2024年11月、札幌市による「スタートアップ推進担当係長」公募が開始した。同ポジションで期待されるのは「スタートアップ支援」のさらなる推進だ。札幌・北海道のスタートアップ支援の取組、そしてそこで得られるやりがい・キャリアとは。札幌市 経済観光局 経済戦略推進部長の奥村 彰大さんにお話を聞いた。
公募概要について
▼募集ポジション
札幌市経済観光局経済戦略推進部イノベーション推進課スタートアップ推進担当係長
▼採用区分
一般任期付職員(任期付の常勤職員)
▼任期
令和7年4月1日以降から、令和10年3月31日まで
※ただし、採用日から5年間を超えない範囲内で、本人の同意を得て更新する場合がある。
なぜ、今回の公募・外部人材登用に至ったのか。その背景から聞くことができた。
現在、「STARTUP HOKKAIDO実行委員会(*)」立ち上げから1年が経過し、取組が軌道に乗りつつあるところです。札幌・北海道のスタートアップ・エコシステム構築はまだまだスタートしたばかり。これらをより推進していくために、外部人材登用を行なうことになりました。
もともと札幌市は、令和2年度に国の「スタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」において「推進拠点都市」に選定されました。さらに令和5年度には、スタートアップ・エコシステムの構築を目指すコンソーシアム「STARTUP HOKKAIDO実行委員会」を組成しています。まさに札幌市、北海道、北海道経済産業局を中心に、産学官が一体となり、「オール北海道体制」でスタートアップ支援を活発に推し進めているところです。
たとえば、宇宙関連スタートアップが目覚ましい成長をしていたり、環境・エネルギー分野を中心とした投資促進があったり(札幌・北海道は令和6年6月に「GX金融・資産運用特区」に認定)、多くの期待と注目が集まっています。まさに一次産業・食、宇宙、環境・エネルギーなどは札幌・北海道の強みが活きる重点領域です。いかにこういったポテンシャル、北海道の広大なフィールドを活かし、実証・実装活動を展開していけるか。他の地域との差別化を意識し、地域課題の解決と経済・産業の活性化を実現できるか。道外からのスタートアップ誘致も推し進められるか。取組・施策の企画立案から実施までスピード感を持ち、さらに忍耐強く取り組んでいくためにも、民間での経験・知見を持つ方をお迎えしたいと考えています。
(*)「STARTUP HOKKAIDO実行委員会」は、北海道からスタートアップが継続的に生み出されグローバルまで発展していくエコシステム構築を目指す取組。たとえば、スタートアップ創出・育成に向けた相談窓口、情報交換、イベント開催の場として交流スペース「社交場ヤング(札幌市役所本庁舎19 階)」などを運営。令和4年10月に外部人材から任期付き係長となる現任者を採用し、同メンバーを中心に「STARTUP HOKKAIDO実行委員会」の立ち上げ、その後の施策立案など実績を挙げ、自治体の期待に応えてきた。今回は現任者の任期満了に伴う、次期担当者公募となる。
続いて聞けたのが、今回採用する方への期待について。どういった役割や活躍が期待されるのだろうか。
まず大きく期待しているのは「STARTUP HOKKAIDO実行委員会」の実務的な中心メンバーとして、他の民間メンバーや行政メンバーと連携し、スタートアップ施策の企画・実行に携わっていただくことです。また、道内外におけるスタートアップ、産学官にわたる関係者と幅広いネットワークを築いていくことに期待しています。ぜひ、これまでの経験や知見、さまざまな専門性を活かし、札幌・北海道のスタートアップコミュニティをけん引する存在として活躍いただければと考えています。
もう一つ、札幌・北海道のまちづくり、地域づくりに貢献していただきたいですね。というのも、スタートアップ支援を行なうメンバーでもあると同時に、札幌市の市役所職員でもあるからです。そのため、ぜひ、札幌・北海道の魅力や課題を常に意識してもらえたらと思います。外部人材と担当行政職員が一つのチームとなり、相乗効果を発揮し、「イノベーション」を起こしていく。そういったご活躍を心から楽しみにしています。
奥村 彰大 札幌市経済観光局経済戦略推進部長
1991年北海道大学卒業、同年札幌市役所に入庁。30年以上の行政経験を有する。国際、経済・観光分野を中心にキャリアを重ねる。2024年4月より現職。
「オール北海道体制」で行なうスタートアップ支援の中核メンバーとなる今回の公募。そこで働くことで得られるやりがい・キャリアとは。
自らの発案・企画により「行政施策」を創り上げ、実行まで持っていくことができます。これは民間企業とはまた違ったやりがいがあるはずです。たとえば、人口減少など全国的にも大きな課題がありますが、それぞれの地域の課題解決に挑む仕事でもあります。また、札幌は、観光やビジネス面で「世界に打って出るグローバル都市」を目指す、北海道の中心都市です。北海道全体の発展のエンジンの役割を果たす存在。つまりローカルからグローバルに至るまでの「広い視野」で仕事ができることが札幌の大きな魅力と言えるでしょう。キャリアの側面から見ても、さまざまな場面で官民連携のプロジェクトが活発化していくなかで、将来的にも必ずや活きる貴重な経験が積めるはずです。
やりがいの一方で、ミスマッチしないためにも事前に知っておくべき厳しさについても聞くことができた。
地方自治体は、市民の信頼と付託で成り立っています。さらに行政の業務は、国会や市議会で制定された法律や条例、規則などに基づくものです。予算にしても、市民の皆さまからの税金によって成り立ちます。そのため、市民の理解、そして市民の代表である市議会の理解は欠かせません。施策の客観的必要性や効果などは適切に分析・評価し、説明ができるか。予算の使い道は真に効果的か。前例のないことにチャレンジしていくためにも「説明責任」を意識する必要があります。同時に、任期内において、札幌・北海道のスタートアップ支援をスピーディーに推進していく。それらを両立する難易度の高さが厳しさでもあり、その達成はより大きなやりがいにもつながるはずです。
そして最後に聞けたのが、奥村さん自身がキャリアを振り返るなかで感じた「札幌市の職員として働く魅力」について。
私自身、スポーツ局で冬季オリンピック招致やスポーツの盛り上げに携わってきた経験があります。そういったキャリアを通じ、より強く感じたのが「行政職員には大きな可能性がある」ということです。たとえば、スポーツという一分野をとっても、教育、文化からエンターテイメント、産業・ビジネスに至るまで、あらゆる可能性を秘めており、「公的業務」には幅広い分野があるのだと身を持って体感できました。この幅の広さ、可能性は、スタートアップ領域にも共通して言えることです。横断的であるからこそ、より大きなプロジェクトに挑むこともできます。解決していける課題も大きなものになるはず。ぜひ今回入庁される方にも、その「大きな可能性」に携わる魅力を味わってもらいたいです。また、札幌・北海道は、自然と都市機能が融合し、暮らしやすい、働きやすい冬の都市の魅力とポテンシャルがあります。これは他の都市では味わえないものでもあります。
そういった「可能性」を感じながら、札幌・北海道から地域や社会を支え、そしてグローバルでも活躍できるスタートアップを本気で生み出し、育てていく。ぜひこの「本気」に共に取り組んでいきましょう。
奥村さんに聞く「選考のポイント」
「今回重視したいのは、スタートアップに関する知識、スタートアップと関わった経験などです。特にスタートアップ・エコシステム構築やコミュニティに携わった、スタートアップ支援施策の検討に携わったなどの経験があれば、ぜひ積極的にアピールいただければと思います。
また、企業規模に関わらず、新規事業の立ち上げ、進行管理などプロジェクトマネジメントに関する経験がある方、幅広く良好な関係を構築できるコミュニケーション能力をお持ちの方を歓迎しています。
その他、志向性・タイプでいえば「札幌市や北海道に対して思い入れがある」「地域貢献やまちづくりに関心や興味がある」といった方はよりフィットすると思います。ぜひ、そういった思い、そして志がある方からのご応募をお待ちしております。」
(札幌市 経済観光局 経済戦略推進部長 奥村 彰大)