「答えがないから面白いんです」VOYAGE GROUPでVR事業を牽引する伊藤淳さん(26歳)。その言葉の端々から挑戦を楽しんでいることが伺えた。「過去大きな挫折をしてこなかった」と語る彼だが、今まさに新規事業において数々の難題と対峙。そこには答えのない問題に心躍らせ、勇敢に立ち向かう若きプロデューサーの姿があった―。
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「VR領域が熱い」
そう言われてしばらく経つが、社会全体への普及はこれからと言っていいだろう。特に非ゲーム領域において、どのような使い方ができるのか。各社の模索が続く。
そんな中、アドプラットフォーム/メディア事業で知られる『VOYAGE GROUP』にユニークな動きがある。2016年に「VR研究室」が立ち上がったのだ。VRを次なる主力事業へ育てていく試み。ここで室長を務めているのが、伊藤淳さん(26歳)だ。
「社内でビジネスコンテストが半年に1回あるのですが、“VR事業をやりましょう”と提案しました。正直、1年、2年という短いスパンの収益化はかなり厳しいです。ただ、VRは世界を変える可能性がある。やらないほうが会社にとってのリスクだと考えました」
「新規事業をやりたい」という自身の強い想い、そして会社の事業戦略が上手く重なったと伊藤さんは語る。
「2014年に『VOYAGE GROUP』は上場し、新しい事業を育てていくフェーズ。VRだけではなく、FinTech、HRTech…新規事業を次々と仕掛けていく。広告やポイントサイトなど既存事業とのシナジーも見込んだ研究が必要とされていたんだと思います」
どうVRを既存事業と掛け合わせられるか。長期的な研究も兼ねていく。経営陣とのディスカッションを重ね、伊藤さんの「VRビジネスを創出する」というチャレンジがスタートした。
伊藤さんは東京大学の卒業生。在学時代より、経済学部でありながらWeb・IT、そして新しいテクノロジーに魅了されていった。
「身近な人に大きな影響を与えることと、小さくても多くの人に影響を与えることって、多くの場合トレードオフの関係にあると思うんですけど、自分はウェブをはじめとしたテクノロジーを使って、より広い人たちに影響を与えることにやりがいを感じるタイプなんだと気付きました」
ビッグマウスにも受け取れるが、有言実行を貫く。
「どんなことだってやろうと思ったらできるはずだと思っちゃいますね(笑)」
その言葉どおり、学生時代にプログラミングを独学で習得。政治サイト「日本政治.com」を立ち上げ、テレビで取材されるなど話題に。そんな彼だが、VOYAGE GROUPを選んだ理由をこう振り返ってくれた。
「VOYAGEには、新しい事業を作ろうとする風土があります。他の人がやっていないことをいかにやるか。同じじゃないことが評価され、称賛される。新規事業に挑む若手社員たちも“誰が最初に大きく当てるか”と、しのぎを削っています。なによりも年齢にかかわらず、任せてもらえるのがいい」
そして、もうひとつ、大きな魅力が「資金力」だという。
「VR市場がくるのは早くても2~3年後。自分のお金でやるか、資金力のある会社でやるか。合理的に考え、VOYAGEのような資金力のある会社でやったほうがいい。桁違いのスケールで勝負ができますから」
やりたいことと会社が目指す方向が合致。会社のお金でそれを実現していく。彼にとっての最良の選択肢が同社というわけだ。
そして、多くの人が彼に「任せてみたい」と惹きつけられる理由がわかった気がする。
新しいテクノロジーの面白さを熱弁する少年のような好奇心。同時に数値・データをもとにした分析。もらった恩を返していく、責任を果たすという人間性。これらが同居する。
「もちろん自分の市場価値は気になりますが、転職を本気で考えたことはありません。任せてもらった恩と責任がある。そして、新規事業をもっと活性化させるためにも、僕が“成功するロールモデル”にならなければなりません。だからこそ、必ず会社にメリットを出す。売上でもちゃんと結果を見せる。ここは必ず達成したいです」
会社のなかで、自身がやりたいことを実現する。会社もそこにお金を出す。この理想とも思える環境を、伊藤さんはなぜ手にできたのか。「個人的なポリシー」という前置きのもと、話をしてくれた。
「自分のテンションが上がることに時間を使う。ものすごく情熱を注げるものに投資しておくと必ず良いことがあります。僕は新しい技術が好きで、VRに限らず、学生時代からいろいろなモノを触ってきました。3Dプリンタでのフィギュア製作にハマったこともあるし、電子工作に熱中したこともある。それらが今、VR制作の基礎技術としてとても役立っています。“Connecting the dots(点と点を結び付ける)”といいますが、自分のキャリアを考える際にとても大事にしている考え方です」
ただ、重要なのは「情熱を注ぐレベル」だという。
「大事なのは常軌を逸したレベル、狂気じみた熱量でやり抜くこと。中途半端にしない」
寝食を忘れて好きなことに没頭できるかどうか。それはジャンルに関わらず、大切なことなのかもしれない。
「たとえば、服が好きとか、音楽が好きとか、なんでも狂気じみた熱量でやれば絶対にどこかで活きてくると思っています。いまの時代、クリエイターにしてもプロと素人の境目が無くなっていますよね。だからこそ“熱量”で差異が生まれるのかもしれません」
伊藤さんの強みは“楽しいと感じたことを徹底的にやり抜く”ということ。だからだろうか、彼は人生において「挫折」の記憶がほとんどないという。
「人生において大きな挫折って…あまり記憶にないんです。受験にしても勉強がすごく楽しくて熱中していたら合格できて。希望の学部、希望の会社に入れて、好きに仕事してたら、今のポジションにいて(笑)」
ただ、まさに今。現在進行形で彼は大きな壁にぶつかっている。というのも「VR」はまだ市場さえ立ち上がっていない領域。人類の認知、移動の概念を大きく変えるとも言われているなか、一体どのようなビジネスが成り立つのか。誰も答えを持っていない。
「僕が括っていいのかわかりませんが…東大生って問題解決は得意なんですよね。問いを与えられたらそれなりの解答を出せる。僕もやるべき事が決まっている状態で力を発揮するのは得意です。現状を分析し、何がボトルネックか決めて改善すればいい。ただ、過去経験していないこと、問いそのものを生み出すようなことは得意でない人も多い」
人生初の「解けない問題」(そもそも問いからつくる領域)と、彼はどう向き合っているのか。
「エキサイティングですね。入社して4年、一通りの仕事を覚えて“やれる”という自信もついたのですが、一気に崩壊しました。本気で何もわからない(笑)この状況をどう切り抜けていくか。成果を出すか。楽しくて仕方がないです」
まるで先の見えないトンネル、なぜこのような状況にワクワクできるのか。
「僕は人の行動様式を変える“何か”をずっとやりたいと思っていたんです。すごいプロダクトやサービス、それらひとつで人の行動はガラッと変わる。世の中が最適化される。素晴らしい事だと思うんです。そこに挑戦できるなんて最高ですよね」
仕事を通じて世の中を便利にしたい、誰かの役に立ちたいとも言い換えられる。
「たとえば、60歳になったとき、自分やその家族が暮らすのに苦労しない収入を得ているのはなんとなくイメージが湧きます。だからこそ、プラスアルファで何かしたい。自分のつくったプロダクトだったり、仕組みを後世に残したいんです。“自分の名を後世に残す”といったら大げさですが(笑)」
同時に「自己満足で終わらせたくない」という強い覚悟が、その言葉にはこもっていた。
「勝手な自己満足だけでやって、社会から評価されなかったら、それは時代に残らないし、誰の記憶にも残りません。だから、僕はビジネスとしてやる。それがたくさんの人を幸せにする手段だから」
自らの幸せは、自分だけでは完結しない。そしてビジネスとしてやっていく。26歳になった伊藤さんは、いまこの瞬間もチャレンジを続ける。あくなき探究心・好奇心を武器に、新しい未来をつくっていくために。