INTERVIEW
こども家庭庁|経験者採用(中途採用)

市役所職員から「こども家庭庁」へ。「国」の立場から取り組む、すべてのこどもが希望を持てる社会づくり

掲載日:2025/11/20更新日:2025/11/20
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「こども家庭庁」経験者採用(中途採用)に伴い、こども家庭庁長官官房総務課 参事官(会計担当)付課長補佐として働く濵畠亮平さんを取材した。自治体(政令指定都市)職員として約10年以上のキャリアを積んだ後、国家公務員への転職を決意。なぜ、同庁への入庁を決めたのか。そこには自治体時代に感じた課題と「すべてのこどもが希望を持てる社会を創りたい」という思いがあった――。

自治体で感じた課題に、「国」の立場で取り組む選択

前職では自治体の職員として約10年間以上にわたり勤務していた濵畠さん。これまでの経歴と「こども家庭庁」への転職理由から話を聞くことができた。

学生時代から、漠然とではありますが「社会全体を良くする仕事がしたい」という思いがあり、新卒で政令指定都市の市役所に入庁しました。当時は関わりたい特定の分野がなかったため、「地方自治体で様々な仕事を経験する方が自分には合っているのではないか」と。実際、市役所では予算編成業務やマイナンバーカード関係業務、こども分野の業務、さらに財務省へ2年間出向するなど多岐にわたる業務を経験することができました。

特に自治体での仕事は、その成果が、直接市民の皆様に届けられる点にやりがいがありました。こども分野でいえば、自身が認可した保育所でこどもたちが楽しそうに過ごす姿を実際に見ることができたり、保護者の方から「ここに保育所ができて本当に良かった」という感謝の言葉を直接いただけたり、とても嬉しかったですね。一方で、自治体レベルではどうしても解決が難しい問題、国が定めた枠組みの中でしか動かせない事業も多く、もどかしさを感じることもありました。具体的には、令和7年度(2025年度)から順次実施されている「こども誰でも通園制度(※)」がありますが、実は市役所時代に、これと似た取り組みが実現できないかと検討したことがありました。特に0歳から2歳のこどもたちは保育園・幼稚園に通っていないケースも多く、それによって子育て世帯が社会的に孤立してしまうという課題がありました。そこで、こうした子育て世帯と行政・子育て支援者がコンタクトポイントを作るため、保育の必要性の有無にかかわらず0歳から2歳のこどもたちが自由に保育園などを利用できる居場所がつくれないかと考えていました。しかし、当時の制度では、保育園は「保育を必要とする」という認定がなければ利用できず、実現には至りませんでした。

(※)こども誰でも通園制度…全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備するとともに、全ての子育て家庭に対して、多様な働き方やライフスタイルにかかわらない形での支援を強化するため、現行の幼児教育・保育給付に加え、月一定時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付です。2025年度に子ども・子育て支援法に基づく地域子ども・子育て支援事業として制度化し、2026年度から子ども・子育て支援法に基づく新たな給付として全国の自治体において実施されます。(参考)https://www.daretsu.cfa.go.jp/

こういった経験を経て、培ってきたこと、視点を活かし、「国」という立場でより良い社会づくりに貢献していきたいと考えました。ちょうど私自身にも子どもが生まれ、そのタイミングでこども分野を担当したことで、当事者としての感覚が芽生えたことも大きなきっかけでした。また、「国家公務員として働く」という点においては、財務省出向時に感じた国の根幹を動かすダイナミズムや同僚たちから受けた刺激もキャリアを考える上で重要なものになりました。これらの理由が重なり、「こども家庭庁」へ入庁を決意しました。

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【プロフィール】
濵畠 亮平|こども家庭庁 長官官房総務課 参事官(会計担当)付 課長補佐大学卒業後、地方自治体(政令指定都市)に入庁。住民基本台帳(住民票等)に関わる事務業務からキャリアをスタートし、在職中に財務省へ2年間出向。その後、財政課での予算編成業務、区役所のこども家庭支援課、こども施設整備課など、多岐にわたる業務を経験。プライベートでの子の誕生を機にこども分野への関心を深め、2025年5月、こども家庭庁へ入庁。現在は庁全体の予算を取りまとめる業務を担う傍ら、組織横断チームにも複数参加し、新しい組織づくりにも貢献している。

国家予算を動かしていく責任と醍醐味

2025年5月に「こども家庭庁」に入庁した濵畠さん。現在の仕事内容とやりがいについて話をしてくれた。

現在は各課が実施する事業の予算をまとめ上げ、こども家庭庁全体の予算案を編纂していく「会計」の役割を担っています。予算編成には大きく二つの過程があり、一つは8月までに財務省へ提出する「概算要求」、もう一つはその後、年末の予算案決定に向けて財務省などと折衝を重ねる過程です。私はまだ「概算要求」とその後の折衝の途中までしか経験していませんが、こども家庭庁として「最良の予算」を作り上げることをミッションとして取り組んでいます。「概算要求」にあたり、様々な交渉や調整もありましたが、最終的には一つの予算案としてまとめることができました。限られた財源をどこに重点的に配分すべきかは極めて難題。全体最適の観点から予算額を調整しなければならない場面もある一方、こども家庭庁として推進すべき事業の予算を拡充していく必要性も。いずれにしても、本当に困っている人たちに支援を届ける予算を作っていかなければならないということは忘れてはなりません。そのスケールの大きさと責任の重さを日々感じているところでもあります。

予算要求を無事に終えられた時には一定の達成感がありました。ただ、本当の意味での「やりがい」を実感するのは、もう少し先のことかもしれません。私たちが編成した予算が国会で成立し、実際に執行され、こどもたちや子育て家庭に届き、一人ひとりの生活が豊かになっていく。その結果を見て初めて、心からの実感が湧くものだと考えています。

こども家庭庁ならではの「働く魅力」について。

様々なバックグラウンドや専門性を持った人材が集まっており、そうした方々と一緒に自分たちの手で組織の文化を創り上げていく。そういった過程に携われることは大きな魅力だと思います。例えば、私自身、庁内の業務改善を担うプロジェクトや、こども家庭庁が策定したMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透を図る委員会など、様々な組織横断チームでの活動にも参加しています。その一つとして「こどもとともに成長する企業構想」検討チームに参加し、こども・若者・子育て支援のための企業の取組を推進していくための仕掛けづくりを検討しています(※)。

(※)同取組について2025年11月18日の大臣記者会見でも、情報発信されました。「黄川田大臣記者会見(令和7年11月18日)」
https://www.cfa.go.jp/speech/49804eb9

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自分だからこそできる仕事を

こども家庭庁の予算編成や組織づくり、さらに官民連携のプロジェクトにも参加する濵畠さん。仕事において大切にしてきた考え方とは――。

日々の業務に向き合う中で、私が大切にしてきたのは「自分だからこそできることを成し遂げたい」という強い思いです。特にこども家庭庁の仕事は、市役所時代と比べても少数精鋭、非常に少ない人数で大規模な予算やプロジェクトを担うため、自分が動かなければ何も進まないという場面が数多くあります。その責任感が「組織から必要とされている」という感覚、「自分だからこそできることがある」という実感につながっています。

こども家庭庁がMVVの一つとして掲げる「現場主義」は非常に大切なものです。ただ、それを組織としてどう徹底していくか。現場視点で物事を考えることの重要性を浸透させることや、現場とのつながりを探っていくことも自治体での経験を持つ私の役割の一つだと考えています。例えば、令和8年度予算編成では、会計担当と各課室との間では様々な議論を行いましたが、私は現場視点から「こうした方が自治体にとって、使い勝手の良い制度になるのでは」「現場の子育て支援者にとって使いやすいものにするためには、こうした要件が必要では」といった意見を出すなど各課室と様々な議論を行い、新しい事業の創出・事業拡充に多少なりとも貢献ができたのではないかと考えています。

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やりがいの一方で、入庁後のギャップをなくすために知っておくといい「厳しい側面」について「すべての国民の生活に関わる仕事をしているという責任やプレッシャーと常に向き合う必要がある。」と話をしてくれた濵畠さん。「こども家庭庁では働き方改革を強力に進めていますが、業務が遅くまで及ぶこともあります(※)し、自分たちの仕事が国民生活に直結するという責任の大きさから本当にこれで良いのか、と自問自答することもあります。不意に迅速な対応が求められる場面もあり、時間内に終わりきるのかというプレッシャーを感じることもあります。その他にも、受け身で降ってきた仕事をこなしているだけではいけませんし、整った業務マニュアルや手厚いOJTが常に用意されているわけではないため、自らキャッチアップし、能動的に行動する姿勢が求められます。加えて、部署間で意見・見解の相違などがある場合、様々な関係者との難しい調整が発生することも。入庁後のギャップを抱かないために率直に厳しい側面もお伝えしましたが、これまでお話ししてきたとおり非常に「やりがい」がある仕事ですし、このような面も踏まえた上で、国民のために仕事をしたいという強い使命感を持っている方であればきっと生き生きと働いていけるフィールドであると考えています。」

(※) 残業の有無は、部署や職員の状況により異なります。こども家庭庁では、毎日17時に退庁し子どものお迎えをしたり、フレックスやテレワークを活用してプライベートと両立しながら、最前線で活躍している職員が、たくさんいます。

すべてのこどもたちが「希望を持てる社会」へ 

濵畠さんが仕事を通じて実現していきたいことについて。

こども家庭庁の多くの職員が共有しているものだと思いますが、「生まれ育った環境に左右されず、すべてのこどもが自分の力を発揮できる社会(※)」を実現していきたいと思っています。これから生まれてくるこどもたちはもちろん、「今を生きるこどもたち」のウェルビーイング向上もとても大切なテーマだと考えています。つまり、すべてのこどもが健やかに育ち、希望を持って生きていける社会を築く、そういった貢献ができればと思っています。

(※) 2023年12月に策定された「こども大綱」に示された基本方針

ただ、私自身は、もともとこども分野に強い興味があったわけではありません。自分の子どもが生まれるまでは、ニュースで保育所不足が報じられても、自分の生活に直結しないため、正直なところあまり関心が持てませんでした。ただ、子どもが生まれ、また自治体の職員としてこども分野の事業に携わる中で、世の中には多様なこどもや家庭が存在すること、そしてそれぞれへの支援のあり方を考える必要があることに気づかされました。こどもの人生は、親から大きな影響を受けるものですが、その親自身もまた完璧ではありません。私自身もそうですが、子育てに絶対的な正解はなく、誰もが暗闇の中を手探りで進んでいく、そういった感覚があるものではないでしょうか。だからこそ、親が道に迷った時に頼れる存在として、行政が支援の手を差し伸べることが重要だと考えています。答えのない子育てと向き合う親を支え、こどもたちを守るセーフティーネットを国として構築していく。その実現こそが、どのような環境で育っても、すべてのこどもが幸せになれる国を築く道だと信じています。

最後に、濵畠さんにとっての「仕事」とは一体どういったものなのだろう――。

私にとって仕事は、理想の社会を実現するための手段だと思います。同時に、社会全体の利益、つまり公益を追求していくものでもあります。そういった価値を追求できるのは、公務員の仕事ならではの大きなやりがいです。今でも覚えているのが、就職活動中、大学のキャリアアドバイザーの方から「大学職員も公務員と似ている。利益のためだけでなく、学生の幸せや社会貢献といった、お金では測れない価値のために働いている。」という話を聞き、そういった仕事に惹かれたことです。振り返ってみると「せっかくこの世に生まれてきたからには、自分だからこそできることで社会のために何かを成し遂げたい」という思いがずっとあったのかもしれません。つまり、仕事によって社会が良くなることは、結果として自分の人生をも豊かにしてくれるということ。だからこそ、こうした仕事を選択できること自体が幸せな人生ですし、私にとって「自己実現」と同じ方向を向いている「公益の実現」をこれからも追求していければと思います。

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濵畠さんから、応募を検討されている方へのメッセージ

「私が転職を意識し始めたのは30代半ばを過ぎてからでした。一般的に考えて、少し遅いのではないか、選考試験を受けても本当に合格できるのか、むしろ不合格の可能性の方が高いのではないかと考えていました。また、「こども家庭庁」の選考に応募する際も、志望動機がうまくまとめきれず、家族からも「今回はやめておいた方がいいのでは」と言われたこともありました。それでも、挑戦したいという思いを大切にして応募し、結果的に選考を通過することができました。そういった私からお伝えしたいのは、「こどもたちのために仕事をしたい」という思いに、遅すぎることはない、ということです。こども関連の業務経験が無く、全く異なる分野でキャリアを積んできた30代、40代の方が、これからこどもに関する仕事をしてみたいと思ったとしても、決して遅くはありません。このメッセージが、同じような状況にいる方々が一歩を踏み出す後押しになれば嬉しいです。」

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