INTERVIEW
外務省|総合職・専門職公募

外務省が経験者採用を強化。求めるのは、次世代を担う民間等出身のグローバル人材

掲載日:2022/07/04更新日:2023/09/29

外務省が民間等勤務経験者を対象とした経験者採用の取組強化へ。外務省では、金融、弁護士、メーカー、メディア、コンサル、国際機関など、民間等出身人材が多く活躍している。今回の取組にあたり、電通を経て2010年に外務省へ入省した堀田真吾さんにお話を伺った。

外務省による経験者採用強化プロジェクト開始へ。

外務省が民間等勤務経験者を対象とした経験者採用の取組強化に着手。

現在、外務省では、金融、弁護士、メーカー、メディア、コンサル、国際機関など、民間等での様々な経験を持つ人材が活躍している。幅広いキャリア領域から、次世代人材を採用することを目標とする。

外務省における仕事内容、得られる経験とは?外務省にて、北米局日米安全保障条約課企画官として働く堀田真吾さん(肩書きは当時のもの)にお話を伺った。

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 堀田真吾
1977年生まれ。新卒では電通に入社。営業、ストラテジックプランナーとして国内大手メーカーを担当。2010年経験者採用試験を経て外務省に入省。経済外交、東南アジア外交、SDGsなどの地球規模の課題、UNESCO代表部での業務、広報文化外交に携わり、2021年からは日米安全保障協力を担当している(取材当時)。

外務省の経験者採用試験で入省

前職は、電通で営業やストラテジックプランナーの仕事に携わってきた堀田さん。どのような経緯で外務省への入省を決めたのか。

「2010年、外務省の経験者採用試験が始まり、「まさに私のための制度だ」というくらいに喜びを覚え、応募しました。もともと学生の頃から「国際的×公共」の領域を仕事にしたい思いがありました。そのなかでも、特定の領域のプロになるというよりは、広く様々なイシューと向き合いたかった。外務省であれば、経済や政治、安全保障など、様々なイシューを俯瞰しながら、国と国のトータルな関係強化に携わっていくことができると思いました」

そして、グローバル化が加速し、国際的な仕事の裾野が広がるほど、実は、外務省の役割、重要性は増していくのではないか、とも考えたという。

「前職時代、ある大手自動車メーカーが東南アジアで自動車を販売していくにあたり、現地調査をかねて出張したんです。丁度、東南アジアとの貿易交渉が行なわれていたタイミング。その時、現地の担当者から「マーケティングも大事だけれども、そもそも、規制、法令、さらには国と国との関係によって、自動車の売れ方は全然変わってくる」という話を聞きました。マーケティングだけでは解決しきれないことがある、国同士の関係性、法律が大きく物事を左右すると痛感しました。この体験により、国単位の大きな枠組みで物事を考えていく仕事をしてみたい、と強く思うようになったんです。今後、国境を越えた人々のやり取りはますます増えていく。そういった状況だからこそ、首脳を頂点とする政府同士で、様々な協議・交渉を行い、国と国の関係を良くしていく、いわゆる「外交」の役割は非常に大きくなるはずです。そして、「外交」に正面から取り組めるのは、外務省だけだと思いました」

「サブ」と「ロジ」の両面で、首脳会談を成功に導く

こうして外務省に入省した堀田さん。その業務内容とは

「2021年からは、北米局日米安全保障条約課企画官として働いています。日米安全保障条約課は、日本外交の基軸である日米同盟の、さらにその中核である日米安全保障条約に基づき、アメリカとの安全保障協力を日々推進しています。その中で、私のポストは、アメリカとの協議を通じて、宇宙、サイバー、様々な先進技術など、新たな協力分野を開拓・強化していく役割を担っています。一言でいえば、日本の安全保障外交のアジェンダセッターだと思っています。私たち外務省員が担当する仕事の中でも、特に省内外や世間からも注目度が高いのが、首脳会談です。外交とは、政府と政府の間で行うもの。政府のトップである首脳同士が、どちらかの国を実際に訪ねて会談を行うことは、外交にとってのハイライトでありピークとも言えます」

2022年5月の「バイデン米国大統領の来日」を例に話を伺えた。

「日本の唯一の同盟国である米国の大統領を迎え、しかもバイデン大統領にとって就任後初めての訪日機会ということで、今年、外務省としても最も力を入れる仕事の1つでした。こうした首脳会談が行われる際、外務省内では大きく2つのチームに分かれ動いていきます。1つは、「サブ(サブスタンスの略)」。こちらは、「会談で得たい成果」を描き、日本としてどういった方針で会談に臨むのか、総理から何を発言いただくのか、それをどのように国内や世界に発信していくのかを考えていくチームです。日米の協力関係は、日米だけに閉じるものではありません。むしろ、日米以外のことを扱う方が多いぐらいです。例えば、5月の首脳会談では、ロシアによるウクライナ侵略やそれがインド太平洋地域に及ぼし得る影響をお互いにどう見ていて、どう対応していくかといった、他国に関するトピックも話しあう必要がありました。そのため、ロシアやウクライナを担当する欧州局や安全保障を担当する局とも事前に相談しアドバイスをもらいます。さらに外務省内だけでなく、関係する他の省庁、そして官邸にも相談し、それぞれの分野のプロと何度でも議論を繰り返しながら、日本政府全体の方針を取りまとめていく必要がありました。会談で目指す成果が固まれば、米国政府と事前に話し合うテーマを摺り合わせ、日本として総理に何を発言していただくのかをまとめたトーキングポイントを作成します。もちろん、最後は総理が御自身の言葉で話されるわけですが、分単位の限られた時間の中で、何を、どのような順番で、どのような表現で発言いただくか、一文字も無駄にしないように考え、議論し、本番直前まで修正を重ねます。私も何度も経験してきましたが、外務省で最も「腕が鳴る」仕事の一つだと思います。さらに、時間の関係上、全てを会談の内容だけでカバーできるわけではないため、日米でこの機会に確認し、世界に打ち出したいことを共同文書としてまとめていきます。

また、会談を成功に導くには、両首脳の動線やスケジュールを緻密に考え、円滑に進めていく「ロジ(ロジスティクスの略)」も不可欠です。大統領が来日してから、何時何分に会談の場所に到着し、その何分後から会談を行い、その後は何時から夕食会を行うのか。こうした具体的なタイムスケジュールを分単位で策定し、配車やお店の手配などを担います。今回でいえば、夕食会を「八芳園」で開催し、デザートには、大統領の好物であるジェラートをお出ししました。バイデン大統領は、副大統領時代に震災を乗り越えた宮城県を訪れていたので、その地のお店のジェラートを取り寄せて御用意したのです。メディアやSNSを通じて、会談の成果などの「かたい情報」だけでなく、「やわらかい情報」も合わせて発信していくことで、国民の方々に外交を少しでも身近に感じてもらえるのではないかと考えています」

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「バイデン大統領来日までの1か月は、夜を徹する作業が続きました。さらに、大統領が来日してからも、様々な行事を終えて、日本を飛び立たれる最後の瞬間まで、一瞬も気が抜けない状態が続きます。最後、バイデン大統領のお見送りに行っていた部隊から、「大統領が乗られた飛行機が横田基地を飛び立ちました」と一報が入ったとき、自然とみんなから拍手が沸き起こりました。会談の成功に向けて省内のあらゆるチームが一丸となって進めていく。私にとっても、非常に貴重な経験でした」

外務省で求められる、「複合的な視点」と「スピード」

続いて伺えたのが、外務省で求められる資質について。

「1つ、外交には「複合的な視点」が求められます。例えば二国間の関係を良くしたいと思ったとき、経済分野で協力をするだけではうまくいかない。そもそも、両国の政治的な関係や、両国を取り巻く国際的な環境なども深く関わってくるためです。こうした複合的な観点を身につけていくためにも、私くらいの年次までは、2~3年おきに部署を異動し、様々なイシューに向き合っていくことができる人事制度になっています。組織形態としては、アメリカ担当、東南アジア担当のように特定の地域をみる「地域局」、経済外交、広報外交のように特定のテーマをみる「機能局」があります。それぞれが組み合わさって一緒に仕事を進めていく形です。私の場合も、東南アジア、北米など地域にフォーカスする仕事も経験しましたし、SDGs、UNESCOなどグローバルなテーマに関わる仕事も経験してきました。私は飽きっぽい性格なのですが、2~3年おきに新たな課題にチャレンジさせてもらえる環境なので、飽きる暇はありませんね。これまでの全ての経験が外交官としての仕事に活きていますし、40代になったこれからも日々勉強です」

もう1つ、仕事を進めていく上でのスピード感についても言及してくれた。

「世界の動きがますます早くなっている昨今、外務省に求められるのがスピード感です。例えば、日本としての立場を決めなければならないイシューがあり、明日朝一番で官邸に情報をあげる必要がある場合。まず、日本としての立場を決めていくには、世界の主要な国がそのイシューについてどのように考えているのか。日本が示そうとするスタンスに対して、どれほどの関係国が支持してくれそうなのか。こうした部分を把握しておく必要があります。そこで、世界各地に200以上ある在外公館に指示を出し、一晩で100カ国以上の見解や方針をまとめあげ、世界の見取り図を作っていくということもあります。入省当初は、「こんなスケール感、スピード感で動いている世界があるのか…」と本当に驚きました。ただ、こうしたスピード感で対応が求められる仕事は決して珍しくはありません」

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堀田さんは、日本における「SDGs」の言葉・概念を広めたチームの一員でもある。「SDGsは2015年に国連で採択されました。当時、私はそれを日本として、どのように実施していくか、議論し、具体的な計画に落とし込んでいくミッションを担当していました。今でこそSDGsという言葉はよく耳にしますが、当時は率直に言ってかなりマイナーでした。関係省庁、外務省内はもちろん、 私が当時所属していた局の中でも知っている人の方が少ないほど。そのため、いかにSDGsを省内外・国内に広げていけるか、ここに一番知恵を絞りました。例えば、外務省や関係省庁の中だけで議論しても進まないので、当時、安倍総理にヘッドを務めていただく政府のSDGs推進本部を設置し、SDGsの実施方針を策定しました。加えて毎年作成される政府の予算関連文書の中にもSDGsの文言を追記してもらいました。これにより、各省庁でもSDGsの実施に必要な予算を確保しやすくなり、取り組み自体が広がっていったんです。さらに民間の方々への認知も広め、オールジャパンの取組を推進するために、優れた企業・団体の取組をSDGs推進本部が表彰する「ジャパンSDGsアワード」のイベントも企画・実施しました。当時のチームみんなで考え、手探りで実現してきた仕組みが、この5、6年で機能し、2022年時点ではSDGsの認知度は8割近くまでアップした。前職での広報・マーケティングの経験を活かせたという点でも、非常に感慨深いです」

国際社会の潮流に学び、これからの日本にとってのアジェンダを見極めたい

最後に伺えたのは、堀田さん自身、今後仕事とどう向き合っていくかについて。

「1つは、まずは国際社会の潮流を常に捉えていたい。幸い、外務省には、各国政府が公式に発表する情報から、水面下で得られる非公式な情報まで多岐に亘る情報が、日常的に、様々なチャネルを通じて入ってきます。毎日働いていると当たり前に感じられますが、実はこれは、​​まさに国際情勢の研究者たちが追いかけるような質の高い一次情報を日常的にフォローし続けられるという非常に恵まれた環境です。世界の動きに関心を持ち、知的な刺激を求める人にとって、これ以上の場所はなかなか思いつきません。もちろん、その分、しっかりと情報を吟味して、政策決定に役立てていく責任は重いわけですが。情報が溢れる時代だからこそ、この環境を最大限に活用して、国際社会の潮流を見極める力を磨き続けていきたいです。

もう1つ、国際社会の潮流を捉えたうえで、日本と世界の未来に向けた新たなアジェンダを提示していく力を身につけていきたいと考えています。例えば私のポスト「北米局日米安全保障条約課企画官」のミッションは、10年先、20年先の国際社会の動向を見据え、日米の安全保障協力における新しい協力分野を切り開いていくこと。目の前の課題に対応することはもちろんですが、それだけではなくて、「10年後、20年後、日本を取り巻く安全保障環境はどうなっているのか」「それに対応するために、日米同盟は今のうちからどのような分野の協力を深めておくとよいのか」こうした中長期的な戦略性が問われる質問にも、適切に答えられることが求められます。例えば、宇宙の分野での安全保障協力をどう進めるか。サイバーの分野でも、高度化する安全保障上の脅威に日米でどう協力して対処していくか。もちろん、外務省だけで答えが出せる問題は少なく、関係省庁と協力して取り組む必要があります。その中で、外務省が果たすべき役割は、今ある国内制度などの前提条件から自由な立場に敢えて立って、これからの日本にとって重要になる新しいアジェンダを提示し、オールジャパンの取組にしていくことにあると思います。一つでも多く、こうした外務省ならではの貢献をしていきたいと思っています」

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