INTERVIEW
インターステラテクノロジズ|代表取締役社長 稲川 貴大

100兆円市場を狙う、小型ロケット×人工衛星ビジネス。インターステラテクノロジズの挑戦

掲載日:2022/05/09更新日:2022/07/27
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「宇宙データはあらゆる課題を一気に解決しうる」こう語るのは、インターステラテクノロジズ代表の稲川貴大さん。小型ロケットの開発から打ち上げまでを手掛ける同社は、2019年、国内で初めて、民間企業が単独で開発したロケットを宇宙空間へ到達させた。宇宙ビジネスの今、そして同社が開発に取り組む小型ロケットの可能性とは?

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宇宙産業は、2040年までに100兆円超のマーケットへ

「今後、地球低軌道での経済活動はますます活発化していくと言われています。僕らは、圧倒的に低価格で便利な宇宙輸送サービスにより宇宙へのインフラを構築し、誰もが宇宙に手が届く未来の実現を目指します」

こう語るのは、インターステラテクノロジズ代表の稲川貴大さんだ。

「いま宇宙ビジネスは非常に盛り上がっています。たとえば、衛星通信会社などが進めているのが、「全地球インターネット」計画です。携帯の基地局のようなものを宇宙空間に飛ばせば、空さえ開けていれば誰もがネットにつながるようになります。実現すればネット人口を数十億人拡大すると言われてます。もう1つ、人工衛星を飛ばして地球のデータを遠隔で観測する「リモートセンシング」もビジネス化が盛んな領域です。そのため、人工衛星メーカーが急増している。現在宇宙ビジネスの市場は40兆円ほどですが、2040年には少なくとも100兆円を超えると言われています」

宇宙ビジネスの機運が高まると共に、同社が開発するロケットへの注目も集まる。

「低コストな小型ロケットは、企業の宇宙データ活用への敷居を下げると考えています。​​これまで宇宙データを活用するのに何百億円も掛かっていた時代は、参入できる企業はBSやCSといった放送局などの業種に限られていました。ただ、コストが下がれば、参入できる企業も増え、宇宙データを活用できるようになっていきます。我々の顧客となるのは、人工衛星メーカーなどの宇宙ベンチャーはもちろん、宇宙データで解決しうる課題を抱える全ての企業・組織です。例えば、通信企業、データ解析を行なう企業、農業、漁業といった一次産業、防災などの観点でいえば地方自治体、安全保障の観点では国も顧客候補になってくると思います」

見据えるのは、超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」打ち上げ、そして実際に宇宙データが産業に活用されていく世界線だ。小型ロケットが秘めるビジネス可能性、社会に与えるインパクトとは?代表取締役社長の稲川貴大さんに伺った。

インターステラテクノロジズ稲川さん差し替え

代表取締役社長 稲川 貴大
東京工業大学大学院機械物理工学専攻修了。学生時代には人力飛行機やハイブリッドロケット設計・製造を行なう。修士卒業後、インターステラテクノロジズへ入社、2014年より現職。過去には、Cool Japan Award 2017 蔵前工業会 蔵前ベンチャー賞(2019年)を受賞。

宇宙産業を、無駄なく効率的にワンストップで。

参入障壁の高いイメージのある宇宙産業において、なぜインターステラテクノロジズはこれほどまでに存在感を高めているのか。

「1つは、北海道の南十勝に位置する、「大樹町」に工場とロケットの発射場を保有しているのは、大きなポイントだと思います。大樹町は日本でも数少ない、ロケットの打ち上げに適した土地です。

ロケットを打ち上げるには、広大な土地があって、人口密度が少ない必要があります。それでいて、離れ小島のような場所だとロケットを運ぶのに不自由なので道路は発達している必要があり、大樹町はこうした厳しい条件をクリアしているんです。

昔から町をあげて「宇宙のまち」としてPRしてきた背景もあり、我々も誘致いただいたんです。プロジェクト開始時には東京などで活動していたのですが、2013年に北海道大樹町に本社をおきました。正直、最初は不安でしたが、本当に宇宙ビジネスに対して受け入れが寛容で、とても温かく受け入れてくださいました」

スペースポート画像

大樹町では、宇宙版シリコンバレーを目指し、「北海道スペースポート計画」が推し進められている。北海道スペースポートとは、世界中の宇宙産業に取り組むプレイヤー(⺠間企業・大学・研究機関・政府等)が自由に使える、アジア初の⺠間にひらかれた宇宙港のこと。

もう1つ、「ロケットだけでなく、人工衛星、地上設備までの全て自社内・関連会社内で手掛ける」点についてもふれてくれた。

「そもそも、国主導のロケットの開発は、分業制で行なわれてきました。大きく工程を分けると、仕様を決め、設計図面を書き、各部品を製造し、組み立て、打ち上げまでの工程がありますが、これらを別々の会社が行なうことが多かったんです。我々は、ここを一気通貫して自社で行ないます。中間となるところを無くして敷居をなくしていくことにより、時間的にも金額的にもコストダウンを実現できます。さらに、2021年1月には人工衛星開発の子会社「Our Stars株式会社」を立ち上げ、日本初のロケット×人工衛星開発の体制を整えました。ロケットの発射場まで含め、垂直統合的に事業を展開することで、無駄なく効率的に宇宙産業を進めていきます。ここはかなりユニークな点です」

インターステラ(ゼロ)

2019年には国内初、民間企業が単独で開発したロケットが宇宙空間まで到達。超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発も進めている。

小型ロケットは、あらゆる社会課題解決の糸口に 

ロケットのなかでも、特に小型ロケットに狙いを定めた背景とは?

「近年の半導体の進化により、そもそも運ぶ人工衛星自体が小型化し、小さいものを運ぶ輸送手段のニーズが出てきたからです。昔は運ぶ衛星が大きかったので、大型ロケットで運ぶ必要がありました。ただ、今や手のひらにおさまるくらいのサイズの超小型人工衛星も出てきています。そうした変化をふまえると、小さなロケットで運べる方がいいですよね。今後、小型ロケットのニーズはますます増えていくはずです」

超小型人工衛星と小型ロケットを使うと、具体的にどういったことが実現できるのだろうか。

「1つは、狙いたいポイントに荷物を輸送できます。イメージで言うと、鉄道ではなく、ラストワンマイルまでいけるタクシーに近い使い心地の良さがあります。例えば、狙った時間・狙った場所に人工的に流れ星を出現させるベンチャーや、宇宙に浮遊する宇宙ゴミの掃除を行なうベンチャーがありますが、彼らが使っているのも小型ロケットです。

もう1つ、圧倒的に開発コスト・打ち上げコストを抑えることができるため、結果として高頻度で人工衛星を飛ばすことができ、リモートセンシングで取れるデータの質も高くなります。そもそも大型人工衛星の場合、1機飛ばすのに高いと500億円ほどかかります。当然、予算を考えれば、高頻度で打ち上げられるものではありません。しかも、1つの人工衛星を飛ばしたとしても、地球の周りをぐるぐると回る関係上、同じ場所を撮影しようと思うと14日に1回くらいしか撮れなかったりします。つまり、「毎日東京の真上を撮る」といったことはできないんです。一方、小さい人工衛星は、1つあたり数億~10億円ほどで作れるほど、コストダウンしてきています。大型ロケットを飛ばすのと同じ金額で10倍、100倍の数の人工衛星を飛ばすことができます。量を担保できるようになれば、14日に1回しか観測できなかったところが2~3時間に1回といったペースで出来るようになります。つまり、解析の精度も上がるため、より多様な産業で、効率化につなげていくことができるようになるんです」

高頻度で人工衛星を飛ばせることで、新たなセンサーの搭載なども試しやすくなるという。

「これまで10年に1回しか人工衛星を打ち上げられなかったのが毎年のように打ち上げられるようになると、新しいセンサーをタイムリーに投入することも可能です。例えば、カメラ以外にレーダーもつけて地表面のデータもとれるようにしたり、あるいは光の周波数を分けてあげるような分光器を取り付ければ、たとえば大きな農園などで「ここの木は病気になっている」といったことも分かるようになります。ライダーという装置をつければ、上空の風や海上の風も計測できます。これにより飛行機の最適経路がわかり、燃料の節約につながるほか、洋上風力発電の最適な設置ポイントもわかるようになります。宇宙のデータを使えば、食料問題、エネルギー問題など、まさに人類が直面する課題の解決にもつなげていけるはずです」

ソユーズに代わるロケットを僕らがつくる

続いて伺ったのは同社で働く魅力について。

「ロケット開発は非常に難易度が高いのですが、だからこそ、そこを超えていく開発にチャレンジする面白さがあります。加えて、そのチャレンジを、裁量の大きい環境で出来る点もポイントです。約100名という、ロケット開発の割に小規模な開発体制であるため、一人一人の手掛けられる範囲が広いです。大企業だと細分化された一部分しか関われないこともあると思いますが、我々くらいの組織規模であればある意味、何にでも取り組めるフィールドがあります。宇宙産業はまだこれから立ち上がっていく領域であり、まだ未知の領域でもあります。そういった意味で、わからないところに対して好奇心を持って取り組める人に向いていると思います」

特に同社が今注力しているのが、超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」の開発。ここにかける想いについて、昨今の世界情勢をふまえて伺った。

「まずは、超小型衛星を宇宙に運ぶことができるロケット「ZERO」の開発に注力していきます。この「ZERO」は、宇宙産業をドライブさせていく意味でも試金石になると考えています。現在、ロシアとウクライナが戦争状態になったことによって、宇宙産業にも大きな影響が出ています。もともとロシアは、ソユーズをはじめ世界でも有数の素晴らしいロケットを保有する国と言われています。宇宙輸送の手段として考えると、ロシアのロケットは全世界の2~3割を占める、非常に大きな存在です。人工衛星の打ち上げをロシアに依頼していた国内の宇宙ベンチャーも多くいました。ただ戦争状態になったことで、ロシアのロケットが使えなくなりました。ただでさえ世界的にロケットが不足していた中で、宇宙への輸送手段が2~3割一気になくなってしまったわけです。我々としても、ソユーズの代わりに一部なるような輸送手段として、「ZERO」の開発を急ピッチで進めています。ロシアのロケット輸送能力がなくなった分を補うには、新しいロケットをつくっていくしかない、という想いです」

一方でロシアの戦争は、宇宙データの新たな活用法を世界に示すきっかけになった側面もある、という。

「大前提、戦争はあってはならないものです。ただ今回のロシアの戦争は、宇宙データが安全保障にも活用できることが証明された事例である、ともいえます。今の時代、民間企業の人工衛星がたくさん飛んでいるため、それらの衛星データからロシアーウクライナの国境近くで異変があることは事前にわかっていました。言い換えれば、普段は産業目的で利用している人工衛星も、有事の際は撮影ポイントを切り替えることで軍事・国防の観点でも活用できるということ。国防、安全保障、という観点でみても、宇宙データは不可欠な存在になっていくと思います」

インターステラ集合写真さしかえ

ロケットで太陽系外へ。人類の経済圏を拡張したい

「ZERO」を開発した、その先のビジョンとは?

「僕らが最終目標としているのは、単にロケットの打ち上げや宇宙に行くことではありません。社名にある“インターステラー(恒星間)”という言葉のとおり、太陽系外惑星 に行くことまで考え、宇宙の裾野を広げることまで視野に入れています。

人類の経済圏や、そもそも行ける場所を拡張することこそ、ロケットや宇宙開発の仕事でできることだと思うんです。生物って、もともと単細胞生物みたいなものから多細胞生物になって徐々に魚みたいなものになって海に。そして海から陸へ出て、陸に関しては、人類が概ね制覇してしまった。さらに飛行機を発明して空も飛べるようになった。でもまだ宇宙には自由に行けていません。月には何回か行きましたけど、その後、人類ってなかなか地球付近の低軌道から外には行けていないんです。

それこそ、人類が太陽系外に出ることができれば「生物が海から陸に上がった」のと同じくらいのレベルの進化が起こると思っています。つまり、太陽系から出ることができるツールとしてのロケットの開発は、間違いなく生物の進化においてターニングポイントになります。例えば、今人類は地球の表面の薄皮一枚のところの資源の有無で戦っていますが、太陽系外に出ていけば、何桁もオーダーの違う資源採掘も可能になります。あらゆるものに関して、物質量が何桁も変わり、使えるリソースの量も全く変わってくる。その先どうなっていくかは具体的には想像がつかないですが、おそらく凄いことが起きるはずです。こうした「人類の進化」に、挑みたい。技術で解決していきたいと思っています」

ちなみに、稲川さんが宇宙に関心を持った経緯とは?

 「よく宇宙少年だったように思われがちなのですが、実は宇宙に興味を持ったのは、20歳を過ぎてからです。大学時代は機械工学を学び、ものづくりや工作は好きでしたが、ロケットは非常に難しそうだし、それまでは全く自分事としては捉えていませんでした。ただ、ある時ネットの動画をみて、良い意味で雷が落ちたようなショックがあったんです。北海道内の町工場がロケットを打ち上げる映像だったんですが、言葉を選ばずに言えば、「あれ?自分でも作れるんじゃね?」と思ったんです(笑)

よくよく分解して考えてみると、ロケットって普通の機械なんです。もちろん難易度は高いですが、「物を燃やして飛ぶ」という意味ではジェットエンジンの飛行機などと同じで、実はほかの産業機器とそんなに変わらないんです。そう思った瞬間、それまで宇宙飛行士や宇宙開発をやる人たちはスーパーマンだと思っていたのが急に自分ごととして捉えられるようになったんです。自分の中で宇宙が身近になり、一気にのめり込みました」

最後に、稲川さんにとっての仕事とは?

 「僕にとって仕事とは、限られた時間のなかで最大限、世の中や人類にとって良いことをしていくこと、と捉えています。人生は長いようで短いと思うんです。せっかく限られた時間を費やすなら、一番おもしろくて、エキサイティングなことをしたいんです。何事かを成そうと思うと「趣味」として取り組むのでは時間が足りないから、お金が回っていく仕事として、大きなことにこれからも挑戦していきたいと思っています」

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