人が自然と調和して生きられる未来をつくる――約100カ国で活動する環境保全団体、国際NGO『World Wide Fund for Nature(世界自然保護基金、以下WWF)』。その日本拠点、WWFジャパンにて、多様な人材を求める公募プロジェクトが始動する。「もともと野生生物保護を目的に誕生した団体ですが、現在は地球規模での環境保全全般に対する幅広いアプローチを行なっています」こう話をしてくれたのが、WWFジャパンで働く外岡瑞紀さん(ファンドレイジング室 室長)だ。WWFで働くことの意義、そして彼女自身の「志」に迫った――。
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自然環境保護は、あらゆる課題解決の基盤
前職、国連WFP協会で働いていた外岡さん。なぜ、WWFジャパンで働くことにしたのか。そこには「あらゆる社会課題解決の基盤となる、環境問題に取り組みたい」といった思いがあった。
持続可能な開発目標、SDGsには17の目標がありますが、どのような社会課題に取り組むにせよ、やはり地球環境が整っていなければ、実現が難しくなってしまいます。
前職の国連WFP協会では、SDGsで示されている2番目の「飢餓をゼロに」をミッションに掲げ、マーケティングコミュニケーションマネージャーとして働いていました。社会的に最も脆弱な人々の命を救い、役に立っていく。やりがいも大きく、仕事にも不満はありませんでした。
ただ、数年前より飢餓人口が上昇に転じており、その主な原因が気候変動だったんです。さまざまな現場へと足を運ぶなかで、気候変動による自然災害の増加により人々の生活インフラが破壊されたり、農地が砂漠化して食糧生産量が減っていたり。飢餓を解決するには環境課題が無視できない問題だと実感しました。
もともと環境課題に関心はあったのですが、より深く考えるようになり、WWFジャパンに入職する大きな理由になりました。
ちなみに私自身、10年以上前からWWFに寄付しており、支援者でもありました。昔からパンダが好きだった、ということもあって(笑)動物が好きで、生物多様性も守りたい。こういった思いもきっかけのひとつでした。
※上図はWWFジャパン作成
世界における生物多様性の豊かさを実現していくのもWWFが掲げるミッション。生物多様性の豊かさ=その地域に生息する野生生物の種類が多ければ多いほど、動物由来感染症のリスクも低下すると言われる*。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、動物由来感染症のひとつと考えられており、世界的な課題へと働きかけていく。https://www.wwf.or.jp/activities/opinion/4451.html
WWFジャパン ファンドレイジング室 室長 外岡瑞紀さん新卒入社後、複数の企業にて広報を7年経験。その後、パナマ共和国の保健省で、献血・感染症の広報に従事(青年海外協力隊)。帰国後、青山学院大学大学院国際政治学研究科に進学、修士課程修了。JICA、横浜市職員を経て、認定NPO法人国連WFP協会へ。飢餓問題への理解促進および、国連WFPへの支援拡大に従事(マーケティング・コミュニケーション戦略策定、メディアリレーション、イベントやキャンペーンの実施、講演活動などに携わる)2020年7月、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)に入職。ファンドレイジング戦略構築や多様なステークホルダーとの協働推進等に携わる。
自分たちの手で「人が自然と調和して生きていける未来」をつくる
民間企業、公的機関、NGOと多岐にわたる組織で働き、キャリアを歩んできた外岡さん。そんな彼女が感じるWWFジャパンでの仕事のやりがい、得られる経験について伺った。
多くの方が環境問題に関心を持ち、何かしらのアクションを起こしたい、肌感覚ですがそう考える方が増えていると感じます。ただ、「何からしたらいいかわからない」という方も多い。そういった方々に参加の機会を提供し、支援者になっていただき、皆さんと共に環境課題解決にむけて取り組むことで社会的変化をもたらせることが、大きなやりがいですね。
当然、環境問題への取り組みは、すぐに結果が出るものではありません。長期的に取り組んでいくもの。さまざまな方々と協力、連携しなければ解決ができない。そういった壮大な問題に、支援をしてくださる皆さまはもちろん、世界中のWWFの仲間と、同じ思いで働けるのは、すごくいい環境です。
環境保全に取り組む国際NGOとして世界最大規模。さまざまな情報が得られ、私自身、毎日すごく勉強になっていて。どのテーマにしても、勉強することが多く、一生かかっても足りないくらいで(笑)そのようにして学んだこと、一つひとつが社会の役に立っていく。ここも、WWFジャパンで働くおもしろさだと思います。
ファンドレイジング室 室長を務める外岡さん。「ファンドレイジング」とは非営利活動にて寄付金・会員を募集していく活動を指す。支援者を募り、ファンになってもらい、長期的な関係を構築していくまでの全般的な活動を担う。「ファンドレイジングはマーケティング要素が強く、ロジカルに考えていく領域。一方で、相手とのコミュニケーション、求めていることを汲み取る力など、人間力も大切。情理のバランスをとりつつ、どれだけ支援者の気持ちに寄り添っていけるかが重要だと思います」
インパクト重視で動く、NGOで働くリアル。
今回の公募プロジェクトでは、民間企業で働く人をはじめ、多様な人材を求めているWWFジャパン。NGO職員の一員として働くイメージが付きにくい、というケースも。率直にイメージとのギャップがないか。厳しさも含めて伺った。
あくまでも私個人の考えですが、NGOだからこその厳しさはあると思います。特に資金面。一般企業と比べて、むしろ「数値目標」へのコミットは強いかもしれません。たとえば、私が室長を務めるファンドレイジング室は、法人、個人の皆さまからご寄付をいただくのですが、その資金が集められなければ、団体としての機能が停止してしまう。活動ができず、組織のミッションも達成できません。当然、「数字」が重要になります。
頂いたご寄付には環境保全への思いが託されているので、正しく、効率的に使われているか。どのような活動に使い、どれだけのインパクトにつながったか。透明性を持って、具体的に示していく必要があります。稀に「NGOであれば、一般企業のようにガツガツ働かなくていいのではないか」と考える方がいるかもしれませんが、それは間違った認識かもしれません。NGOにもさまざまありますが、概して一般企業と比べて給与や待遇がいいわけではない。ですので、数あるNGOのなかでも、なぜ、WWFジャパンなのか。どれだけ強い思いがご自身のなかにあるか。真剣に突き詰めた上で入職いただくと、より大きなやりがいを持って働いていただけるはずです。
子どもたち世代が、できるだけ平等に、幸せを享受できる世界を目指したい。
そして取材の最後に伺えたのは、外岡さん自身の「仕事」に対する思いについて。彼女が見据える「未来」とは。
私には4歳になる娘がいるのですが、とくに彼女が生まれてからずっと「持続可能な社会を娘たちの世代に残したい」と働いてきました。娘たちの世代が、できるだけ平等に、幸せを享受できる世界を目指したい。
私自身、小学生時代をアメリカで過ごしたのですが、人種差別を目の当たりにしてきて。前職時代には、難民キャンプで自分の娘と同じ月齢の赤ちゃんを抱っこさせてもらったのですが、半分くらいの体重しかない。そういった現実にも直面しました。生まれた場所、環境により、生きていくことが困難な人々が多くいる。あまりに不平等な社会がある。これはおかしいのではないか?という思いを抱えてきました。そういった意味でいえば、貧困も、教育も、ジェンダーも、あらゆる社会課題を解決していきたい。ただ、そのための持続可能な社会は「地球環境」を抜きに語れません。ですので、WWFで実現をしたいのは、より多くの方々と活動を推進し、持続可能な社会の基盤をつくっていくこと。ちなみに、娘は私が「パンダのお仕事」をしていると思っていて(笑)街などでパンダのマークや環境ラベルを見つけると、すぐに教えてくれる。「将来は動物のお医者さんになりたい」と言っていて、動物が大好きなんですよね。そんな娘に恥ずかしくない生き方をしていきたい。ただ、あまりに仕事ばかりしていたら、パンダが嫌いになってしまうのではないかと少し心配しています(笑)ですので、娘との時間を大切にしながらも、仕事に全力で向き合っていければと思います。
WWFジャパン|求める人物像
■WWFジャパンで働く職員の前職について
民間企業で働いてきた方、NGO・NPO、公的機関で経験を積まれた方など、さまざまなバックグラウンドを持つ、多様な職員が在籍しています。これまでに培ってきた経験、スキルをWWFジャパンでの活動に活かしていただけます。
■組織カルチャーについて
活躍している職員に共通しているのが、自然保護、地球規模での課題解決に対し、強い思いがあること。プライベートでも皆が環境保全の取り組みを行なっており、組織の強みにもなっています。
■求める共通スキルについて
多様なステークホルダー・各領域に特化した職員など、さまざまな関係者と連携して進めるプロジェクトが多くあります。同じビジョン、ゴールを共有しつつも、それぞれ達成したいことが異なる場合があります。さまざまな壁、課題と直面していくなかで、外部環境のせいにするのではなく、自身の行動を変革し、ポジティブかつ柔軟に課題解決を推進していく能力が求められます。
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