「クラシルが次に目指すのは、TikTok、Instagramのようについ楽しくて見てしまう料理特化のSNSです。ユーザー層をさらに拡大し、広告媒体としての底力を上げていくことで、広告事業としても、これまで以上に企業とのタイアップによるシナジーが見込めると考えています」こう語ってくれたのは、村瀬友哉さん。クラシルの運営企業であるdely株式会社で、クラシル広告事業責任者を務める人物だ。2021年12月にリリースした「クラシルショート」も、変革に向けた施策の1つだ。クラシルのビジネスの可能性について伺った。
*日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66936200T01C20A2000000/
「くらしをおいしく、あたたかく」をコンセプトに、管理栄養士が監修した "かんたんにおいしく作れるレシピ" を提供する『クラシル』。
2016年2月のサービス開始より、とくに20代~30代の女性を中心にサービスが広まり、累計ダウンロード数は3,400万を突破(*1)、SNS総フォロワー数は約980万と日本一を誇る。さらにレシピ動画数は4万5,000以上と世界一(*2)の規模だ。
クラシルは、今では当たり前となった "日々の献立の悩みを動画で解決する" スタイルを、日本に築き上げてきた立役者として知られている。
こうしたなか、運営元のdelyは、いま事業拡大へ一気にアクセルを踏む。
たとえば2021年12月には、一般ユーザーがショート動画を投稿できる『クラシルショート(kurashiru shorts)』をスタートさせた。
「世の中の人々がご飯を食べるのは1日3回。ある意味、この数字は従来のレシピサービスにおけるマーケットのパイが限られていることを示しています。『クラシルショート』は、レシピを知りたいとき以外の時間もつい楽しくて見たくなってしまう世界観をつくっていけたらと。日々の献立の悩みを解決するだけではなく、食の楽しさや体験などにも焦点を当てることで、レシピサービスのマーケットを拡大させられたらと考えています。僕らがこれからの競合と定めているのは、YouTubeやTikTok、InstagramなどのSNSプラットフォームです」
こう語ってくれたのが、delyでクラシル広告事業責任者を務める村瀬 友哉さんだ。
同社の新たな挑戦、今だからこそ得られる仕事の面白さに迫った。
=====『クラシル』のビジネスモデルについて===== 例えば、「クラシルチラシ」を使えば、近隣のスーパーのチラシが自動的に届くうえ、お買い得の食材に合わせたオススメレシピも表示される。現在、大手チェーンなど全国2万5000店で導入されている。 また、2020年にはネットスーパー事業を開始した。国内流通最大手のイオンリテールと連携したことは大きなニュースとして報じられた。これは、クラシルでつくりたい料理が決まれば、画面から料理動画で使用している材料を一括購入することができる機能だ。 続いて2021年には「クラシルデリバリー」をスタート。これはいわゆるクイックコマースで、注文すると、配達員が指定されたスーパーでピッキングを行ない、最短30分で指定の配達先まで届けてくれるというもの。 主な収益の柱は、広告事業のほか、月額480円のプレミアムプランによる収入となっている。
レシピ動画サービス『クラシル』を軸に、スーパーとの連携強化、それに伴う新機能・サービスを拡充している。
村瀬 友哉 (むらせともや)
大学卒業後、自動車関連メディアの運営企業において新規事業フィールドセールスを5年間担当。その後2年間のフリーランスを経て、教育事業を手がける企業において、マーケティング本部の事業部長としてWebマーケティング戦略の立案~実行、定性/定量調査の設計、組織マネジメントを担当を担う。現在delyにおいて、クラシル広告事業責任者として組織マネジメント・プロダクト開発に従事。
まず、クラシルショートについて教えてください。
クラシルショートは、レシピや料理に関するテクニック等、15~60秒の食に関する縦型ショート動画を、誰でも投稿できるようにしたサービスです。ダウンロード数3,400万を超えるクラシルのアセットを通して、自ら作成・投稿した動画をユーザーに届けることができます。
飲食店のシェフ、料理研究家、「レシピ本を出してみたい」「食領域のインフルエンサーになりたい」等、食に関心のある多くのクリエイターの方が、食に関心のあるユーザーに向けて発信できる、これまでにないプラットフォームです。まずはβ版として2021年6月より一部のユーザーを対象に機能をリリースしたのですが、ユーザー数は順調に伸び、半年で13倍に増加しています(*3)。
サービス誕生までには、どういった背景があったのでしょうか?
クラシルを軸に、もっと幅広いコンテンツニーズに応えていきたいという想いがありました。
そのためには、レシピに困ったときに使う「レシピ動画サービス」から、ちょっとしたスキマ時間にも食の楽しみを届けていける「食のプラットフォーム」にポジショニングを転換していく必要があったのです。
ただ、食のプラットフォームを目指すとなると、これまで制作してきた管理栄養士監修のオリジナルコンテンツだけではカバーしきれない領域が一定ありました。
たとえば、最近はSNS等で、「キャンプ飯」「グルテンフリー」など、一定の領域に特化した発信をするクリエイターさんも増えていますよね。そういった専門性の高いレシピを発信されているクリエイター、インフルエンサー、料理研究家さんのレシピをクラシルで見られるようにできたら、ユーザー・クリエイターの方、双方にメリットが高いと考えました。
ユーザーの投稿によってコンテンツが多様化していくことで、課題解決だけではなく、食の楽しさや体験も増やしていくことができる。これにより、 もっと"おいしい" が集まるプラットフォームを目指していきます。
SNSを見ていると、ご飯をつくろうと思っていなくても、料理関連の動画を楽しくてつい見てしまうという経験は誰しもあるのではないでしょうか。ちょっと空いた時間にYouTubeやTikTok、Instagramを開いて楽しむ。それと同じような存在に、クラシルはなっていきたいと考えています。
多様なレシピが見られるのは嬉しい反面、いわゆる“バズレシピ”のなかには、本当においしいのかな……? と不安になることもあります。
たしかに、いまSNSで投稿されている動画をみると、バズらせることに主眼を置いた投稿も多いように思います。
その点、クラシルはあくまで、安心安全で実際につくって "おいしい" レシピが集まる、質の高いコンテンツが集まるプラットフォームを目指していきます。
たとえば、誰でもつくれるようにするためには、「材料が記入されているか?」は最低限必要な要素です。こうした要素が揃っているか、ユーザーさんが投稿したタイミングで精査できるような体制をつくっていきます。
ユーザーの投稿を促進するような仕組みづくりも重要そうですね。
はい、まさに今後はクラシルにレシピを投稿することで、クリエイターさんにメリットをお返しできるような仕組みづくりも強化していく計画です。
例えば、現在レシピコンテストを毎週のように開催し、優勝した方にはインセンティブを還元したりしています。今後は他にも、企業からクリエイターさんへのレシピ開発依頼なども実施でればと考えています。
クラシルショートは、他にはどういったインパクトをもたらすのでしょうか?
食品・飲料メーカー様や消費財メーカー様との、タイアップ広告でも、これまで以上のシナジーをもたらせると考えています。
前提としてお伝えすると、これまでもクラシルでは、食品・飲料メーカーや消費財メーカーをはじめとした企業様とのタイアップ広告事業を展開してきました。例えば、有名な某大手食品メーカー様のなかには、50~60代の方々への認知はあるものの、若手層からの認知獲得に苦戦されているケースもあるんです。クラシルのコアユーザーは20~30代、まさにそういった企業様がアプローチしあぐねている層です。そこでクラシルは、SNSでのリーチ施策やメーカーの商品を活用したレシピ動画などをご提案し、若年層の認知獲得に向けたキャンペーンを行なってきました。
コロナ禍では、スーパーでの試食販売が難しくなり、メーカー各社にとっては販促機会の損失に。こうしたなか、クラシルは、ユーザーに商品をサンプリングし、レシピを試してレポートしてもらう『たべれぽキャンペーン』を実施。たとえば、リードのクッキングペーパーの事例では、ユーザーにクッキングペーパーを使って簡単に味のしみ込んだ料理をつくれることを訴求。レシピの満足度は高く、「継続的に商品を購入したい」という声が多数寄せられた。
今回、クラシルショートがリリースされたことで、これまでの広告商品に加え、クリエイターさんを巻き込みながら、今後さらに幅広い広告メニューを構築することが可能になりました。企業様に対しても、広告事業を通じて貢献できることは増えていくと考えています。
たとえば、先ほどふれた「レシピコンテスト」も、新たな広告メニューの1つです。
2021年のハロウィンシーズンには、エスビー食品株式会社様との取り組みとして、「ハロウィンレシピコンテスト」と題し、『濃いシチュー』のサンプリングキャンペーンを実施しました。
同時に行なったユーザー調査では、商品好意度、利用意向などがキャンペーン実施前に比べて、大幅に向上しました。また、クラシルショートは縦型フィードでストレスなく見られるためか、何度も繰り返し見てくれている、という結果も出ています。広告施策としても非常にいい結果に着地し、手ごたえを感じています。
一方で広告事業の責任者としては、今はスタート地点でしかないと思っています。
企業様の商品をより魅力づけし、ユーザーの方達にポジティブに捉えていただくためには、どういった広告メニューを設計するべきか。また、より多くの企業さまから声をかけてもらえるような存在になるには、どういった戦略・施策を設計、実績を作っていくべきか。まさにこれから、泥臭く作っていかないといけないフェーズです。
ただ、私の知る限り、食に特化したSNSで、世の中のニーズを獲得しきったプレーヤーは存在しません。つまり、クラシルショートにおける広告メニュー設計は、食領域の動画広告市場の開拓者になることを意味していると考えています。
「昔はおばあちゃんからお母さん、お母さんからその子供へと家のレシピを受け継いでいく文化がありました。いまは核家族化も進み、こうした文化もなくなってきているように思います。言い換えれば、この料理にはこの調味料を使うといったことも継承されなくなっている。そこで、若年層のユーザーが多いクラシルとタイアップすることで、若年層にリーチしていく。ここに我々の介在価値があると考えています」と村瀬さん。
続いて、いまこのタイミングでクラシルの広告事業に携わる面白さとは、どういった点でしょうか?
新しいプロダクトが生まれた今だからこそ、広告事業に関わるメンバー全員に、チャレンジの機会があると考えています。
クラシルショートを活用したtoB事業の立ち上げフェーズに関わることができます。
具体的には、もともとクラシルが食のバーティカルメディアとして保有している、ユーザー、コンテンツ、データなどの、さまざまなアセットを武器に、どういった戦略を描き、商品設計に落とし込み、どう販売していくべきか開発部やマーケティング部のメンバーと一緒に考えていきます。
広告事業部全体では30名規模、営業組織としては15名程が在籍している。
広告事業部の責任者である村瀬さんから見て、delyにマッチする、求める人材の特徴について教えてください。
新規事業かつ、チームで物事を進めていくフェーズだからこそ、
・チームで仕事を成し遂げられる方か
・素直でフィードバックを受けられる度量を持っているか
・変化やチャレンジを楽しみ、前向きに捉えることができるか
こういったところが大事になってくると考えています。これらのポイントに当てはまる方にとっては、delyは絶好の環境であるはずです。
またdelyでは、バリューとして、Trade On、Deliver Passion & Happiness、Good to Great、Heart to Heartの4つを掲げています。
・Trade On ・Deliver Passion & Happiness ・Good to Great ・Heart to Heart
私たちはdelyに関わる全てのステークホルダーの幸せの連鎖を追求します。ビジネスの成功を追い求める中で誰かの幸せがトレードオフされるのではなく、トレードオンの思考をすることで長期的でサスティナブルな成長を志します。また意思決定の順序は常に右記の順に行います。「世界・ユーザー・クライアント・チーム・個人」これらはステークホルダーの重要性を表すものではなく、意思決定の基準を左から右にすることでサスティナブルな成長をし続けるための意思決定の指針です。
世界中を熱狂させる熱量が高いサービスを創造し続け、お客様の幸せを生み出します。 そのためにdelyは、ルールで縛るのではなく、自律的にビジョン・ミッションに挑戦する熱量の高い組織を作り続けます。
delyは常にグローバルな視点から事業を捉え、レベルアップを追求する姿勢を怠りません。 高い創造性と技術・熱量から生まれる期待を超えたGreatな仕事を行い、非連続的な成長をし続けます。
delyはメンバー全員がフラットに、心から繋がることができる組織を目指します。 深い人間関係に根差したコミュニケーションこそが、ビジョン・ミッションを達成する組織にとって、熱量の高い組織を維持し続けるためのエネルギーになると信じています。
私自身は、これまで人材業界で新規事業のセールスや、教育業界でマーケターなどを経験してきましたが、delyほどこんな変化のスピードが速くて、チャレンジできる環境はありませんでした。働いてる仲間も優秀で、人間的にも優れていると感じる人ばかりです。ほかの会社では味わえない、エキサイティングな経験が得られるはずです。
最後に、村瀬さんにとって「仕事」とは、どういうものでしょうか?
どこに行っても通用する、ジェネラリストでありたい、と思っていて。そのために、仕事は、自分を成長させられる一番の機会だと考えています。
また、自分だけではなく、仕事を通じて、一緒に働くメンバーが最大限パフォーマンスを発揮し、成長できる機会をつくっていきたいという想いも強く持っています。
個人的な話ですが、自分の戦略や仮説が「うまくハマった」と感じる瞬間が好きです。今後展開予定のビジネスアカウントの戦略でいえば、メーカーにとっては自社商品を活用したレシピを広めていく機会が増える。クラシルにとっては、優良なコンテンツ量が増える。さらに、ユーザーには、おいしさや楽しさを提供できる。三方よしの関係が、カチッとハマるのが楽しいです。
組織も同じだと思うんです。一番パフォーマンスを発揮するためのメンバー構成を考え、適切な営業戦略を立て、メンバーに適切な負荷と成長機会を提供していく。メンバーの成長は、巡り巡って僕自身の喜びにもつながります。自分も周りの人たちも成長することで、こうした楽しみや喜びをより多く感じていければと思います。
参考:
(*1)30分でスーパーの商品を配達する「クラシルデリバリー」がイオンリテールと連携を開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000206.000019382.html
(*2)大震災で起業を決意した28歳~世界No1レシピ動画サービス「クラシル」で美味しい手料理を急拡大! 若き挑戦を追う!:読んで分かる「カンブリア宮殿」
https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2021/023470.html
(*3)国内No.1のレシピ動画「クラシル」の投稿機能「クラシルショート」、利用者数が半年で13倍に拡大
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000207.000019382.html