INTERVIEW
こども家庭庁|経験者採用(中途採用)

全てのこどもたちが、将来に希望を持てる社会へ。「こども家庭庁」民間出身職員の志

掲載日:2025/01/23更新日:2025/01/23
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「こども家庭庁」経験者採用(中途採用)に伴い、こども家庭庁長官官房(総合政策担当)付参事官補佐として働く花房 勇輝さん(36)を取材した。前職では、保育事業を運営する民間企業にてDX部門のマネージャーとして働いてきた花房さん。なぜ、同庁への入庁を決めたのか。そこには「どんな環境に生まれても、こどもたちが将来に希望を持てる社会を実現したい」という思いがあった――。

(※所属・役職は2024年12月取材時点のものです)

制度面から「こども領域」のサービス提供に貢献を

前職では保育関連事業を運営する企業で働いていたという花房さん。なぜ、転職を考えるようになったのか。そして「こども家庭庁」への入庁を決めた理由とは。

前職でも、関心のあった「こども領域」に携わることができ、非常に楽しく仕事ができていました。ただ、ビジネスとして携わったからこそ「社会全体の取り組みとして、制度面から保育サービスをより良いものにしたい」という思いも強いものになっていきました。やはり、広く社会で活用されるサービスを提供するためには、ビジネスで展開するだけでは限界があります。たとえば、より質の高い保育サービスを提供しようと思うと、保育士さんによるこどもへの適切な働きかけが欠かせません。当然、ロボットやAIでは代替できず、採用や教育など人件費だけでも非常にコストがかかります。つまり利用者から得られる対価だけでは、事業として成立させられる範囲が狭くなってしまいますが、行政による補助金や制度があればその範囲は広いものにできます。それならば行政の立場からアプローチしていきたい、それが自身のやりがいにもつながっていくと考えました。

また、保育事業に「儲けだけを追求する事業者」も参入できてしまうといった点にも危機感がありました。じつは前職時代に、ある経営者の方から「保育は儲かると聞きました。どうすればより儲けられますか?」と開口一番に切り出され、ショックを受けたことがありました。「こどもたち」や「こどもを持つ親たちのため」ではなく「いかに儲けるか」という視点だけで保育事業を捉えてしまうと、報道で目にするような保育所での痛ましい事故・事件などにつながってしまうことになりかねない。そういった問題を法令や規制などで解決していきたいという思いもありました。そんな折に内閣官房のWebサイトを見ていたところ「内閣官房こども家庭庁設立準備室」の採用情報を知り、ご縁があって入庁に至りました。

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花房 勇輝|こども家庭庁長官官房(総合政策担当)付参事官補佐
大学卒業後、デロイトトーマツコンサルティングのシニアコンサルタントや保育系企業のDX部初代マネージャーなどとして、組織再編やDX(デジタル・トランスフォーメーション)といった経営改革を約10年経験。 その後、内閣官房こども家庭庁設立準備室に国家総合職(中途)として採用され、こども家庭庁の設立準備、こども政策のDXに取り組み、庁設立後は「こども大綱」や「こども未来戦略」の取りまとめなどを経験し、現職に至る。

4000件もの「当事者の声」から生まれた「こども大綱」

こうして22年8月に「こども家庭庁」入庁した花房さん。現在の業務内容についても話を聞くことができた。

現在、長官官房(総合政策担当)付参事官補佐として働いています。民間企業でいうところの経営企画職に近く、中長期的な計画や事業方針の策定、それらをベースとした新たな政策・制度施行のため、さまざまな関係者との調整役を担っています。

わかりやすいところでは「こども大綱」の策定(2023年12月)にも取り組みました。「こども大綱」は、総合的なこども政策を推進していく上で、政府全体のこども施策の基本的な方針などを定めるもので、今回が初めての策定となりました。

「こどもまんなか社会」の実現に向けて~こども大綱の閣議決定に当たっての加藤大臣(策定当時)からのメッセージ~

「こども大綱」策定にあたり、特に大切にしたのが当事者である「こども」や「若者」の意見だった。

通常、政策立案のプロセスでいうと審議会における議論がベースになることが多いのですが、「こども大綱」策定では、それだけではなく、こどもや若者・保護者の意見をより取り込めるような取組を行いました。たとえば、対面、オンラインMTG、チャット、パブリックコメント、児童養護施設や学童施設への訪問など、さまざま手段を用いて、できる限り多くの方から意見をいただいていきました。その結果、4000件近い意見をいただくことができ、全てに目を通し、精査し、より具体的な対応方針を公表することができました。ここまで大規模にこどもや若者の意見を聞くことは、政府内では初めてだったようです。また、いただいたご意見の中には切実なものもあり、自分自身の辛かった幼少期を思い出したり、すぐには政策に反映できないものあったり、無力さに直面する場面も。そういった中でも、全てのご意見と向き合い、それぞれの時間軸で、一つでも多く実現できるよう、今まさに関係部署との連携や取組を進めています。

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「当事者の声を聞くことで、手薄になっていた若者向けの施策」にも一部フォーカスを当てることができたと語ってくれた花房さん。「こども政策と比較し、どうしても大学進学、就職、そして結婚といった時期を迎える若者たち向けの支援がどうしても手薄となっていたところも。そういった部分に対しても、新たな施策につながる方針を入れることができ、前進ができた部分だと捉えています。」

対象は全てのこども。「公共としてやるべき事業」を手掛けるやりがい

まさに「公共としてやるべき事業」を手掛けていける。そういった部分に大きなやりがいがあると花房さんは話す。

こども家庭庁で働くやりがいは「公共のためにやるべき事業」であれば、予算を要求し、制度改正・政策の企画立案などによって社会課題にアプローチができる点にあると思います。また、特定のユーザー層ではなく、「全てのこどもたち」を対象にしていける。ここは民間との大きな違いです。

たとえば、私自身が携わった実証事業なのですが、こども政策のDX関連で「困難を抱えるこどもや家庭を早期に発見し支援に結びつけるための事業」を進めるべく、予算要求をし、認めてもらうことができ、非常に大きな経験となりました。じつは初回の予算折衝では財務省から却下されたのですが、さまざまな説得材料を集め、根気強く折衝し、最終的には12億円の予算が認められ、現在では成果も出始めているところです。

ただ、当然ですが、何でも好きに実施できるわけではありません。民間企業でも共通する部分ですが、なぜその事業が必要なのか、それによってどのような効果が得られるのか、どのような関係者の利害に関わり、調整が必要なのか、どう運用していくか、なぜその予算額が必要なのか、失敗した時にどうするのか。また、どう効果を振り返るのか、それぞれ納得度の高い回答を示し、承認を得ていく必要があります。多くの情報を揃え、さまざまな人を巻き込み、理解と協力を得ながら物事を前に進めていく。そういったコアとなるスキル・経験は必要とされる部分かもしれません。

続いて、入庁後にミスマッチをしないためにも知っておくべき「厳しさ」についても聞くことができた。

入庁前にはイメージしづらいところもあるかも知れませんが、霞ヶ関では政治・行政・法律の知識が前提として必要されますし、さまざまな独自のルールや慣習があります。それらをいかに早期に習得ができるか。役人としての価値を出せるようになるか。それらは、民間出身者として付加価値を出していく前に求められる部分だと思います。また、社会の利害調整を担う仕事の性質上、どうしても仕事が夜遅くに及ぶことも。非常にタイトなスケジュールのなかで他省庁などとの調整や合意形成が少なからず起こります。できるだけそうならないように多くの方が配慮をして下さいますが、ご家族の理解も必要になるところだと思います。

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私生活では一児のパパでもある花房さん。「育休も取得したのですが、育休前には長官より「取るだけ育休にならないようにしっかり育児に励んでください」と激励いただきました。おかげさまでこどもも懐いてくれて、何かあると「パパ!」と呼んでくれるようになったのがうれしいですね。それでも私の対応に不満があると、こどもは素直なのですぐに「ママ!」と呼ばれてしまいます(笑)」

どんな環境で生まれ育っても、こどもたちが希望を持てる社会に。

そして取材の最後に聞けたのは、今後の目標について。花房さん自身が「仕事を通じて実現していきたいこと」とは――。

「生まれ育った環境にかかわらず、こどもが将来に希望が持てる社会」を実現していきたいです。もっと言えば、どういった状況に陥ったとしても、周囲から適切な支援を受けられ、本人が望む方向に課題が解決されていく。意欲が保たれ、将来に向かい、頑張っていくことができる。それが当たり前になる社会にしていきたいです。「意欲を持つことができる」というと、こども自身の問題だと捉えられることもありますが、家庭、学校、周囲の地域社会の支援のあり方など、環境によって大きく影響を受けるものでもあります。だからこそ、こどもや家族が十分な支援を受けられるように政策の「量」を改善する。そして、こどもや家族視点で必要な支援を必要な形で受けられるように政策の「質」を改善していく。その両方を実現していけるよう、具体的な課題一つひとつに愚直に向き合い、解決に取り組んでいきたいと思います。

最後に、私自身のお話をさせていただくと、阪神淡路大震災をきっかけに、自営業をしていた父が多額の借金を抱え、辛いこども時代を過ごした経験があります。家庭の経済状況が悪化し、日に日に両親が不仲になる、そういった重苦しい家庭の雰囲気の中で育ちました。その後、両親は離婚し、母子家庭となりました。当時家にはお金がなく、高校への進学も躊躇する状況に。ただ、運よく奨学金がもらえたことで高校・大学に進学することができました。当時は「自分ではどうすることもできない環境要因によって将来が閉ざされてしまった」という絶望感を、こどもながらに抱いていたようにも思います。きっと当時の私と同じような思いを抱えている方は多いと思いますし、今後もっと増えていくかもしれない。ここには強い危機感があります。こどもや家庭を支援することは、こどもの将来に直結します。社会の制度や仕組みを良くすることで、将来への希望につながっていくと信じていますし、何よりも自分と同じ思いを持つこどもを一人でも減らしていきたい。そういった社会を実現していけるよう、これからも仕事に励んでいければと思います。

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