INTERVIEW
国土交通省

民間から国土交通省へ。不動産 、道路、河川、港湾、空港…政策で支えていく社会の礎

掲載日:2024/01/11更新日:2024/02/09

不動産、道路、河川、港湾、空港などの整備・広域的な地域づくりを担い、安心・安全な生活、豊かで円滑な経済を支えていく――国土交通省が、2024年の総合職(課長補佐級・係長級)中途採用を実施する。今回の採用にあたり民間企業出身、同省にて働く井上尭さん(不動産・建設経済局 不動産市場整備課 不動産投資市場整備室 課長補佐)を取材した。国土交通省でこそ得られる仕事のやりがい、得られる経験とは。

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広く「暮らし」に関わる領域で、多様な経験を

まずは国土交通省への志望理由から伺わせてください。

国土交通省は「暮らし」に深く関わる領域を多岐にわたって管轄しており、その環境を魅力に感じて志望しました。たとえば、道路や河川・ダムなど総合的な社会資本の整備、鉄道・空港をはじめとした交通施策の推進、気象業務などの発展、海上の安全・治安確保など、多様なチャレンジができると考えました。

民間企業でいえば、年齢を重ねるに連れ、社内異動がしづらくなり、担う領域が自ずと決まってきますよね。30歳を過ぎると業種、職種の転換を伴う転職も難しい。ただ、私自身、常に新しい経験をしていきたい思いがありました。未知の分野に飛び込み、新たな事柄を知っていきたい。その点、省庁では約2年で異動や出向があり、新しい環境に身を置くことが求められます。とくに国土交通省は、先にお伝えしたように携わることのできる領域が広い。他省庁、地方自治体、大使館、海外機関…さまざまな場所で経験を積むことができると考え、入省を決めました。

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井上 尭さん(国土交通省 不動産・建設経済局 不動産市場整備課 不動産投資市場整備室 課長補佐)
京都大学大学院卒(地球環境学舎環境マネジメント専攻)。リクルートに入社後、住宅領域事業にて営業、商品企画・開発、調査・研究と多様なポジションを経験。2018年から2年間の国土交通省への出向を経験。「リクルートは非常に恵まれた環境でしたが、35歳を一つの節目に、キャリアを見つめ直すことに。それが当たり前の環境でもあって(笑)転職という選択肢は常に頭の中にありましたと井上さん。「国家公務員も“企画をする”という広義の意味では前職時代と同じ。もちろん法律や税制などを扱う違いはありますが、決して国家公務員を特別な仕事だとは考えていません。もし応募を迷っている方がいれば、特別視はせず、ぜひ積極的にトライしてほしいです。」

道、建物、河川、交通機関…「まち」の全てが仕事に

国土交通省での仕事のやりがいについて教えてください。

道、建物、河川、バス、電車、旅客機…まちを歩けば、目に入るものの多くが国土交通省の管轄しているものです。私自身、入省して最初に携わったのは河川関連の法律改正だったのですが、実際近くの河川までよく足を運んでいました。そこにある課題一つひとつを解決していくことで、より良い暮らしをつくっていける。生活に直結するもの、手触り感があるものに携わっていける。これは国土交通省で働くやりがいの一つです。

特に民間企業と違うのが“ビジネスとしての儲け=収益性の高さ”ではなく、“世の中で課題となっていること”に純粋にフォーカスできることだと思います。省庁での仕事は「儲からないからやらない」とはなりません。10年、20年…もっと先の未来を見据えて「より良い社会を築いていく上でやるべきか」を判断軸に仕事に取り組める。さらに技官、地方整備局、気象庁等専門性を有するさまざまな人・組織と連携し、共に新しい政策検討ができる。ここも大きな醍醐味になっています。

ちなみに現在はどのような業務に取り組んでいるのか、伺ってもよろしいでしょうか。

現在は、政府としても2030年頃までに資産総額40兆円を目標に掲げる、不動産投資市場(*)の拡大に向けて取り組んでいます。まだ、具体的にお話できる実績などはありませんが、着任後4ヶ月で既に200人近い事業者・専門家・有識者の方々と意見交換を行い、検討を進めています。

(*)土地や建物が生み出す収益を裏付資産に、投資家から資金を調達する手法。政府は2030年頃までに、40兆円規模への市場拡大を目標に設定している。

不動産投資市場の拡大は、身近にはどういった良い影響があるものなのでしょうか。

わかりやすいところでいえば、古民家などが空き家となり、買い手がつかず、管理も行き届かず、どんどん老朽化が進むということがあります。たとえば、その物件を“証券化”し、応援の意味も込め、多くの人たちに証券を購入してもらう。そのようにして得たお金で改修を行い、改めて法人や個人に賃貸物件として貸し出すことができれば、安定した収益が期待できます。このようにして不動産を証券化し、物件を運用できれば、地方の空き家問題の解決、さらには地域の活性化につながっていくかもしれません。当然、金融商品として選択肢が増えることになり、その認知や活用が広がれば、個人の資産運用にも寄与できるものと考えています。

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2021年12月に国土交通省に入省した井上さん。「入省後は、これまで経験や知見のなかった水管理・国土保全局 水政課に配属になりました。」と語る。「特に印象に残っているのは、水災害対策について規定している「水防法」の改正に携わったこと。法改正により国が持つ高性能な洪水予測モデルの計算結果を、都道府県でも活用できることとなり、従来よりも精度が高く長時間先の洪水予報が行えることになりました。」

求められるのは、自律的な動き

続いて、民間企業出身の方がミスマッチをしないためにも事前に知っておくべき「厳しさ」があれば教えてください。

厳しいと感じるか、人それぞれだと思いますが、もし戸惑いを感じる場面があるとしたら裁量・責任範囲の異なるさまざまな仕事があり、同時に取り組む必要があることでしょうか。

与えられた席に応じて仕事が紐づいており、「あなたの責任で遂行してください」という「自律的な仕事」が求められます。やることが前提として求められるもので、自ら動かなければ遂行が難しい業務と言えます。また、その仕事によって喜んでくれる人が目の前にいる仕事ではないので、仕事に対する意欲を自らコントロールする必要があると感じています。その一方で、国会対応などは非常に「他律的な仕事」。さまざまな関係者との調整が必要なことも多く、忍耐が求められるものと感じています。それぞれ相反する進行が必要となるため、民間企業にはない難しさがあります。こういった仕事の性質や進め方の違いは事前に知っておくといいかもしれません。

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まずは身の回りの環境をより良い方向へ

井上さん自身、キャリア選択において大切にされてきた考え方があれば教えてください。 

キャリアのユニークさは大事だと考えています。前職はリクルートという会社にいたのですが、多くの業界にOBOGがいる会社で(笑)なので、OBOGがいない領域に行くことは、自分のキャリアのユニークさにつながると意識していました。「民間」を経験している「公務員」、どちらも知っている、そういった独自の存在になりたいと。じつは大学院時代に専攻した環境学も「理系」と「文系」の間にある学問でしたし、関心を持った都市環境も「人」と「自然」の間にあるもの。どちらでもあり、どちらでもない。どちらにも寄らないことで独自の関心領域、得意分野、キャリアにつなげてきたように思います。どちらも知っていることで、シームレスに双方について考え、越境していく。この考え方、捉え方は今後も大切にしていければと思います。

最後に、井上さんにとって「仕事」とはどういったものか、伺わせてください。

もちろん給料をいただき、自身の生活を支えるものという前提はあります。ただ、その上で周囲の環境に働きかけるもの、社会課題を解決し、次の世代により良い世の中を残していくためのものだと考えています。

子どもの頃から環境問題に関心があり、大学院でも環境学を学んでいたのですが、パッと浮かぶ地球温暖化や砂漠化などは地球規模で複雑な問題ですので、直接的なアプローチで即座に解決することが難しいものだと考えていました。そこでまずは自分たちの身の回りの環境をより良い方向へと変えていくこと。その積み重ねがより広く、大きな環境問題にも少しずつ影響を与えていけるはずと考えていました。前職時代にもその思いはあったのですが、国家公務員として政策を通じ、社会課題により直接的にアプローチをしていく。これが私が国土交通省で働く意味でもあります。まだまだ民間企業から国家公務員というキャリアを持つ職員も少ないですし、価値発揮できる場面も多い。今回入省される方とも一緒に、仕事を通じ、いかに社会により良い影響を与えていけるか。領域にこだわらず、越境の視点を大切にしながら、挑戦を続けていければと思います。

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