INTERVIEW
財務省|中途採用特別インタビュー

鉄道会社、総合コンサルから「財務省」へ。経営企画・戦略の経験を「国」という舞台で活かす選択

掲載日:2025/10/29更新日:2025/10/29
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財務省が、民間出身者をはじめとした、新たな職員の中途採用を実施へ。今回の募集にあたり、鉄道会社、総合コンサルティングファーム勤務を経て同省に入省した田谷 凜大郎さん(理財局 総務課 課長補佐)を取材した。なぜ、彼は「財務省」を次なるキャリアに選択したのか。そこには「経験を活かし、日本人が自分たちの暮らす地域、そして国をより好きになれるような仕事をしていきたい」という思いがあった――。

経営企画や戦略コンサルを経て「財務省」職員に 

新卒にて、まちづくり(交通・開発・生活サービスなど)を手掛ける鉄道会社に入社し、交通事業を担うグループ会社への出向を経験。その後、総合コンサルティングファームを経て「財務省」に入省した田谷さん。これまでのキャリア、そして財務省入省を決めた理由から話を聞くことができた。

学生時代から「自分たちが暮らす地域、そして日本のことを好きになれる人を増やしたい」という思いがあったのですが、それを叶えていきたいと考え、財務省を志望しました。もともとまちづくりを生業とする鉄道会社に新卒入社したのも、様々な側面からより直接的に地域活性化、まちづくりに貢献できるという点が決め手でした。

ただ、その後は、直接的に都市開発といった領域に関わることはなく、グループ企業への出向、コンサルティングファームにて勤務をしていました。一貫して携わってきたのが、数字面から経営層を支援する、企業の経営企画・戦略領域です。たとえば、外部環境の変化を予測し、それに基づいた綿密な数値シミュレーションを行ない、中期経営計画や将来の事業計画を策定していく。また、設備投資予算の策定、コスト構造の見直しといった費用面の最適化を図っていく。企業全体の予算配分に関する戦略策定から部門間の調整、経営層の意思決定支援まで幅広く担当しました。こういった経験から身をもって学んだのが、いかに企業経営において資金面から考えるアプローチ、どの領域にどの程度の資金を配分するかといった点が重要か、ということです。また、携わった中期経営計画をもとに実際に事業が進捗していくなどした際は、そのインパクトが直接的に感じられ、やりがいも非常に大きなものでした。

そういったタイミングで偶然目にしたのが、財務省の中途採用です。財務省はいわば資金面から「国の経営」を担う機関であるとも言えると思っています。これまでの経験を活かし、かつ、これからどのような経験を積みたいか。そう考えた時、改めて立ち戻ったのが「自分たちが暮らす地域、そして日本のことを好きになれる人を増やしたい」という思いです。そしてこれまで培ってきた民間での「経営企画・戦略」という強みを必ず活かしていけるはず。そう考え、財務省への入省を決めました。

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田谷 凜大郎|財務省 理財局 総務課 課長補佐
2018年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、まちづくりを生業とする鉄道会社に入社。グループの交通事業会社への出向を経て、2023年に大手コンサルティングファームへ転職。2024年4月、財務省へ入省。大臣官房総合政策課、理財局財政投融資総括課を経て、2025年7月より現職。

国の大きな仕事である「予算」と「法改正」の経験を経て

続いて聞いたのが、財務省入省後の「印象に残っている仕事」と現在の業務概要について。

特に印象に残っているのが、以前所属していた理財局の財政投融資総括課企画係として関わった「法改正」における業務です。私の着任以前から検討が始まっており、前任者からバトンを受け継ぎ、閣議決定、国会審議を経て、可決・成立して「法律」という形になりました。また、同課にて国が行なう融資や出資等を取りまとめた「財政投融資計画」の策定にも携わりました。

現在は、理財局総務課の課長補佐として、理財局内の業務が円滑に進むように、局内の取りまとめを行なっています。「理財」の意味をAIに聞いてみると、「財産を有利に運用すること」といったような回答が返ってきますが、私としては、理財局は、いわば「国のバランスシート(B/S)担当」と考えるとわかりやすいかなと感じているところです。

もちろん、厳密にこのような区別がされているわけではありませんが、「理財局」は国の債務である「国債(国が発行する債券)」、土地や有価証券などの「国有財産(資産)」等を所掌しており、国の貸借対照表(B/S)(ストック)に関する政策分野を担う、一方で、毎年の予算(歳入・歳出)を編成する「主計局」は、国の損益計算書(P/L(フロー))に関する政策分野を担う。私としては、このように捉えるとよりイメージしやすいのではないか、と思っています。

具体的には、国債や国有財産、国庫、そして財政投融資など多岐に渡る分野を所掌しています。その中でも私は総務課に所属し、実際に政策を実行する部署が働きやすいよう、円滑な情報連携をサポートしたり、局全体のBCP(事業継続計画)策定を担うなどしたりしています。じつは総務課自体も、身近なところでは「塩」や「たばこ」などに関する法律などを所管しています。私自身は「日本銀行法」を担当しており、同法律に基づく日本銀行とのさまざまな調整業務にも携わっています。入省から1年ほどで国の大きな仕事である「予算」と「法改正」の2つを経験できたのですが、それぞれの仕事が社会にどのような影響を与えているのかを日々、感じるとともに、実際に仕事を行なうにあたって深く勉強する必要もありましたし、国の仕事が持つ影響の大きさを肌で感じることができたように思います。

▼田谷さんが携わった「財政投融資」に関する法改正業務について
「「財政投融資」には大きく分けて「財政融資」「産業投資」「政府保証」と3つの類型があります。私が携わらせてもらった法改正は、その中で、主に出資にあたる「産業投資」について、その資金繰りの柔軟性を確保し、安定的・機動的な投資を可能にするためのものです。前任者から引き継ぎ、法案が可決・成立するまでの一連の過程を経験させていただきました。そもそも「産業投資」は、政策的必要性が高く、リターンが期待できるものの、リスクが高いことなどから民間だけでは十分に資金が供給されない分野に対して、民間投資の呼び水としてのリスクマネー(エクイティ性資金)を供給するものです。しかし、NTT株やJT株からの配当金等を主な財源としているため、年によって変動してしまい、資金供給を抑制的に行わざるを得ないといった課題がありました。そこで、今回の法改正では、歳入に余裕のある時には財源の一部を留保すること、歳入に余裕のない時には借入れを行なうこと等を可能にし、資金繰りの柔軟性を確保しました。この法改正により、今後は、より積極的な成長分野に対するリスクマネーの供給が行われ、引いては、日本の産業のさらなる発展に寄与することを期待しています。」(田谷さん)

※民間企業の投資が主に「収益性」を追求するのに対し、国の「産業投資」はそれに加えて「政策性」も重視する点が特徴と言える。

※「産業投資」を含む「財政投融資」は具体的な個々のプロジェクトに直接、融資や出資などをするわけではなく、政策金融機関や独立行政法人、官民ファンドといった機関(財投機関)を介して行われる。各財投機関を所管する省庁は、財務省理財局に対して、必要な資金の予算要求を行ない、財務省理財局は、財政制度等審議会財政投融資分科会による意見の聴取を行ないながら、各財投機関の要求を審査していくという仕組み・流れとなっている。これらのプロセスを経て、編成された財政投融資計画は、予算と一体のものとして閣議に提出、1月から始まる通常国会において審議され、予算の成立をもって新年度から執行される。貸付や出資等を受けた各財投機関は、それぞれ専門的な知見等を活かして実際のプロジェクトへ融資・出資等を実行していく。

入省から約1年半で多岐にわたる業務に携わってきた田谷さん。財務省での仕事に感じる「やりがい」とは。

社会的な責任の大きな仕事に携わっていく、ここが最も大きなやりがいになっています。わかりやすいところだと、携わった法改正や政策などについて報道で目にすることも多いですし、そのインパクトや重要性について肌で感じることができています。また、このポジションでこそ得られる経験や知識があり、知的好奇心が満たされる部分も醍醐味だと言えます。これまでは、いわゆる「経営上の数字」を扱うキャリアを歩んできましたが、「国」という規模でのお金の動きを見ていくことができます。単純に日々の中で「こういった仕組み・制度になっているのか」という発見があり、知見が得られる楽しさがありますね。

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やりがいの一方で、入省前に知っておいた方がいい「仕事の厳しさ」について「仕事の一つひとつが社会に与える影響は、これまで働いてきた民間企業と比べられないほど大きいです。それと比例し、担当者として感じるプレッシャーも決して小さくありません。」と話をしてくれた田谷さん。「また、異動して間もない立場でも同分野のプロとしての役割が求められるため、常にキャッチアップを求められます。また、概ね1~2年で異動があります。異動先として省内はもちろん、他省庁や官邸、地方自治体、場合によっては在外公館や国際機関など非常に多岐にわたります。つまり、異動のたびに転職したかのような感覚で、経験してこなかった分野について勉強し直すことに。当然、組織としても引き継ぎなどしっかり対応していますが、共に働く職員と上手く連携し、関係性を築くために自ら行動することも大切だと感じます。一方でこういった異動は、経験を得て、知見を広げる機会でもあります。新たな環境で、新たな学びを得ていく。知的好奇心が満たされるおもしろさとして捉えていく。そういった意味で私自身は非常にプラスの環境だと捉えています。」

自分たちが暮らす地域、そして日本を好きになれる人を増やしたい

そして取材後半に聞けたのが、田谷さんが「仕事を通じて実現したいこと」について。

改めて入省動機にも重なりますが、「自分たちが暮らす地域、そして日本のことを好きになれる人を増やしたい」ですし、そういった社会の実現に貢献していきたいです。その思いの原点として、今振り返ってみると旅行などで目にした、海外現地の人たちの暮らしぶりにあったのかもしれません。たとえば、イギリスに行くと、ホームタウンのサッカー等のスポーツチームを熱狂的に応援し、街全体が盛り上がっていたりするんですよね。その様子はとても楽しそうだったし、羨ましくも感じました。もちろん日本でも似たような光景はありますが、国全体、多くの地域にそれが根付いているというわけではありません。日本は食べ物もおいしいですし、インフラも整っており、とても良い国です。さらにそういったソフトな面でも地域への愛着を持つことができ、もう少し広く、国に対する誇りにつながっていく。「シビックプライド」という言葉が近いのかもしれませんが、地域や国に愛着を持つことが、個々人のアイデンティティや生きがいになっていき、結果として社会全体、国家としてより良いものになっていく。個人的にはそういった社会にしていきたいという思いがあります。

もう一つ、私自身のキャリアについて言えば、夢や目標というわけではありませんが、「世界を見てみたい」と考えることもあります。これまでのキャリアには一見、連続性がないと思われるかもしれませんが、社内の経営企画部門では「1つの事業会社」、コンサルティングファームでは「複数の企業」、財務省では「国家」と、段階的に自分の向き合う経営主体が拡大していっている感覚があります。そうすると、その次としては「世界全体で見た時のいわゆる「世界経営」みたいなもののあり方」や「世界から見た日本」という視点には関心があります。いつになるか、どういった形になるかわかりませんが、財務省でのさまざまな経験を通じ、可能性を広げていければと思っています。

最後に、田谷さんにとっての「仕事」とは一体どういったものなのか。その価値観について聞くことができた。

一人では成し遂げられないことを比較的短期間で実現可能にしていく、いわば「自分の人生においてレバレッジとして機能するもの」だと思っています。人生において何かを成し遂げたいと思っても、それが社会に与える影響が大きければ大きいほど、自分一人の人生を投じただけでは到底成し遂げられないものになっていきますよね。ただ、同じ目標、志を持つ人たちが集まり、仕事として取り組めば実現ができます。特にそれを実感したのは、新卒入社した際の「まちづくり」での仕事でした。当然ですが、大きなビル、まちはさまざまな人が集まり、力を合わせることでしか作り上げられません。ビルやまちに限らず、どんなモノ・コトも、仕事として組織でチャレンジすることで、たとえば「10」の力しかなかった力が、「100」や「200」にも増幅されるもの。もちろん「社会をより良くしたい」という思いもありますが、同時により自分一人では叶えられないような大きな夢、目標を実現していきたい。仕事を通じ、その両方を叶えていければと思います。

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