で取り組めるか。区民の皆様のニーズに合っているか。必要としていただけているか。民間から入ってきた方ならではの視点、前例に囚われないアイデアで新たな価値を生み出していただけることに期待しています。
もちろん、行政ならではの業務プロセスや体制がありますので、そのあたりは活発にコミュニケーションを図り、理解を深めながら乗り越えていただければと考えています。時には意見が対立すること、難しい局面にぶつかることもあるかもしれません。ただ、そういった時も、共感を得ながら「第三の答え」を見つけ、プロジェクトを推進していく。多様性を認め合う品川区としても、そういったマインドをぜひ大切にしていただければと思います。