宇宙ベンチャーのなかでも「人工衛星」に強みを持つ3社に注目した。流れ星を生み出したり、宇宙ゴミを撤去したり。また、魚の養殖にも衛星が活躍するという。
"宇宙分野の開発・利用は、成長産業を創出するフロンティアである"(*1)
日本政府は、「宇宙産業ビジョン2030」の中でこう明言する。
実際に、日本の宇宙産業の規模について「2050年には2016年時点の6倍以上の約59兆円にまで成長する」といった予測も(*2)。IoTやAIといった技術とのかけ合わせで、第4次産業革命を促進する起爆剤になるとも言われているのだ。
こういった中、日本政府は2016年に宇宙二法を公布。加えて2018年には、宇宙ビジネスを担うスタートアップを支援するため、5年で1000億円を投じることを発表している(*3)。
さらに、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家たちの動きも活発化している。2019年6月には、宇宙ベンチャー特化した投資ファンドも誕生。宇宙ビジネスへの期待の大きさが伺える。
世界の宇宙ビジネス市場における61%、日本でも50%を占めるのが「衛星インフラ構築・運用、衛星活用サービス」だ。
さらに近年では多岐にわたる領域で、衛星の利活用が進む。その一例を見てみよう。
□衛星インフラ構築・運用、衛星活用サービス(人工衛星の製造、取得したデータの活用)
□輸送システム(ロケットなどの製造)
□宇宙探査・有人宇宙活動(月での資源探査 等)
□宇宙環境活用サービス(再生医療や宇宙生物学の研究、創薬 等)
□宇宙環境保全(スペースデブリと呼ばれる宇宙ゴミの除去 等)
あくまでこれは一例。「宇宙ビジネス」はこれからも広がりが期待される分野だと言えるだろう。
では衛星分野では、どのような企業があるのだろうか?
人工衛星から特殊な素材の粒を放出し、流れ星を人工的に再現へ――「人工流れ星」で話題を集めるのが同社だ。
彼らが目指すのは単なる「エンタメ」ではなく、人工流れ星を使ったデータ収集。
今まで観測が難しかった高度50キロ~80キロの『中間圏』のデータを収集することで研究へ貢献。さらに、地球温暖化や異常気象などの予測や現象の解明に貢献していく、という志があるという。実際に2019年1月には、人工衛星を搭載したロケットを打ち上げている。
「宇宙ゴミ」を撤去するスペースデブリベンチャーが、アストロスケール社だ。
過去の宇宙活動から発生し不要となった人工物体、たとえば事故・故障が原因で制御不能となり軌道上に浮遊している人工衛星、衛星の打ち上げに使用されたロケットを除去するためのソリューションを開発。
デブリを除去することにより、長期的な宇宙飛行の安全性と軌道の持続可能性を確保することを使命としている。
2020年11月には、民間世界初となるデブリ除去実証実験衛星を2021年3月に打ち上げることを発表した(*4)。
JAXA出身の代表が創業。「経験と勘」が頼りだった水産養殖の分野を、IoT・AIといった技術と、衛星データの利活用により支援するビジネスが注目されている。
具体的には、従来、養殖事業者が手作業で測っていた海表面の温度やプランクトンの濃度などの情報を衛星によって取得。これにより、水産養殖での人手不足を解消、かつ作業効率アップを狙う。
さらに2019年8月には、養殖魚の食欲を自動で判定できるシステムを、世界で初めて開発したと発表し注目を集める(*5)。
いずれも、「事業開発」「PR広報」「エンジニア」といった職種で募集が行われていた。事業をつくりあげるフェーズに参画できるチャンスとも言えるかもしれない。
ロマンだけではなく、ビジネスとして「宇宙」での成功を見据えていく。壮大なプロジェクトに挑戦できるフィールドがありそうだ。
(*1)宇宙産業ビジョン2030 - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/space/vision/point.pdf
(*2)総務省|「宙を拓くタスクフォース報告書
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin05_02000030.html
(*3)日刊工業新聞|政府、宇宙VB育成 今後5年で1000億円投入
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00466660
(*4)PRTIMES | スペースデブリ問題に取り組むアストロスケール民間世界初デブリ除去実証実験衛星の2021年3月打ち上げを決定
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000067481.html
(*5)日本経済新聞|養殖支援ベンチャーのウミトロン 世界初 洋上養殖魚の食欲を自動判定
https://www.sankei.com/economy/news/190821/ecn1908210015-n1.html