INTERVIEW
ピクシーダストテクノロジーズ|代表取締役CEO 落合陽一

累計68億円を調達。落合陽一率いるPxDTが志向する「社会的意義があるもの」を連続的に生み出す孵卵器

掲載日:2022/11/21更新日:2022/11/21
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2022年10月、シリーズCで総額約21.7億円、これまでの累計で約68億円の資金調達を実施したピクシーダストテクノロジーズ(PxDT)。さらなる事業拡大に向けて採用強化を行う。共同創業者・代表取締役CEOである落合陽一氏にPxDT社の事業概略、ミッション、そして同社で得られる経験について伺った。

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PxDTは、連続的に「社会的意義」や「意味」があるものを生み出す孵卵器

先端技術を、社会に存在する課題・ニーズドリブンで社会実装するピクシーダストテクノロジーズ(以下、PxDT)。ミッションに掲げるのは「社会的意義」や「意味」があるものを連続的に生み出す孵卵器(インキュベーター)となることだ。少子・高齢化による労働人口の減少、障がい者の暮らしをより豊かにしていくなど社会課題の解決を目指す。

「社会とコンピューターが滑らかに接続された世界にしていく。いつも僕はそんなことばかりやっているわけですが、PxDTはそれらをプロダクトに落とし込むすごく重要な会社。営利企業として、ニーズが明らかなところにプロダクトを当て、技術で社会実装していきます」

こう語ってくれたのが、同社の共同創業者であり、代表取締役CEOの落合陽一氏だ。同社では波動制御技術(計算機ホログラム技術や信号処理技術)に特化したコア技術を持ち、「音響メタマテリアル」や「五感を介した認知症ケア」や「超音波を用いたメカノバイオロジーによるヘルスケア」などを展開する。

彼らが実現していこうとしているのは、一家に一台に置かれるような「社会的意義」や「意味」のあるプロダクトの連続的な開発。より詳細な事業概略、ミッション、そして同社だからこそ得られる経験について落合氏に伺った。

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超音波スカルプケアデバイス「SonoRepro™(ソノリプロ)」(左)や、音響メタマテリアル「iwasemi™(イワセミ)」(右)、その他各種製品リリースを今後も予定するPxDT社。ヒューマンインターフェース、ホログラムなど波動制御の学術的バックグラウンド(博士号を有し研究教育に従事)を持つ研究者に加え、ビジネスとファイナンスに関してもそれぞれプロを擁し、先端技術の社会実装を加速させている(※SonoRepro、iwasemi及び関連するロゴは、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社の商標又は登録商標です)

世界中の「アンメットニーズ」に応えていく

従来のユーザーインターフェースや医療機器によるアプローチを超えた「新しい選択肢」の研究開発、その社会実装を行なうPxDT社。世界的にいまだ満たされていないニーズ、いわゆる「アンメットニーズ」に応えていく。いかにそのニーズを拾い、解決していくのか。一例から話を伺うことができた。

例えば、コロナ禍によって飲食店などに「感染防止対策用アクリル板」が置かれるようになりましたが、そこで何が起こったか。アクリル板越しだと、会話をしようにも相手の声が非常に聞き取りづらくなってしまいましたよね。マスクをしていたらなおさら。それが耳の不自由な方だとほとんど聞こえないわけです。そこで透明な板に字幕が出てくる「字幕透明ディスプレイ*」を作りました。「透明なパネルに字幕を出す」は至って普通の発想ですが、「感染防止対策用アクリル板」という出現して間もない新しいライフスタイルから生じたニーズに対して、ベンチャーならではのスピードで高速にものを作り、当てていく。これは飲食店に限らず、駅などの交通インフラ、自治体の窓口などにもニーズがあり、まさに実証実験を行なったところ。既存メーカーはいきなり参入しにくく、フットワークが軽い方が勝ちやすい。PxDTでは毎回そういった市場に生じた新たなニーズに応えるプロダクト開発を行なっています。

*「字幕透明ディスプレイ」は筑波大学Digital Nature Group(代表:落合陽一准教授)の字幕表示に関する研究成果を応用したもの。2022年7月~9月には相鉄本線 さがみ野駅の改札窓口において実証実験が行われた。研究詳細

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什器メーカーのイトーキと共同開発したガラスに貼れる透明吸音パネル「iwasemi™ HX-α」の木製プロトタイプを手にする落合陽一氏。同製品はガラスで囲まれたオフィス内でのWeb会議の増加によって生じた「反響音」や「音漏れ」の課題を解決する。リモートとのハイブリッドワークから生まれた「新しいニーズ」に応えるもの。背にしているのが、音響メタマテリアル技術を応用した透明吸音パネル「iwasemi™ HX-α」量産モデル。2022年10月には硬質吸音パネル「iwasemi™ SQ-α」をPxDT単独開発商品として発表、2022年12月頃から販売開始を予定する。

ヘルスケア領域へのアプローチも注目されるが、なぜ同領域を手掛けるのだろう。

医療や介護は成長市場、営利企業として大きなマーケットを取りにいくのは、当然のことですよね。もっと言えば、僕らの技術が、そういった社会課題の解決に直接的に効く。人の役に立てる。これがシンプルな理由です。

「医療」にかかっているお金を、どう「予防」に持ってくるか、もう少しやり方があるはずですし、予防医療を含めた選択肢の幅もあっていいですよね。認知症にしても、例えば、今後特効薬ができるかもしれませんが、脳にアプローチできるデバイスがあれば、二重の効果が期待できるかもしれない。市場としては大きく、ニーズはある。しかし、そこにハマる技術を持つところがない。そういった部分にPxDTはうまく応えられている自信はありますね。

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ピクシーダストテクノロジーズ 代表取締役CEO 落合陽一2015年東京大学学際情報学府博士課程修了 (学際情報学府初の短縮終了)。博士 (学際情報学)。日本学術振興会特別研究員DC1、米国Microsoft ResearchでのResearch Internなどを経て、2015年に筑波大学図書館情報メディア系助教デジタルネイチャー研究室を主宰、2017年から当社と筑波大学の特別共同研究事業「デジタルネイチャー推進戦略研究基盤」を筑波大学内に設立。現在デジタルネイチャー開発研究センターセンター長・准教授を務める。 専門はヒューマンコンピュータインタラクション、バーチャルリアリティ、ホログラム、アクセシビリティ。。World Technology Award 2015 (IT Hardware) ほか受賞歴多数。2022年世界経済フォーラムによるヤンググローバルリーダーズに選出。

マーケットニーズの生態系を変えにいく

いかにアンメットニーズに応えていくか。そこには「未知」に挑むやりがい、PxDTならではのおもしろさがあるという。

PxDTで作るのはアートではなくて、プロダクト。なので、より多くの人たちが使えるもの、一家に一台あるようなものを作っていきます。現在、従業員の半数弱がエンジニアですし、ハードもソフトも、作るのが得意です。フットワークが軽く、作ろうと思えば比較的何でも作れますし、実装力が高い。今なら同時に複数のプロダクトが走っていて可能性が探れますし、どれも世の中の役に立つものなので、おもしろいと思います。

数年前まで「何をやっている会社かわからない」と言われていましたが、ここ最近は説明がしやすくもなってきました。さまざまな社会課題を紐解き、だいたいが波動と物質の間に起きている問題なので、そこを解決していけますよ、と。だから「何を作るか」はそれほど問題ではなく、社会課題のどこに刺しにいくか。資金調達もしましたし、ニーズドリブンで好きなことができる会社かなと思います。

新しいデバイスは、新しい生活習慣として取り入れてもらって「新しい当たり前」を作るもの。要するに市場を作りにいけるし、今までとは違うビジネスにおけるサプライチェーンを含めたエコシステムが出来ていく。マーケットニーズが変わる。そういった生態系を変えにいく感覚も楽しめるはず。超音波スカルプケアデバイス「SonoRepro™」はいい例ですね。ただ、継続的に使ってもらってこそ効果的なわけで、当然ここからどう毎日使ってもらうかは課題ですね。

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PxDT社における現在のフェーズについて「シリーズCになるともう僕の世界観ではなく、会社やプロダクトの世界観のほうが大事だろうなと思っています」と語ってくれた落合氏。「僕の世界観が出過ぎると、アートならいいですけど、量産できるプロダクトにならないですよね。もちろん、CEOの主な機能は「意思決定」と「どう外に見せていくか」なので、何を作るか、どう見せるか、パッケージなど含めてプロダクトにはこだわります。ただ、特にどう売っていくか?ここはほとんど口を出さないので柔軟に働ける。そもそも量産が働かないと、次の面白いものも作れない。市場があるとわからなければ、その分野の研究も無くなってしまいますからね」

「未知なこと」にしか興味がない

そして最後に伺えたのが、この不確実な時代において、どう「活躍」していくか。そのために必要な能力や考え方とは――。

キャリアの話をする時、決まって「専門性を磨くべきか、ゼネラリストを目指すべきか」みたいな話がありますが、その二者択一にはまるで意味がない。僕は専門家でもあり、ゼネラリストでもあって、一体何者なんですかね。なので、結論として、感動できれば何でもいいんじゃないでしょうか。

なぜ「感動できる」が重要なのか。ほとんど閃きに近いですが、そろそろ汎用人工知能(アーティフィシャル・ジェネラル・インテリジェンス=AGI)*が少しずつ現実味を帯びてくるなかで、それが出てきた後の生活スタイルについて昔から考えていて。一つの解として、身体的に理解できたのが「感動できるかどうか」がすごく重要であるということ。多くの人が感動できなくなっている感覚もあって。だから、仕事にしても自分で「感動できる」と思えたら幸せですし、その喜びをチームで共有し、買ってくれた人に「ありがとう」しかない。だからここ最近はTwitterでも「感動できる」「ありがとう」「その喜びを共有しよう」しかツイートしていない。学生からは「感動できるbotになったんですか」と聞かれて、それにも「感動できる」と。逆に感動できない人は、テクノロジーに関わって働くなら厳しいでしょうね。新しい技術が毎日のように出てくるので、そこに感動できなければ、働く意味がない。その点、PxDTは新しい経験が無数に得られるし、そもそもわけわからないこと、他ではやっていないことしかやっていない。選択肢があった時も、基本は、どうなるかわからない「未知」な方を選ぶ。未知なことにしか興味がない。同じようなタイプの人はすごく感動できると思います。

*汎用人工知能(アーティフィシャル・ジェネラル・インテリジェンス=AGI)…特定の課題に限るのではなく、自ら考え、問題を処理する能力を持つAI。人間と同じように感情、感性、思考回路を持つとされている。

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