INTERVIEW
天地人|代表取締役  櫻庭 康人

宇宙ビッグデータで「おいしい米」が作れる?!JAXA認定、衛星データベンチャー「天地人」の挑戦

掲載日:2023/06/15更新日:2023/06/22
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宇宙ビッグデータで「おいしい米」が作れる?!そんなユニークな取り組みで注目されているのがJAXAが出資するスタートアップ「天地人」だ。彼らのサービスの核となるのが、まだ誰も気付いていない土地の価値を衛星データを用いて明らかにしていくこと。様々な衛星データサービスが登場する中、彼らの独自性、強み、そして成長の舞台裏とは? 代表取締役の櫻庭 康人さんに伺った。

天地人について
2019年創業のJAXA認定スタートアップ。もともと農業IoTセンサーの開発を行なってきた櫻庭氏が、現役JAXA職員として衛星2基の開発に携わった百束氏と出会い設立。地上のデータと、衛星から取得できる幅広い宇宙のデータを合わせて分析することで、衛星データの活用の幅が広がるのではないか、と考えたことがサービス『天地人コンパス』開発のきっかけとなった。2022年12月にはJAXAから初めて出資を受けた企業となった。

まだ誰も気付いていない土地の価値を明らかに。

宇宙ビッグデータでお米を作るなど、ユニークな取り組みをされていると伺いました。まずは事業概要から伺ってもよろしいでしょうか?

我々は地球観測衛星のビッグデータをはじめとする様々なデータをもとに、解析、可視化、データ提供を総合的に行なうサービス『天地人コンパス』を提供しています。

世界中から日々届く、降水量などの気象情報や、3Dマップに代表される地形情報、赤外線によって観測される地表面温度などのデータを分析し処理していて。それらのデータを実際に自分たちで使い、米の栽培に最適な土地を選定して、衛星データをもとに農業領域のIoT企業と協業して管理しながら作ったのが、「宇宙ビッグデータ米」です。

近年の地球温暖化により、我々の調査でも同じ水田でも一年前と比べると1℃上昇していることがわかっています。結果、水面下の土の温度が上がって根が熱を持ってしまう「高温障害」が多発している。そこで水をずっとかけ流しで入れて温度を下げる必要があるのですが、「夕方になって気温が下がってきたから水を止める」のように人間の感覚だけに頼って進めてしまうと、実はまだ温度が下がりきっていないこともあって。結果的に、商品にならなかったり、味が落ちてしまったりします。

こうした問題は、圃場選びや水の管理で回避できると考えているので、2023年度も我々の栽培方法が有効かを実証していこうと考えています。

天地人06

米卸で国内大手の株式会社神明、農業ITベンチャー株式会社笑農和と協業して栽培した「宇宙ビッグデータ米」。米のおいしさを表す指数のひとつである食味スコアは、トップブランドと遜色ないスコアを獲得。収量も平均より高い。

天地人ならではの強みは「ビジネスにおいて最適な土地を見つけられる」という点にあるということでしょうか?

その通りです。そして、そういった重要な判断をしていくうえでは、1つのデータだけでなく、複数のデータを組み合わせて見ていくことが欠かせません。

そのため、『天地人コンパス』上で、天からの気象データに加えて、ビジネス事業者様が持つ地上のデータ、人のノウハウや実績のデータなどを重ね、カスタマイズし、事業者様自身が複合的に分析することもできるようにしています。

そもそも衛星データは、そのままだと扱いが難しく分析には専門性を要します。そのため、弊社のエンジニアや研究者が処理・分析をして一般の方にもわかりやすい状態にする。例えば、地表面温度のデータを広角写真と組み合わせるなどして、使いやすい状態にして提供しています。現在、フリープランを用意しており、どなたでもWebでご利用いただけます。

天地人コンパス画像

『天地人コンパス』で、夏期の地表面温度から農作物の高温障害リスクを算定した図。赤色はリスクの高いところを、青色はリスクの低いところを示している。

宇宙から「漏水リスク」を検知

農業分野以外で言えば、例えばどういった領域での活用がされているのでしょう?

そもそも衛星データは膨大な種類があり、やろうと思えばあらゆるジャンルの課題に適用できる、非常に大きな可能性があるデータです。

その中で、我々は地球温暖化など「地球規模の課題」に着目し、現在「農業」「再生可能エネルギー」「カーボンクレジット」「インフラ」の4つに取り組んでいます。

特に今注力しているのが、「インフラ」です。2022年に愛知県豊田市とご縁があり、『天地人コンパス』を用いて、水道管の漏水リスク評価をさせていただきました。

具体的には、漏水の原因となる地盤のズレ、地表面温度などを衛星で捉え、既に漏水している可能性のある場所、今後1~2年で漏水する可能性の高い場所を特定しマップ上に示していく。これによって、漏水リスクを検査している水道局スタッフの業務効率を格段にアップできるようになりました。

我々も豊田市さんと連携する中で初めて知ったのですが、多くの自治体では水道管の検査業務には非常にコストがかかっていて。どこが漏水しているか何もヒントがない中、何万キロとある水道管を、水道局のスタッフがひたすら歩きながら調査をしている現状があるんです。

自分たちの技術が漏水リスク評価に使えそうなことは以前からわかっていたのですが、正直、日本国内ではあまり需要がないのではないかと思っていたので、これは驚きでした。

現在、他の行政でもサービスを広めていくため、2023年4月に正式に 『天地人コンパス 宇宙水道局』をリリースしました。その時点で200以上の自治体から問い合わせが寄せられており、ニーズの高さを目の当たりにしているところです。

2023年4月から本格的に導入を推進しており、既に福島市水道局でも採用されています。今後、さらに広めていきたいと考えています。

天地人03

カーボンクレジットにおける取り組みについても伺えた。「森林が CO2をどのぐらい貯蓄するかを、木の種類、生育具合、幹の太さ、高さなどから推定できます。そのエリアでどれくらいCO2を貯蓄しているかが見えてくると、発行したカーボンクレジットが本当に活用されているのか否かを評価できます。水田は水を張っている間に、CO2の4倍の濃度を持つメタンガスが発生するんですが、我々はメタンガス量を推定するアルゴリズムも持っている。このデータは、メタンガスの発生を少なくする栽培方法を考えるうえでも活かせますし、農家さんにとっても、カーボンクレジットを得るために必要となる栽培記録を効率化できる。さらに、米農家がカーボンクレジットによる副収入を生み出すことにも貢献できると考えています」

宇宙ビッグデータを使い、人類の文明活動を最適化する

天地人として、今後の目標について伺わせてください。

我々がミッションに掲げているのが、人類の文明活動を最適化すること。そこに向けて、まず足下では 『天地人コンパス 宇宙水道局』を、日本全国の自治体に導入していきたいと考えています。

自治体においては、少子高齢化により水道局の検査スタッフも減少しており現場の効率化は急務です。さらにDXの遅れも課題となっています。天地人コンパスを導入していくことによって、業務効率化により水道関連業務にかかるコストを削減し、例えば地域の教育事業など、他の予算に回せるような状態を実現していきたい。衛星データを扱うために必要なシステム基盤構築の後押しもしていければと考えています。

そして、海外展開も積極的に進めていきます。

欧米の宇宙領域における開発・研究スピードは非常に速いため、世界のスピードに乗り遅れたくはない。現在は、農業、再生可能エネルギー、カーボンクレジット、インフラの領域に絞っていますが、将来的にはその他の領域にもサービスの幅を広げていきたい。そのためも、優秀な仲間をさらに増やし、組織としても拡大させていきたいと考えています。

現在働いている社員のバックグラウンドは様々。農業に詳しい人、地理に詳しい人、宇宙領域に詳しい人、コンサル出身者など、あらゆる領域のプロフェッショナルが集結しています。いずれも、学習意欲が高く、研究熱心なメンバーばかり。そういったメンバーとお互いに刺激しあえるような方、特定の分野を突き詰めていきたいという方には向いている環境だと思います。

櫻庭さんご自身は、IT領域において多数のスタートアップの設立・事業拡大に携わられてきた、と。様々な領域を経験されてきた櫻庭さんから見て、「宇宙領域」での挑戦はどう捉えられていますか?

私は色々な領域を経験してきましたが、とりわけ宇宙の領域はまだまだ未開拓な部分も多いブルーオーシャンだと思います。宇宙から地球を見るだけでもできることは膨大にありますし、逆に地球から宇宙を見てもできることはたくさんある。それこそ私が生きているうちに全てを対応するのは難しいかもしれない。解決していく楽しみが無数にあるとも言えます。

また、宇宙のデータは宝の山。ビジネスチャンスも非常に大きいと思っています。今後、人類が衛星データビジネスの可能性に気づいて少しずつ一般化していくと思いますが、そういった領域に先駆けて着手できていることも幸運だな、と。新たなビジネスを創っていくことにワクワクでき、一緒に課題に挑んでいける方と働けると嬉しいですね。

天地人04

社員からは「自由な会社」と言われることも多いという。「天地人では、できないことはほぼないと言っていい。例えば、エンジニアでも営業やビジネス開発に挑戦してもらって構わない。「やりたい」という気持ちを尊重するので、裁量権を持って取り組んでいただきたい。そして、成果は国籍・性別・年齢・社歴も関係なく評価します。また、働き方も自由。世界のどこからでもご自身のライフスタイルに合わせて働けます。実際フランス、オーストラリア、カンボジア、グアムに住んでいるメンバーもいますよ」

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