INTERVIEW
国土交通省

大手自動車メーカーから国交省へ。「誰もが安全に移動できる社会を実現したい」民間出身職員の志

掲載日:2026/05/25NEW更新日:2026/05/25
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国土交通省(以下、国交省)による「経験者採用」実施にあたり、同省にて働く徳村 洋輝 さん(国土交通省 航空局 安全部 安全政策課 乗員政策室 専門官  ※取材当時)を取材した。もともと大手自動車メーカーの品質管理職として働いていた徳村さん。なぜ、次なるキャリアに国交省を選んだのか。そこには、「誰もが安全に移動できる社会を実現したい」という志があった――。

※画像内は転職時の年齢です。

人々の「安全な移動」を支えていくためのキャリア選択

もともと大手自動車メーカーにて品質管理として働いていた徳村さん。前職の仕事内容と、国交省への入省を志望した理由から話を聞いた。

前職は自動車メーカーにて、エンジンからタイヤが回るまでのミッション、いわゆる「足回り部品」の品質管理職として働いていました。たとえば、生産ラインの改善、故障した部品の解析・調査などが主な業務内容でした。時にはお客様のもとに行き、原因を調べ、設計にフィードバックするといったことも。周囲の方々にも恵まれていましたし、お客様の「安全な移動」につながっていく実感もあり、やりがいを持って働くことができました。

一方で、テレビや新聞などで自動車をはじめとした移動に関する事故のニュースを目にするたびに、複雑な気持ちも抱えていました。どうすればこういった事故を減らすことができるのだろうと。やはり特定の一社で働いている以上、自社製品にしか携わることができません。また、事故は様々な要因によって起こるものでもあります。メーカーの枠に縛られず、人々の「安全な移動」を支える仕事がしたい。そう考えた時、真っ先に浮かんだのが国交省での仕事でした。もちろんメーカーで経験を積み、時間をかけてプロフェッショナルを目指す道もあります。ただ、当時29歳、もうすぐ30歳という節目を迎えるタイミング。ここからの10年、20年をどういった分野で経験を積むのか。「制度」もまた長期的な取り組みが求められる分野だと考え、それならばできるだけ早い段階で本当に自分がやりたいと思う「制度」に関わる仕事にシフトしよう。こういった理由から国交省への入省を決めました。

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国交省での選考について「面接では“全ての人が安全に移動できる社会を実現したい”という思いを真剣に伝えました。その思いを受け止めていただけたことが印象に残っています。」と話をしてくれた徳村さん。

「現場の声」に耳を傾け、制度に反映を

こうして2024年4月、国交省に入省した徳村さん。業務内容についてより具体的に聞くことができた。

現在は航空局の安全部に在籍しており、主に航空業界における操縦士や整備士の人材確保や、効率的に働ける環境整備をテーマに取り組んでいます。

航空業界では、少子高齢化などを背景に、操縦士や整備士の人材不足が課題となっています。一方で、政府は2030年に訪日外国人旅行者数6000万人という目標を掲げており、飛行機の運航数は今後ますます増えていく見込みです。そのため、飛行機の安全な運航を支える人材を確保するとともに、現場のみなさんがいかに効率的に働けるか、働き方の改善支援などが重要なテーマとなっています。

わかりやすい例でいうと、飛行機には様々な機種が存在するのですが、これまでは「整備士は特定の機種でしか作業ができない」といった制限がありました。ですが、タイヤ交換のように機種間で大きな差がない作業も存在します。そこで、必要な資格さえあれば機種を問わず柔軟に作業できるよう、制度の改正を進めてきました(*1)。これらは一例ですが、現場で「もっとこうしたい」という声がある一方で、現状の制度が追いついていない部分もあります。そうした声を丁寧に吸い上げ、安全を担保した上で働きやすく変えていくことも、私たちの重要な役割となっています。

(*1)航空整備士制度の見直しに伴い、航空法施行規則等が改正
(参考)https://safetyp.cab.mlit.go.jp/wp-content/uploads/2025/06/8-015_R070611_航空法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う航空運航整備士の業務範囲の拡大に係る指定航空従事者養成施設の課程承認申請・審査要領.pdf

また、人材確保という観点では、特に「女性の活躍推進」に力を入れています。現状では操縦士や整備士における女性の割合が非常に低いという現実があります。その背景には、そもそも操縦士や整備士は男性が就く職業だという先入観があるほか、女性が長く働き続けるための環境整備が十分ではないという事情があります。具体的な改善策として、今まさに進めているのが試験制度の見直しです。これまで、学科試験に合格してから2年以内に実技試験を受けなければならないという決まりがありました。しかし、産休や育休を取得すると、この期限を超えてしまい、せっかく合格した学科試験をやり直さなければならないケースが発生していました。これでは、長く働きたいと願う方々にとって大きな障壁となってしまいます。そこで、産休・育休を挟んで能力を維持している方であれば有効期限を延長し、スムーズに実技試験へ臨めるよう制度を見直しています。(*2)

(*2)航空法施行規則の一部を改正する省令案について
(参考)https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000314212&

国交省で働く醍醐味は、まさに「現場」に向き合うことができる点にあるという。

自分が携わった制度の改正が実際に施行され、現場で働かれている方から直接感謝の言葉をいただけると、やはりとても嬉しいですね。そのためには、「現場」の声を正しく集める必要があり、メールや電話などで航空会社の担当者と細かな連絡を取り合いヒアリングすることもあれば、空港など整備士や操縦士の方々が訓練されている現場を実際に見させていただき、直接対話をする機会も少なくありません。現場の空気に触れ、生の声から制度のヒントをいただく。こういった業務も仕事の一部ですし、とても大きなやりがいを感じています。

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やりがいの一方で、知っておいた方がいい厳しさについて「航空業界には大手エアラインから小型機事業者まで様々な立場の人がいます。制度・法令は全ての事業者に影響するため、多様な課題や意見を一つにまとめていく難しさがあります。」と話す徳村さん。「また、省令改正は早くても半年かかり、すぐに目に見える効果が出ないことも。そして、新しい制度をつくる際には、様々な状況を想定して抜けもれのないよう検討する必要があるほか、他部署の仕事に影響が及ぶ際の調整も発生します。法令が複雑に絡み合い、様々な部署の利害にも関わるため、一企業で取り組む以上に影響の範囲が広いことも事前に知っておくといいかもしれません。」

「安全な移動」を支えていくために

そして取材後半に聞いたのが、今後の目標について――。

個人的な目標になりますが、今後、技術の進歩に伴い、新たな移動手段が登場する中で、誰もがそれらを安全に利用できるような基準づくりにも取り組んでみたいです。

なぜ、徳村さんはここまで「安全な移動」に対し、強い思いを持っているのか。そこには自身の価値観、そして体験も大きく影響している。

私自身、旅行が好きなのですが、知らない土地へ赴き、そこに住む方々の話を聞いたり、見たことのない景色や多様な生き物に触れたり、とても楽しいですよね。ただ、無事に目的地へ到着し、安全に帰宅できてこそ、その楽しさは守られるもの。また、旅行だけではなく、通勤などの日々の移動も、「安全」が確保されて初めて、社会の豊かさにつながっていく。そういった「安全な社会」の実現に貢献していきたいです。

実は私自身、学生時代にアジアの国々を旅行していた際、現地の相乗りタクシーが途中で故障し、立ち往生してしまった経験があります。大事には至らなかったのですが、交通量の多い場所だったため、率直にとても怖く、その時に初めて、安全な移動ができてこそ楽しい旅行や経験、日々の生活が成り立つのだと感じました。海外での出来事ではありますが、日本であっても「安全な移動」を支えることは、日々の幸せや生活基盤を守ることにもつながっていると強く実感しました。国交省というフィールドで、この「安全な移動」を支え、そこで生きる人々の生活を支えていきたい。その思いを形にするために、今後も政策の立案や運用に真摯に向き合っていければと思います。

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