掲載日:2023/08/28更新日:2023/08/28
求人掲載中
DeNAからスピンアウトし、2022年からはTBSとタッグを組んだマンガボックス。それまでの「作る」「販売する」機能に加え、アニメ・ドラマ化などマルチメディア展開も可能に。既に、TBSと共同制作した『私がヒモを飼うなんて(通称:わたヒモ)』や『リコカツ』など話題作を世に送り出してきた。今回お話を伺ったのは、マンガボックスでマンガ編集者として働く葦澤 桃香さん(27)。彼女のストーリーから、マンガボックスでこそ得られるやりがいに迫る。
マンガボックスについて
マンガボックスは TBSが51%、DeNAが49%の比率で出資をしている合弁会社。日本のマンガ企業とメディアがタッグを組むのは業界初。「電子書籍とメディアの協業」、そして「出版機能と書店機能の両方を併せ持つ」新しいマンガ企業のあり方で、さらにそこにテクノロジーを掛け合わせ日本のマンガ業界を盛り上げていく存在となることを目指す。
編集部について
全16名の組織(2023年8月現在)。マンガ業界だけではなく、前職ではゲーム業界のシナリオライター、ファッション誌の編集者、小説の編集者など、あらゆるコンテンツ制作に関わってきた人材が集結する。
作品をつくった先の「広める」まで関わりたかった
まずは前職の仕事内容と転職を考えたきっかけから伺わせてください。
前職は編集プロダクションで4年ほどマンガの編集者として働いていました。IT企業や電子書籍業界の企業から制作依頼を受けて作品をつくっていく受託制作会社でした。ストーリーなどは自分たちでイチから考えることができていましたが、その先の、「作品をどう売り、広めていくか」までは関われなかった。担当した作品をもう少しプッシュしてくれたらいいのに…といったジレンマも感じることもあって。作品を世に出して終わりではなく、その先の展開も見据えた制作をしていきたいと思うようになり、転職を考え始めました。
マンガボックスの決め手はなんだったのでしょう?
AMBIからオファーが届き、会社について調べるうちに、TBSとの合弁会社であることからメディアとの協業が可能なこと、そして会社の考え方にも魅力を感じました。
マンガボックスはミッションに" 感情を揺り動かし、⽇本を扶(たす)く "と置いています。私自身、マンガはどれだけ人の感情を揺さぶれるかで面白いか・面白くないかが決まると思っていて。それがミッションに入っていることに、シンプルに好感を持てたんです。
また、選考のなかでは、私の経歴・制作実績などを話すだけでなく、社員の方からも今後の編集部の展望について話してもらえたことも大きかったです。「将来的に編集部規模を約3倍に拡大させ、他の出版社とも渡り合えるような組織を目指していきたい」と熱量をもって話してくれたんです。会社を好きな気持ちや気概のようなものを感じ、私もここで働きたいと思い入社しました。
葦澤さんがマンガ業界に飛び込んだきっかけについても伺えた。「もともと小さい頃はマンガ家になりたいと思っていました。とはいえ狭き門なので、早々に自分には難しいと気づきました。何をしようかと考えたとき、働くということは人生の大半を占めるものだから、せっかく働くならやはり自分の好きなマンガに携わる仕事をしたかった。もともとおしゃべりなタイプではないので営業は向いていなさそうと思い、マンガ編集を選びました」
10年先、20年先も多くの人の心に残る作品を
マンガボックスに入社されて、良い意味で「出版社らしさ」を感じた、と伺いました。
はい。前職時代、IT企業の案件は特にPVや売上などの数字に重きを置かれる傾向があり、インパクトのある演出・展開にしてもらうよう作家さんにお願いすることも多くありました。マンガボックスも、もともとIT企業から生まれた会社なので、そういった観点が強い会社なのかなと予想していました。
ですが、実際は思った以上に「作家さんのつくりたい作品」をつくれる環境でした。もちろん、売れる作品をつくることは大前提としてあるのですが、ストーリーの整合性を大切にしながら、作家さんの意思をより尊重した形で作品づくりをすることができるんです。
マンガボックスとして、「10年先、20年先も多くの人の心に残るような作品をつくっていく」というスタンスをとっているからこそ、こうした制作体制になっているのだと思います。こうした環境は、マンガ編集者にとっても心地よいですね。
実際、作家さんとのやりとりをされるなかで思い出深いエピソードがあれば教えてください。
現在、2022年2月からスタートしたマンガボックス編集部オリジナルの女性向け新レーベル「コミックMELO」に掲載する作品を担当しています。そのなかで、先日やりとりしてる作家さんから、「ここまで作品内のキャラのことを思って親身になって関わってくれた編集さんは初めてです」という言葉をもらったときは、嬉しかったですね。
キャラクターを掘り下げていく過程では、作家さん1人では行き詰まってしまうこともあるので、作家さんととことん話すようにしています。私も編集者として、キャラクターのことを実際に存在する人のように考えているという自負があるので、「このキャラはこういうことはしないのでは?逆にこのキャラならこういうことを言いそう」など率直に意見を伝えます。ときには「両者一歩も譲らない」といった状態に陥ることも(笑)ただ、そういったコミュニケーションを経ることで、作家さんとの関係性を築けたり、今回のように感謝されることもあったりする。結果的に、良い作品づくりにつながるのではないかと思います。
「作品がマンガとしてだけでなく、ドラマになることもある。 なかにはドラマをきっかけにマンガを読んでくれる人もいるなど、いわゆるマンガ好きな人以外にもアプローチできる。より多くの人に届くエンタメコンテンツをつくるという意味で、ゆくゆくは社会貢献にもつながっていくのかなと思います」と葦澤さん。
『わたヒモ』撮影現場で見つけた、ドラマ化のヒント
マンガボックスは「TBSとの距離が近い」という点も魅力の1つですよね。
そうですね。入社して間もない頃、先輩が担当していたメディア化案件『私がヒモを飼うなんて(通称わたヒモ)』のサブ担当として就かせてもらい、ドラマ制作現場を見ることができたのは非常に貴重な経験でした。
現場を見て感じたのは、同じエンタメ制作でも、ドラマとマンガでは全くつくり方が違うということ。マンガは作家さんと編集の1対1で進めるのに対し、ドラマの撮影現場では、一瞬のカットのために数十人ものスタッフが関わっている。また、マンガは絵なので、いくらでも設定やキャラなども変えられますが、生身の人が演じるドラマは同じようにはいきません。代わりに、撮り方やセリフの言い回しで表現していく。実際、俳優さんが同じセリフを何回も様々な言い方で演じる様子を目の当たりにしました。
これを機に「どういった作品であればドラマ化しやすそうか」といった観点でも作品を見ることができるようになってきました。そして、「いつか自分の担当作品でメディア化できるように頑張りたい」と思うきっかけにもなりましたね。
現在、他チームでもTBSとタッグを組んでイチからマンガ制作が進行しています。意欲さえあればアニメ化、ドラマ化を見据えた作品を担当するチャンスはたくさんある環境。そういった案件に関われるように頑張りたいと思っています。
『私がヒモを飼うなんて(通称わたヒモ)』は、2023年3月~5月にかけてTBSでドラマ化され放送された。また、ドラマ化以外でもTBSとの協業は進む。「たとえば、マンガ『新人アナウンサー佐々原音がお伝えします』は、TBSテレビアナウンスセンター全面協力のもと、現役新人アナウンサーに取材をしながら制作されています。できることがまだまだ色々あるんだなと感じます」と葦澤さん。
マンガボックスの次なる代表作を、この手で
今後の目標があれば教えてください。
まだマンガボックス編集部、マンガボックスのアプリ自体、そこまで知名度が高いわけではありません。そのため、私がヒット作をつくり、マンガボックスの知名度やブランド全体の底上げをしていけるような仕事をしていきたいです。
そして、やるからには実写ドラマ化されるような作品に携わりたい。そのためにも、日々作家さんを発掘し、企画を通していきたいと思っています。
私がメインで担当するのは女性向け作品ですが、自分次第でどんどんいろんな作品・ジャンルに挑戦できる環境です。私で言えば、常にTwitter(現X)やピクシブなどのSNSをチェックし、作品をあげている作家さん、すでにデビューしているけど意欲的に露出の場を求めている作家さんを探し、声をかけています。ただ、昨今のマンガ人気に伴いマンガアプリもたくさんあり、業界内では作家さんの取り合いが起きています。30人オファーをして興味を持ってもらえるのは6~7人という世界。決して甘くはないですが、「作品がメディア化される可能性がある」という点には作家さん方にも興味を持ってもらいやすく、手応えはあります。
現在、少年マンガっぽいファンタジー系の作品など、いわゆる「なろう系」の作品の準備をしているところ。まずは自分が担当した作品を1本でも多く世に出せるよう、目の前の案件に取り組んでいきたいです。