INTERVIEW
経済産業省|2024年度 社会人経験者採用

税理士法人から経済産業省へ。日本の「豊かさ」のために、経済からインパクトを。29歳 課長補佐が抱く志

掲載日:2024/08/26更新日:2024/08/26
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経済産業省(以下、経産省)での社会人経験者採用にあたり、KPMG税理士法人を経て、2023年4月、当時28歳で経産省に入省し、現在通商金融課・課長補佐(企画・制度担当)として働く吉田 優太郎さん(29)を取材した。なぜ、彼は経済産業省でのキャリアを選んだのか。そこには「得てきた知識や経験を活かしつつ、日本の豊かさのために仕事をしていきたい」という思いがあった――。

経済から、日本に豊かさを

もともとKPMG税理士法人にて勤務していた吉田さん。なぜ彼は経産省でのキャリアを選択肢したのか。転職のきっかけ、そして省庁のなかでも経産省を選んだ理由について聞いた。

前職、KPMG税理士法人にて「移転価格税制(*1)」に携わっていたのですが、仕事は非常におもしろく、やりがいもありましたね。特にコンテンツやブランドなど、どう事業上の価値として算出すればいいか、明確な答えがないものを分析し、合理性のある価格として財務省や国税庁に示していくといった業務も経験しました。複雑な課題に取り組み、俯瞰した視点、柔軟な発想も求められましたし、非常に刺激的な経験を積むことができたと思います。同時に、身につけた考え方、分析能力などを活かし、微力ながら「日本のために何かできないか?」と感じるようになり、転職を考えるようになりました。

(*1)国をまたぐ企業グループ・関連会社間で取引価格を適正に設定し、企業の所得移転や租税回避を防止するルール。企業が海外の関連企業との取引価格(移転価格)を通常の価格と異なる金額に設定すれば、一方の利益を他方に移転することが可能となる。このような海外の関連企業との間の取引を通じた所得の海外移転を防止するため、海外の関連企業との取引が、通常の取引価格(独立企業間価格)で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度。(参考)財務省「移転価格税制の概要」(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/177.htm)

特に国際的なサプライチェーンや取引データに携わるなかで「より日本の利益を生み出すために、何かできるかもしれない」といった考えを抱くようになったと言う。

海外とのやり取りを含め、法律、規制、制度が変われば、国内における企業経営に非常に大きなインパクトがあります。あらゆる企業は既にあるルール・仕組みの上で議論や検討をするわけですが、国の仕事であれば、その前提から、より国内企業に利益が生まれるように変えていく。前職時代に携わっていた税制にしても、企業に残る利益やキャッシュを考えた時、開発拠点を海外に置くべきか否か、数字が持つインパクトは非常に大きなものになります。どのようにすれば、企業を、そして日本を豊かにしていけるか。経済的にはもちろん、そこから生まれる営みを含め、日本の「豊かさ」に貢献したい。経産省であれば直接的に政策を打ち、インパクトを与えられるはず、日本の産業を豊かにしていける。そう考え、経産省を志望しました。

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「他の省庁に比べ、経産省であれば、世の中の企業をどうやって成長させていけるか、より集中的に取り組めるのではないかと考えました。」と吉田さん。経産省における選考時の印象について「たまたま“落語が好き”という私の話から、なぜ好きか、どういうところが好きか、他のエンタメと何がどう違うのか、ひたすら深堀りして質問されたことを覚えています。どんな事柄にも好奇心を持ち、分解し、構造化して答えを見つけていこうというタイプの方が多いと感じられたんですよね。そういった点も含め、自分にフィットすると感じました。」

産業の課題を解決していく

前職時代、国際税務・会計分野の経験を積んできた吉田さん。ただ、入省1年目に配属されたのは「物流企画室」だったという。

経産省に入省し、はじめに取り組んだのが「物流の2024年問題」に向けた政策の立案、実行でした。トラックドライバーのみなさまの労働環境が非常に過酷であるという課題を解決するために労働時間制限(*2)が導入されましたが、これにより、何も対策を講じなければ、物流が停滞しかねなくなるという問題がありました。

(*2)2024年4月より適用された、トラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示。

もちろん、労働環境の改善は非常に重要ですが、労働時間が短くなるということは輸送能力が不足するということ。それまでのようには充分にモノが運べなくなる可能性が懸念され、それが「物流の2024年問題」と呼ばれているものです。じつは「物流」全体の問題は国土交通省が、トラックを使う側の「荷主」の問題は、経産省の所管となるため、省庁をまたぐプロジェクトのような形で進行をしていきました。経産省として特にポイントとしたのは、トラックの積載率をいかに上げていけるか。そして運搬時の待機時間をどう短くできるか。つまり、たとえトラックドライバーさんの労働時間が短くなったとしても、効率良く、より多く運べるようにしていくための施策を打つということでした。そうすれば、課題となっていたドライバーの所得の向上にもつながりえます。

たとえば、急な配送依頼があると、少ない荷物でも運ばなければならず、積載率は低いままですよね。依頼主側であるメーカー等の荷主が物流会社に「明日までに持ってきてくれ」と急な指示をするなどが大きな原因となっていたため、「納品のリードタイムを伸ばす」といったガイドラインを設けることに。もちろん、できるだけ在庫を持ちたくないメーカー側のみなさまからは、「まとめて配送すると負担になる」という意見も。そこで、はじめは目指すべき指針として、ご理解いただけるよう、地道にコミュニケーションを図りながらご理解を得ていきました。一方で、業種や取り扱う物の特性、立地等によって、取り組むべきことも、現実として取り組めることも様々です。そういった点も加味し、まずは政府側では細かいことは決めず、判断をお任せしつつ、各業界で自分たちのルールを作り、コミットしていただくように呼びかけていきました。そうすることで、各業界のなかで問題意識が共有され、実行をいただけた。もちろんまだまだ課題はありますが、業界、そして日本の物流全体を良くしていこうと連携しながら進められた施策だったのではないかと考えています。今まで全く経験のない「物流」というテーマでしたが、関係省庁、さらに各業界団体、事業者のみなさまと協力していく貴重な経験を積むことができました。

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2024年6月からは通商政策局の通商金融課にて働く吉田さん。「通商金融とは、途上国でのインフラ開発・資源開発案件など、金額が大きく民間だけではリスクを取れない政策的に重要なプロジェクトを取り扱っていくものです。国の資金、民間の資金、それぞれでリスクを分担し、プロジェクトを成立させる役割を担います。たとえば、資源採掘、発電所開発、鉄道のプロジェクトなどがわかりやすい例でしょう。日本は経験豊富な技術や実績を活かして現地国にアプローチしています。」

「思考の自由度」こそが、やりがいになる

続いて聞けたのは、経産省で働くやりがいについて。そこには民間時代にはなかった「思考の自由度」があると吉田さんは言う。

まず民間企業との大きな差として感じるのは、課題を解決していこうとする時に「思考の自由度」が非常に高いということです。というのも、そもそものあるべき姿から考え、規制や制度を変数として捉えられる。枠組みから変えていくことができるため、そこにやりがいを感じています。国が制度をつくり、税理士法人やコンサルティングファームがいわば「翻訳」をし、事業者が事業へと落とし込んでいきますよね。いわば、ビジネス上のルールブックをつくっていくようなもの。もちろん有識者や業界団体のみなさまともディスカッションし、意見をいただきつつ、新たなルールをつくっていくことができます。しかもその大きな目的は「日本のためになるか」という抽象度が高いもの。具体的な軸や基準に関しては自分たちで解釈をしながら、形にしていける。ここは非常に難しく、とてもやりがいのある仕事です。

そこには想像以上の「裁量」や「自由度が高い仕事」があると言う。

所属する局・課によってある程度テーマは分かれていますが、共通して、何をすべきか、どうすればいいか、目的と手段を同時に考えていけるのが、政策を作るプロセスだと言えます。さらに方針や方向性を省内や関係省庁と調整し、了承を得て仲間を作っていく。その後、国民や事業者、そして国会で説明し、世に出していく。特に実際に法律や規制が施行される時には、余計な不安を抱かせないよう、わかりやすく、誤解なく伝えることもポイントになります。そう考えると、企画から実行、PR・広報、運用まで自ら動かせるのは醍醐味ですし、それを多くの人に役に立ててもらえる、大きなやりがいが得られると思います。

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やりがいの一方で事前に知っておくべき厳しさについて「急であり、且つ重要な案件に対応が必要なケースも多いです。また、公的な規制やガイドラインなども手掛けるため「言葉」の責任が重く、慎重さが求められると思います。」と吉田さんは言う。

仕事は「舞台」。相手の心を動かすものを届けたい

そして、吉田さんから聞けたのが、今後、仕事を通じて実現していきたいことについて。

抽象的になってしまうのですが、自らの発想が世の中に出て、それが良い結果につながっていく、世の中が少しでも良い方向性につながるといいなと思っています。もちろんファイナンスや経済分析などは自身の武器ですし、より伸ばしていきたい。その武器を良い政策につなげられればいいなと思っています。同時にそれだけではなく、製造業にせよ、エンタメ業界にせよ、広範囲に興味関心があるので、さまざまな分野に携わっていけるといいですね。

振り返ってみると、もともと大学の学部は法学部だったので、ファイナンスや会計とは別の分野ではありました。ただ、「人間の営み」や「社会の動き」を見ていくといった部分は共通していたのかもしれません。これまで学んできたこと、経験したことは、すべて「今」につながっているようにも思いますし、「経済全体を見ていくおもしろさ」として感じられているのだと思います。

そして最後に聞けたのが、吉田さんにとっての「仕事」とは何か。彼ならではのユニークな視点がそこにはあった――。

私にとって仕事は「舞台」のようなものかもしれません。先ほどエンタメ業界にも興味があると話をしましたが、じつは休日を使って、アマチュアでお笑いをやっているんですよね。もちろんギャラはもらっていないので、副業ではありません(笑)。楽しく趣味でやっているのですが、仕事にも通じる有意義な活動でもあります。「舞台」ってとても怖い場所でもあって。どれだけがんばってネタをつくり、練習し、いざ舞台に立って表現しても、全くお客さんが笑ってくれないこともあります。やっていくなかで「これは、仕事にも共通するな」と感じるようになりました。どれだけ考え抜いて政策をつくり、完璧だと思って出しても、伝わらない、共感が得られないことはどうしてもあります。いかにこれを解決していくか。そのためには何度も「舞台」に立つしかありません。何回でも修正し、相手の反応を見て、また調整をしながら、響くものにしていく。経産省には「現場主義」という言葉があります。まさにそれが一番重要だと思っています。複雑な経済社会の中で、その政策は成り立つのか。現場を捉え、意味のあるものにしていく。現場に立ち、声を聞いて、考える。まるで「舞台」のようだといつも感じていますし、そこには怖さや難しさ、そして楽しさが共存しているように思います。

もう一つ、「仕事」全体について付け加えるなら、私にとって仕事は世の中とつながる手段とも言えます。仕事をしていたからこそ、知ることができたこと、出会えたこと、つながれた人がいる。そして、せっかく社会と関わっていくなら、日本を少しでも豊かにしていきたい。正直、私たちの世代は、生まれてから今まで、安定はしているけど「停滞している日本」しか見たことがありません。停滞ではなく、経済としても、心の豊かさとしてもより「豊か」にしていきたい。「勢い」を取り戻し、おもしろくしていきたい。微力かもしれませんが、そういった日本の「豊かさ」に貢献していけるよう、これからも仕事に向き合っていければと思います。

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