INTERVIEW
厚生労働省

人々が笑顔で暮らせる社会のために――テーマパーク運営企業から、厚生労働省に入省した彼女の志

掲載日:2025/05/19更新日:2025/05/23
求人掲載中

厚生労働省(以下、厚労省)による経験者採用/総合職募集が実施へ。同募集にあたり、テーマパーク運営企業を経て、2024年に入省した高見美果さん(厚労省 雇用環境・均等局 職業生活両立課 課長補佐 ※取材当時)を取材した。なぜ、彼女は転職を考え、厚労省への入省を決めたのか。そのキャリア選択の裏側には「人々が笑顔で暮らせる社会を実現していきたい」という想いがあった――。

キャリアを諦めることなく、生き生きと働ける社会へ

前職、テーマパーク運営企業にてスタッフ管理を担う責任者として働くなど活躍してきた高見さん。転職を考えるようになったきっかけ、そして厚労省への入省を決めた理由から話を聞くことができた。

前職はテーマパーク運営企業で働いていたのですが、スタッフの指導や育成、アトラクション等の安全面やサービス面の向上など、さまざまな経験をすることができました。スタッフがやりがいを感じながら生き生きと働けるように継続的に職場環境を改善すること、そしてお客様の喜びや感動につながる体験を提供していくことに大きなやりがいがあり、子どもの頃からの「人を笑顔にする仕事がしたい」といった想いが叶う、まさに天職だったと思います。

そういった中、コロナ禍をきっかけに変化があったという。

働いていたテーマパークも大きな影響を受け、今まで当たり前だと思っていたことが何かをきっかけに変わり得るものであり、通用しなくなってしまうこともあると実感しました。コロナ禍を経て「時代や世の中が変わっても、人々を幸せにできるものは何だろう」「自分には何ができるだろう」と考えるようになりました。

また、ちょうど出産を経験し、仕事に復帰するタイミングも重なりました。出産後、母子ともに体調が優れない時期があり、生きていることの尊さに気づくとともに、危機に陥ったときに頼れる公共の支援や制度のありがたみなど、それまで意識していなかった「日本の仕組み」といった視点も意識するようになりました。

前職時代、育児や介護、治療など、さまざまな事情を抱えながら働くスタッフと接する機会も多かったのですが、管理者としてどのようなサポートができるのか悩むことも多くありました。私自身もシフト制で勤務していたので、子どもが体調を崩した時、急遽同僚に勤務を代わってもらうことへの申し訳なさがあったり、家族の負担が大きくなってしまったり、子どもに対しても母親として必要なことを十分にできていないと感じたり、仕事をする上で育児がネガティブなものになっているような感覚に陥ってしまうこともありました。自分がやりたい仕事ではあるものの、続けていく選択が正しいのか、大きな葛藤がありました。そういったある種の「悔しさ」を仕事と育児のそれぞれで経験したからこそ、キャリアを諦めることなく、生き生きと働ける社会を実現したい。さまざまな事情を抱える方々が働きやすい環境づくり、仕組みづくりに貢献したい。チャレンジしたいという気持ちがどんどん強くなっていきました。そういった時、夫が厚労省の経験者採用を偶然見つけてくれたんです。「君がやりたいことに近いのでは?」と紹介してくれたのですが、「まさにこれだ!」と選考に進み、入省を決めました。

A7I04455r

高見 美果|厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課 課長補佐
総合リゾート企業にて介護付有料老人ホームの新規開発に携わり、市場調査や事業収支作成、M&A案件の検討を担当。その後、世界的なテーマパーク運営企業にて従業員の教育・労務管理、職場環境向上、アトラクション等の安全面やサービス面の向上に取り組むほか、施設運営における時間帯責任者として活躍。2024年10月、厚労省に入省し、現職に至る。
福祉領域への関心について「中学生時代3年間は福祉委員会に所属し、高齢者や障害者と関わっていました。また、高校時代には介護や福祉に関心を持ち、介護福祉士の資格を取得しました。」と話す高見さん。「その延長で障害児教育に興味を持ち、大学は教育学部の特別支援学校教員養成課程に進学しました。当時は意識していませんでしたが、振り返るとこれらの経験が厚労省の分野と深く繋がっていたのだと感じています。」

身近な社会の課題を解決していく、やりがいがある

こうして2024年10月、厚労省に入省した高見さん。どういった仕事に携わっているのか、詳細について聞くことができた。

入省から今に至るまで「職業生活両立課」にて働いています。課のミッションは、育児や介護といったライフイベントに直面した方々が、個人の希望に応じ、制度を利用しつつ、家庭と仕事を両立できる職場環境を整えていくことです。

新たな政策や制度の企画立案ももちろん重要ですが、同時に、制度施行後にいかに周知していくか、円滑に運用してもらうか、次の改正、改善につなげていくことができるか。そういった点も大切になるため、現在はそれらの運用実務に携わっています。たとえば、2024年4月に「育児・介護休業法(※)」が改正され、2025年4月から段階的に施行されているのですが、制度を知らずに利用ができなかったり、誤解が生じたりすると、本来の目的とは異なる結果になってしまいます。そのため、Q&Aリストを作成したり、視覚的にわかりやすく伝えるためのツール作成を進めたり、事業主や従業員のみなさんが活用しやすいように取り組んできました。また、過去に改正した項目も含め、施行後の実態がどうなっているのか、国民のニーズに合っているのか、検証も重要です。そのための委託調査を実施しており、検討材料としていく。その取りまとめや整理、次回調査への調査設計を議論しながら進めているところです。

厚生労働省の労働分野の業務においては、法律や制度をしっかりと理解し、その上で「人のリアルな働き方」に想像力を持つことが重要だと思います。使用者・労働者の双方にとって実効性のある政策を実現するには、制度の実際の運用や現場の課題をしっかりと理解する必要があると感じているので、そちらについては民間企業の経験で得た現場感覚を活かしていきたいです。

※2024年5月31日に公布された改正育児・介護休業法(令和6年法律第42号)は、2025年4月1日と10月1日に段階的に施行される。子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充として、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者について、事業主は「始業時刻等の変更」「テレワーク」「短時間勤務」「養育両立支援休暇」「保育施設の設置運営等」の5措置から2つ以上を選択して措置し、労働者が1つを選択可能とする義務を負う。また、残業免除の対象を小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大した。子の看護休暇の対象年齢を小学校3年生修了時まで引き上げ、取得事由についても感染症に伴う学級閉鎖や入園式、卒園式等の行事参加にも取得できるよう拡大した。さらに仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことや研修や相談窓口の設置等の雇用環境の整備等を事業主に義務付けた。(参照)https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf

A7I04428r

そういった厚労省での仕事について、大きなやりがいがあると高見さんは語る。

身近で課題に感じていることの解決策が、政策や制度を通じ、世の中に広まっていく、そういった感覚があり、大きなやりがいにつながっています。たとえば、研究会を開催し、有識者の先生方、制度利用を必要としている方、実際に制度を運用する企業の方、さらに関係する省庁の職員、それぞれの立場や視点を持ち寄り、見えている景色や課題感を共有し、議論を重ね、次の制度改正や新しい政策に活かしていくのですが、多くの人々の力が集結しよりよい制度へと変化していく様子を目の当たりにして「こういったプロセスが政策につながり、社会を変えていくことができるんだ」とリアルに体感ができました。

社会のニーズや課題に対応した法改正を行っても、それだけでは国民の生活はよりよい方向には変化せず、それを分かりやすく国民の皆さんに周知し、必要な方が適切に利用できる状況を整えることで、真の意味が生まれると思います。昨年度に実施した研究会では、制度を利用する方にとって分かりやすい内容となるように基準を整理するとともに、併せて検討すべき課題についても明確にすることができ、大きな収穫となりました。

A7I04420r

やりがいの一方で、ミスマッチしないためにも「事前に知っておくといい厳しさ」について「民間企業では特定の顧客層を対象としてサービスを提供しますが、国としての事業、制度、仕組みの利用者・対象者は全国民です。年齢、性別、職業、住んでいる地域等すべてが多様であり、その“全体にとって必要な施策”を設計しなければなりません。特定の層にとって有効な施策でも、他の層には不公平に感じられることもありますし、合意形成には時間と丁寧な調整が求められます。そういった難しさはあるかもしれません。」と話をしてくれた高見さん。「また、私自身、子育てと仕事を両立する当事者。なので、どうしても労働する側、利用者視点に偏りがちになります。当事者の意見だけではなく有識者、事業主、団体等、多様な人々の立場や声をどう政策に反映させていくか、国全体としての視点も大切になります。たとえば、ステークホルダー間で意見が反する場合もバランスを取ることができるか。厚生労働省は幅広い分野で国民生活に影響を与えるため、多角的な視点が求められると思います。」

「この国なら生き生きと働ける」と思える社会へ

そして取材後半、改めて聞けたのは、高見さん自身の「これからの目標」について。

これまで民間企業で働いていたからこそ見えていた景色の中で、多くの社会課題を目の当たりにしてきました。特に制度の狭間で苦しんでいる人や、声を上げにくい立場にある方々の存在に気づかされたことは、私の中で大きな原点となっています。そういった方々により良い支援が届くよう、そうした課題を政策という形で解決に導きたいと考えています。

ただ、現時点の私には、そのための知識やスキルはまだまだ足りていません。まわりのみなさんに支えていただきながら、どうにか毎日業務を乗り越えている状況です。それでも、民間企業で勤務する中で得た現場感覚を大切にしながら、「本当に必要なこと」「やるべきこと」は何なのかを見極めて、時間がかかっても、難しいと感じることでも、変化・実現できる人間になりたいです。そのために厚生行政、労働行政それぞれの分野での経験を積み、より広い視点を身に付けられればと思います。先のことになるのかもしれませんが、改めて入省のきっかけになった「この日本だったら、この環境で、家庭と仕事を両立しながら生き生きと働ける」と思える社会の実現を、大きな枠組みで目指していきたいと思っています。

今は目の前の業務を丁寧に積み重ねていく。そうすることで、いつかは“あのとき見た課題”に対し、自分の手で何かを変えられたと胸を張れる日が来るように、志を持って、これからも努力を重ねていきたいと思います。

最後に、高見さんにとっての「仕事」とはどういったものか、聞くことができた。

私にとって仕事は、「人の笑顔を生み出すためのもの」だと思っています。子どもの頃から一貫して「人を笑顔にしたい」「人の心を豊かにしたい」という想いがあり、今に至ります。ふと思い出したのですが、中学生の時に福祉委員会に入っていて、一人暮らしの高齢者の方々と文通をしていたんですよね。返事をいただき、それがとても嬉しくて、「誰かに喜んでもらえることは、こんなに嬉しいことなんだ」と。そういった体験も今につながっているのかも知れません。進学や就職、そして転職といった人生の選択を重ねる中でも「誰かを笑顔にしたい」「人の心を豊かにしたい」という想いは、変わることなく、ずっと私の中にあります。厚労省に入省し、その対象が全国民に広がったと感じています。より広く、より深く、これまでの想いを実現していきたいです。その分、責任も重大ですが、どうすればもっと多くの人を笑顔にできるのか、どうすれば多くの人が安心して生きていけるのか。考え、向き合いながら、「誰もが安心して生活できる基盤を整え、笑顔でいられる社会を作ること」に貢献していければと思います。

A7I04487r

転職者がホンネで語る!応募者へのメッセージ

▼選考において印象に残っていること
初回の面接時、エレベーターホールで偶然会った面接官の方が「高見さんですよね、お待ちしていました。」と声をかけてくださったことを今でも覚えています。選考が進む中で、職員の方々と1対1での面接が複数回ありました。前職について調べてくださっていたり、緊張をほぐすような話題を提供していただいたり、ここまで丁寧に対話し、一人ひとりが自分をしっかりと見てくれる面接は初めてでした。真剣に私の話に耳を傾け、厳しくも温かく向き合ってくださる姿勢に、「自分という人間をしっかり見てくれているんだ」という誠実さを感じ、面接の中でも厚労省は「人を大切にする組織」だと実感しました。また、厚労省で働くみなさんの強い想い、それらをどう実際の政策につなげたのか、お話を聞くことができました。真摯に業務に向き合っていることが非常に鮮明に伝わってきて「この方々と一緒に働きたい」という気持ちがより強まりました。

▼面接での質問について
面接では過去の業務経験、そこから得たもの、仕事への想いなどを深堀りして質問いただいた記憶があります。また、具体的な業務内容の確認など、こちらからの質問もできました。こういったやり取りがあるので、ぜひ「全く違う業種にいるから」と諦めてしまうのではなく、興味があれば応募し、選考過程において、自分に合うのか確かめていくといいと思います。もちろん、民間企業と国家公務員の仕事は、共通する部分もあれば、性質的に異なる部分もあります。当然、社会人としての基本的なスキル、コミュニケーション能力も大切ですが、それに加え、新しい環境に柔軟に適応できるか。いかに強い気持ちを持って取り組んでいけるか。「違い」を吸収し、素直に取り組んでいけるか、気持ちの切り替えは重要だと思います。そういった資質の部分などを含め、参考にしていただければと思います。

この記事が掲載されている特集はこちら
中央省庁から社会を変える
外務省、経済産業省、厚生労働省、国土交通省、総務省、農林水産省など。民間企業から中央省庁へ転職した方々の特別インタビューをまとめてお届けします。
掲載されている記事 11本
Leading Women
市政、NPO、大手企業、スタートアップ…様々な領域でキャリアを築く女性たちを取材。チャレンジングなミッションを担い、チームやプロジェクトをリードしていく。彼女たちの仕事観、キャリアに迫ります。
掲載されている記事 16本
アンビで転職しました
アンビを通じて転職した方たちの「その後」を追うインタビュー。彼・彼女らの転職体験や活躍ストーリーをお届けします。
掲載されている記事 36本
最近ご覧になった求人に基づいたおすすめの求人
若手ハイキャリアのスカウト転職