M&Aや事業再生などにおける戦略から実行までを幅広く支援するPwCアドバイザリー合同会社(以下、PwCアドバイザリー)。強みは、150カ国以上に展開するグローバルネットワークだ。特に現在、採用を強化しているのが「人事アドバイザリーチーム」。人に関するイシューを扱い、課題解決を図る組織だ。お話を伺ったのは人事コンサルタントとして働く尾嶋 孝弘さん(29)。鉄道会社の人事を経て、2021年に中途入社した。彼の転職決断の裏には「人事のみならず、より全社・経営戦略に近い俯瞰的な視点を磨きたい」という思いがあった。
まず、転職を考えたきっかけから伺ってもよろしいでしょうか?
人事以外にも領域を広げ、経営に求められる俯瞰的な視点を磨きたい。そういった思いがあり、転職を考えました。
鉄道会社の人事として働いていた時に採用戦略や人事企画などの業務に携わり、やりがいを感じていました。ただ、ヒト、モノ、カネ、情報という経営資源のうち、私は「ヒト」しか知らない。モノの観点からみたビジネス戦略はどう組み立てるのか。カネの観点で言えば、財務や税務の視点では戦略や人材マネジメントはどうあるべきなのか。それらを総合し、重要な経営判断をする際はどういった視点が必要なのか。そういったことにも興味がありました。
また、コロナ禍を機に、会社に頼って自分のキャリアを決めることに危機感を覚えるようになりました。30代、40代以降、自分の力で自分がやりたいことを実現できるだけのスキルをつけたい。そう思い、修行できる環境に身を置きたいと思うようになったのです。
経営的な視点を磨いていくことを考えたとき、変革局面においてビジネスの上流工程から視座の高いカウンターパートとともに仕事ができると思いコンサルティング業界を志望しました。特に、自分の培ってきた人事スキルを活かしながら経営的な目線を養うことができる環境という軸で企業を探し、コンサル未経験であることも踏まえてビジネスに特化した戦略系コンサルティングファームというよりは総合コンサルファームやFASの人事コンサルティングチームに絞って転職活動をしていました。
そのなかで、PwCアドバイザリーの決め手は何だったのでしょう?
まずは、人事のみならずビジネス・法務・財務・税務・IT等の他領域とのコラボレーションが密であり、さらに企業における最大の変革局面であるDeal(M&A・組織再編・事業再生)に携わることができると考えたからです。また、PwCアドバイザリーの人事アドバイザリーチームであれば、トランザクション支援のみならずその後のPMI等も含めた幅広く・深い人事領域の支援をしているため、人事の専門性を尖らせていくうえでも多くの経験を得られると考えました。
あくまで私のイメージですが、たとえば総合コンサルティングファームで人事コンサルになった場合、システム改修、制度改定など、あくまで人事部門内で抱える問題に対する課題解決をしていく業務が多いのではないかと想像しています。
私としては、人事部門内に閉じた業務を行うのであれば、これまでの延長線でしかないと感じていました。せっかく転職するなら、人事部門以外にも視野を広げ、より全社・経営戦略に近い経営的な俯瞰的な視点を養える環境に身を置きたかった。そんな私にとっては、PwCアドバイザリーは魅力的でしたね。
現在、シニアアソシエイトとして働く尾嶋 孝弘さん。市場価値を高めたいという思いを後押しした要因についてこう振り返る。「偶然、周りの友人もベンチャーに転職したり起業したりする人も多くて。時代の流れとしても、終身雇用のホワイト企業でずっと働くという考え方から、若いうちに力をつけて自らのキャリアを掴んでいくという考え方にシフトしていると感じていました。そうした外的要因もキャリアを見つめなおすきっかけになりましたね」
働くなかで感じる、仕事のやりがいについて教えてください。
PwCアドバイザリーはM&Aにおける人事コンサルとしては、かなりサービスラインナップが幅広い。そのため専門性を持ちつつも、いろんな領域・テーマに携わることができるやりがいがありますね。特定の領域だけに閉じることなく専門性を磨ける、ややゼネラリストを目指す方に向いている環境だと思います。
わかりやすい例で言えば、最近増えている、IT人材を一気に確保することを目的としたM&A(アクハイアリング)を行う場合。どういった人材を求めていて、どういった企業を買収すればいいのか、さらには買収後のリスク精査やシナジー効果検討といった“人事デュー・デリジェンス”。さらには、その人材をどう移管していくのかといったトランザクション支援。統合後の新会社における人事制度の最適化、人事システム・オペレーションの最適化、風土改革、人材流出を防ぐための従業員や経営者のリテンションといったようにDealに関するあらゆる人事イシューを1つのプロジェクトで幅広く一貫して手掛けることができます。
また、PwC Japanグループならではと言えるのが、グループ内の各法人と連携し、ワンチームとして業務を進行できる点です。
私自身、あるプロジェクトでは、PwC税理士法人の税務チーム、PwC弁護士法人の法務チーム、そしてプロジェクト管理を行うPMOとともに、3カ月にわたり毎日のように連携しながら働きました。
その中で感じたのが、一人一人が「自分の領域については 誰よりも詳しい」という自負とプロ意識を持ち、自分が出せるバリューを最大限に発揮するという姿勢で臨んでいること。仕事への向き合い方は、非常に刺激になりました。
事業会社の人事をされていた尾嶋さんから見て、PwCアドバイザリーで働く魅力はなんだと思いますか?
一般的に事業会社にいたらM&Aを経験する機会はあったとしても1回あるかないか。一方、PwCアドバイザリーでは1年間に複数件ものM&A業務を経験できる。単純に、成長スピードが圧倒的に速いと思います。
実際、私が入社してから磨かれたと感じているのが、多面的に物事を考えるスキル。より具体的に言えば、人事の視点だけではなく、経営層や企画担当者の視点でも、物事を考えられるようになってきたように思います。
たとえばクライアントのカウンターパートが人事担当者であれば、私たちは経営の視点からコストの観点などを含めた意見をお伝えしますし、企画部門の担当者に向き合うときは、人事としての見解をお伝えします。誰がきいても納得感のある結論を導き出す。少しずつ、そうしたことができるようになっています。
また、こうした力を鍛えられたのは、日頃から上司にもらうレビューによる部分が大きいです。「これは人事の視点からしか考えられていないのでは?経営層からこんな質問がきたらどう対応する?」そういった指摘を日々もらいつつ、少しずつ視座を磨いています。PwCの名に恥じないプロのコンサルタントとして、誰もが納得のいくような論理的な回答をするためにも、自己研鑽は欠かせませんし、もっと成長したいですね。
事業再生のパイオニアとしても知られるPwCアドバイザリー。100カ国以上にディールの専門家を配置しており、クロスボーダーM&A支援実績も豊富だ。尾嶋さんは、働くなかで手応えを感じる瞬間についてこう語る。「クライアントから、『PwCさんに入ってもらわなかったら絶対成功しなかった』『またPwCさんにお願いしたいです』といった言葉をいただくと、励みになりますね。また、自分の担当案件が新聞や雑誌などメディアに取り上げられたときなどは、日本のビジネスに対して自分が一員として動かせていると実感できる瞬間でもあります」
今後の目標があれば教えてください。
現在は、日本国内の案件を担当することが多いですが、今後はクロスボーダー案件にももっと挑戦していきたい。そして、人事以外の領域にも挑戦したいです。社会人になってからずっと人事畑を歩んできて、未だその枠からは飛び出せていない感覚があります。たとえば戦略、PMOとして案件に関わっていく、といった経験も積んでいきたいですね。
また、自分の人生において実現したいこととして、昔から「日本のプレゼンスを上げていく」ことに貢献したい思いがあります。
もともと幼少期から、海外の人に日本のビジネスやモノづくり、カルチャーが認められたり、リスペクトされたりすることに、強い喜びを感じていたのです。
たとえば、私が幼い頃、我が家にホームステイに来ていた人は「日本にはテレビゲームをしに来たんだ」「漫画を楽しみに来たんだ」などと話してくれました。また、学生時代の海外旅行で出会った現地の人は「日本の自動車メーカーはすごいよな」「日本のカメラは素晴らしいね」と話してくれました。彼らの言葉に、日本人として非常に誇りを感じたのを覚えています。
ただ、かつて世界で1位、2位を争う経済大国だった日本は、今や一人当たりのGDPでは中国に抜かれ、さらにドイツやインドにも追いつかれそうな状況ですし、このまま人口減少が続けば人口が増加トレンドにあるアフリカの国々にも抜かれてしまうのではとも囁かれたりしています。単純に悔しいじゃないですか。昔みたいに、日本が経済大国としてアジアをはじめとした各国から憧れられるような国にしたいですし、世界の中でもイニシアチブを取ってリードしていけるような国になりたいなと思います。
そのために、私個人としてどのようにアプローチしていくか考えたとき、もしかしたらコンサルを飛び出し、大手の事業会社に入って事業を回していく道もあるかもしれないですし、あるいは、起業して自分がトップに立ちビジネスを回していく道も面白そうだなと思っています。
まだ先のことはわかりませんが、いつ、どの選択も選べるようにしておきたい。そのために、今は武器を集めているようなイメージです。今、経営者の方々と日々話をできるような環境に身を置き、論理的に意思決定を導き出す経験を積んでいることは、全て将来につながっていると思っています。
最後に、尾嶋さんにとって仕事とは?
私にとって仕事とは、チャレンジすることだと思います。
仕事は人生においても、結構なウェイトを占めるもの。そこにやりがいや楽しみを見いだしたいと考えたとき、仕事もチャレンジングなものであったほうがいいし、毎日の活力につながるものにしたい。特に私は、居心地が良くなってしまったり自分がやることが見えてしまったりすると飽きてしまうタイプ。常にチャレンジングな環境に身を置いていたいと思っています。
PwCアドバイザリーに転職し課題解決を仕事にするようになって、チャレンジの量は前職と比べても圧倒的に増えました。脳に汗をかきながら仕事をしていくなかで、やりがいや仕事に対するモチベーションはますます高まっています。これからもチャレンジを続け、将来に向けて自身のスキルを高めていきたいです。