INTERVIEW
国家公務員 「社会人経験者の合同募集」募集期間:2023年7月24日~8月14日

中央10省庁が「合同募集」を実施へ。国の中枢でいかす、民間で培った経験

掲載日:2023/07/10更新日:2023/12/11

2023年度、中央10省庁による民間人材の「合同募集」が始まった。今回行なわれるのは、政策の企画・立案を担う「係長級(事務)」ポジション、国家公務員の募集だ。募集要項・試験の概要・選考時のポイントについて、内閣官房 内閣人事局 菅昌徹治内閣参事官にお話を伺った。

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募集対象省庁・採用予定数
会計検査院:1名
人事院:1名
金融庁:1名
デジタル庁:5名
財務省:2名
文部科学省:1名
厚生労働省:3名
農林水産省:1名
国土交通省:3名
環境省:2名
※採用予定数は、2023年7月3日現在のものであり、変動する場合もあります。


経験者採用試験・概要について
受付期間:2023年7月24日(月)~8月14日(月)受信有効
1次試験日:10月1日(日)
合格者発表日:10月26日(木)
2次試験日:11月3日(金)、11月4日(土) 又は 11月5日(日)で指定する1日
最終合格者発表日:11月17日(金)9:00※最終合格者は、希望する省庁に訪問。各省庁で面接が行われ、採用となる。


試験概要・選考のポイント
国家公務員の採用は、公開平等の競争試験によって行われることが原則であり、中途採用も基本的に(※1)試験をもとに行われる。民間企業などで培ったスキルをいかすことを目的とした「経験者採用試験」についても毎年度、公正・公平な採用試験を人事院(※2)が実施している。

(※1)各省庁独自で公募・選考を行う採用もある。
(※2)国家公務員法に基づき、人事行政に関する公正の確保及び国家公務員の利益の保護等に関する事務をつかさどる中立・第三者機関 として、内閣所轄の下に設けられた機関


【1次試験】筆記試験・経験論文試験
1次試験は、公務員としての基礎的な能力を問うマークシート式の筆記試験に加え、職務経験を通じた志望動機などを問う「経験論文試験」が実施される。「経験論文試験」は民間企業などでどのような経験をしてきたか。それをどういかして公務の世界で活躍したいか、論文形式で記載していく。自らの経験、知見をいかして、どういった仕事で活躍したいと考えているかがポイントとなる。

【2次試験】人物試験・政策課題討議試験
2次試験は、人柄・対人的能力などをみるための個別面接を行う「人物試験」と、特定の政策テーマについてグループで討議を行う「政策課題討議試験」が行われる。特に「政策課題討議試験」は政策の立案能力、他人に説明する能力、他人の話を聞いて理解する能力、論理的思考力などが試される場となる。

中央10省庁「合同募集」実施の背景について

まずは中央10省庁「合同募集」実施の背景について伺わせてください。

現在、霞が関では民間人材などの中途採用を強化しており、今年度も「合同募集」を行うことになりました。経済、技術、社会の変化が大きい時代の中で、複雑化・多様化する行政ニーズに対応し、政策を企画・立案・実行していくために、多様な経験・知識を持つ人材を必要としています。

また、今回のような省庁合同の経験者採用試験は「民間から国家公務員」という転職の選択肢を知っていただく機会でもあります。現在、国における一般職(※)の国家公務員の中途採用比率は16%と着実に増えていますが、まだまだ割合としては低いのが現状です。日本社会全体でも「転職」や「キャリア」に関する価値観が大きく変化しているなか、ぜひ「国家公務員として働く」選択肢もより身近に感じていただきたいと思います。

※一般職の国家公務員とは、特別職の国家公務員(大臣や裁判官、裁判所職員、国会職員、自衛官等)を除く職員。
*(参照)国の機関等における一般職の国家公務員の中途採用比率<>https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/20221014_chutosaiyou.pdf

「国」の仕事にいかせる民間経験

民間での経験は、省庁でもいかすことができるのでしょうか。

大いにいかしていただけると思います。あらゆる民間での事業活動も、何らかの社会課題を改善していくものです。国が行っていることとも必ずつながっています。国としても民間企業や国際機関、NGO/NPOなどと協力・連携し、世界規模での社会課題の解決に取り組んでいますが、むしろ民間の方々のほうがより早く、多くの情報にアクセスし、状況を把握されているようなケースもあるでしょう。携わってきた分野において乗り越えたい課題があった、民間で培ってきた知見をいかして制度やルールを作る側として課題を解決したい。そういった志を持つ方に、ぜひ「国」での仕事にチャレンジいただきたいと考えています。

「自身の経験がどの省庁でいかせるかわからない」という方も応募は可能でしょうか。

もちろん可能です。ある程度、事前に募集省庁の業務を把握し、検討いただきたいですが、ぜひ「遠い選択肢」とは考えず、何らかの国の仕事にご関心があれば、まずはご応募いただければと思います。今回のような合同募集は、どういった省庁に自身の経験がマッチするか、あまり具体的なイメージがないといった方にも広く開かれた機会となっています。

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内閣官房 内閣人事局 菅昌徹治内閣参事官

「これからの国家公務員」に求められる資質・能力

どの省庁でも共通して求められる資質・能力があれば伺わせてください。

一般的ではありますが、困難な課題を解決できる論理的な思考力、判断力、表現力や、適切かつ効果的に対人折衝・調整を行う能力が求められるかと思います。各省庁や国会はもちろん、地方公共団体、民間企業など、多様なステークホルダーと合意形成を行い、課題解決に結びつけていきます。そのためにも適切なプロセスを踏み、コミュニケーションを図ることができることが重要です。

求められる資質で言えば「全体の奉仕者として働く熱意」は、どの省庁で働くとしても欠かせません。国民に対する責任を負い、公正で透明性のある意思決定を行うこと、様々な観点から国民生活の「質」の向上に貢献するために持続的に取り組むことが重要だからです。ぜひ、国家公務員としての使命感、熱意を持って仕事に臨んでいただければと思います。

霞が関では、銀行、保険、メーカー、IT、流通、物流、政府系金融機関、コンサルティングファームなど、様々な経歴を持つ民間出身者が活躍している。「例えば、メーカーで生産技術の開発に携わっていた者が、データ分析の経験をいかし、資源エネルギー庁で日本のエネルギー消費効率の向上に関する政策立案等も担当しています」と菅昌参事官。その他「金融機関 → 金融庁」「大手重工メーカー → 国土交通省」など様々なケースがあり、30代を中心に多くの職員が経験者採用試験により採用され、活躍している。

国家公務員、中央省庁で働く魅力

続いて、国家公務員、特に中央省庁で働く魅力について伺わせてください。

国にしかできない、社会に大きな影響がある仕事ができることです。自らが立案に携わった政策、制度等が様々なところに波及し、良い方向へと社会を変えていくことができる。こういったところに国家公務員の仕事の最大のやりがい、魅力があると思います。

また、大使館、国際機関等での海外勤務、地方公共団体や関係機関への出向・派遣など、多様な経験を積むことができます。視野が広がり、人脈・ネットワークにもつながっていく。キャリアを重ねることで、携わることのできる政策立案、プロジェクトのスケールもより大きなものになっていきます。私自身も、国土交通省、外務省、金融庁、OECD、内閣官房内閣人事局と多様な経験を積んできました。大きな視点で見れば、産業や経済活動は全てどこかで関連しているものです。多角的に社会課題の解決に向き合う上で、どの経験も糧になっています。

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自身の「視点」を、日本全体、世界の発展につなげていく

ここからは菅昌参事官のご経験についても伺わせてください。そもそもなぜ国家公務員を志されたのでしょうか。

地元が横浜なのですが、何もなかったような地域が「みなとみらい地区」として開発され、発展していく様子を見て育ちました。どんどん新たな建物が建ち、人々の生活が豊かになっていくのを見るのは、とても胸躍る経験でした。その後、大学で行政学を学び、まちづくりなどの日常生活にも深く「法令」や「制度」が関わっていると実感しました。そして、自身も「政策を作る側」になりたいと国家公務員を志し、国土交通省(当時、建設省)に入省しました。

これまでのキャリアを振り返り、特に印象に残っている仕事があれば教えてください。

国土交通省で「東南アジアでの建設産業関連制度の構築」に携わったことが印象に残っていますね。現地の政府と協力し、質の高い建設業者を確保・育成できる仕組みや制度を構築するというものです。結果的に、ある国の大臣からは、直接感謝の言葉をいただき、大きな達成感がありました。その後、東南アジア諸国でも制度整備が進み、日本の建設業者も進出しやすくなってきています。国際協力はもちろん、日本の国益にもつながる仕事になったと思います。

最後に、改めてご自身の経験を踏まえた上で「霞が関で働く醍醐味」について伺ってもよろしいでしょうか。

より身近なところでお伝えすると、霞が関で働くと、社会や経済に関するあらゆる報道・ニュースが、何かしら自身の仕事とつながって捉えられるようになっていくように思います。見過ごしていた出来事にも興味が湧き、問題に気づくことも多い。そういった自分自身の「視点」を政策の企画・立案・実行に結びつけ、日本全体、世界の発展につなげていくことができる。ぜひ多くの方にこの醍醐味を感じていただければと思います。

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