INTERVIEW
経済産業省:中途入省者 特別インタビュー

銀行を経て「経済産業省」へ。企業経営を良い方向に変え、多くの人を豊かに――20代での決断

掲載日:2023/08/24更新日:2023/12/11

経済産業省「中途採用」公募にあたり、銀行を経て中途で「経済産業省」に入省した栗原涼介さん(29)を取材。現在、商務情報政策局 情報技術利用促進課 課長補佐として働き、企業のDX推進政策に携わる。そのキャリア選択の裏側には「企業経営を良い方向に変え、多くの人を豊かにしたい」という志があった。

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「企業経営を良い方向に変え、多くの人を豊かにしたい」

まずは前職での仕事内容と、転職を考えるようになったきっかけについて伺ってもよろしいでしょうか。

新卒で三井住友銀行に入行し、法人営業業務に従事した後にグループの証券会社の投資銀行部門に出向してバンカーとして働いていました。法人営業や投資銀行での業務はやりがいもありましたし、人間関係も良く、非常に充実していたと思います。ただ、真に企業経営を良い方向に変えることが出来ているのか、そのための影響を自分は与えることが出来ているのか、常にもどかしさは感じていました。銀行で一個人が支援できる企業の数には限界があります。さらに営利を目的とする以上、銀行にも収益の最大化が求められていくもの。役割も細分化されている。やはり全ての業務が企業経営の改善に直結しているものでもないとは感じていました。

そういったタイミングで、たまたま登録していた転職サービス経由で知ったのが、経済産業省が実施していた民間人材の公募です。「そういった道もあるのか」と全く新しい選択肢であり、思い切って選考を受けることに。経済産業省の役割は、いわば政策という手段を用いてビジネスのルールを作ること。ここでなら個人的に持ち続けてきた「企業経営を良い方向に変え、多くの人を豊かにしたい」という思いを、ルールをつくる立場から叶えていける。そう考え、最終的に入省を決意しました。

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栗原涼介(29)/商務情報政策局 情報技術利用促進課 課長補佐
一橋大学法学部卒業。新卒にて三井住友銀行に入行し、法人営業として中小企業を担当。その後、グループの証券会社の投資銀行部門に出向し、大手企業に対するM&Aや資金調達支援等に従事。2020年9月、経済産業省に入省し、中小企業庁 経営支援課に配属。新型コロナウイルスにおける月次支援金等に携わる。その後、経済産業政策局 産業組織課においてコーポレートガバナンスや事業再編関連の政策立案担当を経て、現職に至る。

政策を通じ、日本全体の「DX推進」を

続いて、仕事内容について伺ってもよろしいでしょうか。

現在、役職としては商務情報政策局 情報技術利用促進課で「課長補佐」を担っています。デジタルガバナンス・コード*を起点に、政策を通じた企業のDX推進に取り組んでいます。デジタル技術による社会変革が進む時代において、企業経営においてDXは必要不可欠なもの。ただ、その進捗度合いは、企業によって大きく異なります。どのフェーズにある企業も自主的な取組につなげていただけるよう、政府としてどのように後押ししていけるかを考え、政策を展開しています。具体的なところでいえば、「DX認定」や「DX銘柄」の制度設計等に携わっています。「DX認定」制度は、企業がデジタルによって自らのビジネスを変革するためのビジョン・戦略・体制等が整った事業者を経済産業大臣が認定するものです。また、認定によって例えば、DX投資促進税制の適用を受けることが出来る、といったメリットもあります。「DX銘柄」制度はデジタル活用の実績を残している上場企業を選定。ビジネスモデル等を抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていく取組を後押ししていくものです。その他、中堅・中小企業のDX推進施策にも携わっています。

デジタルガバナンス・コード*…企業のDXに関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をまとめたもの。2020年11月に策定され、2022年9月に「デジタルガバナンス・コード2.0」として取りまとめられた。(参考)https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html

入省後、特に印象に残っているプロジェクトがあれば教えてください。

産業組織課に所属していた際に「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)の改訂に携わったのが、非常に印象に残っています。この「CGSガイドライン」はコーポレートガバナンス・コード*を具体的な行動に落とし込んだ指針として2017年3月に策定されたものですが、一度改訂された2018年9月以降は改訂されておらず、より実務に即した内容にすべく、全面改訂に着手することになりました。

コーポレートガバナンス・コードにおける基本的な考え方は、企業が様々なステークホルダーの立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な経営判断ができるようにすること、そして企業が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現すること。こうした考え方から、これまで日本におけるコーポレートガバナンス改革は「監督機能」強化に重きが置かれた内容でした。ただ、企業価値を高めるために実際に行動するのは執行側である経営陣です。監督側と執行側、双方における機能強化を相乗的に推し進めていく意識が必要であると考えました。そこで企業の方々、様々な専門家の先生に話を聞きながら、研究会を開催の上で、執行側の機能強化の重要性を大きく盛り込むなどの改訂を実施し、結果として多くの方々から良い反響をいただくことができました。

コーポレートガバナンス・コード*…上場企業が株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行なうために参照すべき原則・指針を示したもの。2015年6月、金融庁と東京証券取引所が策定し、運用を開始した。(参考)東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/index.html

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経済産業省で働く上で、大切にしていたスタンスについて栗原さんはこう振り返る。「分からないことは率直に誰かに聞くスタンスで臨んでいました。その際に意識していたのが、自分なりの考えを持っておくことです。単に分からないではなく、自分はこう考えたけど、ここが分からなかった、という姿勢で聞く。受け身ではなく、アクティブに行動していくことで早く仕事にも慣れていけると思います。」

入省後に感じた「ボトムアップ」の文化

民間から入省し、風土面で感じたギャップがあれば教えてください。

ボトムアップの文化があること、若手にも裁量権がある環境だと感じました。むしろ前職のほうがトップダウンで、任せてもらえる仕事の幅は限定されていたようにさえ感じます(笑)その点、経済産業省では、私のような課長補佐、20代の職員でも、どのような政策であるべきか考え、中身が伴ったものであれば、課長や審議官、局長を巻き込みながら主体的に形にしていくことができます。さらに経済産業省が受け持つ政策テーマも多様であり、それぞれに関わる職員は少人数になります。もちろん、国家としての大きな方向性はトップダウンで決まりますが、具体的な政策に落とし込み、どう進めていくか。担当するテーマについては、自分の考えを表現し、責任を持って推し進めていくことができる場があると思います。

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経済産業省における選考、面談での印象について「非常に懐が深いと感じました」と語ってくれた栗原さん。「今振り返っても、私のような若造が好き勝手に言っているだけと思われても仕方がない内容だったと思うのですが、真摯に受け止めていただいたことを覚えています。霞が関は遠い存在のように感じる方もいるかもしれませんが、ぜひ恐れずに飛び込んでいただけるとうれしいです。」

自分の力を使い、社会に付加価値を与えていくために

もし、これからの目標があれば教えてください。

私自身、「企業経営を良い方向に変え、多くの人を豊かにしたい」という思いは入省後も変わっておらず、向き合っていければと考えています。

なぜ「企業経営を良い方向に変え、多くの人を豊かにしたい」という思いを大切にされているのでしょうか。その原体験などもあれば教えてください。

企業経営は、従業員はもちろん、そのご家族、取引先をはじめ、多くの人々の人生に関わっていますよね。そこが良い方向に変われば、世の中に最も良い影響を与えられると思っていますし、そうありたいと考えています。

原体験でいえば、個人的な話ですが、私が幼かった頃、父が勤めている会社の経営が傾くといった経験をしました。結果的に私は大学まで卒業させてもらい、非常に恵まれた環境で育ててもらえたと思っていますが、その影響の大きさについて、幼心に強く刻まれています。だからこそ、今度は社会に還元するべきだという気持ちもあるのかもしれません。私にとって、自分一人が裕福になることより、多くの人の生活、人生を良くしたと実感できる方が人生の幸福度や満足度が高い。せっかく仕事をするからには「社会を良くした」と少しでも感じながら仕事をしたいのだと思います。

最後に栗原さんにとっての「仕事」とは何か、伺わせてください。

私にとって「仕事」とは、自分の力を使い、社会に付加価値を与えて豊かにしていくための活動だと考えています。それを最大限、実現していくためには、やはり自分自身が成長することが必要です。そして培ったことをチームに還元し、より強い組織として、より良い影響を社会に与えていく。経済産業省での仕事は、その目的に最適な場所だと信じられる。同じ志を持った方とともに、これからも大きなチャレンジを続けていければと思います。

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