全国に先駆け、2016年に「スタートアップ支援事業」を開始し、エコシステム構築を推進してきた神戸市。2024年度を迎え、「スタートアップ・エコシステムグローバル拠点都市」として進化へ――。起業家をはじめ、多様な“挑戦者”たちの機動力向上に伴走する「イノベーション専門官」を公募する。ミッションはグローバルを目指すスタートアップ支援・創出の強化だ。一体どういった人材が求められるのか。そして得られる働きがいとは。神戸市 企画調整局 東京事務所 所長である武田卓さんに伺った――。
今回の公募は神戸勤務・東京勤務、それぞれの同時募集となる。その狙いとは――。
「神戸市では2016年よりスタートアップの集積、支援、創出に取り組んでおり、2020年には内閣府のグローバル拠点都市にも選定され、神戸域内におけるスタートアップ界隈のプレイヤーの土台はできてきたと捉えています。引き続き神戸域内でもグローバルを強化していきます。同時に、日本では、東京にヒトモノカネが一極集中しているのも現状です。神戸市として“世界的なスタートアップ都市”を目指していく上で、グローバル・東京との接続がより必要になります。そこで東京圏のスタートアップ、VC/CVC、企業、大使館などとの接点を作り、神戸で具体的なアクションに結び付けていきたい。ヒトモノカネを神戸に還元したい。それが東京勤務のイノベーション専門官を採用する狙いです。」
より具体的な目標やKPIについても武田さんはこう言及する。
「例えば、“企業版ふるさと納税”を年間数千万円獲得していくなどはわかりやすいKPIですよね。その他にも、人材を神戸に何百人還元、企業の誘致を神戸に何件実現、市内企業との協業を何件実現など、より具体的なアクションと目標を立て、それぞれ数年後までに実現していくことを念頭に置いています。」
企画調整局 東京事務所 所長 武田 卓(たけだ たく)
1998年、同志社大学経済学部卒。その後、電子応用機器会社を経て神戸市入庁。神戸アイセンターの立ち上げや病院の統合、福祉現場の最前線など幅広い業務を経験した。2019年には様々な行政課題解決のための専門部署である「つなぐ課」特命課長に就任。2020年に新産業課長へ。スタートアップ施策・市内企業のオープンイノベーション推進に取り組み、2024年に企画調整局 東京事務所 所長に就任し現在に至る。
続いて伺えたのが、イノベーション専門官に期待する役割について。
「特に期待したいのは、機動力をもって接点構築を図り、相手方それぞれのメリットを提案していくことです。そして、神戸のプレイヤーと結び付け、具体的な成果までつなげる役割を担っていただければと考えています。例えば、イベントやコミュニティへの参加→個別の面談・提案→神戸のプレイヤーとの面談→実行のようなフローを実現してほしい。神戸のスタートアップ施策・エコシステム形成への助言も行っていただく予定です。」
東京で働くメンバーもその本質、やりがいは共通する部分だ。
「神戸市のイノベーション専門官として働くやりがいにも通じる部分ですが、行政というニュートラルなポジションを活用し、あらゆるステークホルダーにアクセスでき、今後の人生においてもプラスとなる人脈形成が可能です。また、国として力を入れているスタートアップの取り組みの最前線に参画できます。まだまだ未成熟な神戸スタートアップエコシステムの成長を自身で作り上げていく。この挑戦は掛け替えのない経験、キャリアになると思います。また、東京勤務に関していえば、これまで部分的であった神戸と東京の接点構築を1から作り上げていくことができます。神戸市という大都市の成長の一端を担えるとともに、神戸から世界に羽ばたくスタートアップの創出に寄与していける。こういった部分も大きな魅力だと思います。」
魅力の一方、ミスマッチをしないためにも事前に知っておくべき厳しさ・注意点とは。
「機動力、柔軟性をもってチームとして取り組んでいるが、公務員として、外からの目に対して通常の民間企業よりも倫理観など意識を高めてもらう必要があると考えています。また、副業を希望される方も多くなっている現状ですが、任期中は神戸市の職員として、集中してジョインしていただける方を求めています。」
特に重視をするポイントは経験、そして「協調性」や「機動力」だという。
「まず書類選考段階では、スタートアップ界隈とのネットワークや経験などを見させていただいています。また、面接においては協調性や機動力が発揮できるか、物事を考えているか、主体性があるかなどを見ています。神戸と東京圏のヒトモノカネの接続していく上で、考える力、地頭力などはやはり重視です。特に面接では「任期が終わった後のキャリアをどう考えているのか」「このポストで何を実現したいか」などは質問していますね。」
2023年10月、神戸市に世界6か所目となる「Microsoft AI Co-Innovation Lab」がオープン。革新的なAIなどのソリューション、アプリケーション開発と産業化促進を目的に運営されるイノベーションを創造するグローバル組織(米国マイクロソフト本社所属)。この誘致にも武田さん率いるチームで取り組んだという。
そして伺えたのが、武田さん自身がやりがいを感じる瞬間について。
「私自身、常に新しいことにチャレンジしており、1から作り上げたものを世に出せる達成感は大きいですね。例えば、地方ファンドの組成、アンカー神戸の開設、海外スタートアップの支援事業、若者コミュニティの形成、エコシステムコンソーシアムの形成など、すべてチームでブレストしながら決定権をもって作り上げてきました。同時にそういった取り組みになどについて様々な登壇機会(リアルで1000人の前で登壇することも)もあり、神戸の取り組みを理解してもらい、「すごい」と言っていただけると誇りに感じますし、やってきて良かったなと思います。本当に多くの人との出会いもあり、飽きるということはないです。」
そして最後に伺えたのが、武田さんにとって「仕事」とは何か。そこには「生きる糧」以上の意味があるという。
「仕事は生きていくために必要なものではあります。ただ、やるからにはだれにも負けないくらい働きたいですし、楽しめる仕事をしていきたいです。仕事は大変なものですが、やりがいをもって、常に全力で取り組むことを大切にしてきました。現在は神戸市の職員として、神戸のためになることは何でもやる。そのくらいの思い、断らない姿勢で取り組んでいます。神戸が良くなれば、日本が良くなるし、世界が良くなっていく。そう信じていますし、ぜひこの思いを一緒に形にしていく仲間に来ていただければと思います。」